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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第67話 女性の軍団

イザベラの依頼で、イギリスのリチャード王残党軍に加担したエンリ王子。

反乱とは名ばかりの嫌がらせ的な抵抗を続けてきた残党軍に、ロンドン塔から脱出したメアリ王女が参加した事で、状況は一変した。

そしてヘンリー王が派遣した軍が討伐に来るとの情報が入った。



エンリ王子たちも交えて対策を練る。

「どうやって迎え打とう」とリチャード先王。

「森に立て籠もって籠城戦って事になるのか?」とエンリ。

「損害が出るわね」とアン王妃。

「覚悟の上です」とメアリ王女。

「どうせ死ぬのは俺たち傭兵だもんな」とロビンが溜息をつく。


その時、マーリンが言った。

「要は王軍を撃退して、こちらの力を世界に見せつければいいんじゃないかしら」

「世界って?」とエンリ。


マーリンは語った。

「イギリスはヘンリー王が掌握している。けど、ユーロ各地から味方を募る事は出来るわ。アン先王妃の名で各国の王室の女性に裏で呼びかけているの。私たち女性の力を示せば彼女たちがイギリスに結集する。ここを拠点にユーロの女性を解放する事だって出来る。名付けてスカートの同盟」

メアリは「素晴らしいわ、マーリンさん」

「私たちの時代を作るのよ」とマーリン。

メアリは「お姉さまと呼んでいいですか」

「いい子ね」とマーリン。


そんなマーリンを見て、エンリと仲間たちは一様に思った。

(マーリンってあんなキャラだっけ?)



傭兵が集められ、武器が運び込まれる。

それまでとは打って変わった多くの傭兵を見て、タルタはロビンに問うた。

「どこからこんなに集まったんだ?」

「奴等は元々農民だよ」と傭兵隊長のロビン。

「もしかしてあんたも?」とタルタ。

ロビンは「まあ、そんな所さ。狩りが好きで弓矢が得意って事で、こんな所に居付いちゃったけどね」


タルタは「けど、元々はみんな、実家に畑とかあるんだよね?」

「みんな、追い出されたのさ」とロビン。

「誰に?」とタルタ。

「羊にさ」とロビン。

「はぁ?」とタルタは言うと、二本足の羊魔獣が人間を襲う場面を空想した。

そして「羊魔獣でも出るのか?」


ロビンは笑って言った。

「そんなの居ないから。対岸のオランダが毛織物の産地だよね。そこに羊毛を持って行けば売れる。それで地主領主が畑を潰して牧場にするため、農民を追い出す」

タルタは「じゃ、この内乱が終わったら、お前らはどうするんだ?」

「どうするかなぁ」とロビン。

「海賊になるってのはどうよ」とタルタ。

「いいね。それで世界中に冒険の旅か」とロビン。

「俺たちの仲間になるか? 歓迎するぞ」とタルタ。


ロビンは「そーいや、お前らって海賊なのか?」

「まあな」とタルタ。

「略奪とかするのか?」とロビン。

タルタは「っていうより、宝さがしさ。ひとつながりの大秘宝ってのを探してる」

「見つかるといいな」とロビン。

タルタは言った。

「見つけたよ。けど、その片割れがまだ世界中にある。それをこれから探すのさ」



王軍を迎え撃つため出撃するリチャードの軍勢。

王の軍は二手に分かれて森に迫るという。


方針を決める軍議は紛糾した。

「こちらも二手に分かれるのか?」とエンリ。

「元々滅茶苦茶劣勢なんだが、まとまって各個撃破狙ったほうが良くないか?」とロビン。

「エンリさんに何か秘策とか、あるのですよね?」とアン。

エンリは「そんなものは無いが」


するとマーリンが「一方はファフのドラゴンでやれるんじゃ・・・」

「いや、あれは」とエンリが躊躇う。

「国教会の統一教義で公認しているわよね?」とマーリン。

「確かに。で、もう一方は?」とエンリ。

マーリンが「人魚姫がセイレーンボイスで眠らせる事が出来るわ」



ファフ・アーサー・ニケ・ジロキチが参加した部隊が、進軍してくる王軍の一方を迎え撃つ。

ファフがドラゴンになって王軍を威嚇する。

「ドラゴンだー逃げろー」

そう叫んで、蜘蛛の子を散らすように逃げていく王軍兵士。


ジロキチは人間の姿で戻って来たファフに「どうせなら炎で焼き払ってやったらどうよ」

するとファフは「追っ払うだけでいいってマーリンが言ったの」

ニケは「こんなので褒賞、ちゃんと出るの?」


アーサーは思った。

(もしかしてマーリン、イザベラに何か言われた? それに王軍も簡単に逃げ過ぎだろ)


そんなファフを馬上から見るリチャードは思った。

(あの少女がドラゴンだと? あれは悪魔の使いの筈だ)



エンリ王子・レラ・マーリン・タルタ・カルロが参加する部隊。

進軍してくる王軍の部隊に向けて、レラが人魚の歌を使う。

バタバタと倒れて眠りにつく王軍兵士たち。


兵士たちが目覚めた時、一か所に集められて縛られていた。

彼等に弓矢や槍を突き付ける残党軍兵士たち。

マーリンが言った。

「今回だけは見逃してあげるわ。命が惜しくばさっさと帰りなさい」


退散する王軍を見送りながら、エンリ王子はマーリンに言った。

「逃がして良かったのかよ」

「いいのよ」とマーリン。



王軍を撃退した二つの部隊が帰還する。

タルタがジロキチに「首尾はどうよ」

「ばっちり」とジロキチ。


ファフがエンリに「主様、ファフが敵を追っ払ったんだよ」

「偉いぞファフ」とエンリ王子。

「頭撫でて」とファフが甘える。


エンリに頭を撫でられて気持ち良さそうにしているファフ。

そんな二人を見てリチャードは思った。

(あのエンリという男。悪魔の使いとあんなに睦まじく・・・。もしかしたら、この男なら)



残党軍が王軍を撃退すると、ヨークの館に居た王軍は、館を捨てて首都へ戻った。

ヨークの館を拠点とした彼女たちは、各国の女性権力者たちに"スカートの同盟"への参加を呼び掛けた。


各国からこれに応じる参加者が名乗りを上げた。

ドイツ帝国からは新皇帝テレジア女帝。

ロシアからはエリザベータ女帝。

フランスからはポンパドール夫人。

スパニアのイザベラ女帝。

そしてドイツ諸侯やイタリア貴族の公女や女性領主など。


彼女たちの多くは、スパニア内乱で勢力を削られた人たちの身内だった。



ユーロ各地の女性達とともに乗り込んできたイザベラ女帝に、エンリ王子は言った。

「妊娠中なのにこんな所まで来て大丈夫なのかよ」

イザベラは「こんな面白い見世物。見逃す手は無いと思わない?」


その時、一人の女性がイザベラに話しかけた。

「あら、イザベラ様」

「ご機嫌よう、ポンパドール夫人」とイザベラ。


エンリは彼女を見て「誰?」とイザベラに・・・。

イザベラは「ルイ陛下の親友で、ポンパドール夫人よ。フランスの宮廷で大きな影響力を持つわ」とエンリに説明。

エンリは「あの人に女性の友人なんて居るのかよ」



イザベラはポンパドール夫人に「紹介するわ。私の夫、ポルタのエンリ王太子よ」

「初めまして。ポンパドールと申します」と、ポンパドールはエンリに・・・。

エンリは「これはどうも、ところでルイ陛下って・・・」


ポンパドールは言った。

「ホモが嫌いな女は居ないわ。性欲を越えた男性どうしの愛、素敵じゃないですか」

エンリ唖然。そして(この人って、腐女子ってやつかよ)と脳内で呟く。


するとポンパドールは「エンリ殿下も彼の恋人の一人ですわよね?」

エンリは慌てて「違いますよ。俺はノーマルです」と否定する。

「だってこれ」

そう言って、ポンパドール夫人は記憶の魔道具を出して映像を再生した。

場面は、ポルタでの会見の席でのルイ王とエンリの友情のハグ。ルイ王の手がエンリのお尻をスリスリ。



「王子ってそーいう趣味もあったの?」とタルタ。

エンリは「違うだろ。お前ら見てたよな。明らかに誤解だって」

「そーだっけ?」とタルタ。

「お魚フェチにロリコンにホモ。変態の三重奏」とニケ。

「こんなのが次期国王でポルタ、大丈夫か」とジロキチ。


エンリは「だから違うって。誰だよこんなの録画した奴は。肖像権の侵害で訴えてやる」

「スパニアの諜報局じゃないんですか?」とカルロはしれっと言う。

「そーいやカルロ、お前もスパイだったよな?」とエンリはカルロに・・・。

カルロは「俺じゃないですよ。ルイ王が他国の王族に手を出した時に記憶の魔道具で録画したら一件につき金貨五枚なんて依頼、受けてませんから」

「俺、何も言ってないが」とエンリ。


カルロは「あ・・・ってか別にホモだって解説付けてる訳じゃないし、こういう場面があったってだけですよ」

「事実陳列罪は死刑な」とエンリ。

「そんな法律ありませんよ」とアーサー。

エンリは「これから作る。俺は王太子だ」

「今から作ったって不可遡及の原則に引っかかりますよ」とアーサーは困り顔で言った。

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