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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第85話 戦艦の全容

ロンドンの王立造船所で極秘裏に建造の進む魔導戦艦の実態が明かされる中、その設計図を狙った怪盗ルパンの造船所への侵入。

そしてその背後に居るモリアーティが操る傀儡たちとの争奪。


そうした造船所での事件の後始末が終わると、後は海軍で処理するからと、早々に部外者は追い出された。

ドレイクを襲撃したフォークスと、入口の無い部屋でルパンと設計図を奪い合ったジャック。二つの現場も、現場検証も不十分なまま、ホームズもレストレードも撤退を余儀なくされた。



ロンドンの警察局で報告書を整理するレストレード警部。

一息ついているとホームズが来る。そしてガニマール警部も情報を漁りに来る。


三人でお茶を飲みながら愚痴を言い合う。

「見事にしてやられましたね」とレストレード。

「最初から現場に入れたら、こんな事にはならなかったんだ。それを奴等、私がフランス人だからと」とガニマール。

レストレードは「現場に来て足を引っ張った人が言う台詞ではないと思いますが」

ホームズは困り顔で「そういうの、止めませんか」


「ルパンは何故あの設計図を・・・」とレストレード。

「そもそもあれは何の設計図なのですか?」とガニマール。

「軍事機密という事でしょう」とホームズ。

「つまり、秘密裡に恐ろしい兵器を造っている訳だ」とガニマール。


そんなガニマールにレストレードは言った。

「で、フランスがその秘密を盗みに来たと。あなたも実はその軍事スパイ行為に協力しに来たのではないのですか?」

「我々を侮辱する気か」と気色ばむガニマール。

ホームズは「言い過ぎですよ、レストレード警部」と彼を窘める。

ガニマールは「ルパンは財宝を盗む事に誇りを持っているんだ」

「いや、ルパンより先に、自分の名誉を心配したらどうかと」

そう言うレストレードにガニマールは「確かに、どこの国も自国を強くしようと務め、国民がそれを期待する。だが、ルパンは国家の下請けをするような奴ではない」


するとホームズは「だが、設計図が財宝ですか?」

「宝とは多くの人が欲しがるものだ」とガニマール。

「では、何故それを自分の手で灰に?」とホームズ。

「それは・・・」


レストレードは「ホームズさんは見当がついているんですよね?」

「ルパンの本当の狙いは、船を動かすために必要な宝具です。ですが、我々にはモリアーティという、更に厄介な敵が居ます」とホームズ。

ガニマールは「あの襲撃者を操っていた・・・」

ホームズは「あの二人は造船所の職員に紛れていた。他にも操られている職員が居る筈です。それを生きている状態で見分けるのは困難だ」


「奴の傀儡は造船所の中だけとは限らないのでは・・・」とレストレード。

「恐らく。政府にも・・・」とホームズ。

「まさか、警察の中にも」とレストレード。

「この三人の中にだって・・・」とガニマール。

ホームズは困り顔で「そういうの、止めませんか」



時計塔魔法学校で、いつもの授業。

講義が終わり、五人で建物を出た所で、ポカホンタスに話しかけた男性が居た。

「元気でやってるか? 魔法少女」

ポカホンタスは彼を見て、思わず「ルパン」と・・・。


身構える遠坂と間桐。

「警察呼びますよ」

そう言うポカホンタスにルパンは「設計図、見たくないか?」

「何の?」

そう怪訝顔で言うポカホンタスにルパンは「あの魔導戦艦の・・・さ」

ポカホンタスは「あれは燃えちゃった筈では?」


ルパンは記憶の魔道具を出して、映像を再生する。そこに映し出された台の上の設計図。

「それは」

そう言って思わず手を伸ばすポカホンタスにルパンは「はい、ここまで」

そして再生を中断して魔道具を懐へ。


遠坂はポカホンタスを庇うようにしてルパンに向き合い、「何が目的ですか?」

ルパンは「こいつを専門家に分析して欲しいって訳さ。ここは魔導士の根城だよな?」

ローラは「ここはイギリスの機関で、それは国家機密って事になるんですけど、ここの先生たちにこの国を裏切れと?」


ルパンはリラを指して「そっちの子はポルタの関係者だよね? あの国にとっちゃ、こんな危ない代物がイギリスにあっちゃ不味いんじゃないの?」

リラは「エンリ様に仲介させて泥棒の手伝いをしろと?」

「この件にはモリアーティが絡んでいる。ここまで言えばホームズだって解ると思うよ」とルパンは言った。



彼等はワトソンに報告し、ホームズに報告した。

リラはエンリに伝えた。


ワトソンは魔道具科のリガルディ教授に伝えた。

ホームズと彼の探偵団がリガルディの研究室に集まる。

リラとともにエンリとアーサーも・・・。


「ここにルパンが来ると?」と怪訝顔のリガルディ。

「警察には連絡しなくていいのかな?」とエンリ。

ホームズは「まぁ、何かを盗みに来る訳じゃないからな」


その時「ちわー、かつ丼の出前をお届けに来ました」と言って出前が入室。

リガルディは「そんなの注文しとらんが」

出前の人は「いーえ、伺ってますよ。だって尋問で情報聞き出す定番だもん」


そう言って彼が丼の蓋を開けると、中にあるのは記憶の魔道具。

「ルパンか」とホームズが身構える。

出前の人は「なんせ警備がうるさいんで、まー変装はどこかに潜入する時の俺の制服みたいなものさ」と言ってマスクを脱ぎ、ルパンの正体を現した。


「で、ここに設計図の記憶が?」とホームズ。

「解析結果は好きに使えばいいさ。俺はお宝がそいつのどこにあるかが解ればいいんでね」とルパン。

「それで盗むという訳か。そんな事を許すとでも?」とワトソンが気色ばむ。

ルパンは「ま、そこは後で考えればいいさ。けど、こいつに聖杯を使ってるって事は、どれだけ危険な代物かは解るよな? ましてそこにモリアーティが絡んでいるともなれば」

ホームズは「まあいい、とにかく再生だ」


映し出される設計図の詳細。甲板に立つ10の建造物。

リガルディはそれを指して「艦橋とかいう司令部を置く建物ですね」

「けどこれを複数?」と間桐。

「セフィラという生命の樹の中枢の機能を実現するものですね。そして各セフィラを繋ぐ魔道回路の幹線がパスで、そこから網の目のように魔道回路が張り巡らされていますね。その艦橋の根本の甲板下に核となる魔導石を置く施設があります。そして、艦橋を持たないセフィラがここに。ダアトという隠れたセフィラです」とリガルディは解説した。

ホームズが「すると、聖杯はここか」

「それでルパンさん」

そうポカホンタスが呼びかけた時、ルパンの姿は既に消えていた。



彼等はドレイク邸を訪れて、設計図の情報を伝えた。

リガルディが引き直した図面を見て、ドレイクは「なるほど、これが魔導戦艦か」と呟く。

そして「それでこいつは人間の機能を模して作られている訳だよな?」とリガルディに・・・。

「恐ろしいのは、これが、自らの意思を持って動くという事です」とリガルディ。

「自分の意思だと?」とドレイク。

リガルディは「聖杯というのは一種の魔的知性体なのです。その知性が戦艦の意思を形作る。それがイギリスに敵意を持ったら、どういう事になるか」


「それで、こいつはどんな姿を?」とドレイク。

「だからこんな姿を・・・」とリガルディ。

「船だよな?」とドレイク。

「そうですが」とリガルディ。


ドレイクは「人間を模して作られたのだろ? 人間の美少女の姿をした軍艦娘としての姿は?」

「はぁ?」とリガルディ唖然。

「巨乳か? ロリ系か?」とドレイクは急かすようにリガルディに迫る。

リガルディはあきれ顔で「いや、そんなの居ませんから」

ドレイクは「鹿島さんは? 島風ちゃんは?」

「居ませんから。魔導戦艦を何だと思ってたんですか?」とドン引き状態のリガルディ。


「違うのか。確かにそうだな」とドレイク。

「解って貰えたら結構ですが」とリガルディ。

そしてドレイクは「彼女たちはジパング海軍の所属だものな。だがプリンちゃんはユーロの艦だ」

「だから軍艦娘なんて居ませんから」とリガルディ。


とてつもなく残念な空気が漂っていた。



そんな空気をどうにかしようとホームズが話題を変える。

「ところでボンド男爵にも、この情報を伝えるべきだと思うのですが・・・」

「彼は独自に動いているんだが、モリアーティの手の者にアジトを嗅ぎ回られて、転々と居場所を変えて連絡がつかん」とドレイク。

「手の者って?」とホームズが疑問顔で。

ドレイクは「かなり高度な魔法を使う、ハニートラップの使い手だそうだ」

「あの百戦錬磨のヤリチンにハニートラップ?」とホームズ唖然。

「媚薬を使って、記憶の魔道具で捉えた濡れ場で脅されたとか」とドレイク。

エンリが「それって、もしかしてマーリンさんじゃ・・・」



マーリンと連絡をとるエンリ王子。

マーリンは言った。

「ボンド男爵に連絡をとりたいのね? 知ってるわよ。彼、凄いのよ。脱いでも脱がなくても。一度落としたんだけど、なかなか靡かなくて。七人も愛人が居るのよ。あの子たち邪魔だわ」

「やっぱり・・・・」と、エンリとアーサーが顔を見合わせる。



マーリンが案内し、ホームズ、ドレイク、エンリたちでボンドのアジトに乗り込む。

彼等を見てボンドは「お前ら、どうしてここが・・・」

彼等の後ろからマーリンが出て来たのを見て、ボンド唖然。

「お前ら、モリアーティとグルだったのかよ」

身構える七人の女アサシンたち。


エンリは頭を掻き、マーリンを指して「この人はポルタの魔導士でモリアーティと関係無いんで」

そしてマーリンは「ボンドさん、この間の夜の続き、しません?」

「マーリンさん、そういう事をしに来たんじゃないから」と困り顔で彼女を止めるエンリ。

ボンドは頭痛顔で「それで一体、何の用だ」

ホームズはボンドに言った。

「ルパンが盗んだ設計図、見たくありません? 造船所の大まかな見取り図もありますよ」


記憶の魔道具を再生し、リガルディ教授が説明する。

「なるほど、想像以上に厄介な代物だな」と深刻な表情を見せるボンド。

「それで、バッキンガム公は既に、奴の傀儡になっているのですよね?」とホームズ。

ボンドは「他にローリー海軍長官とクロウリー魔導長官も。彼等がガードして王がなかなか耳を貸そうとしないんだ」

「王は俺が説得する」とドレイクは言った。



その頃、ファフはヨハン邸でお腹を空かせていた。

「タルタ、お腹空いた」

そう急かすファフにタルタは「王子が来るまで待ってろ」

「待ちきれないの。キッチンに行っていい?」とファフ。

「この前、食材倉荒らして、滅茶苦茶怒られただろーが」とタルタ。


ファフは「ヨハンおじさん、優しいよ」

「怖いのはメイド長だ」とタルタ。

「ドラゴンは体が大きいから、ごはんはたくさん必要なの」とファフ。

タルタは「海に行って魚でも獲ってきたらどーよ」

「解った」



ファフが庭に出てドラゴンに変身しようとすると、何やらいい匂いが・・・。

匂いを辿って屋敷の門を出て、路地に入った所の空地へ。物陰に大きな皿。その上に美味しそうにローストされた漫画肉。

ファフがそこに座り込んで、肉を手に取ると、それに繋がれた紐が引かれて、上から大きな籠が落ちて来た。

そして一人の男性が現れる。

「おじさん、誰?」

そう言うファフに向かって、男性はスリープの呪文を唱え、ファフは眠った。



「ファフが居ないって?」と、ヨハン邸に戻ったエンリは報告を受けて顔を曇らせる。

タルタは「腹が減ったって言うから、海で魚でも食べてろと」

「念話は?」とエンリ。

しばらくタルタは念話を試みるが「応答が無いぞ」


エンリは「この非常時に。とにかく探さなきゃ。カルロ、お前、探し物は得意だったよな?」

「任せて下さい」

そう言って、カルロはダウジング棒を使う。

それを見てニケは「私の通帳や秘宝もそうやって見つけたのね」


だが、しばらく試みるとカルロは「変ですね。方向が定まりません」と言って顔を曇らせる。

「妨害魔法ですね」とアーサー。

エンリは「それじゃ・・・誘拐でもされたか?」と言って焦りの表情を浮かべる。

ニケは「どーするのよ。ファフは仲間よ」

「ニケさん・・・」とリラも心配顔で・・・。

「身代金なんて出せないからね」とニケは語気を強める。

「あのなぁ」と、あきれ顔のエンリ。



「恐らくモリアーティの仕業ですね」とアーサー。

「あいつ、そんなに金に困ってたのかよ」とジロキチ。

タルタは「犯罪会のナポレオンとか言われてる奴だもんな。生半可な窃盗とか、プライドに関わるとか言って・・・」

「そうじゃないだろ」と、あきれ顔のエンリ。


「そうだよ。目的なんて一つしか無い」とカルロ。

エンリは「だよな」と・・・。

カルロは「モリアーティはロリコンだったんだ」

「違うだろ」と、あきれ顔のエンリ。



そしてエンリは「問題は、ファフはドラゴンで最強の戦力だって事だ」

「そんな事より、あいつの身の安全でしょうが。仲間ですよ」とタルタ。

「王子ってそんな人だったんだ」とニケ。


「じゃなくて、あいつを誘拐した目的だよ。アラビアの海でファフが眠らされた事があったよな? あれは何のためだったっけ?」とエンリ。

「海戦を控えて、ドラゴンを使えなくするため」とタルタ。

「だろ? 今、奴等が造船所で作ってる魔導戦艦の正体がバレた。国王はストップをかけて造船所閉鎖って事になるだろ。すると奴等はどうする?」とエンリ。

「反乱でも起こして閉鎖を拒否るとか」とジロキチ。

エンリは言った。

「その時ドラゴンを鎮圧に使われると奴等は困るだろーが。それどころか、ファフを傀儡にして反乱に使う可能性だってあるんだぞ」

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