表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校給食未来録 ~ちょっとSF/浅倉椎菜の青春日記~  作者: STUDIO TOMO
9章 あげぱんと母校に帰る日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/69

ep34 母校に帰る午後とおそろのコック服

  挿絵(By みてみん) 

 2学期の給食も終わり清掃日

 給食室は学期の汚れをしっかり落として

 新年を迎える準備をしている


 午前の掃除を終えると、

 会社の恒例行事、スマイルフォト

 コンテストの撮影日。

 事前にみんなで案を出し合って、

 なんと——採用されたのは、わたしの案だった。


 立ち位置を決める時間から、

 すでにワチャワチャで、

 ちょっとした文化祭みたいに騒がしくて、

 でも、誰もが自然に笑ってしまう空気だった。

 カメラの前に並んだ瞬間、

 「はい、いくよー!」の掛け声に、

 みんなの笑顔がポンッとそろった。


 「入選したら、みんなでおそろいの

 マグカップ作ろうね」

 そんな話まで勝手に盛り上がって、

 気づけば、すっかり“ひとつのチーム”

 みたいになっていた。


 撮影を終えて、エプロンと帽子を外すと、

 少しだけ肩の力が抜けた。

 陸や朽木サブチーフたちに「頑張ってこいよ」と

 励まされて、

 休憩室を後にする。

 

 曽野チーフと歩いて本社に向かう

 今日のメンバーは、私と友部部長、

 塩崎はるかさん、曽野チーフ。

 ちょっと緊張するけれど、頼りになる

 メンバーだとわかっているから、

 心のどこかで安心もしていた。

 「じゃ、今日のキャリアガイダンス

 “あげパン大学”は、

 浅倉さんが“あげパンチーフ”ね。」

 友部部長が、さらっと言った。


「えっ。」


「曽野チーフから聞いたよ。

 マグロのコロコロ揚げの日、

 現場ですごく頑張ったんだって。」


小声で

「あれは、ふーぴょんのブローチの

 おかげなんです。」

 思わず胸ポケットの内側に、そっと指先が伸びる。

 

 制服の下、キッチン・ブローチが、

 心臓の鼓動と同じリズムで、

 とくん、とくんと脈を打っている。

 唯一、ガジェットのことを打ち明けている

 相手だからこそ、

 素直にそう言えた。

 「そうなの。でも、それだけじゃないん

  じゃないかな。」


  部長は、少し目尻を下げて笑った。


 「俺はそう思うなあ。」

 

 社用車に乗り込み、部長の運転で

 皇居の外周を抜け、

 渋谷を超えて、池尻大橋へ向かう。

 フロントガラスの向こうに、ガソリンスタンドと、

 見慣れた坂道が見えてくる。

 胸の奥が、きゅっと懐かしく疼いた。

 胃がきゅっとなるほど緊張した試験の前日も、

 泣きそうになりながらレポートを書いていた夜も、

  いつもこの坂を上り下りしていた。

 (……ああ、帰ってきたんだ。)

 そんなことを思っているうちに、

 車は学校の前に到着する。

 「運転ありがとうございます」

 

 荷物や食材を運び2号館の1階

 調理実習室に着くと、

 懐かしい空気がした

 学生が来る前に佐藤先生たちと

 軽く打ち合わせをする

 「浅倉さん久しぶりですね。頑張っていますね」

 と声をかけてくれた


 すると助手の先生が、一人挨拶に来てくれた。

 はるかさんとはハグをしている、

 以前うちの会社で新卒入社して

 サブチーフになった後、

 今は助手として働いているそうだ。

 部長も活躍を褒めて、うれしいそうに話している。


 わたしは今日のために

 部長が用意した普段のユニフォームとは

 ちがう黒いコック服を

 身にまとった。ちょっと有名シェフ

 みたいでかっこいい

 友部部長が

 「これでグランメゾンRYOUGOKU」だね

 と誇らしげにしていた。

 お父さんのように少し子供じみたところが

 あるから笑っちゃう


 時間がたち白衣姿の学生たちが集まってきた。


 ボウルやバットをきれいに並べた。

 ステンレスのテーブルが照明を跳ね返し

 きらきらしている


 揚げ油の入った鍋には、まだ火をつけられて

 いない。静かな状態で、そこだけ

 少し緊張感のある空気が漂っていた。


 「それでは今日の授業を行っていただく

  会社を紹介します。」

  先生の声に合わせて、私たちは前に出る。

 「学校給食の専門会社、桜江フードサービスさん

  卒業生の浅倉さんです。」


 先生がそう紹介してくれて、

 私と、友部部長、塩崎はるかさん、曽野チーフ。

 そして、公式キャラクターとして

 小さなぬいぐるみの「ふーぴょん」も、 

 机の上にちょこんと座っている。

 今日はぬいぐるみモードでの参加だからね、

 と事前の打ち合わせで念を押されていた。


 「あ、浅倉先輩だよね? 去年の先輩?」


 同じサークルだった子が、

 少し照れたように手を振ってくる。

 実習室の空気が、

 少しだけやわらかくなるのを感じた。

第1章では、椎菜が母校へ帰る道すがら、

当時の自分を思い出すシーンを描きました。

池尻の坂の景色や実習室の匂いは、

私自身が学生だった頃の

記憶がそのままベースになっています。

今回の回は“過去と現在が並ぶ構図”に

したかったので、

・学生だった自分

・今、後輩を指導する側になった自分

その両方が、静かに同じ空間に立つように

意識しました。

「帰ってきた」という感覚は、職種を問わず

誰にでもあると思います。

椎菜にとってここは“原点”であり、

同時に“未来を見せる場所”。

その空気を感じてもらえていたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ