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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第74話 子孫と御先祖

魔剣の謎を解くためアーサーの故郷を訪れ、若き日のポルタ初代王アルフォンスの居た時代へと転移したエンリ王子。


ウィリアム王の軍に襲われた村を救うべく、エンリ王子はファフのドラゴンで王軍を脅し、リラのセイレーンボイスで眠らせて制圧した。

そしてエンリの説得で王軍は引き上げ、虐殺行為が終ったとイングランドに広まった。

あの湖の近くの村でアルフォンスが救った村人たちも、安全となった村に戻った。



エンリたちはカンタベリーへと戻る。


帰路を旅しながらアルフォンスは訊ねた。

「さっき予言とか言ってたが、あれは本当か?」

「まあな」と、勿体付けるエンリ王子。

アルフォンスはエンリに「お前は何物なんだ?」

「そのうち解るさ」と、勿体付けるエンリ王子。



カンタベリーの教会学校に戻る。

アルフォンスがランフランクスの所に行くと、彼は引っ越しの準備に追われていた。

ランフランクスは言った。

「ウィリアム王の招きで、ロンドンに行って学校を創る事になった。建設中の時計塔が校舎に使われるそうだ。アルフォンス君も来るかね?」

「それより、聖剣について何か解りましたか?」とエンリ。

「そうだったね」


そう言ってランフランクスは、二人の前に聖剣を出して、言った。

「確かにこれは古代イングランド王の剣だ。精霊の世界と繋がる霊的回路が仕込まれていて、様々な属性の魔力を取り込む仕様になっている。その回路を通じて、力そのものと融合する事も出来るらしい。大地と融合したのもそのためだろうね」


そしてエンリに言った。

「エンリさん、あなたは魔力がありませんね? 貴族や王族は大抵、多かれ少なかれ魔力を持っている。だが、あなたは魔力が無いのではなく、この剣と繋がる事に特化しているようだ」

「俺はこれを使うために産まれてきたと?」と、唖然とした顔でエンリは言った。


それを聞いてアルフォンスはエンリに言った。

「そういう事なら、これはお前が持っていろ」

エンリは「いや、俺は実は既に持ってて、元居た所にあるんだ」

「元居た所って?」と怪訝そうに言うアルフォンス。



その時、アルフォンスが腰に下げていた瓶が強い光を放ち、その中の精が語った。

「ポルタ王太子エンリ。ここでお別れです。樫の木の精との盟約により、時を越えて来たあなた達を元の時間に戻します」

アルフォンス唖然。そして言った。

「ちょっと待て。時を越えてって。お前は一体何者だ」


エンリはアルフォンスに「予言しよう。あなたはやがて王になる。その国はいつか、世界を切り開く偉大な存在になるだろう」

アルフォンスは「お前はいったい・・・」

エンリは「さよならだ。御先祖」

ファフは「楽しかったよ。主様」

リラは「立派な王様になって下さいね」


エンリたち三人の視界がぼやける。彼等に呼び掛けるアルフォンスの声が遠くなる。

そんな中でリラの耳に、湖の精の最後の呼びかけが届いた。

「リラさん。あなたは人魚ですよね。水に住む魔物は水魔法に特性があります。学んでみてはどうですか?」



三人の姿が消え、その場に残されたランフランクスとアルフォンス。

ランフランクスは言った。

「実に興味深い現象だ。時間転移とは・・・。ロンドンに云ったら、早速研究せねば」

そしてアルフォンスは呟いた。

「そういう事か」


「これからどうしますか?」と瓶の中の精がアルフォンスに訊ねる。

「ブルゴーニュに帰ろう。そして親父の居るイベリアに行くぞ」とアルフォンス。

「お供します。主様」と瓶の中の精。

「あそこにもドラゴンが出るんだそうだ」とアルフォンス。

「退治するんですか?」と瓶の中の精。


アルフォンスは言った。

「いや、きっとあのファフって子みたいに美少女の姿になれるんだ」 



エンリ・リラ・ファフの三人は、気が付くと樫の木の根本に居た。

突然現れた3人に驚く仲間たち。

タルタが「お前ら、どこに行ってた?」

ジロキチが「いきなり消えてびっくりしたぞ」


エンリは彼等に「あれからどのくらい経った?」

「五分くらいよね」とニケ。

「まだそんなしか経ってないのか?」とエンリ唖然。

アーサーは「時空を越えて別の世界や時代に行くと、時間の流れが異なるのでしょうね。ところで、魔剣の事、何か解りましたか?」


エンリは言った。

「まあな。それより聞いてくれ。俺はやっぱりロリコンじゃなかった。ファフが言ってた"幼女の姿が理想"ってのは俺じゃなくて、こいつが最初に臣従した初代ポルタ王のことだったんだよ・・・ってお前ら、何だよその顔は」

残念な視線がエンリ王子に集中する。



アーサーが残念そうにエンリに言った。

「あの、王子。いくらロリコン認定が恥ずかしいからって、よりによってご先祖に罪を擦り付けるとか、人としてどうかと思います」

エンリは「ちょっと待て。いや、そうじゃなくて」


「男らしくないわね」とニケ。

「違うって」とエンリ。

「見損なったぞ」とタルタ。

エンリは「だから・・・」

リラは「王子様がロリコンでも私の愛は変わりません」

「姫まで・・・。おいファフ、何とか言え」と言ってファフの肩を揺する。


そんなエンリを他所に、ファフは緩んだ表情でぼーっとしながら、明後日の方を見て呟いていた。

「アルフォンス様、かっこよかったなぁ」



その後、しばらく村に滞在するエンリ王子たち。

アーサーは長老の元で魔術修行のやり直し。

「魔力腕立て伏せ100回、それが終わったら魔力スクワット100回だ」と気合を入れる長老。

アーサーは「勘弁して下さいよ」

上半身裸でしごかれているアーサーの全身に謎の文様と古代文字が描かれている。


そんな様子を傍で見物する仲間たち。

タルタが「あれが魔術修行かよ」

ジロキチが「傍から見ると、ただの筋トレだが」

エンリが「あの胸とかに書いてる落書きは?」

「筋力を魔力に変換する呪式文様よ。あれで基礎魔力を高めるの」とマーリンが解説。



アーサー以外の仲間たちは、村でのんびりバカンス気分。


カルロは村の女性たちに手を出しまくって、男性たちの反感を買った。

マーリンは村の男性を誘いまくって、女性たちの反感を買った。

ニケは首都で流行していると称して、古着を高値で売り付けるアコギな商売を始めた。

ジロキチはアーサー流剣術道場で道場破り。

タルタとファフは食堂に居座って王子のツケで食べ放題。


仲間が周囲に迷惑をかけまくっていると知ったエンリ王子は、ついに村を出る決意をした。



村を出る馬車の中でエンリ王子は、アーサーを見て、言った。

「なあ、アーサー、そのギプスみたいなのって・・・」

アーサーの肩から胸部に取り付けられたそれは、あちこちにバネのようなものがついている。

「大魔導士養成ギプスです。長老から当分外すなと言われていて、魔力が一定以上に達しないと外れない呪いがかかっているんです」と頭痛顔のアーサー。

「アーサー、動きにくそう」とファフ。


そんな中でリラが「ところでアーサーさん、お願いがあるのですが」

「何かな?」とアーサー。

リラは言った。

「水魔法を教わりたいんです。過去の時代で会った湖の精霊に、私みたいな水中に住む魔物は水魔法の特性があるから学んだらどうかと勧められまして。教えて貰えませんか」


「なるほどね。けど、魔法を教わるなら、ちゃんとした学校に行った方がいい。ロンドンに魔法を学べる学校があるんだ」とアーサー。

「アーサーさんが通っていたっていう、時計塔魔法学校ですか?」とリラが眼を輝かせる。

タルタが「キャンパスライフって訳か」

ニケが「同年代の友達もできるし、きっと楽しいわよ」

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