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心癖論からヤングのスキーマ療法を見てみる

 認知行動療法では、刺激→認知→反応という順で人間の行動は制御されているという仮定がある。認知は、自動思考やスキーマといったものから成り立っている。

 認知行動療法は、クライエントの不適応的な認知を修正して、適応的な行動を促そうという理念の心理療法である。


 認知について詳しく見ていこう。

 

 刺激→自動思考→反応という繋がりが、認知の基本的な枠組みである。例えば、眼の前のプリンを食べるという人間の活動を分析してみよう。

 まず、プリンの光が網膜を通して脳に伝わる。これが刺激である。次に、「このプリンを美味しそうだなぁ~食べたいなぁ」と思う。これが自動思考である。最後に、実際にスプーンをもって食べる。これが、反応である。


 スキーマはこの一連の繋がりの中のフィルターのような役割を演じている。

 例えば、視覚情報から今眼前にあるものをプリンであると認識するためのスキーマ。プリンが甘い食品であるというスキーマ。プリンはスプーンを使って食べるというスキーマ。などなど、1つの行動の中に多様なスキーマが関与している。

 


 

 ヤングのスキーマ両方は認知行動療法の1つの変種で、一般的な認知行療法のような自動思考へのアプローチだけでは不十分なクライエントの治療のために、スキーマへとアプローチする心理療法である。

 

 ヤングのスキーマ療法では特に、対人関係に関するスキーマを対象にしている。「プリンは甘い食品である」とか「プリンはスプーンで食べる」といったスキーマではなく、「優しくしてくれる人間もどうせすぐに私を嫌いになる」とか「能力が低い私には生きる価値がない」といったスキーマを対象にしている。

 

 ヤングはスキーマ療法で5つの中核的感情欲求というアイデアを提唱している。このアイデアのもとでは、中核的欲求が幼少期に満たされないことによって、欲求ごとの5つの領域に早期不適応スキーマが生まれるとされる。この早期不適応スキーマを修正することが、スキーマ療法の1つの目標である。

 

 また、ヤングはスキーマの利用に関するスキーマモードのアイデアを提唱している。スキーマモードは、どのスキーマに支配されたり、回避しているかをという個人の状況である。





 心癖論の枠組みから、以上の内容を見ていこう。

 

 自動思考は私の心癖論に直接対応するものはないが、暗示的に利用されている。キャラクターが「どのように感じるか」という部分はまさに、自動思考である。性格というのは刺激→自動思考→反応というトリプルの総体の分類であると言っても良い。なぜならば、性格というのは、「外界の状況に対して、どのように感じて、どう行動するか」を決定しているものだからである。


 スキーマとは「感情の内容」や「感情の内容の内容」に相当する概念である。言ってしまえば、エニアグラムやホランドの理論というのは、その人が持っているスキーマを捉えていると言ってもよい。その上で、エニアグラムは、統合や分裂といったスキーマの変化を扱っている。ホランドの理論は、職業と自分に関するスキーマとその適応する環境を理論にまとめたものであるといえる。


 5つの中核的感情欲求は自律性・有能感・関係性への欲求という3つの基本的心理欲求に相当するものである。ヤングのアイデアでは5つで、心癖論では3つだが、これについては今後すり合わせが必要になる部分である。自信のある読者はぜひ挑戦してみてほしい。私が思うにヤングの中核感情欲求は「感情の振る舞い」が混入しているのではないかと疑っている。


 早期不適応スキーマは、挫折した感情の内容である。自律性・有能感・関係性への欲求が幼少期に挫折することで作られるのが、早期不適応スキーマである。


 スキーマモードは「感情の振る舞い」に相当する。二種であれば何らかのリスクへの回避傾向を持ちやすいだろう。


 以上のように、私の心癖論はヤングの枠組みと上手く対応する。これは、私の理論が相応に良いものものであることの1つの支えになるのではないだろうか。


 とはいえ、私の心癖論はヤングの枠組みとは異なる部分もある。それは、健常者や病者に関係なく、すべての人間やキャラクターに当てはまるものであるということだ。


 また、心癖論の目的は個人差を捉え、あくまで心を作るためにあるというのも異なる点である。


 他にも細かな部分での相違はあるが、それは細かな修辞法のちがいであって、大枠としては同じと言ってよいのではないだろうか。

 これを呼んで読者は端っからスキーマ療法を参考に作ったんじゃねと思うかもしれないけど、本当に偶然一致したんですよね。「感情の振る舞い」とか「感情の内容」とかセンスのない命名法はやめて、モードとスキーマって呼んでいこうかな。

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