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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第82話 傀儡の遣い手

イギリス海軍が王立造船所において極秘裏に建造中の魔導戦艦の設計図を盗むと予告した怪盗ルパン。

軍事機密を楯にガードの固い造船所に乗り込むドレイク提督やホームズたちを他所に、囮人形と見せかけた転移座標で造船所の管理棟屋上に侵入したルパンは、居合わせた魔法少女姿のポカホンタスを連れて設計図を目指す。



屋上から最上階に降りたルパンとポカホンタスは、廊下を走って曲がり角の所に来た。

「ここだ」と言って、壁の前に立つルパン。

「ただの壁ですけど」とポカホンタス。

「この部屋に入口なんて無い。中にある設計図が魔力通信で外の技術者に設計図の情報を伝える。念話と同じ原理さ」


ポカホンタスは「どうやって入るんですか?」

ルパンは「あんたの地元にコロンボって奴が居るよな?」

「市長さんですか?」とポカホンタス。


ルパンは語った。

「彼が仲間と賭けをしたそうだ。平らな机の上に、ゆで卵を立てる事が出来るかどうか・・・ってな」

「どうやったんですか?」とポカホンタス。

「殻の端の所を壊して、平に潰して立てた」とルパン。

「インチキじゃないですか」とポカホンタス。


「殻を壊しちゃいけないってルールは無い。だからこうする」

そう言うとルパンは、破鎚の呪文で壁に大穴を開けた。



穴の向こうは部屋になっている。その真ん中に台があり、設計図が広げられている。

台の四隅に四本の棒を斜めに立ててピラミッドのような形を成し、その頂点に水晶玉が取り付けられている。


「この水晶玉で設計図の情報を送っていた訳か」

そう言って台の上の設計図を取るルパンに、ポカホンタスは言った。

「やっぱり泥棒はいけないと思います」

ルパンにステッキを向けて風の矢を放つ構えをとったポカホンタスは、いきなりルパンに突き飛ばされた。


壁に背を打って二秒、痛みを堪えてルパンを見ると、ルパンは職員の制服を着てナイフを翳す男と戦っていた。


内ポケットから短銃を抜きざまにルパンは男を撃つが、その瞬間、男の姿は消えてルパンの背後に現れ、ナイフを振り下ろす。

ルパンは振り向きざまに男のナイフを短銃で受け止め、杖に仕込んだ剣を抜いて横に切り込む。

だがまたも男の姿は消えて、ルパンの背後に現れてナイフで切りつける。

ルパンは振り向いて、剣でこれを防ぐ。


「ルパンさん」と叫ぶポカホンタス。

「モリアーティの刺客だ」とルパン。

「私も戦います」

そう叫ぶポカホンタスに、ルパンは「足手まといだ。外に出て応援呼んで来い」


男がポカホンタスを見ると、ルパンは盗んだ設計図をちらつかせて、男の注意を引いた。

「ほーら、これが欲しいんだろ」


ポカホンタスはルパンが開けた大穴から外に出て、念話でホームズに呼び掛けた。

「ホームズさん、ルパンは五階の中央の部屋です。設計図を奪ってモリアーティの刺客と戦っています」



その時、何者かがポカホンタスの後頭部を一撃して気絶させた。ボンド男爵だ。

彼は入口の大穴から部屋に入ると、ルパンとナイフで切り結ぶんでいる刺客を短銃で撃った。

その瞬間、刺客の姿は消え、ボンドの背後に現れてナイフを振り下ろす。

ルパンはもう一丁の短銃を抜いて男を銃撃。男はまたも姿を消し、離れた所に現れた。


ルパンはボンドに駆け寄り、並んで刺客に向き合う。

そして「迂闊だぞ。ボンド男爵」

ボンドはナイフを翳す刺客を見て「何なんだ、こいつの素早さは」

「一見、素早さスキルMAX野郎だが、実は・・・って奴?」とルパン。

「モリアーティの刺客か?」とボンド。

ルパンは「そういう事。話は後だ」



一瞬で移動しながらナイフで切りつける刺客に、ルパンとボンドは互いの背を預けて戦った。


闘いながらルパンは念話でボンドに話しかける。

(ガールズ、来てるよな?)

(やらんぞ)

と答えるボンドにルパンは(いや、要らないから、それより・・・)


ルパンが念話でボンドに要件を伝え終えると、ボンドはガールズたちに念話で指示。


やがてボンドは「配置完了だ」と一言。

「ほんじゃま、茶番はこれでお開きだ」

そう言うとルパンは設計図を左手に持って刺客の前にちらつかせ、そして設計図は一瞬で炎を上げて灰になった。

それを見た刺客は姿を消した。



ルパンは言った。

「転移魔法だ。移動距離は短いが無詠唱。転移座標無しに一瞬で何度でも使える。とんだ素早さスキルさ」

「移動距離は短くても、壁を通り抜けるには十分という事か」とボンド。

「仕組みが解れば、前後左右上下の壁の向こうに人を配置して、転移して来た所を仕留めるだけの簡単なお仕事という訳だ」と言ってルパンは笑う。


その時、ボンドに念話で報告。

(002です。刺客が姿を現した所を仕留めました。どうやら正体は通り魔ジャックと思われます)

ボンドは(得意技が壁抜けとはな。捕まらない訳だ。それで額に魔石は)

(確認しました。間違いなくモリアーティの傀儡です)

(ご苦労だった。他の場所に配置したガールズたちと一緒に撤収してくれ)とボンド。


ボンドが念話を終えた様子を見て、ルパンは「どうだった?」

「奴は部下が倒した」とボンド。

「そりゃ結構だ」とルパン。

そしてボンドは言った。

「で、お前はここからどうやって逃走するんだ?」



入口の大穴からどやどやと踏み込む警官たち。ホームズとその助手たち。レストレード警部とドレイク提督も居る。

ルパンは彼等に「おやまぁ皆さん呉越同舟お疲れさん」

入口の大穴は警官隊で完全に塞ぎ、他に出口は無い。


ボンドは「普通は逃げられる状況じゃないが、何か奥の手があるんだよな?」とルパンに・・・。

「まあね。俺には強い味方が居るから」とルパン。

「俺の事じゃないよな?」とボンド。

ルパンは「冷たいなぁ。背中任せ合った仲じゃん・・・なーんてね。もっと長ーい付き合のある奴さ。ほら来た」


「ルパン、逮捕だ」

そう言いながら、入口の人垣をかき分けてガニマール警部登場。

「待ってたぜ、とっつぁん」

そう言ってルパンは煙玉を投げる。



充満した煙が全員の視界を奪う中、レストレードは叫んだ。

「落ち着け。出口を警官で固めれば外には出られない」


ワトソンが浄気の魔法で煙を鎮めた時、ルパンの姿は消えていた。

「ルパンはどこだ」と慌てる警官たち。


そんな中でガニマールが叫ぶ。

「落ち着け。奴は変装の名人だ。精巧なマスクを被ってこの中に紛れている。そのために、見知った人間のものをいくつも持っている。例えば俺みたいな。そこに居る俺の偽物、奴がルパンだ」

「え?・・・」

警官隊の中に居るもう一人のガニマールが、ガニマールに指さされて慌てる。


「ちょっと待て」とホームズが叫ぶ間も無く、警官隊は指さされたガニマールに殺到。

ホームズは「偽物はそいつだ。奴がルパンだ」と、指さした方のガニマールを見て叫ぶ。

ガニマールのマスクを脱ぎ捨てたルパンは、本物のガニマールを捉えようと中に殺到する警官たちの、頭上をすり抜けて廊下に飛び出し、笑いながら「あばよー」と叫んで逃走した。



その頃。

造船所から離れた野原に、一人立つ陰鬱な表情の紳士が居た。

水晶玉を見ながら呟く。

「失敗か。まあいい。設計図は奪われなかったのだから」


その時、海の方から上空に一匹のドラゴン。舞い降りたそれに乗っていた数人がドラゴンの背から降りる。

エンリ王子とその仲間たちだ。

リラが川から上って人間の姿になってエンリに駆け寄る。


エンリは、水晶玉を持つ紳士に言った。

「彼女が川からあなたを見つけて、船の上に居る我々に知らせてくれたのですよ。あなたがモリアーティ教授ですね?」

「背後から操るのが私の流儀なんだが」とモリアーティ。

「そうはいかない」

そう言って詰め寄るエンリたちに、モリアーティは「私が操る奴等、強いですよ」



モリアーティはモンスターを召喚した。オーガとサイクロプスと無数のスケルトン。

オーガとサイクロプスはファフと格闘。スケルトンはエンリが光の巨人剣で薙ぎ払う。


魔剣を見た時、モリアーティの何かが、その剣を持つエンリの姿に反応した。

「なるほど、アンデッド系は使えませんか」

そう言って、もう一体の魔獣を召喚すると、彼は自ら剣を抜いてエンリに切りかかった。

アーサーは魔獣を見て叫んだ。

「こいつは特別な召喚魔獣だ。眷獣とか言うらしい。手強いぞ」


魔獣と戦う仲間たち。

魔獣の前足の爪をタルタが鉄化で受け止め、ジロキチが切りかかる。

固い皮膚を削る四本の刀。だが魔獣の回復は早い。


魔獣は二本の尻尾を振るい、尻尾の先の鋭い角で突いてくるのをジロキチの刀が受け流す。

その尻尾に鉄化を解いたタルタが飛びつき、二本の尻尾の先側を両手で握って鉄化して拘束。

魔獣はタルタを振りほどこうと尻尾を振り回すが、彼が魔獣の後ろ足の位置に来た時、鉄化を解いて両脚で片方の後ろ足に取り付き、鉄化して拘束。


尻尾の攻撃から解放されたジロキチは魔獣の背後に回って刀で切りつける。

カルロが魔獣の炎をかわしながら投げナイフで攻撃。

その背後からニケが短銃で攻撃。魔獣の目を潰すが、新たな目が次々の生えてくる。



剣で斬りかかるモリアーティを王子が炎の魔剣で迎え撃つが、モリアーティは魔法攻撃を交えて攻撃してくる。

それをアーサーの防御魔法で防ぐ。耐魔の鎧の呪文を王子にかけて、アーサーは王子の背後で必死に支援。

だがモリアーティの剣戟に王子は押される。


リラが水の縛めの魔法でモリアーティを拘束しようとする。モリアーティは炎の鎧の魔法でこれを破る。

そこへ王子の氷の魔剣の一撃が、モリアーティにダメージを与えた。。



その時、馬に乗った警官隊が造船所から駆け付ける。リラが念話でホームズに伝えたのだ。

ホームズとその助手たち、ドレイクと部下たちも居る。


包囲されて攻撃の手を止めたモリアーティに、ホームズは言った。

「ようやく顔を見れましたね」

モリアーティは「これが素顔だと思いますか?」

「まあ、そんな所でしょうね」とホームズ。



モリアーティはペガサスを召喚し宙に駈け上がる。

それをペガサスに乗って追跡する者が居た。ボンド男爵だ。

ロンドンの街並みの上空を二体のペガサスが翔る。


ボンドの銃撃をモリアーティが氷の楯で防ぐ。モリアーティの風の刃をボンドが水の楯で防ぐ。

立ち並ぶ多層住宅の間を抜け、道路の上を走り、ロンドン橋の下を潜る。


降りようとする跳ね橋の下を通りざまに、モリアーティは橋に向ってファイヤーボールを放つ。

ボンドが破壊された橋の欠片をかわした時、モリアーティの姿は見えなくなっていた。

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