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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第72話 殺戮の軍団

イギリス古代王の聖剣だったという魔剣の謎を探るべく、仲間たちとともにアーサーの故郷ペンドラゴン村へ来たエンリ王子は、初代マーリンの記憶を封じた樫の木に長老がかけた"書庫の呪文"の暴走により、リラとファフとともに若き日のポルタ初代王の居る過去の時代へと転移した。


湖を去って帰路を歩くエンリ、リラ、アルフォンス、ファフの四人。

アルフォンスが腰に下げたガラス瓶の中の小さな湖の精が、ファフと楽しそうにおしゃべり。

(本当に持ってきちゃったよ)とエンリは呟く。

そしてアルフォンスが手に持つ聖剣は、まさにあの魔剣だ。


エンリはアルフォンスに言った。

「お前、それが何だか解ってるのか?」

「解るさ。相当な名剣だ」とアルフォンス。

(やっぱり解ってないな)とエンリは呟く。



歩きながらアルフォンスはエンリに言った。

「とりあえず俺は宿に帰るが、お前らはどうする」

「ファフ、アルフォンス様と一緒に居たい」

そう言ってアルフォンスに纏わりつくファフを見て、エンリは「まあ、行く当ても無いし」

アルフォンスは「だったら俺と一緒に来い」とエンリに・・・。

「冒険の旅か?」

そうエンリが言うと、アルフォンスは「とりあえず魔法を勉強するのさ・・・って言っても、お前、魔力が無かったんだよな」


その時、リラが言った。

「王子様、何か様子が変です」

行く先に煙が見える。それを見てアルフォンスの顔色が変わる。

そして「あれは村の方角だぞ」


エンリは「まさか、さっき言ってた王軍か?」

村へと急ぐ四人。



村が襲われてる。

武装した軍勢が村人を追い立て、町のあちこちで火の手が上がっている。


指揮官らしき男が叫んでいる。

「反乱に加担した可能性がある。一人も逃がすな」

「私たちは何もしていません」と訴える村人。

「言い訳はあの世で言え」と言って村人を切り殺す兵士。


アルフォンスの表情は怒りに染まり、「あいつ等、何て事を」と呟く。

向うに、幼い少女を庇う父親に向けて、剣を振り上げる兵。

それを見たアルフォンスは「止めろ」と叫んで突進し、兵を切り捨てた。


騎馬の指揮官がアルフォンスを見て「反乱兵が居たぞ。奴を殺せ」と叫ぶ。

四方から群がる敵を一瞬で切り伏せるアルフォンス。



やがてエンリたち四人は無数の敵に囲まれた。

アルフォンスが兵たちに向かって叫んだ。

「罪も無い村人をこんなに殺して、何が王様だ!」

敵の指揮官は「お前のような反乱分子の巻き添えになったんだろうが」

「俺はフランスから来た留学生だ。反乱など知らん」とアルフォンス。


「アルフォンス、この数、まずくないか?」

そうエンリが言うと、アルフォンスは自分の剣と魔剣を握って言った。

「すまんな、巻き添え食わせちまった。お前には俺の剣を貸してやる。二人を守って血路を開け。せっかく湖で貰った剣だが、最初で最後の晴れ舞台だ。この極悪人どもを全員道連れにしてやる」


するとエンリは「いや、借りるんならそっちの剣だ」と言って魔剣を指した。

アルフォンスは「おいおい、そりゃ図々し過ぎだろ」



「おまえ、こいつの使い方、知らんだろ」

そう言ってエンリは魔剣を取ると、鞘から抜きざまに叫んだ。

「炎あれ!」

炎の刃が敵兵をなぎ倒す。


アルフォンスは唖然とした顔で炎に包まれた魔剣の剣身を見て「お前、それ・・・」

エンリはドヤ顔で「俺だってやる時はやるさ」


「だったら俺も」

そう言うと、アルフォンスはシルフブレードの魔法を放つ。

いくつもの風の刃が宙を舞い、敵兵たちに襲いかかった。



ウィリアム王の軍を追い散らすエンリとアルフォンス。

その間、リラは精霊の小瓶を持って村中を回り、精霊の水魔法で家々の火を消し止めた。


危機が去ると、村人は二人に言った。

「ありがとうございます。ですが、嫌疑をかけられた以上、また彼等は来るでしょう。私たちはここを去って、安住の地を求めます」

父親の上着の裾を握る少女がアルフォンスに「お兄ちゃん、元気でね」


去って行く村人たちを見ながらエンリは「あの人達、どうなるのかな」と呟く。

そんなエンリにアルフォンスは言った。

「ところでエンリ、お前、この剣の事を知っていたのか?」

エンリは思った。

(子孫だって言っても信じないだろうな)


そしてエンリは「同じものを前に見たんだ。使い方を教えてやるよ」

「まあ、それは有難いが、同行する間は預ける。お前、魔力は無くとも、これは使えるみたいだからな」とアルフォンス。

「まあな、王族や貴族は多かれ少なかれ魔力を持っている。俺みたいなのは落ちこぼれさ」とエンリ。


するとアルフォンスは「無い方がいいのかも知れん」

エンリは怪訝そうな顔で「何でさ」


アルフォンスは言った。

「世界にはいろんな不思議がある。だがそれには理由がある。それを俺たちは知らないだけなのさ。それを調べて解き明かして利用すれば、何だって出来る。そうなれば魔法なんて不要になる。そんな時代を切り開くのは、多分、お前みたいな奴なんだろうな」

「お前、その言葉・・・」とエンリ。

「学んでる先生が言ってた」とアルフォンス。

エンリは「そーいやお前、留学生って言ってたな」



アルフォンスはカンタベリーに向った。エンリ王子たちも同行する。


カンタベリーに着き、教会の隣の、その建物の前で、アルフォンスは言った。

「ここの学校に留学しているんだ。大司教のランフランクスって人が作った学校でね」


エンリは「学ぶったって神学だろ?」

「論理学もやってる」とアルフォンス。

エンリは「論理学ねぇ。それって詭弁学って奴じゃないのか?」

「そうとも言う」とアルフォンス。

「否定しないのかよ」とエンリ。

「それと魔法な。俺はここに魔法を教わりに来たんだ」とアルフォンスは言った。



ランフランクスに会うアルフォンスとエンリ。

ランフランクスはアルフォンスに言った。

「湖の精には会えたのかい?」

「これです」と言ってアルフォンスが出した小瓶の中の女の子の姿が話しかける。

「こんにちは」


ランフランクスはそれを見て「確かに水の精霊・・・というより妖精だね。君は水を操る事が出来るのかい?」

「出来ますよ」と湖の精は言って、瓶の中の水と一緒に、瓶から出て宙に浮いてみせる。

「これは興味深い。この水は君の居た湖のものだね?」とランフランクス。

湖の精は「はい。これだけしか持ってこれなかったんで、あまり大きな事は出来ないのですが」


アルフォンスは「それと先生、聖剣というのを手に入れたのですが」

エンリが剣を出す。そしてエンリが言った。

「これって古代イギリス王の剣ですよね?」

ランフランクスはそれに答えて「そうだろうね。あれは王の死後、家来がその遺言で湖に沈めたものだ。その湖が、この妖精の居た所だったという事なんだろうな。少し調べてみたいのだが、預からせて貰っていいかね?」



聖剣をランフランクスに預け、彼の元を後にする。

大学の建物を出た所で、アルフォンスは言った。

「俺はここの寮に戻るが、お前はどうする?」

「とりあえず宿屋を探すさ」とエンリは笑った。



その夜、寮のアルフォンスの部屋に、王軍の兵士たちが押し入った。

「留学生のアルフォンス。王の軍に歯向かった嫌疑で逮捕する」

そう兵士に告げられたアルフォンスは、湖の精の小瓶の蓋を外して妖精に言った。

「後を頼む」


兵士たちが彼を連行して去ると、妖精は水とともに宙を浮き、外の水路にに入り、水路を辿ってエンリ王子の所に来た。

そして「アルフォンスさんが兵士に掴まりました。彼を助けて下さい」


エンリは「奴の居場所は解るか?」

妖精は「気配を辿る事は出来ます。案内します」

「よし。どうせ兵営にでも居るんだろう。乗り込んで救出するぞ」とエンリは気勢を上げる。


だが、リラがエンリに「ですが、魔剣がありません」

「普通の剣でいいさ」とエンリ。

「アルフォンスさんも剣を取り上げられたと思います」とリラ。



エンリは妖精を水とともに適当な小瓶に入れ、リラとファフを連れて宿屋を出た。

武器屋を叩き起こして剣を二本買う。


妖精がアルフォンスの気配を辿ると、案の定、兵営だった。

「門番が居ますが、押し通りますか?」とリラがエンリに・・・。

エンリは「騒ぎになると探すのが大変になる。あの門番を眠らせる事は出来るか?」とリラに・・・。

「大丈夫だと思います」とリラが答える。



リラは門番に姿を見せて「あの、兵隊さん、お願いがあるのですが」

「どうした? お嬢さん」

無警戒で話を聞こうと近づく二人の門番の耳元でリラは小声で歌い、セイレーンボイスで眠らせた。


妖精の案内で兵営内を歩く中、兵隊に出くわすとリラが同じやり方で眠らせる。

「こっちです」

そう言ってエンリたちを誘導する妖精。


アルフォンスは地下牢に居た。牢番を眠らせて鍵を奪う。

エンリは「助けに来たぞ」

「ありがたい。だが、軍に逆らった以上、この国には居られない」とアルフォンス。

「フランスに逃げるか?」とエンリ。



アルフォンスに剣を渡して地下牢を出ると、門番が眠ってるのに気づかれて騒ぎになっていた。

「スリープの魔法で侵入した奴が居る。探し出して捕えろ」と王軍の指揮官が部下に激を飛ばしている。

兵営内を走り回る王軍兵士。


物陰に隠れる4人。リラはエンリに「どうしますか?」

「血路を開くさ」と、エンリとアルフォンスは口を揃える。

「なら、またセイレーンボイスで」とリラ。

「ファフがドラゴンで」とファフ。

だがエンリは「そういう奥の手はなるべくとっておきたい」


アルフォンスとエンリは剣を振るって兵士たちを切り伏せ、馬を二頭奪って兵営を出た。

エンリの馬にはリラ、アルフォンスの馬にはファフを乗せる。

嬉しそうにアルフォンスにしがみ付くファフ。


「兵営にしちゃ、兵隊の数が少なく無かったか?」とエンリ。

「こっちにとっては有難いけどな」とアルフォンス。

エンリは「このまま港に向かうぞ」



港に着くが、警備が無い。

エンリは「これなら楽に脱出できそうだ」

「けど、何でこんなに警備が手薄なんだ?」とアルフォンス。


港の警備所に行くと、警備兵は一人だ。アルフォンスが自白の魔法を使う。

警備兵は朦朧とした意識の中で答えた。

「軍が大規模な掃討作戦を。それで兵隊が出払っているんです」



エンリは言った。

「この隙に脱出するか?」

「けど、それでいいのか? またあの惨状が繰り返される」とアルフォンス。

「なら、助けに行くか?」とエンリ。


アルフォンスは「助けに行こう。大勢の女の子たちが待ってる」

「助けたいのは女の子だけかよ」とエンリ。

「女の子の父親も助けるぞ。彼女たちにとって必要だ」とアルフォンス。

「女の子と家族だけか?」とエンリ。


アルフォンスは言った。

「同じ村の人たちだって彼女等には必要だ。男は死ねばいいとか言う屑は、女の子も含めた全員にとっての敵だ」

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