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9話 殻を破って気持ちを歌う

「よし、これで解明者登録は完了したよ、ちょっと身分証の更新をするから待っててね」


「う〜……なんだがドキドキする……」


「なに緊張してるのよ、もし何かあっても私が守るから安心しなさい」


「でも、巨大な怪物に襲われたら晴楽さんだって勝てませんよね?」


「うっ……その時は逃げればいいの!」


ずっと思ってたけど、晴楽さんって結構行き当たりばったりな人だなぁ……それでやっていけるってことは、もしかしたら解明者って結構適当でもいいのかも、そう考えるとなんだが気持ちが楽になった。


「はい、更新が終わったよ、そしてこれは解明者全員に配られる生活補助端末……正式名称はstrange field livelihood assistance tablet、略称SFLA tabletという機械端末だよ。基本情報の登録は済んでるからもう使えるはずだよ」


「あ、ありがとうございます……これスマホみたいですね」


「みんな長いから端末だとか板切れとしか呼ばないわ、まあスマホ知ってるなら使い方はほぼ同じだから使ってれば慣れるわよ」


晴楽さんの言葉を聞きながら端末を開く、すると見慣れたレイアウトに様々な機能が表示され、その中からカメラと名前のついたアイコンを開く、すると予想通りカメラとビデオの機能が起動する。


「うわー……この世界ボクの想像を遥かに超えてる……なんでもありじゃん……」


「そうね、だから問題もあるんだけど」


「とりあえず端末の事はこれくらいにして、あとは基本カリキュラムを終わらせれば全部完了だ。というわけで訓練施設に移動してくれ」


ランプリさんの先導で、ボクたちはギルド施設の奥に導かれ、訓練施設っていう場所に連れて行かれた。


「うわぁ……」


「なにちょっと引いてんのよ、それより教官に挨拶しなさい」


訓練施設という場所はやはりというかなんというか、ある意味イメージ通りだった。


ホログラムでできた半透明な標的や、どれだけ傷付けてもすぐに修復しちゃう人形?などの近未来チックな道具が所狭しと置かれていた。


そして、そんな世界に唖然とするボクの前には、なんか適当な部品をくっつけて作られた変なロボットが立っていた。


「これは、なに……?」


「この世界での人材不足を解消するために運用されているアンドロイド、Jury-rigged Unreliable Neoteric Kinetron……通称J.U.N.Kだよ、ついでに名前は『シドーくんスピリチュアルver』だ」


「hey!ヨロッシャイ!」


謎の挨拶をするロボットにどうしようもない不安を抱えながらも、ボクはそのシドーくんから色々教えてもらう。


「じゃあ僕はここで失礼するよ、後はシドーくんの指示に従うといい」


「わかりました、あの……よろしくおねがいします」


「ヨシ、その心意気はハナマルだ。だが心意気だけじゃ意味ナッシン、()イドル世界の厳しさ教えたるわ!」


なんかアイドルを言い間違えるんだけど……本当にこのロボットで大丈夫なのかな……


………………


てっきりアイドルだから歌とか踊りを教えてもらうのかと思ったら、最初に教えられたのはナイフの使い方だった……しかも戦いの際の使い方を。


そして次に教えられたのは銃の扱い方、弾の口径は大きいけど反動は少ない扱いやすい銃だと説明されたけど、ボクにとっては全然恐ろしい存在で、撃つたびに暴れるそれを扱える気にはならなかった。


「でもこれ使えないと解明者なんてやれないの、私の身勝手ばかりで申し訳ないけど、これは使えるように鍛えて欲しいわ」


申し訳なさそうな謝罪にも、かなり身勝手な発言にも聞こえるそんなセリフを言いながら、僕の指導に晴楽さんも参加する。


数時間後、なんとか五発連続でターゲット内に当てるという合格基準を満たして銃のカリキュラムを終え、ボクは指の痛みから解放された。


「はぁ……はぁ……つ、つかれたぁ……」


「お疲れ様、一応使えるようになったけど、これは流石に実戦じゃ通用しないわね……まあバードは戦うのは最低限だし、ちょっと私がなんとかするわ」


そう言いながら、晴楽さんはボクに水のペットボトルを渡してくれた。銃が撃てる撃てないなんて個人の能力次第な気がするけど、なんとかするってどうするつまりなんだろう。


「次はおうたを歌うんだ!お前も歌鳥らしくスカイに羽ばたたんか!」


「ちょっ!もう少し休ませてって!」


シドーくんがボクを無理やり立たせてくる。疲れから猫背になって淀んだ表情でうつむく今の姿は、周りから見たら歌姫とはかけ離れているだろうなと、ボク自身すらもそう思った。


「暗い顔バイバイ!マイクを持てばそこには笑顔()りむくアイドル!……というわけで、ドウゾ」


「こ、こうですか……?」


「いやそこは振りまくでしょ、あと濯その笑顔すっごい不自然」


芝居掛かった動きと言い回しでボクを励ますシドーくん、それを聞いて無理やり笑顔を作るボクのそれぞれに晴楽さんが座った目で指摘を入れる。


そんな笑顔のヘタなボクに、彼(?)は素っ気なく何かを渡してきた。


手に持たされたそれを見ると、それは元の世界でも見慣れていたマイクだった……首部分に何か装置が付いてるのを除けば。


「これ、なんかおっきいの付いてますね、それにスピーカーないですけど音出るんですか?」


「そのムダにデカい機械が音源を出すんだマヌケ!そしてスピーカー=()エンチャント呪文の応用で作り出す擬似反響装置があるから、オマエごときが気にするシカクもサンカクもない!アホンダラ!」


……なんか急に罵倒されたんですけど。音源とスピーカーのこと聞いたら怒られるって、流石に納得できない。


「横に並んでるスイッチをオしたりナデたりナブったりするとゴキゲンメロディがながれて、ついでにマイク握ってる不届ものだけに見える歌詞カードがあらわれるゾ!さぁて、まずはレッツトライだ!」


言われるままにマイクに付いている装置のボタンを押す、そうするとちゃんと言われた通りに音が重なって流れ出し、華やかなメロディを作り出した。


「それは『Poping☆line (ポッピングスターライン)』というハナヤカ☆ソングダァァァァ!!聴いた友好存在の身体能力を底上げするコウカがある!どうだ、全身にハナヤカパワーが溜まってきただろう……?」


「いや、全然。濯、それガイドボーカルとか無いの?」


シドーくんの相変わらずなノリに、晴楽さんが冷たい返事をしながらボクの方を見る。


「え、えーと……あ!ありました!」


マイクを弄っていると、おそらくこの曲の歌詞だと思う文字列がホログラムパネルでボクの目の前に現れた。



「Poping☆line」


<Intro>

目を開けたその世界(さき) 広げた地平線

描かれ始めた思い出を 力に変えていくんだ


<Verse1>

どんより気分の空に手を振り 冒険気分に笑顔を添えて

新たな景色 自分で見にいくんだ

手強い相手は全力☆Punchのストレート!

いつだって怖がってちゃはじまらない

だって越えなきゃいけない凸も凹も この歌で飛べるはずだから


<Chorus>

そうだHop Step Jump!君となら

そうさTrial and error!いつかは

たどり着けるはずさ あの目指す先へ


<Verse2>

つらく悲しい別れに心うつむいて 立ち止まる時があっても

仲間の声に勇気を もらってまた詩を歌うんだ

理不尽な理屈は快活☆shoutのクレッシェンド!

ずっと立ち止まってちゃいられない

たぶんいつか世界のどこかで巡り合い また嬉しい気持ち抱きしめられるから



「よ、よーし……じゃあ歌います」


ボクは歌詞を確認すると、心を落ち着かせるために深呼吸をして、震える声で歌い出す。


最初こそ恐る恐る声を出していたけど、やっぱりボクは歌が好きみたい。すぐに喉の奥から次々と自然に出てくる声に乗せて、自分の気持ちを全力で周りに響かせていく。


「ふう、どうですか……って」


歌い終わって周りを見ると、やっぱりカウンターで歌った時と同じようにボクのことを訓練している他の人たちが動きを止めて静観していた。


そして、やっぱり次の瞬間には割れんばかりの拍手がボクを包み込む。


「ウム、やはり才能を見込んたトオリだ!ここまでワシが育てたんたぞ!」


「あんたは濯が訓練所にきてから数時間の関係でしょうが、勝手な事言わないでよこのポンコツ」


後方で腕組みしているシドーくんの頭を晴楽さんが叩きながらツッコミを入れる。


「あ、そ、その……もういいですか……?」


「ヨイゾ、お前のアイドル道に幸あれ!」


「ありがとうございました!失礼します!」


恥ずかしくなったボクは、シドーくんに認めてもらったのを確認してすぐにその場をダッシュで逃げ出す。


後ろから晴楽さんに声をかけらてた気がするけど、いっぱいいっぱいのボクは振り向く余裕はなく、そのまま駆け出してしまった。

歌詞考えるの大変すぎる……AIに作ってもらうとすごい普通になってしまうから自分で考えないといけないのが少し面倒い。

次回からは後書きで世界観の掘り下げもしていくので更新遅くなるかも。

というわけで☆ください(乞食)

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