感情の内容について全体像を見てみる
エニアグラムは、タイプ1からタイプ9の9種類の性格を定めている。これらについて考えていく。
心理学の分野に自己決定理論という動機付けの理論がある。エニアグラムを考えるのにこの枠組みを流用させてもらおう。
自己決定理論特に基本的心理欲求理論では基本的な心理的欲求として、有能感への欲求、自律性への欲求、関係性への欲求を仮定している。
有能感への欲求とは、有能感を求める欲求であり、具体的には他者からの称賛や感謝を求める欲求である。
自律性への欲求は、自分の行動の自律性を求める欲求であり、具体的には行動を他人に支配されることを拒むような欲求である。
関係性への欲求は他者との関係性を求める欲求であり、他者と関わることで満足感を得ようとするような欲求である。
これらを参考にしてエニアグラムの各タイプを考えると次のようになる。
タイプ1 自律性>有能感>関係性
タイプ1w9 自律性≫有能感>関係性
タイプ1w2 自律性>有能感≫関係性
タイプ2 有能感≧自律性≫関係性
タイプ2w1 有能感=自律性≫関係性
タイプ2w3 有能感>自律性≫関係性
タイプ3 有能感≫自律性≧関係性
タイプ3w2 有能感≫自律性>関係性
タイプ3w4 有能感≫関係性=自律性
タイプ4 有能感>関係性>自律性
タイプ4w3 有能感≫関係性>自律性
タイプ4w5 有能感>関係性≫自律性
タイプ5 関係性≧有能感≫自律性
タイプ5w4 関係性=有能感≫自律性
タイプ5w6 関係性>有能感≫自律性
タイプ6 関係性≫有能感≧自律性
タイプ6w5 関係性≫有能感>自律性
タイプ6w7 関係性≫有能感=自律性
タイプ7 関係性>自律性>有能感
タイプ7w6 関係性≫自律性>有能感
タイプ7w8 関係性>自律性≫有能感
タイプ8 自律性≧関係性≫有能感
タイプ8w7 自律性=関係性≫有能感
タイプ8w9 自律性>関係性≫有能感
タイプ9 自律性≫関係性≧有能感
タイプ9w8 自律性≫関係性>有能感
タイプ9w1 自律性≫有能性=関係性
エニアグラムには9つのタイプがあり、ウィングというものによってタイプは2つに分かれている。
例えば、1w9であれば、タイプ9よりのタイプ1を意味し、1w2であればタイプ2よりのタイプ1を意味する。
エニアグラムの重要な概念に分裂と統合がある。これは、自己決定理論特に基本的心理欲求理論でいうところの、欲求の充足と挫折に相当する。
基本的心理欲求理論では各欲求が充足され、バランスが高い位置で取れていることが理想とされている。
例えば、タイプ9を考えてみる。
このタイプの欲求は自律性≫関係性≧有能感というようなバランスで存在している。
つまり、タイプ9は自律性の欲求が強く、有能性の欲求が弱い。
このタイプ9は統合するとタイプ3に近づく。タイプ3は有能感への欲求が高く、関係性の欲求が低い。
タイプ9はもともと、有能性への欲求が低いため、統合する際は有能性への欲求が高まり、タイプ3に近づくのである。
逆に分裂が起こり、タイプ9にとって重要な自律性への欲求が阻害されると、欲求のバランスが関係性への欲求が高い状態になりタイプ6に近づくのである。
他のタイプについても考えてみよう。タイプ1は統合すると、タイプ7に近づく。
その背景を考えてみよう。タイプ1はそもそも、自律性>有能性>関係性というようなバランスをしている。
このバランスを解消するためには、関係性への欲求が強まることが重要である。実際に、タイプ7のバランスは関係性>自律性>有能性となっており、関係性への欲求が高い。
しかし、実ははこの中で2つだけ説明のうまく行かないタイプが存在する。
それはタイプ2とタイプ7である。本来タイプ2の統合先はタイプ4であり、本来タイプ7の統合先はタイプ5である。
しかし、実際に私の枠組みのもと統合先を考えると、タイプ2の統合先はタイプ5であり、タイプ7の統合先はタイプ4になる。
これについては悩ましいが、従来の統合先ではなく私の枠組みを用いることにしようと考えている。
これについて、納得がいかないという読者もいるかも知れないが、そもそもタイプ2の統合先がタイプ4であるということを決めるような論拠というのはエニアグラムの中にはないのである。
それならばいっそのこと、私の枠組みに合わせて統合先を変えてしまう方が良い。では、私の枠組みに合わせて統合先と分裂先を示すと次のようになる。
タイプ4←分裂←タイプ1→統合→タイプ7
タイプ8←分裂←タイプ2→統合→タイプ5
タイプ9←分裂←タイプ3→統合→タイプ6
タイプ7←分裂←タイプ4→統合→タイプ1
タイプ2←分裂←タイプ5→統合→タイプ8
タイプ3←分裂←タイプ6→統合→タイプ9
タイプ1←分裂←タイプ7→統合→タイプ4
タイプ5←分裂←タイプ8→統合→タイプ2
タイプ6←分裂←タイプ9→統合→タイプ3
統合先を変えると言ったが、大きく影響が出るのはタイプ4とタイプ5の分裂先が入れ替わるという点である。この影響についてはおいおい先のエッセイで考察していきたい。
それよりまず、私の枠組みが本当にエニアグラムの内容を説明できているのかを考えていきたい。
まずタイプ9について。タイプ9は調和を重視する。これはまさに、自律性への欲求そのものである。
次にタイプ3について。タイプ3は達成することで自分に価値を得ようとしている。これはまさに、有能性への欲求そのものである。
次にタイプ6について。タイプ6は人と関わることで将来の不安をなくすことを求めている。これはまさに、関係性への欲求である。
次にタイプ1について。タイプ1は自分の正しさを重視する。
これは、自分が正しくあることによって、自分の決めた正しさに従うことで自律性を高めつつ、自己は正しい存在だと思うことで有能感をえるということを目的としている。
故に、自律性>有能感>関係性という欲求のバランスであるとき、人は正しさをもとめると考えることができるだろう。
次にタイプ7について。タイプ7は楽天家で皆で楽しいことを重視する。
これは、楽しい関係性を生み出しつつ、自分たちできめていくという自律性の現れでもある。
したがって、関係性>自律性>有能感という欲求のバランスであるとき集団の楽しさを求めていくと考えられる。
次にタイプ4について。タイプ4は個性的で、自分らしさを追い求めている。
これは、自分らしくあることで有能感を得ようとしているとともに他者との関係において比較することで自己と他者の関係に満足することを求めている。
有能感>関係性>自律性というバランスのとき、人はタイプ4のように個性的になろうとすると考えられる。
タイプ2について。タイプ2は他者に献身することで愛されることを望んでいる。
他者への献身は一見、関係性への欲求に思われるかもしれないがそうではない。関係性の欲求とは人間関係の繋がりをもとめる欲求である。
他方、多くのタイプ2はグループに所属するだけでは満足しない。なぜなら、彼ら彼女らは”自分が”献身をすることで他者から称賛されることを望んでいるからである。これは有能感への欲求であり、自律性への欲求である。
したがって、有能感≧自律性≫関係性というバランスのとき、人はタイプ2のように自ら進んで献身的となり他者からの称賛を得ようとする。
タイプ5について。タイプ5は知恵者で知恵をつかって問題を解決することを望んでいる。
このとき、この知恵は自分自身の手によったものである必要はない。タイプ5はあくまで自分の知恵を生み出すことではなく、客観的な知識を重視する。
これは自律性の低さを意味する。また、知恵を他者に提供して自分の居場所を作ろうとする傾向があり、これは有能感への欲求と関係性への欲求の高さを意味している。
したがって、有能感≧関係性≫自律性というバランスのとき、知恵を他者に提供し自分の居場所を確保しようとするタイプ5のようになる。
タイプ8について。タイプ8は力によって支配から逃れようとしている。
これは力という自己有能感によって自由という自律性を求めているという状況である。
したがって、自律性≧有能感≫関係性というバランスのとき人はタイプ8のように力を求めるようになる。
以上で見てきたように、私が使用した枠組みが従来のエニアグラムの説明を十分に可能にしていることを読者には理解していただけたかと思う。
ウィングも含めた上での説明は読者への演習問題ということにさせてもらおう。エニアグラムの知識がそれなりにあれば説明は難しくはないだろう。
それからエニアグラムには生得本能というものがある。これを組み合わせると性格論は大きく広がっていく。
生得本能には自己保存、セクシャル、ソーシャルの三種類が存在する。