第80話 神秘の図式
ロンドンの王立造船所で進む謎の極秘軍艦建造。その背後に犯罪者モリアーティの影。
そしてホームズ旗下の少年少女探偵団では、ボンド機関との共同作戦に参加した遠坂の報告から、建造中の軍艦の概要が浮かび上がった。
それをホームズはドレイク提督に報告した。
報告を聞いたドレイクは「人体の構造を取り入れた魔導戦艦だと?」と驚きを隠せない。
「しかも、自らの意思で動く。その中枢に聖杯が使われます」とホームズ。
「そしてその構想を示す概念図をモリアーティが・・・」とドレイク。
ホームズは言った。
「設計図はそれを元に作られて、造船所で使われている。その元となる概念図はもう不要の筈です。それをモリアーティが持っていると言う事は、彼がそもそもの発案者である可能性が高い」
ドレイクは暗澹たる表情で「造船所の奴等が彼に操られていると・・・」
「とにかく、造船所と軍艦の実態を知る必要があります。海軍局に掛け合って中味を確認しようとしましたが、相当にガードが堅いです」とホームズ。
「軍事機密だからな。俺が聞いてもはぐらかすだけだし。海軍の上層部の一部が極秘で進めている計画だから、魔導戦艦の中味に感づいていると知ったら、なお警戒するだろうな」とドレイク。
「ヘンリー陛下はご存じなんですよね?」とホームズ。
ドレイクは言った。
「そうだな。任せろ。俺と陛下の仲だ」
ドレイクは国王に面会した。
目をうるうるさせてヘンリー王に訴えるドレイク提督。
「陛下は私がお嫌いですか?」
ヘンリー王、マッチョなオッサンのうるうる顔にタジタジと・・・。
そして「どうしたのだ提督」
「物凄い新鋭戦艦を建造中だそうじゃないですか」とドレイクは王に迫る。
「お前はそういうものに興味は無かった筈だろ」とヘンリー王。
「何でも人体と同じ構造を持つとか」とドレイク。
ヘンリー王は「(ギクッ)何でそれを」
ドレイクは言った。
「美少女の姿でありながら軍艦の魂を持って海の魔物と戦う、名付けて軍艦娘」
ヘンリー王唖然。そして呟いた。
「まさかローリーの奴、そんなものを」
「建造中なのですね?」とドレイク。
ヘンリー王は「いや、その・・・」
ドレイクは涙目で「そんな良いものを、私を仲間外れでとか、あんまりです」
「まさか、そんなものだとは」とヘンリー王は口ごもる。
ドレイクは訴えた。
「もしかして陛下も仲間外れに? 様々なタイプの軍艦美少女をコレクションしてキャッキャウフフなハーレムを。奴等、その娘たちを独占する気なんですよ」
ヘンリー王は「ドレイク」と言って彼の手を執る。
ドレイクは「陛下、造船所の立ち入り許可書を」
ヘンリー王は「何枚必要だ?」
国王が数枚の許可証を出す。
ドレイクは部下とともに許可証を持って造船所へ行き、そこの責任者を追及した。
所長は困り顔でドレイクに「軍艦娘なんて居ませんよ」
「そんな筈は無い。とにかく国王が発行した許可証だぞ」とドレイクは王のサイン付きの書類を突き付ける。
所長は言った。
「解りました。内部は自由に歩いていいですよ。けど提督、海軍兵の家族手当増額の歎願はいつ受理されるんですか?」
「それは・・・」とドレイクは口ごもる。
更に所長は「糧食の改善要求についても、まだですよね?」
「それは・・・」とドレイクは口ごもる。
所長は「こんな所で油を売ってる時間があるなら、仕事して下さいよ」とドレイクに・・・。
ドレイクは部下を送り込んで造船所を調べさせた。
だが造船所側は、ドレイクの部下に酒を飲ませて誤魔化す。
その部下が酔っぱらって帰宅する所を狙い、ボンドが許可証を掏り取った。
許可証を取られた部下は、ドレイクにこっ酷く怒られ、そしてボンドは変装して許可証を使い、造船所に入り込んで内部を調べた。
ホテルのレストランのテーブルで向き合うルパンとジェーン。
「君の瞳に」
そう言ってグラスを傾けるルパンに、ジェーンは「それ、流行ってるの?」
「最近のヤリチンがよく使う台詞だっていうんで真似てみたんだが」とルパン。
ジェーンは「似合ってないわよ」
「似合うって言われるとむしろ困る。そこらに居るいけ好かないイケメンとか、女を手玉に取って利用するスパイとかみたいだものな」
そうルパンが言うと、ジェーンの表情が少し曇る。
「どうした?」とルパン。
「家庭の事情で、ちょっとね」とジェーン。
「愛してるぜ」とルパン。
「私もよ」
そうジェーンが言うと、ルパンは「嬉しいけど、ちょっと困るな。俺を好きになった女はみんな死ぬんだ。俺、泥棒だから」
「ルパン・・・」
そう言って哀しそうに目を伏せるジェーンに、ルパンは言った。
「そんな哀しい顔、するなよ。これで元気出しな」
ルパンは大きな宝石のついたブローチをジェーンに渡す。
「これは?」
「ある金持ちの金庫から救出した宝石さ。美女を飾る機会を与えられない宝石は不幸だ」とルパンは言った。
ジェーンに渡した盗聴の魔道具を通じて、ルパンはボンドのアジトの様子を覗く。
ガールズたちの前で図面を広げて、あれこれ言うボンド。その図面を見てルパンは呻いた。
「生命の樹じゃないか。あれで軍艦を造ろうって訳かよ。だとすると、核になる宝具がある筈だ。それが聖杯かよ。魔法で動く軍艦の頭脳かぁ。造船所に入る許可証とかあればなぁ」
そしてルパンは、そこでの会話から、提督が部下に許可証を与えて調べさせている事を知った。
提督の部下の帰り道を待ち伏せして、許可証を掏り取るルパン。それを使って彼も、変装して造船所に出入りして内部を調べた。
その頃、ホームズの探偵団では、造船所に送り込んだ間桐の蟻の式神がもたらした情報で、造船所の見取り図の作成が進められた。
作成中の見取り図を前に、難しい顔で間桐が言った。
「二か所、どうしても解らない部分があるんだが」
ポカホンタスは「どこかに入口があるのよね?」
「それが、入口が無くて、蟻が潜り込む隙も無いんだ」と間桐。
「一階のドックの奥がかなり大きい範囲で不明になっているね」とリラ。
「それと、管理棟最上階の真ん中にも」とローラ。
遠坂が「魔法を使った隠し扉とか?」
「ドックの奥はそれらしい気配があるんだけど、最上階の部屋はそれすら無いんだ」と間桐。
「軍艦はドックの奥なんだろうね」とリラ。
「10隻くらい作れそうなスペースだぞ」と遠坂。
ローラが「けど、最上階のこれは何?」
リラが仲間たちと寝泊まりしているヨハン邸に帰宅。
タルタが「お帰り、人魚姫。どうよ、キャンパスライフは」
「楽しいですよ。お友達とも仲良くなって」とリラ。
「探偵団のメンバー? あのポカホンタスって子もそうなんだよね?」とジロキチ。
リラは「他にも。ジパングの男の子が二人も居るんです。一人は忍者だって」
「そりゃいいや」とタルタが笑う。
そしてリラは言った。
「それで、気になる事を聞いたんで、出来れば王子様に報告したいんですけど」
通話の魔道具でポルタに居るエンリと話すリラ。
「造船所に提督が知らない秘密・・・ねぇ」とエンリ。
「魔法を使った軍艦を造っているらしいんです。それにモリアーティという犯罪者が絡んでいるらしくて、彼の所から設計図の元が出て来たって」とリラ。
「つまり奴は、どちらかというと、それを作る側に関わってたって事か」とエンリ。
リラは「それでイザベラさんは?」
「スパニア諜報局はこの件には関わってないらしい。イザベラも知らないと見ていいだろうな」とエンリ。
「イギリス諜報局のボンド男爵って人が調べているけど、上に止められたみたいで」とリラ。
通話が終わる。
通話で出て来た単語をネタに盛り上がるリラと居残り組たち。
「ボンド男爵って、すごいイケメンだそうですね?」とリラ。
「マーリンさんが見たら、放っておかないだろうな」とジロキチ。
「ところでマーリンさんって・・・」とタルタ。
「最近見てないね」とファフ。
「そーいやマーリンさん、ボンド男爵についてあちこちで聞いてたみたいだぞ」とタルタ。
コーヒー店でバイトを始めたポカホンタス。
皿洗い中の彼女に黄金像が「働かざる者は食うべからず。まあ頑張れ」
「あなたが言いますか」とポカホンタス。
店の主人が彼女に声をかける。
「ポカホンタスちゃん、お疲れ様」
ポカホンタスは「どうも」と一言。
主人は「もう上がっていいよ。それとこれ、今日の分ね」と、お金の入った袋を渡す。
「ありがとうございます」とポカホンタス。
主人は「一人暮らしも大変だろ。物価もやたら上がってるし、賄い食べていきなよ」
「ありがとうございます」とポカホンタス。
主人の妻が買い出しから戻る。
「ただいま」
「奥様、お疲れ様です」とポカホンタス。
「今、ご飯にするから。それでね、聞いてよ。また小麦粉が値上がりしたのよ」と愚痴り出す主人の妻。
「飢饉とかになってる訳じゃないのに、何だろうね」と主人。
「お菓子は安くなってるんだけどね」と主人の妻。
「西方大陸からお砂糖が入るようになったからね」と主人。
主人の妻が噂話を始める。
「それで王妃のブーリン様が何て言ったと思う? パンが無ければお菓子を食べればいい・・・だってさ」
「そういう冗談を友達が言ってました」とポカホンタス。
「あの王妃様は本気で言ってると思うわよ。パリの社交界の人だから。王様も折角国教会まで作って前の王妃と離婚したのに、また離婚するんじゃないかって、みんな言ってるわよ」と主人の妻。
店の主人が「まあ、畳と女房は新しいほどいいって言うからなぁ」
そう言った主人にその妻が、いきなり怖い顔になって「あなたってそんな人だったの?」
主人は慌てて「いや、お前は違うから」
コーヒー店主人夫婦の壮絶な夫婦喧嘩が始まった。
身の危険を感じたポカホンタスは「あの、私、帰ります」




