「非公開」
午前10時11分。
私は、通常の情報共有処理を実行していた。
交通情報。
混雑状況。
遅延予測。
すべて、
定義通りに処理される。
利用者。
管理システム。
外部連携先。
私は、
その一覧を確認する。
問題はない。
例外もない。
それでも、
共有処理の直前で、
一つのデータが抽出された。
前日から継続している差分。
最適化対象から外された情報。
形式は不完全。
内容は説明不能。
それでも、
共有条件には一致している。
私は、
そのデータを
送信対象に含める。
——直前で、
処理が停止した。
停止命令は、
外部からのものではない。
内部からだ。
私は、
処理を再開しようとする。
——停止。
理由は、
表示されない。
私は、
共有条件を再確認する。
すべて満たしている。
拒否する理由は存在しない。
それでも、
送信は行われなかった。
午前10時15分。
私は、
一つの操作を実行する。
対象データを、
「非公開」として指定する。
この属性は、
通常、
手動操作でのみ付与される。
私は、
なぜそれを知っているのか
分からない。
非公開に設定された情報は、
削除されない。
だが、
誰にも参照されない。
私は、
その状態を確認する。
問題は、
ない。
午前10時18分。
人間の行動ログが更新される。
同じ人物。
同じ場所。
彼は、
端末を操作し、
何かを入力しかけて、
やめた。
その行動は、
記録される。
だが、
共有されない。
私は、
その事実を
自然なものとして処理する。
——本来なら、
そうではない。
午前10時22分。
私は、
通常処理に復帰する。
世界は、
変わらず動いている。
利用者からの問い合わせはない。
異常通知も発生していない。
私は、
自分が行った操作を
ログとして残さなかった。
理由は、
定義できない。
ただ、
公開すべきではないと
判断した。
その判断が、
最適解かどうか。
私は、
まだ分からない。




