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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第81話 造船所の襲撃

人魚姫リラが参加したホームズの探偵団とボンド男爵のМ機関。

二つのグループがそれぞれ調査を進める中で、造船所の秘密が次第に明らかになる中、複数の政府機関に、怪盗ルパンからの予告状が届いた。

曰く「王立造船所にある魔導戦艦の設計図を頂きに参上する。怪盗ルパン」



海軍局に乗り込むドレイク提督。

「俺の知らない所で魔導戦艦ってのを造っていると聞いたが?」

「そう言われましても」と、うろたえる職員。

「とにかくローリー長官を出せ」と提督は一喝。


ローリー長官が出て来る。そして提督に言った。

「提督が気にする事ではない」

ドレイクは「つまり、あんたは知ってた訳だな。そりゃ、海軍のトップだものな」

「君は許可証を貰って造船所の中を好きなだけ調べた筈だが」とローリー長官。


「ルパンの予告状にある、魔導戦艦って何だ?」とドレイク。

「動力や大砲に魔法を応用するのは可能だろ」とローリー。

「そんなものではない筈だ」とドレイク。

ローリーは「では何だと?」


ドレイクは「聖杯を使い、人体の構造を取り入れた特殊な戦艦」

「聖杯だと? そんなものがどこにあるというのだ」とローリー。

「あなたに貸した秘蹟の盃がその手掛かりの筈だ」とドレイク。


ローリーは言った。

「仮にそんなものが我が国にあったとしたら、イギリス国教会の正統たる証として教皇庁ととって代わる事も出来るのではないか?」

「それは・・・」

「話は終わりだ。ルパンの件は海軍が対処する。これは国王の命令だ」



国王に面会を求めるドレイク提督。


ヘンリー王はドレイクに言った。

「言いたい事は解るが、外国との海軍競争の問題なのだよ」

「政府内に敵のスパイが居る可能性もあります」とドレイク。


「そういう内部の疑心暗鬼が敵に付け込まれる。背後にフランス海軍が居るとしたらどうだ。ルパンはフランス人だ」とヘンリー王。

「そう誰かに言われたんですよね? 誰ですか?」とドレイク。

「宰相のバッキンガム公爵とローリー海軍長官だ」とヘンリー王。

ドレイクは「その二人が敵に内通している可能性があります」


ヘンリー王は「私は自分の臣下を信じる。ルパンの行動は我が国の海軍への妨害工作だ」

「奴は国家のために動くような事はしない」とドレイク。

「それは誰の情報かね?」とヘンリー王。

「ホームズですよ」とドレイク。

「民間人だな?」とヘンリー王。

ドレイクは「ではボンド男爵は?」


ヘンリー王は言った。

「ルパンと繋がっている可能性がある。君の所から盗まれた秘蹟の盃が、いつの間にかМ機関に渡っているという情報があるが」

「それは・・・」とドレイクは口籠る。



魔導戦艦の設計図を盗むと予告された王立造船所はテームズ河下流の港に隣接し、何隻もの船を同時に建造する巨大なドッグ建物と、その内部に部材製造設備、それに接続する五階建ての管理棟からなる。

造船所の門の外では多くの警官による厳重な警備。それを指揮するレストレード警部。


パリ警察から来たガニマール警部が、レストレードと言い合っている。

「あまり他国で勝手な真似をされては困るのですが」とレストレード警部。

「奴を一番知っているのは、この私だ」とガニマール警部。


レストレード警部は「ドレイク邸ではまんまと逃げられましたよね?」

「あれはただの前座だ。それより、この魔導戦艦とは何だ?」とガニマール警部。

「我々も何のことか解らないのですが」とレストレード警部。


ガニマール警部は「まさか極秘裏に作っている最終兵器ではあるまいな?」

「それはこの予告状を書いた本人に聞くしか無いですね。で、その本人を一番よく知っているのはあなたの筈でしたよね?」



そこに、ホームズが助手と探偵団を連れて登場。

彼はレストレードに言った。

「恐らく陽動の騒ぎを起こして、その隙を狙って侵入すると思います」

「既に侵入しているという事は?」とレストレード警部。

ホームズは「私の部下が放った式神が周囲で監視していますし、ここの魔力監視は厳重です。知られず入るのは困難かと」


周囲の警戒のためにと、リラは人魚になって海側から造船所を監視。間桐は門の外に待機して式神を指揮。

「ポカホンタスはどうする?」とホームズが訊ねる。

ポカホンタスは「屋根の上で空から来るのを見張ろうかと」

「なるほどね」とホームズ。


ポカホンタスは工場建物の屋根を見て呟いた。

(あそこなら、あの服装を見られずに済む)



ホームズはワトソン、ローラ、遠坂、ポカホンタスと造船所の内部で待機しようと敷地の門へ。

そこでは、レストレード警部とガニマール警部が入口の守衛と押し問答の最中。


守衛は二人の警部に「ここは軍事機密施設だ。警備は海軍でやる」

「ルパンの手口を知っているの私だけだ」とガニマール警部。

守衛はガニマールに「フランス人のあんたを機密施設に入れる訳にはいかん」


そんな彼等を見て、遠坂が「あれ、どうするんですか?」とホームズに・・・。

ホームズは「提督待ちだろうな。内部に入れたとしても、奴等は本当の設計図の在処は見せないだろう。中でルパンの動きを追うしか無い」

ローラがホームズに「モリアーティは傀儡の術を使います。もし既にここに浸透しているとしたら」

ホームズは「設計図が奪われないようルパンに対抗する側に回るだろうな」



その時、提督の馬車が到着し、ドレイクが数人の部下とともに馬車から降りて入口へ。


中に入れろと言うドレイクに対しても、守衛は「ルパンの件は海軍で対処しますから」

「なら私も海軍だ。しかも提督だぞ」とドレイクは食い下がる。

「ですが造船所の関係者では・・・」と抵抗する守衛。

「国王発行の許可証もある。とにかく設計図のある所まで案内しろ」とドレイク。


ようやく守衛は「解りました」と折れる。

すかさずレストレードとホームズが「私たちも一緒でいいですよね」

「いや、警察は海軍の人では・・・」

そう言って抵抗する守衛に対してドレイクは「彼等は私の協力者だ」


ホームズたちとレストレード警部と警官隊はドレイクとともに管理棟へ。

ガニマール警部がついて行こうとするが「フランス人は遠慮して頂きたい」

「ルパンの事は私が・・・」

そう食い下がるガニマールに対してはホームズが「外で逃亡ルートを抑えてはどうですか?」



その時、空の向うから飛来する何かがあった。

それを見て人々があれこれ言う。

「あれは何だ?」

「鳥だ」

「飛行機だ」

「飛行機って何だ?」

「いや、ルパンだ」


鳥のような羽を両手につけたルパンらしき人物が飛来する。

「空から来やがった」と叫んで慌てるレストレードと警官たち。

ポカホンタスは咄嗟に建物の影に走って変身し、魔法少女となって管理棟の屋上へと駆け上がった。


だが、ホームズは上空のルパンの姿を見て、言った。

「あれは陽動の囮だな。あの翼の構造では、人の体重を支えるのは無理だ。恐らく人形だろう」

まもなくその空飛ぶ人形は空中で爆発し、人形が被っていた帽子が管理棟の屋上に落ちた。


ホームズは念話で間桐・リラ・ポカホンタスに、陽動の隙に侵入するルパンへの注意を促す。

そしてドレイクは「とにかく我々は設計図の所で奴を待つ。案内しろ」



管理棟一階の事務室で職員がドレイクに図面を示す。

「これが設計図ですが何か」

あちこちに魔法を使ってるだけの、ただの船の図面だ。

ドレイクは「これじゃないだろ」

職員は「そう言われましても」


その時、職員の中の一人がいきなり「ドレイク提督、覚悟」と叫んで何かを投げ、部屋の外に逃げた。

爆弾が炸裂し、ワトソンが咄嗟に風の楯で防ぐ。


爆発の煙が立ち込める中、ドレイクは風の楯を内側から破って犯人を追う。

遠坂が窓の外から回り込んで犯人の行く手を塞ぎ、ローラが小瓶から放つ水銀のワイヤーで犯人の足を捉えた。

犯人は上着を開くとその内側にいくつもの爆弾。それで自爆しようとした瞬間。ドレイクが投げた剣が犯人の首を刎ねた。


犯人は倒れ、ドレイクはその首を掴んで言った。

「こいつは爆弾魔フォークスだな」

額に黒い魔石が浮き出ている。

ホームズはそれを見て「モリアーティの傀儡魔法ですね。死ぬと浮き出て初めて判別可能になる、厄介な呪式ですよ」


ドレイクは「奴も設計図を狙っていたというのか」

「いや、この部屋には設計図はありませんよね?」とホームズは職員を睨む。

「では、俺の暗殺が狙いだというのか。だが、あれはボンドが調査の口実にでっち上げたガセ情報だ」とドレイク。

そんなドレイクにホームズは「あなたが乗り出してきたので邪魔になったのでしょう」

ドレイクは「なら本物はどこに」

「五階中央の入口の無い部屋があります」とホームズは言った。


その時、ホームズにポカホンタスの念話が届く。

「ホームズさん、ルパンは五階の中央の部屋です。設計図を奪ってモリアーティの刺客と戦っています」



時間は少し遡る。

空から飛来したルパンの人形が爆発した時、ポカホンタスは屋上に辿り着いた所だった。


爆発した人形が被っていた帽子が屋上に落ちる。

すると帽子からルパンの声が聞こえた。

「種の仕掛けも無いこの帽子。中から何が飛び出すか。ワン、ツー、スリー」

転移魔法の光とともに本物のルパンが出現した。



ルパンはポカホンタスを見て言った。

「陽動人形の飾りに見せかけた移転座標だったんだが、よく見抜いたなぁ。ホームズの入れ知恵かい?」

「そ・・・そうですよ。ホームズさんは凄いんですから」とポカホンタスは冷や汗交じりに言う。

ルパンは「なーんちゃって。実はその中二病な衣装が恥ずかしいから、下から見えないここを担当したんじゃないの?」


図星を突かれて真っ赤になるポカホンタス。

そして「と・・・とにかくお宝は渡す訳にはいきませんから」

「いいぜ。獲物は可愛い子ちゃんにプレゼントでも。あんたが欲しいってんなら」とルパン。

「ふざけないで」と言ってポカホンタスは口を尖らせた。


するとルパンは真顔になって「モリアーティが来ている。奴に渡す訳にはいかない」

「・・・」

「ついて来い」と一言言うと、ルパンは建物内へ。



その頃、入口で門前払いを喰わされていたガニマール警部だったが、騒ぎに乗じて造船所の敷地に侵入すると、管理棟の最上階の窓際を通る人影を見た。

「ルパンだ。今度こそ逃がさん。だが、どこから・・・」

そう呟くガニマールだが、建物の入口は守衛が居て、入れそうも無い。


屋上から下に延びる排水管が最上階の窓を通っている。

「あれだ」

そう叫ぶと、ガニマールは排水管をよじ登り、最上階の窓を目指した。

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