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8話 少女は詩鳥となる

「それでさ、ちょっと相談があるんだけど」


朝、起床して着替えるボクに、唐突で晴楽さんが声をかけてきた。


「え、なんですか?」


「あなたもここで長く暮らすつもりはないでしょ?ここ居心地悪いし」


「えーと、確かにあんまり慣れる場所ではないですけど……その言い方だと他にも住める場所があるってことですよね?」


「もちろん、コロニーは至る所に点在しているの、そしておそらくあなたが暮らしていた世界に似た文化のコロニーもあるわ。だからこのコロニーを離れる為にあなたにやってほしいことがあるの」


「やってほしいこと……?」


「今からギルドに行って解明者ってのに登録して欲しいの、そうすればコロニー間の移動もスムーズに行えるし、なによりそれなりに稼げるわよ?」


急に生々しい話をしてきた……ここから移動する為に必要なら言う通りにしたいし、一文無しだから仕事はしないといけないけど……


「その、解明者ってなんですか?」


「ランプリが言ってたでしょ、解明者からグロブスタや調査物をギルドは買い取ってるって、まぁちんぷんかんぷんだっただろうけど。簡単に言えばこの世界を調査する仕事をする人達のことよ、というか私も解明者であなたを見つけたのも調査の途中だったし」


晴楽さんが噛み砕いて説明してくれてやっと理解できた。この世界を調査する職業、でもそれって……


「でもそれって、ボクを見つけたあの場所とかに行く職業ってことですよね?でもボクは体力ないし、戦えないですよ?」


「まあ定期的に調査物をギルドに持っていかないと資格剥奪という義務が発生するけど、ちょっと採取や撮影するだけでも調査になるし、小型のグロブスタや原生生物は私一人で十分倒せるからあなたは何も気にしなくて大丈夫よ」


「グロブスタ?原生生物?よく分かりませんけど、どっちしてももっと住みやすい場所があるならその解明者になって移動したいですね」


それに、昨日からの晴楽さんの態度からして、元々ボクに拒否権はなかったと思う。


「なら決まり!細かいことは後から教えるから、とりあえずギルドに向かうわよ!」


「うわっ!ちょっと!」


着替えの終わったボクを(強引に)連れて、晴楽さんは宿を飛び出してギルドへと走り出した。


………………


『シヴィリアンのソソグ様、認証完了、危険物ナシ、お疲れ様です』


ギルド入り口のゲートが開いてロビーがボクを歓迎する。まだ二回目で慣れてないSF世界の中を進み、奥のカウンターにいるランプリさんに声をかけた。


「あ!ランプリさんおはようございます!」


「おお!ソソグちゃん、今日は一体何用かな?」


「この子を解明者にしたいの、登録手続きお願いできる?」


「別にできるけども……この子は昨日この世界に来たんだろう?そんな何も分からない子をダンジョン行かせるのはやめといた方がいいと思うんだけど」


「ダンジョン?なんですか、それ?」


ボクの何気ない問いにランプリさんが目を丸くする。


「セーラはそんなことも教えてないのに君を解明者にしたがってるのか……ダンジョンというのは場所の流されモノだよ。様々な世界の様々な場所がストレンジフィールドに流れてくる、基本的にそういう場所にしか友好種族や物の流されモノは発生しないんだ、だから解明者はダンジョンに行くんだ」


そっか、ボクが晴楽さんと出会ったあの森も変な所にあった。あれがダンジョンってやつなのかな?


「でもダンジョンには原生生物やグロブスタがいる。おとなしいやつなら問題ないけど、凶暴なのは本当に危険なんだ」


「その、グロブスタってなんですか?原生生物はそのまんまで理解できますけど……」


「グロブスタってのは、どの世界からきたのか分からない自立して行動する敵対存在の総称だよ。この世界はいろんな世界から友好種族が来るけど、それらの人の誰もが知らないと暫定的に決められた存在がグロブスタだ。生物やら機械やら物体やら色々いるよ」


「あなたや私がいた世界と同じような世界で海岸に打ち上げられた正体不明の肉塊を『グロブスター』って呼んでて、それが由来になってるらしいわ」


思わず「へー」という言葉が出る。けど、つまり晴楽さんはボクをそんな危険な存在がいる場所に連れて行こうとしてるってこと?実際めちゃくちゃでかいサイみたいなのに襲われたし、そりゃランプリさんも心配するのも納得だ。


「大丈夫よ、そんなヤバいのが出ないような場所にしか連れて行かないし、解明者ならコロニー移動の手続きが楽だからこうしたいの」


「保護者期間は一か月なんだから、肌に合ったコロニーに連れて行ってあげて職探しさせた方がいいと僕は思うけどな。ソソグちゃんはどう思う?」


ボクに話を振ってきた、まあ当然じゃあるんだけど……

「えっと、危険なのは分かりますけど、ボクも他のコロニーを見てみたいのでとりあえず登録します。その解明者っていうのも肌に合わなかったらやめますし、お試しでやってみます」


「えっと、そう言うのなら……ギルドとしては希望者が多いのは悪いことじゃないからね」


そう言って、ランプリさんがホログラムパネルを出してこちらに向けてきた。


「先ずは誓約書だ、これは本人の意思表示の意味があるからちゃんと読んで同意してからサインするんだよ」


内容を読んでからサインをする。言ってしまえば全部自己責任って言うことを伝える内容だった。


「はい、書きましたよ」


「次は専門職(スペシャリティ)だ、これは解明者としての役割をそれぞれ表している。学ぶ技術も違うし、所持できる武装も制限されるから考えて選択してくれ」



◇前衛推奨職

・ソードマン

・フェンサー

・ウォリアー

・ランサー

剣聖(ソードダンサー)

・侍

・マジックナイト

・ブレイバー

・ガードナー

・ジェネラル

・プロレスラー

・ファイター

・功夫

◇魔法関連職

・ウィザード

・ヒーラー

・スペルマスター

・カースマスター

・エンチャンター

・カードプレイヤー

・ネクロマンサー

・ドルイド

◇斥候、使役職

・アーチャー

・スカウト

・レンジャー(森分け)

・ガンナー

・オペレーター(サモナー&テイマー)

・ドールマスター

・忍者

・トリックスター

・ハッカー

◇特殊職

・ドクター

・バード

・トラッパー

・グリッチャー

・トレーダー

・クラフター

・ポーター


…………なんだろうこれ、多分RPGの職業的なやつなんだよね?よくわからない単語ばかり並んでるんだけど……


「すごい混乱してるわね、無理もないけど。質問があるなら受け付けるわよ」


「色々ツッコミたいですけど……まず剣聖ってなんですか、ソードマスターってルビ降ってあるし、あとプロレスラーってなにするんですか……?」


「剣聖は両手に剣を持って手数とスピードで敵を圧倒することをコンセプトにした剣術士よ、私が見た時は一人で敵の群れに突っ込んでたわ」


「ええ……」


「プロレスラーはパフォーマンスで敵を陽動しながら味方を士気を上げつつ、自分もプロレス技で戦う専門職だ、実際に見るまではみんなおふざけか何かと勘違いするから無理もないね」


「は、はぁ……じゃあこのカードプレイヤーってなんですか?」


「カードプレイヤーはこの世界で生まれたカードゲーム『アルカネラ』を使って戦う専門職だ、君のいた文明系統ならトランプとかじゃないモンスターや魔法のカードを使って戦うカードゲームがあると思うんだが、知ってるかい?」


「はい、なんとなくは……もしかしてそれで戦うんですか!?」


「そうみたいよ、私も見たことないけどね。まあ今紹介したやつはやめといた方がいいわ」


「ボクもそう思います」


言ってしまうと、剣だけで突っ込んだり、プロレス技やカードを使って危険な場所に行って猛獣と戦うなんてあり得ない。そんな戦い方しようだなんてどんな人たちなんだろう。


「まあ君には特殊職をお勧めするよ、戦闘以外の支援がメインだし、コロニー内でも副業にできる奴ばかりだ」


「ドクターはヒーラーと同じで治療院で仕事できるし、バードなら歌と踊り、トラッパーなら道具や設備の修理や改造、グリッチャーはハッカーと一緒で警備システムや端末のネットワーク構築、トレーダーなら商売、クラフターは製造業、ポーターなら運び屋……まあ確かにダンジョン調査は必要最低限でコロニーでの仕事をメインにやってる人も多いわね」


「よく分かりませんけど……バードって歌ったり踊ったりする職業なんですか?それ過酷な状況でなんの意味が……」


「この世界では、特定の音の組み合わせとエーテルを含んだ声を同時に発生させると発現する「詩鳥魔法(バードソング)』っていうのがあるの、それを使って味方の支援をするのがバードよ」


「持ち物もその曲を流しつつエーテルの作用を増強させるマイクが基本となる、君は歌は上手かい?」


なんとなく気になったバードに質問してたら、急に歌を歌えるか聞かれる展開になってしまった……ボクはまだやるなんて言ってないんだけど、他の特殊職はなんか難しそうだし、他に選択肢もないから、とりあえずやってみるしかない。


「じゃあその、記憶にある有名な合唱曲でいいなら……」


深く息を吸い、記憶の中にある学校で歌わされた歌を記憶をたどりながら声に出して紡ぐ。


ボクには記憶が無いけど、何故か歌に関する記憶はちょっとある。元々のボクは歌が好きだったのかもしれない。


歌い終わり、深呼吸して前を向くと、晴楽さんとランプリさんは唖然としたような顔でボクを見つめていた。


「な、なんですか……?ていうか周りも……」


よく見たらカウンター奥の職員や周囲の人たちもボクを見つめている、歌うのは不味かったのかな……?

とか思っていたら割れんばかりの拍手が施設内に響く、え?どういうこと?


「へぇ〜あなたって歌上手いのね、こんなの生で聞いたことないわ」


「驚いた、君は元の世界では歌姫だったのかい?」


「え!?い、いや……そういうのわかんないです……というか元々のボクは男でしたし」


「なに……?」


ボクの言葉を聞いてランプリさんの顔が少し険しくなる、そういえばこれ言ってなかったな。


「ボクはこの世界で目覚めた時に姿が女の子に変わったんです、記憶が無いのにそんなこと分かるのかって思うかもしれませんが、元々男だったという認識はあるんです」


それを聞いてランプリさんが神妙な顔で考えこむ。


「元の世界の記憶もないのに女の子に変わったということは理解している……ふーむ、奇妙な話だ……」


やっぱり変な子だと思われてる……でもこれは本当の事だから仕方がないんだよ〜……。


「だからその答えを探すためにも旅をしたいの、解明者になれば見つかるかもしれないでしょ?私も確証はないけど」


「この世界に答えがあるのか分からないですけど、少なくともボクは自分が何者なのか知りたい……いや見つけたいんです、ボクの存在する意味を」


ボクは自分が何者なのかボク自身にも分からない、だから晴楽さんとこの世界を見てボクの生きる意味を探したい。今は何をどうすればいいのかまだわからないから。


「分かった、それなら専門職はバードを薦めるよ、あの歌声ならこの世界で歌の副業を十分出来るレベルだからね」


ボクはバードの文字を押す、すると最終確認のボタンが現れそれを押すと完了の文字が現れ、ボクは詩鳥となって自分を探す、第一歩を踏み出した。

本当は伏線としてとある有名な合唱曲のタイトルをそのまま出そうと考えていたのですが、なろうはそこらへんめちゃくちゃ厳しいので諦めました……

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