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学校給食未来録 ~ちょっとSF/浅倉椎菜の青春日記~  作者: STUDIO TOMO
スピンオフ② 「部長 友部 栄一」 桜橋の天才と努力家

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ep64 【外伝】浅倉大樹と友部栄一(87〜91)

 第1章:七色の空き地(1987〜1991)


 浅草・桜橋のたもとにあったあの空き地は、

 子どもたちの世界地図の中心みたいな場所だった。


 広さはたいしたことない。

 砂と小石が混ざった地面。

 柵越しに見える隅田川。

 夏はアスファルトが溶けそうに熱くて、

 冬は北風が頬を刺した。


 でも、あそこにはいつでも“七色”の景色があった。


 夕日が川面に反射して、

 赤、金、桃、紫、藍、青、橙。

 子どもたちはその下で野球をしたり、

 虫を追ったり、

 世界のすべてが手の届くところにある

 気がしていた。


 その真ん中に、ひときわ異様な存在感の

 少年がいた。


 浅倉大樹。


 走れば誰より速く、

 投げれば誰より遠く、

 勉強は一度聞けばだいたい全部覚えてしまう。


 とんでもない天才なのに、

 いつも笑っているから憎めない。

 それでいて、努力を積み上げることもできる。


 “天才”という言葉がまだ似合わない年齢なのに、

 周りの子はみんな、なんとなく悟っていた。


 ――大樹は、なにやっても“できてしまう”

     やつだ。


 そして、彼のあとをついていくように

 いつも少し遅れて走っていたのが、


 友部栄一。


 足もそこそこ、空手も野球もそこそこ、

 勉強もそこそこ。

 本気で頑張っても、大樹にはぜんぜん届かない。

 でも、どんな時でもどうにか食らいつく。


 振り返ると、いつもそこにいるタイプの子だった。


「栄一、今日も遅いぞー!」

「うるせぇ、こっちは必死なんだよ!」


 そんなやりとりをしながら、

 二人は毎日のように空き地で遊んだ。


 野球をすれば、大樹の打球は空へ飛んでいく。

 虫取りをすれば、大樹だけ珍しい蝶を捕まえる。

 工作をすれば、大樹の作った

 竹とんぼは異常に飛ぶ。


 ある日、大樹は突然空き缶に

 マヨネーズを入れて振りだし、

 缶の口を片手で押さえて叫んだ。


「マヨビーム!!」


 白い液体が友部のTシャツを直撃する。


「ばっ……! 何やってんだ!!」

「ちょっとした実験。飛距離は合格。」

「合格じゃねぇよ! 怒られるだろ!」

「その怒られるの、俺じゃなくて

 栄一だから大丈夫。」

「大丈夫じゃねぇ!!」


 二人で大笑いしながら、空が七色に染まっていく。


 やがて、夕日が川に沈むと、

 空気は少しだけ冷たくなった。


 友部はふと思った。


 ――大樹には勝てない。

 でも、この背中を追いかけてるともに

 たつ時間が好きなんだ。


 大樹は、何かを“選ばれた”ように

 持って生まれた少年。

 友部は、何かを“選び続ける”ことでしか

 前に進めない少年。


 才能と努力。

 光と影。

 違いすぎるふたりが、なぜか離れなかった。


 七色の空き地は、

 そんな二人の“最初の物語”の場所だった。


 この頃、二人はまだ知らない。

 ――この空き地で始まった差が、

    そのまま未来を形作るとは。

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