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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第78話 疑惑なお宝

時計塔魔法学校に入学したリラとともに探偵団に入ったポカホンタスは、魔法少女となってドレイク邸に侵入したルパンを追った。

そして魔法少女姿のポカホンタスは、火矢を背負って空を飛んだルパンとともにドレイク邸を脱出し、テームズ河に突っ込んだ。



ずぶ濡れで河から上がるポカホンタス。

服装は既に普段のものに戻っていた。


そんなポカホンタスに、ルパンは言った。

「あんた、ホームズの所の探偵団の子だろ。まあ奴には因縁もある。よろしく言ってくれ。それと、生活費ならカラスよりいい方法がある」

そう言ってポカホンタスに一枚のチラシを渡す。

それはコーヒー店のアルバイト募集だった。



ルパンが去って、ポカホンタスは夜の川岸を見回す。

「ここ、どこだろう」と呟くポカホンタス。


すると一匹の犬が、ついて来いと言わんばかりに目の前で尻尾を振る。

ついて行くと、ある建物の入口に着いた。建物の前に見知った顔の男子。間桐だ。

間桐は犬の頭に手を置くと、犬は一枚の札になった。


彼を見て「間桐さん」と呼びかけるポカホンタス。

間桐は「入りなよ。ここは探偵団のアジトの一つだ」

「さっきの犬は?」とポカホンタス。

「俺がドレイク邸に放った式神さ」と間桐。

ポカホンタスは間桐に連れられて建物に入り、風呂に入って体を温め、着替えて居間へ。

ホームズと他の探偵団のメンバーも居た。



全員揃うと報告会。


先ず、間桐とローラだ。

間桐が「ドレイク邸に大きな動きは無かったです。ただ・・・」

「怪盗ルパンの事?」とポカホンタスが確認。

「それはポカホンタスの方が知ってるよね?」とリラが口を挟む。


「その前に怪しい客が来まして」と間桐。

「誰?」とポカホンタス。

間桐は「あの人、ボンド男爵ですね」

「あいつか。実は暗殺計画の情報の出所はボンドのМ機関なんだ」とホームズ。


そしてローラが「呪殺の形跡も感じませんでした。ただ、不思議な魔力が屋敷の中から・・・。多分、提督の所蔵品だと思います」

「それって、ルパンが持ち去った秘蹟の盃じゃないかと」とポカホンタス。



そしてポカホンタスがドレイク邸で起きた事件について話す。

話を聞いて、ホームズが「聖杯が絡んでいるのか」

「しかも造船所に」とワトソン。

「つまり、それを使って特殊な船を、提督にも内緒で作ってると」とホームズ。

「何のために?」とワトソン。


暫しの沈黙の後、遠坂が言った。

「そうか、解ったぞ。聖遺物って、教会で祀って巡礼客集めるんですよね? 俺たちの故郷に出開帳ってのがあって、地方のお寺がご利益のある偶像を都会に持ち込んで信者に拝ませるんです。そういう目的で海上を移動して、あちこちでお布施を集める移動教会」


「海軍、よっぽどお金に困ってるんですね?」とローラ。

「それで、とうとう宗教にまで手を出して」とリラ。

「何かに憑りつかれているからこれを買ってお祓いを・・・とか言って」とポカホンタス。

「壺とか売り付ける訳だ」と間桐。



ホームズが困り顔で言った。

「いや、違うと思う。多分、魔法で武装した軍艦を建造して、英国海軍を無敵にしようって計画だろう」

「ルパンはそれを盗んで妨害しようと?」と遠坂。

「フランス海軍にでも雇われたんですかね?」と間桐。

だがホームズは「いや、奴は国家のために動くような事はしないよ」


「提督は知らされていなかったんですよね?」とリラ。

「どんな船なのか情報が欲しい」とホームズ。

「探ってみますか?」とワトソン。

ホームズは「私はドレイク提督に掛け合ってみよう」


「私たちは造船所を調べてみます」とローラ。

「軍事機密施設だから、内部に立ち入るのは控えたほうがいい」とホームズ。

「俺は式神を使ってみます」と間桐。

「私は海から探ってみようかと」とリラ。

「そうか、リラは人魚だったね」とポカホンタス。



ホームズがドレイク邸に行き、ドレイク提督に面会する。

そして「ルパンが来たそうですね?」

「探偵の出る幕ではない」とドレイクは迷惑顔。

「軍事機密だからですか?」とホームズ。

ドレイクは「何だと?」

「造船所で魔法で武装した戦艦を建造中とか」とホームズは指摘する。


ドレイクは溜息をつくと「君は口封じという言葉を知っているかね?」

「代りに国家に忠実な組織が動いていると?」とホームズ。

ドレイクは「そういう事だ」


ホームズは言った。

「それはボンド男爵ですね? けれども彼はその国家から監視されて動きを封じられていました。国家機密という事は、敵は我が国を牽制する外国という事になりますが、実は内部で良からぬ事を画策する者が居るとしたら」


「彼の動きを封じているというのは?」とドレイク。

「バッキンガム公ですよ」とホームズ。

「・・・」


ホームズは「この件の背後にモリアーティが居ますね? 彼は傀儡の呪文というのを使います」

「政府内部に奴に魔法で操られている者が居るという事か?」とドレイク。

「そうだとしたら英国の危機です」とホームズ。


ドレイクは暫く考え、そして言った。

「解った。明日、ここに来なさい。彼と引き合わせよう」



リラとポカホンタスが造船所に向かった。

タルタ・ジロキチ・ファフも同行した。


歩きながらタルタが「警備の奴等が絡んできたら、俺がぶっ飛ばしてやる」

リラは困り顔で「騒ぎが大きくなるような事は控えて下さいね」


「タルタは考え無しだから自重した方がいいと思うぞ」とジロキチ。

「ジロキチはどうなんだよ」とタルタ。

ジロキチはドヤ顔で「俺はそんなヘマはしないさ。姿を見た奴は一撃必殺だ」

「そういう物騒なのは止めて下さい」とリラは困り顔。


「大丈夫だよ。ファフがドラゴンの力で造船所ごと証拠隠滅なの」とファフ。

タルタとジロキチは「お前が一番物騒だ」とファフに言った。



造船所はテームズ河の下流の川幅の広い、河口近い所にあり、川岸に隣接している。

リラは人魚の姿で造船所脇の近くから川に入る。造船所のドッグに川水を引き込む導水路には鉄格子。

いくつものドックがあり、一隻の完成した船の入っているドッグの海への扉が開いている。


リラは水中を通って、扉が空いて導水中のドッグに入る。

船の脇を通ってドッグの奥に。その煉瓦の壁の向こうから、何か特殊な魔力を感じた。


水から上がるリラに「どうだった?」とポカホンタス。

リラは言った。

「この造船所の見取り図って、あるのかな?」



引き上げるリラたちを遠くから見ていた一人の男が居た。ルパンだ。

向うに造船所のドッグが見える。


リラたちが去ると、ルパンは秘蹟の盃を取り出し、それを持って造船所に向かって歩く。

間近まで来た時、盃が反応した。

「やはりな」と呟くルパン。


その時、一人の女性が彼に近付いた。

そして「美しい器ですね? 美術品ですか?」

「贋作ですよ」とルパンは事も無げに答える。

「けど、美しいものを模ったんですよね?」


ルパンは女性に「こういうの、お好きで?」

女性は「オリエントに行った事があるのですが、向こうの雰囲気と同じものを感じます。こうして海を見てると、この海を渡ってあそこまで行けるんだな・・・って」


「あなたは?」とルパン。

女性は「ジェーンと申します」

ルパンは「俺はアルセーヌ」

「フランスの方ですか?」と女性は問う。


ルパンはその盃に興味を示したらしい女性に「そうですよ。よろしければ、これ、差し上げましょうか?」

女性は慌てて「そんな」と遠慮してみせる。

「実はある目的で手に入れたんですが、目的は達したんで」とルパン。

「これから食事でも」と女性はルパンを誘った。



そして、その夜・・・。


ボンド男爵邸。秘蹟の盃を前にして、ボンドは言った。

「これが聖杯のレプリカだな?」

彼の脇には、ルパンからその盃を受け取ったジェーン。

「はい。造船所でオリジナルに反応したのも見ました」と彼女は答える。


ボンドは「Lの様子はどうだ?」

「とりあえず手の内に確保したかと」とジェーン。

「だが、もしかしたら君の正体に気付いているかも知らん。注意は怠るな」とボンド。

「はい」とジェーン。


「とにかくよくやった。七番、これからも頼む」とボンド。

ジェーンは「命に代えても」



マーリンは相変わらず時計塔に入り浸り、教授たちの弱みを握って女王様状態で好き勝手やっている。 

魔道具科のリガルディ教授の研究室に向かうマーリン。


リガルディの研究室から一人の男性が出て来て、マーリンとすれ違う。

彼を見てマーリンは思った。

(凄いイケメン)

手に持つ箱から異様な魔力を感じる。

マーリンは、そっと小さな使い魔を放ち、彼をつけさせる。


研究室に入るマーリン。

「マーリン君、何か用かね?」と困り顔のリガルディ教授。


マーリンは「恩師に合いに来た可愛い教え子に、冷た過ぎません?」

「ただ会いに来た・・・という訳では無いのだろう? 先日渡した丸薬転移の魔道具に不具合でも?」とリガルディ。

マーリンは「いえ、とても良い性能でしたわ。それで、先生に聞きたい事があるんですけど」

「な・・・何かね?」とリガルディ。

「さっき出ていかれた素敵な男性、彼は何者ですか?」とマーリン。


リガルディは「何だ、そういう事か。諜報局のボンド男爵だよ」

「諜報局の方が? 何の要件でここに?」とマーリン。

「そ・・・それは」とリガルディは口ごもる。

マーリンは「軍事用の魔道具の開発とか?」

「ま・・・まさかそんな。あは、あははは。それはだな、そう。外国のスパイ対策に使える魔法についてだよ」とリガルディ。


マーリンは「それであの人って・・・」

「(ギクッ)な・・・何かね?」とリガルディ。

「どんな女性が好みなんですか?」とマーリン。


リガルディ教授唖然。

そして「つまり彼を落とそうと? あれは止めておいた方がいい。女性を道具としか見ていない」

「そういう手強い男性ほど落としがいがあると思いません?。それで、連絡先とか」とマーリン。

「何せ彼はスパイだからなぁ」と困り顔のリガルディ。


マーリンが部屋を出ると、リガルディ教授は呟いた。

(まさか、彼からあの件を探ろうというつもりじゃないだろうな)



マーリンは街に出ると、使い魔を辿ってボンド男爵を見つけた。

コーヒー店で女性と同席するボンド。しばらく話と、ボンドは女性から何かを渡されて、別れ際にキス。


コーヒー店を出て公園に行くボンド。

そこで別の女性と合流し、しばらく話し込むボンド。また女性から何かを渡されて、別れ際にキス。

マーリンは脳内で呟く。

(なるほど、そこら中に女が居るって事ね。それなら・・・)


女性と別れたボンドに、マーリンは話しかけた。

「男爵様」

「君は?」とボンド。

マーリンは「お忘れですか? あんなに乱暴に扱った私の事を」


しらじらしく話すマーリンの様子を見てボンドは思った。

(もしかして敵の手の者か? なら、落として手駒にして情報を聞き出してやる)



ホテルでマーリンと向かい合って食事するボンド。

グラスを持って互いに見つめ合う二人。


「君の瞳に」と言って、謎めいた笑顔を見せるボンドは、隙を見てマーリンのグラスに自白剤を一粒。

「あなたの眼差しに」と言って、艶やかな笑顔を見せるマーリンは、リガルディに作らせた転移の魔道具で、隙を見てボンドのグラスに媚薬を一粒。

グラスのワインを口にしたマーリンは、やがてそのまま寝落ちする。



ボンドはホテルの一室を借りて、マーリンをベットに運ぶ。

そして自白の呪文を唱えて尋問開始。


「君はどこから来た?」

そう訊ねるボンドに、無意識状態のマーリンは「ポルタよ」

「何を知っている?」

そう訊ねるボンドにマーリンは「あなたの魅力」

ボンドは(何だそりゃ)と脳内で呟く。


「君の主は?」

そう訊ねるボンドにマーリンは「私は恋の奴隷よ」

ボンドは(何だそりゃ)と脳内で呟く。


「君の目的は?」

そう訊ねるボンドにマーリンは「イケメン千人切り」

ボンド唖然。そして呟いた。

「こいつ、ただの恋愛脳じゃないか。こんな女、適当に遊んだらさっさと放り出して・・・あれ?」


自分の体調の異変に気付くボンド。頭が朦朧とする。



「あーよく寝た」と言いながらマーリン目を覚まし、大きく伸びをする。

そして傍らで、意識の混濁に抗うボンドを見て、言った。

「あら、ボンドさん」

ボンドは「体がおかしい。俺に何を飲ませた?」と呻くように・・・。

そんなボンドにマーリンは「自分に素直になれるお薬よ。さぁ、野獣におなりなさい」



翌朝、ボンドはそのベットの上で目を覚ました。

そして「うー頭痛てー」



ホテルを出て屋敷に戻るボンド。

しばらくすると、自室の伝声管からメッセージの声。

「ミスターМ、四番です」

「入りなさい」

そう答えると、メッセージの主は裏口から屋敷に入る。若い女性だ。そして彼女は彼の部屋へ。


「アジトは確認しました」

そう報告する女性に、ボンドは「ご苦労。例の概念図はありそうか?」

「関係装備の制作拠点に使われていますので、恐らく」と女性は答える。

ボンドは「では、近々入手の段どりを組もう。英国の明日がかかっている。頼んだぞ」

「命に代えても」と、その女性は言った。


その時、玄関から「ボンドさん、お届け物です」

「こんな時に」と訝るボンド。

女性は「私が出ます」



玄関に居たのはマーリンだった。

彼女は応対に出た女性を見て「あら、先客だったかしら」

「どちらさま?」と女性は訝る。


マーリンは「ボンド男爵さん、いらっしゃる?」

女性は「届け物でしたら私が。それで何を?」

「極上の恋人を」とマーリン。

女性はあきれ顔で「はぁ?」


只ならぬ様子にボンド本人が玄関へ。

そしてマーリンを見て「君は昨日の・・・」

マーリンは得意顔で「とても情熱的な夜でしたよね」

「いや、あれは」と口ごもるボンド。


「こんな風に」

そう言ってマーリンは、記憶の魔道具で昨晩の濡れ場を再現。

ボンドは慌てて「止めろ」


映像を見てうろたえる女性を見て、マーリンは「そちらの女性も・・・ですよね?」とボンドに・・・。

そして彼女は女性に「どうですか。これから3Pって事で」

「帰れ」

そう言ってマーリンをつまみ出すボンド。



そんな馬鹿騒ぎが収まると、その四番と呼ばれた女性は、困り顔のボンドに訊ねた。

「あの、ミスターМ、あの人って」

ボンドは憮然とした顔で「ただの恋愛脳女だ」


女性は「けど、ここがボンド男爵の屋敷だって事は秘密になってる筈ですが」

「あ・・・」

ボンド唖然。そして思った。

(あの女、いったい何なんだ)


その後ボンド男爵、通称ミスターМは、行く先々でマーリンに追い回される事になった。

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