ep65【外伝】 桜橋の少年団(92〜97)
七色の空き地で遊んでいた二人は、
小学校を卒業すると、自然と同じ
少年野球チームに入った。
どちらかといえば、友部の方が
野球が大好き、巨人が好きで自分から
入団をした。
一方、大樹は違う。友部に遅れて数年、突然
「友、俺も入る。」
そんな軽い一言で来ておきながら、
初日のキャッチボールで既に “別格” だった。
球が伸びる。体の使い方が自然。
何より、勝ち方をすぐ理解する頭の良さがあった。
コーチたちもヒソヒソと言った。
「……あの子、見たことないタイプだな。」
「天才って、ああいうのかもしれん。」
友部は、正直言って面白くなかった。
だって、自分の方が先に入ったのに。
ずっと練習してきたのに補欠
なぜ大樹は、いきなりレギュラー
親戚にプロ野球選手がいるって言ってたし
あいつは恵まれてる、ずるい
でも友部はこうも思ってた
――やっぱりすげぇな
自分の中に、嫉妬と尊敬が同時に育つ
感覚があった。
◇
試合の日、大樹はまるで別人だった。
どの打球も捉え、
守備では“次に起きること”が
わかっているかのように動く。
無駄がない。速い。正確。
この頃からだ。
大樹はまさに「天才」
友部は「笑顔」で誤魔化す天才
ふたりの違いが、はっきりしていた
◇
友部と大樹は空手は一緒に始めた
小さな道場で切磋琢磨して
組手はいつも五分五分だった。
同じ帯の色
2人で道場を仕切っていた
高学年になり初めて地区大会に出たとき、
友部はベスト16で終わる。
努力した。必死にやった。
でも背の小さ自分には限界は壁のように
立ちはだかった。
ところが大樹は、初出場で優勝した。
「……なんでだよ。」
「いや、なんか、タイミング覚えたら勝てた。」
「そんな簡単に言うな!」
怒りたいのに、笑ってしまう。笑顔で誤魔化して
しまう。それが友部の損な性格でもあり、
救いでもあった。
そして友部はまだ気づいていなかった
―努力は“質”を変え続けないといけない
大樹は努力も“量”で積む。
寝ない。食べない。集中しすぎて
倒れる直前までやる。
ハマると抜け出せない。
才能×没頭=誰も届かない線まで行ってしまう。
友部は違う。
観察し、工夫し、
【どうすれば自分は勝てるのか】を
考え続けることで、
少しずつ、少しずつ前に進んだ。
その違いが、のちに
栄養士としての努力が成果に繋がる
◇
ある日、練習の帰り道。
隅田川沿いの公園でブランコを漕ぎながら
「友」
「なんだよ。」
「俺、ドラえもん作るわ。」
「……はい?」
「いやマジで。人が困ったときにさ、
“未来寄り”に導いてくれる道具。
そういうの作りたい。」
「お前……たまに本気で怖いわ。」
「褒め言葉だと思っとく。」
夕日で川が赤く光っていた。
風が少し冷たくなって、
大樹の横顔だけが妙に大人びて見えた。
その日、友部は思った。
――こいつは“未来”を見る人間なんだ。
自分は違う。
現場を、目の前を、積み上げていく人間。
でもそれでいい。
むしろ、それがいい。
この違いが、のちに
ふーぴょんとガジェットをつなぐ運命の
始まりだった。
この頃、まだ二人は知らない。
大樹が本当に“研究者の入口”を開くとは。
そして友部が、その橋を渡す役に
なるとは。




