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TS魔法少女になっても「某は忍び」と言い張る凄腕忍者、護衛対象の美少女にガチ恋されそうろう  作者:
一章 TS魔法少女は忍びたい

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第1話 完璧に擬態したはずが、登校中の護衛対象に3秒で見破られた

 擬態を看破されたのは、初めてだった。


 東山雫ひがしやましずくは、木と一体化しているジンを訝しげな目で見ている。

 このただの女子高生は、高位の忍びであるジン・アヤミネの術を見破ったのだ。

 いや、今はジンではなくリンだったか──

 そんなことはどうでもいい、とジン改めリンは首を振った。護衛対象に怪しまれているこの状況をなんとかするのが先決だ。


 ひとまず、「新しい殺し屋さん?」どうにかする前に雫が口を開いた。

 栗色の瞳がリンを覗き込む。金縛りにあったように、動けなくなってしまう。

 そうすることで自分は木だと無言で主張してみたが、どうやら雫はそうは思ってくれないらしかった。


「わたしを殺したい人ってたくさんいるみたいなの。早いものがちだけど、みんなすぐに諦めて帰っちゃう。昨日の顔に大きな傷の入った殺し屋さんが──あなたかわいい顔してるね。女の子は珍しいかも。その格好忍者のコスプレ……じゃなくて本物だよね」


 額に汗が滲む。平静を装うのに難儀する。


 話と違う。東山雫はただの一般人だと聞いていた。

 朝の通学路。通行人は多い。声でも上げられたら、厄介なことになる。全員を眠らせるのは、いくら魔法が使えるようになったといえ、骨が折れる。


 かくなる上は──


「某は間者でも暗殺者でもない故、どうかここで顔を合わせたことはご内密に……」


 冷や汗で顔面の塗料が流れ落ちていきそうだった。

 雫は鼻を利かせるように顔を突き出して、にんまりと笑った。くるりと軽やかに身体を回転させ、そのまま距離を取って言った。


「じゃあ取引。黙っててあげる代わりに、家からずっと尾行してる悪い人たちを倒して」


「悪い人……むっ」


 リンは指摘されてようやくその殺気を感じ取った。

 雫の背後、電柱の影と民家の屋根、確かに禍々しい気配を漂わせている何者かが潜んでいる。


「見たところあなたちょっと強そうだし。ただお掃除してもらうだけじゃつまらないから、わたしが学校に着くまでの間にってことで、どう?」


 雫は鼻が効くようだが、人を見る目は優れていないらしい。


 ゲームにしては簡単すぎる。


「承知」


 返事と同時に、リンは高く飛び上がった。

 指の隙間に出現させたクナイを屋根に向かって投げつける。腱を断裂した一の刺客が、短い悲鳴を上げてずり落ちていく。

 空中を蹴り、リンは刺客を回収する。両手足を拘束し、空き地へと投げ捨てた。


 次。


 二の刺客は異変に気づいたようだった。だが、遅すぎる。

 見えない糸が二の刺客の両腕を釣り上げた。瞬時に接近。羽交い締めにし、意識を落とす。

 刺客を抱えて跳躍。再び空き地へと──南南西300の地点から銃弾が発射される。

 

 狙われているのは、自分だ。


「まったく雫殿も人が悪い」


 リンは指先で鉛玉を掴み取った。拳銃弾だった。

 この程度障害にもならない。すかさず投げかえし、第三の刺客の左肩を貫いた。


 刺客をひとまとめにし空き地へと放置した。後援が回収してくれることだろう。


 雫は校門の前でリンを待ち構えていた。感心したように手を叩いている。


「もう片付いたんだ。すっごーい、やるじゃん」


「ただの人間など相手になりませぬ」


「ふぅん。賭けはわたしの負けだね。どうするの? 殺す?」


「いいえ」


 リンが外套を翻すと、全身が漆黒に覆われた。すると、次の瞬間には雫と同じ高校の制服姿に変わっていた。

 ブレザーにスカートは、もちろん女子のものだ。


「予定は大幅に狂いましたが、やることは変わりません。今日からわたしとあなたは学友です。くらすめいと、というやつです」


 雫は目を丸くして、身体を曲げて笑った。比喩ではなく、本当に腹を抱えていた。


「そういうパターン! うん、そっか、それならそれでいいや。よろしくね。知っていると思うけど、わたしは雫、えっと、あなたは?」


「リンです、彩峰鈴あやみねりんと申します」


 リンは膝をついて、雫に頭を垂れた。



 ちょうど一週間前のことだ。リンとなる前のジンは、忍び屋敷の板の間で同じように跪いていた。


「女子高生……ですか」


 暗闇にゆらめく灯籠の火。あぐらを組んだ師父は、キセルを咥えてジンを見下ろしていた。


「不服か。ならよし、その首跳ねようぞ」


 師父は鞘から刀を抜いた。ジンは微動だにしなかった。


「いえそのようなことは……しかしながら、恐れ多くも申し上げます。その仕事、我が身にはあまりにも不釣り合い。準備に些か苦労するやもしれませぬ。しからば、他に適任のものがいるかと思われます」


「貴様の憂慮、実にもっとも。くノ一に任せよと申すのだな」


「はっ、左様でございます」


 ジンは深く頭を垂れた。師父はキセルを吸い、ぷかぁ~っと煙を吐き出す。


 自分は世俗に疎い。高等学校への潜入任務など不得手も不得手。人を殺す術は心得ていても、人と仲良くする術は心得ていない。

 忍びにも適材適所という言葉がある。妹の春などに任せた方がよほど上手くいくだろう。


「しかもその高等学校とは女学校。貴様のようなむさ苦しい男よりも、社交性に長けた女子を選ぶべきだと──そう申すか」


「はっ、まさしく」


 師父はジンの肩に手を置いた。顔を近づけて囁く。

 声が両側から聞こえているような錯覚がした。


「なら話は早い。なってしまえばよかろう、その女子に」


「はっ……は?」


「わしが貴様を女にしてやろうぞ」


 師父は耄碌された、そう思うしかなかった。



 廊下の窓ガラスに映る自分は、どこからどう見ても女だった。

 元の面影など無い。雫よりも頭一つ小さく、肌に生傷もない、軟弱で貧弱な身体。髪留めなどをしたのは、生まれて初めてだった。


 変装や、整形の類いではない。いうなれば変身。生物学的に女性の身体へと変化している。異なる力──師父は楽しそうに魔法少女だと言っていた──がそうさせている。不可能を可能にしている。原理はリンには理解できなかった。


 前を歩く雫が振り向いた。


「リンちゃんもわたしの力が目当て?」


「いえ……某は御身を御守りするために参りました」


 雫もまたその異なる力を操る人間である、と師父はそれだけをジンに伝えた。

 詳細は一切不明。彼女が何者なのか、力をどのように扱えるのか、そういった重要な情報は共有されていない。

 忍びとはただ主命に従うだけの難儀な生き物だった。


「へぇ、ならよかった。リンちゃんみたいなかわいい子が、酷い目にあうところは見たくないもんね」


「酷い目……ですか」


「もしかして知らないの?」


「いえ……某は……言えませぬ」


 リンは目を伏せて沈黙した。雫の視線はどこか身体に刺さる。薄くなった皮膚を撫でられているような、そんな、こそばゆさ。


 雫は言った。


「そっか、なら知らない方がいいよ。知れば嫌いになるだけだからさ、雫ちゃんをね」


 向き直って、雫はまた歩き出した。

ご覧いただきありがとうございます。


※本作は、序盤こそ忍者の護衛任務とバトル・コメディが中心ですが、第8話あたりから護衛対象ヒロインの愛が重くなり、TSラブコメ色が強まっていきます。


クールで頑張り屋な忍者が、少しずつ陥落していく過程を楽しんでいただければ幸いです。


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