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プロローグ 序章1

※社会人のため、不定期更新です。

ゲーム転生や異世界ばかり物を書いていた事やブランクもあるかもしれません。

興味があれば読んでください♪

※カクヨムをコピペしています


「勇者:リーラ、よくぞ余の存在に気づいた。余の名前は『イシュア』、つまり、『天魔』じゃ」

「はぁ…はぁっ…何が天魔だ…!!くそったれ!!お前の敵は勇者だけじゃねぇぞ!!」

「くっ……そうよ…!!」


 目の前にいるのは『魔王(ぜんざ)』を倒して、不運にも隠し扉を開ける事で余を見つけてしまい、疲弊している勇者パーティーの面々である。


「聖剣レティシウス、来なさい」

「余は勇者:リーラとの決闘を臨むのじゃ。お前達は余の分身の相手をしておくがいいのじゃ」

「卑怯だぞ……!!」


 魔力を練った分身を召喚した後、勇者以外の疲弊しているパーティー面々へ相手させていく。


「邪剣:シルセリア、余の元へ」

「それでは、参りますッッ」

 ———無詠唱で速度加速/身体強化/防御結界の対近接戦特化の魔法じゃな


 キィンッッ


 全身をフル強化した状態の勇者が上段斜めから振り下ろした聖剣に対して、邪剣を合わせる。


「やっぱり……貴方は、いいえ」

「まさか、余との戦闘中に考え事をするとは…随分と余も舐められたものじゃ」


 何かを言いかけて隙を見せた勇者に対して、聖剣を弾き飛ばす。


「リーラ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、今、助けに」

「っっリーラ、何しているッッ、クソ邪魔だっ」

「何を迷っている」

「だって、あなたは……」

「もうよいのじゃ」


 戦闘中に隙を見せ続けている勇者の首先に邪剣の刃先を向ける。当然、そんな彼女の姿を見た仲間から悲鳴や怒声が周囲へ木霊する。


「このまま、いっそ余が終わらせて……」

「もう、迷いません」



 その言葉と共に勇者は再度、『速度加速』を用いて、地面に落ちた聖剣を拾い直して構える。


「では、今度は余の方からゆくのじゃっ。勇者」

 ———それでいいのじゃ


 勇者と同様に、即座に魔力を練り上げ、近接戦用の魔法を発動させた後、地面を蹴る。


 キンッ

 キンッ

 キィッ

 

 余と勇者の幾多に交わる刃の甲高い音と共に双方が手にするから『邪剣』と『聖剣』から漏れ出す『闇』と『光』が互いの存在を喰らい合う。


「面白い…!!面白いのじゃ…!!」

「私はこんなの…いいえ!!」


 剣戦で火花を散らす中、両手で支えていた剣を片手に持ち変え、空いた逆の手で魔力を練り、発動する『闇魔法』に対して、勇者も同様の動作で魔力を練って発動する『光魔法』で相殺する。


 ———異なる属性魔法の無詠唱による複数展開は、当たり前の次元じゃな


 余と勇者の激しくぶつかり合う攻防は、目の前で余の分身と戦っているはずの勇者パーティーメンバーの視線さえ奪うらしい。


 勇者か余かどちらかの命が尽きるまで戦うだろう、誰もがそう考えていた。しかし、突然、勇者のたった一言でこの戦闘に変化生じた。



「もう、辞めませんか」

「何を言う…」

「もう、演技を辞めてくれませんか」

「それは———」

「アシュアお母様……!!」


 肩を振るわせながら、余の元へ抱きつくリーラを優しく受け止める。


「最初から其方は気付いておったのじゃな…」

「たとえ、記憶を消されても、剣を交わせば……身体が…覚えているので…分かります」

 ———リーラ、お主は本当に強くなったのじゃ


 目の前に蘇るのはリーラと初めて会った時だ。


 既にリーラの親は盗賊によって彼女の目の前で殺されていた。それを目の当たりにして、絶望の表情を浮かべていた彼女をお忍びで人間界に潜入していた余の気まぐれで助けた。


 その後、気まぐれでリーラに剣術を教え、本当の娘のように育てたつもりだったが、数年後に彼女が勇者に選ばれたことを知った。


 しかし、『敵の勇者』とはいえ、それでも余にとってリーラはこの世で1番可愛かった。


 だから、本来『天魔』と呼ばれる魔のトップに君臨する余が史上最強の勇者を育成した。もちろん、後悔はない。そして、全ての余が与えれる物を授けた後、リーラから余の記憶だけを消した。

 

 当初は、魔王を倒させてリーラを人々の英雄として幸せになってもらう予定だった。


 予定が異なる契機となったのは、リーラのパーティーのメンバーがたまたま魔王がいた部屋の奥にある余の隠し部屋を開けてしまった。


 当然、その時の余は人間に変装していない。


 ———これは『天魔』なのに人間に味方した天罰なのかもしれぬのじゃ


 心の中でそう思った。だから、余はリーラや関わりあるメンバーに気づかれないように傍若無人に振る舞った。


 グサッ…


「リーラ、本当に強くなったのじゃ」


 リーラの手に持つ聖剣を自ら腹に突きつける。


「何を……しているんですかっ!!」

「………もう、よいのじゃ」

 ———余の闇の回復魔法『再生(リボーン)』は自傷の場合、発動せぬのじゃ


 リーラが涙を流し首を左右に振りながら、余の背中を抱える。


「死なせません…絶対に死なせません…!!!」

「余は…もうじき…」

「これしか方法が……アシュアお母様を救うには………いいえ。もう時間がありませんっ!!」

 ————リーラ、余の可愛い娘よ、幸あれ


 最後にリーラの髪を軽く撫でた後、瞼を閉じ、そのまま意識を失うこととなった。


ーーーーー


「余は確かリーラに……いいや。余はリーラに助けられてしまったのじゃな」

「『天魔様』、お目覚めになられましたか」

「貴殿が今代の魔王か?」

「はっ…!!」

「よきに計らうのじゃ。それで何用じゃ?」

「『天魔様』、どうか人間側に助太刀するのは辞めていただけないでしょうか」

「そ、それは一体なんの———事かの」


 結局、余はリーラが施したなんらかの手段によって生かされていたらしい。


 目が覚めて数刻もせずに、想定外の忠告をされる事になるとは、『天魔』の余とて動揺する。


 ———魔王は踏襲制じゃから、最強の魔族が自動的になるが『天魔』に至れたのは余1人じゃ。


「これは『魔王ノート』と呼ばれる代々魔王の遺書でして、その中に『クソ天魔が気まぐれで人間の娘の勇者を育てて、最強にしやがった』と…」

 ————余、その魔王に相当恨まれているな…無論、当然じゃな…


 『魔王ノート』の内容を聞いた瞬間、現魔王と余の間に気まずい時間が流れることとなった。


「ゴホンっ…余が退屈でなければよいのじゃ。ところで其方の種族と名前はなんじゃ?」

「私が魔王になる前はヴァンパイア族の『特殊個体(ユニーク)』でダーウィンと申します」

「理解したのじゃ。それで、現在の魔族と人間はどのような戦況じゃ?」

「はっ、『天魔様』が眠っておられた間、つまり、史上最強と名高い『勇者:リーラ』の時以降は勇者に勝利を納めております」

「んまっ、そのまま励むと良いのじゃ」


 この世界は人間と魔族で絶えず戦争をしている。その背景には双方の利権がある。


 人間側は『魔族』を倒すことで『冒険者』と呼ばれる職業や国を守る『騎士』へ報酬が入る。そうすると、『魔族』を倒すために使う道具が売れるし、魔族を倒すために、予めレストランや露店等で食料等も調達する必要がある。


 その後、依頼人と冒険者等の仲介をする必要がある『冒険者ギルド』と呼ばれる場所を経由する事で各地で循環していく過程の貨幣に対して、税収を加える事で最後に国々が富を産む。この世界の人間達はこんな風に経済が回っていたはずだ。


 次に魔族側は長寿かつ縦社会だ。強き者が魔族の上に君臨する。しかし、下の魔族はどうなるか?答えは簡単で、上の魔族の配下に着く以外の道がない。当然、上の魔族の理不尽な命令等によって下の魔族にストレスが生まれる。そう言う時に、下の魔族の吐口の対象が『人間』である。


 ———余が覚えてる限りでは、人間の中で強き者は『勇者』や『冒険者のトップランク』『称号持ち』くらいだったのじゃ。


 そんな訳で、定期的に『勇者』が生まれ、それに応じて『魔王』も生まれる。当然、定められた両者の宿命に寄り添い、『勇者』と『魔王』が命を削り合う間柄になるが、それぞれの種族間で『終戦』に至らないのはこう言う背景がある。


「ゴホンッ、そうじゃな。それでは余へ挑戦する者が来る者を長く待つのじゃ」

「はっ!『天魔様』には一歩も近づかせないように我々が尽力致します」

 ———おーい、この魔王、話聞いておったのじゃろうな?余を退屈させるでないのじゃぞ?


 魔王はそのまま余の方へ一瞥した後、余がいる大広間から退室していった。



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