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第10話:懐かし

お久しぶりです。いや、いつもより早い更新ですが、お久しぶりです。なんでこんなにも更新が早いかというと。。。勉強が一段落ついたから。。。。。。。。ごめんなさい、それだけです。それでは、このまま読んでいただけたら幸いです。

 暗やみで何かが動く。

「あぁ、懐かしいな…君に逢うのは何年ぶりなんだろう?」

 それは一人の男。片手は整えられた自分の髪をかきあげ、もう片方の手は冷たい窓に。

「あぁ、早く逢いたいよ……アイラ」

 言葉は直ぐに闇に呑まれた。




 活気のある王都。品物も底を尽きることを知らぬようで、市には山のように積まれた品物達。必ず貰い手がいるとは限らない市の品物達。

「ありえない…」

 田舎者のノイにとってこの光景は始めてみるもので、ノイ達の村、アシュルタ村の市は村人分の物品が置かれている程度なわけで、まあ、ビックリというわけだ。

「ほら、ノイ!いくよ」

 遠くからコイルが声を張り上げ、コイルの隣にいるアイラは手を振り呼ぶ姿が見える。どうやら、ノイはいつのまにか二人から大分離れた場所にとり残されてしまったようだ。

「待ってくださいよ!」

 ノイがコイル達の元にたどり着いたときにはコイルの横に居るはずのアイラの姿はなかった。

「あれ?アイラはどこです?買い物にでも…」

「ん?さっきまで一緒に…ノイ!?」

「ちょっと探しに行ってきます!コイルさんはここにいてください!」

「ノイ!」

 コイルが制止の言葉を発するよりも早くノイは既に見えるところにはいなかった。


 ノイはコイルの制止を聞きつつ、走りだす。ノイは

「胸騒ぎがする、何かがアイラの身に起きている」

そう感じたのだ。

「アイラ…!」




ガタン

「いったぁ〜」

 アイラは目隠し、手足を縛られたままどこか建物の一室に投げ入れられたようだ。器用に寝ていた体を座らせ一息吐く。

 しかし、アイラにはこのパターンは一度経験したことがあるのだ。それは、

「学生時代にも似たようなことがあった気がするんだけど・・・また、かな?コウ」

 コツン アイラの背後に人が立つ。

「うれしいな、アイラくん。僕のことを覚えててくれたんだね?」

「ええ、覚えていたわよ。忘れたい過去の記憶だけどね」

「僕にとっては決して忘れたくない麗しい思い出だよ」

 コウという男はアイラの背後に立ち、目隠しを外しながら話し続ける。

 解かれた目隠しの布は、はらり、と床までの短い距離を舞う。

「あぁ、眩しい・・・その刃物早く目の前から退けてくんない?余計眩しいんだけど」

 久しぶりに見えた外界には黒ずくめの青年がナイフの切っ先をアイラの目の前に突き付けて座っている、恐らく背後に居るコウに雇われた者だろう。びびらせたかったのだろうが、アイラのほうが一枚二枚上だった。アイラは怯えることもなく、自分が置かれている状況を理解しつつも相手に意見する。

「…残念ながらそれはできませんね」

 背後にいたコウがアイラの前に移動する、見下しながら。手下はいつの間にか壁ぎわに移動している。

「何で?」

「君に一つ聴こう」

 アイラの質問には答えず話を進める。どうやら、この質問に答えなければならないらしい。

「僕は君のことを愛している」

「…だから何」

「僕は君と共に暮らしたい、2年前はNOと言われたが…今回は?」

「決まってるじゃない」

 アイラはゆっくりと目を閉じ鼻で笑い、

「NOよ」

真っすぐ前を見据えて答えた。しかし、この後の相手の行動は予測できる。力ずくでアイラを押し倒すだろう。そう理解しているため体は震える。

「このっ!!」

 案の定コウはアイラの肩を掴み押し倒してきた。

「くっ…!」

 押し倒された勢いで体は痛かったが、まだアイラの顔には余裕があるように見える。ピンチであるはずのこの状況でアイラの顔は笑う。

「…なんだその笑いは、この状況でなぜ」

「あの人はきっと来てくれるって信じてるから」

 体は強ばり、声は震えているがしっかりとした表情でアイラはまた答える。

「なにを…」

 ガァン!

 いきなり部屋の扉が開け放たれた、そこには一人の男が肩を上下させて立っていた。

「き、きみはノイ・クローゼ!」

「ノイ!」

 アイラとコウはほぼ同時に男の名を出した。コウのは唖然としていて口が開きっぱなし。

「チース、うちのアイラがお世話になっていると思うんですが…好き勝手やってくれちゃって、この代償は高いよ?」

 すっ、と押し倒されているアイラを見てキレた。ノイの口は笑っているが、目は据わっている。

「おい、お前!早く奴を何とかしろ」

「ちょっとコウ!離しなさいよ!」

「…わかりました」

「聞いてんの?」

 身の危険を感じたコウはアイラを立たせ部屋の隅に移動し、雇った男に指示を出す。当の雇われた男は何かが気に食わないのか眉間に皺を寄せ、答えノイに一礼。

「というわけなので、よろしくお願いします」

「え!?あ、ああ…」

 雇われた男に、これから戦う敵にバカ丁寧に『お願いします』なんて言われたものだから、何だかやる気が失せる。

 まずは雇われた男がノイに向かって走ってくる。拳を構えたものだから、当然殴りかかってくると思いノイは防御の姿勢を取る。が、やられた。相手はフェイントをかけ背後に周り込まれた。

「もうちょっと裏を詠んだほうが良いんじゃない?」

「ちっ…!」

 回し蹴を打ち込もうと思ったが躱される。

「ちくしょう。逃げ回ってないでかかってこいよ!」

 なんだかキレた、相手がけしかけてこない、それが腹ただしく感じたからだ。

「う〜ん…残念ながら俺はやる気が出ない。戦う気はない」

「はぁ?」

 思いがけない相手からの言葉、もちろん雇っている側は納得がいかない。

「なっ!何を言っている!私がお前を雇ってやったんだぞ!私の命令は絶対だ!早くノイを倒せ!」

 うざったいという顔でコウを見る。

「何が不満だ?金か?金が足りないというのか?」

「違うね」

 コウは焦る。自分では何も出来ないのだから雇った男に何とかしてもらわないと困るのだ。

「地位か!地位なんだな?いいだろう、お前がこの仕事を終えたら私の企業の重役の」

「違う!俺は金や地位なんていらない、ただお前のやり方が気に食わない。第一、俺はこんな仕事内容とは聞かされてない。普通ならこの命令も契約外ってことで無視したいんだが…」

 雇われた男の勝ち(?)なんだろう。コウは黙ったままで下を俯いている、やはり契約外の命令だったのか、そうなれば法令でコウは裁かれる。刑罰はそんなに重くはないのだが、世間に知られたら、実は一企業の社長であるコウは立場を追われることになるだろう。

 アイラはコウの力が緩んだ隙にするりと逃げ出しノイの下に走る。よく見るとアイラの服が首から右肩の辺りまで裂けてしまっていた。

「ノイ!ありがとう、来てくれるなんて思ってなかった。でもどうしてココって分かったの?」

「勘だ」

「勘って…」

「それより」

 いつものテンポ言葉を交わしていた二人だったが、急にノイはアイラに手を伸ばし抱き寄せる。

「え、ノイ!?」

「無事で良かった」

「ちょっと!なんで抱きつくわけ?くるしい!!」

 突然のことでアイラは顔を真っ赤にして自分を包み込む人に訴えかける、多少このままでいたいとも考えたがやっぱり恥ずかしい。

「ごめん、つい安心して…」

 ノイはアイラの訴えに体を離す。顔を見上げると真っ赤になっていた、今更になって恥ずかしいと思ったんだろう。

「…あれ?コウ達は?」

「あ、いない」

 ふと、気が付くと部屋にはノイとアイラ以外に人は居なかった。




 そのあと、アイラはノイに服を貸すと言われたが断り、鞄から一大きめの布を一枚取出し裂けた所が見えないように工夫して体に巻いたのだが、さすがコイル。合流した瞬間に発見し、アイラの服が多少切れていたのは、ノイのせいになってしまった。

まぁ、どんなに訴えてもアイラを抱き締めたことは手を出したということになってしまうのだろう。

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