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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第90話 甲板上の決戦

モリアーティがイギリスを破壊すべく海軍を操って建造した魔導戦艦がついに起動し、ボンド男爵がそれを阻止すべく聖杯の座で戦っている頃、ローラの立体機動魔道具で魔導戦艦の甲板に飛び移ったホームズと、リラを除く五人の探偵団。



最船尾側の艦橋から次の艦橋へと立体機動で飛び移る彼等に、足元に居る無数の自律機械人形が魔法攻撃を放つ。

水銀のワイヤーが取り付いた艦橋の一画に魔法攻撃が集中し、これを破壊。六人は甲板に落下した。

甲板上に居る無数の自律人形がホームズら六人を襲った。応戦する六人。  


杖に仕込んだ剣を振るうホームズ。忍刀を振るう遠坂。

間桐は三体の狼の式神を放つ。ローラは水銀のワイヤーを操る。

ワトソンとポカホンタスは自律機械人形たちが撃つ攻撃魔法に防御魔法で対応。



戦艦はテームズ河に出て河口に向かい、海に出た所で旋回し、船首をロンドンの街に向ける。

「船首像の自律機械人形をどうにかしなきゃ」と焦り顔のワトソン。

「あれって木製だよね。だったら」

そう言って、間桐が多数の式神札を出し、式神鼠を放った。

鼠は機械人形たちの足元を走って船首像に取り付き、齧り始める。

それをものともせず、人形は呪文の詠唱を始めた。


地の底から響くような自動人形の呪文が響く。

「汝神の罰。終末を告げる喇叭の響きよ。万物を焼き滅ぼす汝の名はアルマゲドン」


それを聞いてホームズが「あれじゃ駄目だ。とにかく空を飛んででもあいつの所に行って止めなきゃ」

「乗れるような大きな鳥の式神とか無いのかよ」と遠坂。

「特別仕様じゃないと普通の動物のサイズが限界だよ」と間桐。

「立体機動は?」とワトソン。

「さっきので魔道具が壊れました」とローラ。


「魔法少女は空とか飛べないの?」と間桐。

すると、ポカホンタスが持つステッキの頭部の黄金像が「飛べるぞ」

ポカホンタスは「そうなの? 早く言ってよ」

「聞かれなかったからな」と黄金像。



黄金像は神呪を唱えようとするが、機械人形の攻撃魔法が妨げる。

「詠唱が終わるまで、こいつら何とかしろ」と黄金像。

全員で光の塹壕の呪文により周囲に防壁を張り、敵の攻撃を防いだ。

多数の機械人形による攻撃で削られる光の防壁を見てホームズは「長くは保たんぞ」


黄金像は神呪を詠唱した

「汝、ポカホンタスよ。天空を翔る翼を天使たる汝に授けん。翼の名はイカロス」

黄金像は光を放って宙に浮くと、翼を持つ黄金の蛇の姿に変化した。

「イカロスよ。我が黄金の血肉を汝に授けん。かの天使の羽衣となりて天翔けよ。飛翔あれ」

黄金の蛇はポカホンタスの体に巻き付いて魔法少女服と融合し、その翼は彼女の背に固定された。


そして黄金像が変化した彼女の翼は叫んだ。

「さあ、飛んでみろ魔法少女」

「どうすればいいの」とポカホンタス。

「イメージだよ。空を飛んだ事の一回くらいあるだろ」と翼は言う。

「普通無いと思うけど」とポカホンタス。

翼は「お前はあるよね」

「そうか」


そう叫ぶポカホンタスの脳裏に、ルパンの火矢でロンドンの夜空を飛んだ時の記憶が蘇る。

翼は自然と広がり、いきなり真上へと。

ポカホンタスは光の塹壕の天井を突き破って上昇した。

「私、飛んでる」



彼女が下に向けて旋回した時、ホームズが叫んだ。

「ポカホンタス、私を奴の所へ」

みんなの所に向かって急降下。そしてホームズを抱えてまっすぐ船首像へ。


ホームズは剣を構え、船首像の首に狙いを定める。

像は詠唱を続けていた。その前面には既に巨大な魔法陣が描かれ、その中心に破滅の光が現れる。

「アルマゲドンよ。全ての人の子と生ける者に、消滅を定めたる裁きを下し執行せよ。破滅あれ」


ポカホンタスに抱えられて像に突入したホームズがその首を刎ねる瞬間、像は詠唱を終えた。

魔法陣の中央に宿る破滅の光は膨らみ、ロンドンの街に向けて古代文字の列が螺旋を描いて巨大な筒を形作る。

「遅かったか」と呟くホームズ。


古代文字列が作った筒の中が破滅の光で満たされ、放たれようとした時、ホームズとポカホンタスは、海上を真っ直ぐこちらに向かう人魚に乗った青年を見た。

エンリ王子と人魚姫リラだ。


エンリは光の剣を翳すと、その光の剣身はまっすぐ伸びて光の筒に突き刺さった。

その瞬間、その筒から放たれた光は人魚と青年を呑み込み、更に伸びてロンドンの街を呑み込み、そして全ては消し飛んだ



時間は少し遡る。


魔導戦艦が発進し、ホームズたちを乗せたまま、戦艦はドックを破壊しながらテームズ河へ出て河口に向かった。

アーサーはがっくり膝をつくと「船、行っちゃいましたね」


「奴の目的はいったい」とエンリは呟く。

タルタが「バッキンガム公が言ってたよね。イギリスの破壊を望むって」

「って事は、モリアーティの目的はロンドンの破壊か?」とエンリは顔を曇らせる。

アーサーは言った。

「奴はあの船首に自分の魂を移したんだよね。けど、奴を殺しても聖杯の意思で船は動くだろうね。聖杯は魔的知性体で、願いを持つ者の願いを叶える願望器だから」



戦艦は船首を港に向け始めた。

「発射体制に入るつもりだ」とジロキチ。

「どうしよう」と言っておろおろする仲間たち。


その時、エンリ王子が言った。

「俺に秘策がある。防げないなら取り込めばいい」

「取り込むって?・・・」とニケが怪訝顔で・・・。

エンリは「土の魔剣が大地に融合したみたいに、戦艦が放つ破滅の光を光の魔剣に融合させるのさ」


「無茶ですよ。向うの方が強いんだから、押し切られます」

そう言うアーサーに、エンリは「だから、アーサーに、やって欲しい事があるんだ」



リラは人魚となって、エンリを背に乗せてテームズ河を戦艦に向かった。

船首像の前に魔法陣が描かれ、破滅の光が現れる。

それに向けて光の巨人剣を構えて融合の呪句を唱える。


「我が光の剣よ。汝の前に奈落に落ちたる光の咎人。咎人の名はモリアーティ。奈落の名は破滅の光。そに抗い、彼の罪と過ちを糾すは汝の刃。そを裁くを以って救済と成すべく、ひとつながりの我が剣たれ。融合あれ」

光の巨人剣はさらに伸びて、放たれつつある破滅の光に突き刺さり、そして彼の視界を光が覆った。

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