あなたへの手紙
わたしは今日、あなたへ手紙を書きます。
親愛なるあなた。
覚えています、今はもう、セピア色となったあの日々を。
当たり前に続く日々。そばに居るあなた。
笑ったり、泣いたり、怒ったり。
ケンカして、許して、許されて。
笑顔のあなたを見る。これが日常だった。
なんの根拠もなく、これが日常だと、変わらないと思っていた。
あの日のあなたは、今、どこですか?
あの日のわたしは、もう、いない。
がむしゃらに前に進んで、時々立ち止まって。
「頑張って」という言葉に理由もなく傷付いて、励まされて。
いつしか、あなたへの笑顔を忘れていました。
怒ってる?
悲しんでる?
それとも——
笑ってる?
あなたは今、何をしてますか。
わたしは、あなたの居ない景色に、慣れてきてしまいました。
泣いてる?
戸惑ってる?
でも、できれば——
笑っていて、欲しい。
わたしは今日、あなたへ、手紙を書きました。
お気に入りの封筒にあなたの名前を書いてポストに入れます。
郵便屋さんも、困っちゃうよね。名前だけで、宛先も差出人もない手紙。
届ける事のできない手紙。どうなるのかな。
あぁ、もしも叶うのならば。できれば、火の中に入れて下さい。
わたしがやるより、あなたに届きそうな気がするから。
わたしは今日、あなたに、手紙を書きました。
これは、あなたの心に届きますか。
あなたは今、笑っていますか。
わたしは今、空を見て笑っています。