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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第06話 財宝の孤島

航海士のニケを仲間に加えたエンリ王子たちは、本格的に海に乗り出した。

最初の目的地が、迷宮島である。



その場所に船が向かう、その船室で、エンリたちが会議の真っ最中。

「迷宮って事は、ダンジョン探索とかやる訳だよね?」とタルタがワクワク顔でエンリに言った。

「大きな島の地下に広大な地下通路が入り組んで、真ん中にラスボスの居る大部屋が・・・」とジロキチもワクワク顔。

「いや、小さな岩礁みたいな島だ」とエンリはバッサリ。

タルタは「でも地下には・・・」

「この船室くらいの小さな洞窟だ。そこに財宝が眠っているっていう、ポルタ王家に伝わる伝説があるんだ」とエンリが語る。


「それを誰かが見たとか?」とジロキチ。

「だったら見た人が持って行くんじゃ・・・」とタルタ。

エンリは言った。

「納めたっていうんだ。初代王がね。知っての通り、ポルタは小さな国だが海上交易で発展してきた。その力の源がその財宝の魔力だとしたら」

「それがひとつながいの大秘宝って事も」とアーサー。


タルタは身を乗り出して「どこにあるんだ?」

「この海図だと、ポルタから見て西の海上にあるとしか・・・」と、広げた図面を指しながらエンリが言う。

「とにかく、そのあたりに島があるのよね?」とニケ。



海図に書かれたあたりに来るが・・・。


周囲を見渡す仲間たち。

「島、無いですね」とアーサー。

「もう少し西を探してみようよ」とタルタ。

「いや、北に行った所に」とジロキチ。

「いや、南に・・・」とアーサー。


その時、ニケが言った。

「適当に行っても駄目だと思うわよ。島があるって事は海底が浅くなってる筈よね?」

「ロープに重りをつけて海に沈める、アレか」とタルタ。

ニケは「もっといい方法があるわよ」



ニケは船縁に機械を取り付ける。機械には長い筒。その先を海に沈める。そしてもう一つ別の機械を海に降ろして水中へ。

そして機械から突き出た筒を耳に当てる。

「何か聞こえるのか?」とエンリ。

「機械がカンカン鳴ってるんだが」とジロキチ。


ニケは「こだまよ。音って、何かに当たると跳ね返るのよ。その跳ね返る時間で距離が解るの」

「そんな事が・・・」とアーサー。

するとタルタが「いや、子供の頃、近所に住んでた爺さんが言ってた。音というのは一種の波だって」

「波って跳ね返るのか?」とジロキチ。

「よく解らん」とタルタ。


「ニケさんは誰からそんな事を?」とエンリがニケに・・・。

「公爵家にコンスタンティから来た亡命賢者が居たのよ」とニケは答えた。



あちこちに船を移動して、海の深さを計る。

そして、その海域に目星をつけて、ニケは言った。

「ここらへんが浅いわね」

「けど島なんて無いぞ」とエンリ。

ニケは「今は満潮だからね。きっと潮が引くと島が現れるのよ」


海の上で時間を過ごし、引き潮を待つ。そして・・・。


「あれを見ろ」とタルタがそれに気づく。

「島がある。あれが迷宮島か」とアーサー。

「さっそく乗り込もう」とエンリが気勢を上げる。



その時・・・。

「そうはさせません」

その声とともに、水中より巨大なドラゴンが現れた。

「私はこの島に隠された財宝を守るファフニールです。命が惜しくば帰りなさい」とドラゴンは言った。


「どうするよ」とアーサーが仲間たちに・・・。

「鋼鉄の砲弾で何とかならんか?」とエンリ。

「無茶言うなよ」とタルタ。



エンリ王子はドラゴンに言った。

「その財宝はポルタ王家が納めたものの筈だが」

「私はその王様の依頼でここを守る者です」とドラゴンは答える。


エンリは言った。

「なら話は早い。私は次期国王の王太子エンリだ。その財宝の正当な後継者である」

するとドラゴンは「では、それが本当かどうかを確認しますので、こちらへ」


「どうする?」とエンリは仲間たちに・・・。

「どうするもこうするも」とタルタ。

「行ってくるしか無いわよね」とニケ。

「ドラゴン、話は通じるのか?」とエンリ。

「人語しゃべってますけど」とアーサー。


そんなエンリを見て、人魚姫リラが人魚の姿になる。

そして「王子様、私の背に乗って下さい。私は海では自由自在です」と筆談の紙に・・・。

「だがなぁ」とエンリ。



エンリはアーサーに訊ねる。

「こういう場合に俺を守る魔法ってあるんだよね?」

「魔道具は普通は魔力が使えないと苦しいですが、これなら」

そう言ってアーサーは三枚のカードを出した。


「どう使うんだ?」とエンリ。

「念じて命令するんですよ」とアーサー。

「どんなふうに?」とエンリ。


アーサーはカードにまつわる話をエンリに伝えた。

「昔、ある山寺の小坊主が住職から町までお使いに出されました。住職は言いました。"町までの道には山姥が出るかもしれない。それで危なくなったら、これを使いなさい"と。そして小坊主は三枚のお札を渡されました。小坊主が山道を歩いていると、後ろから山姥が追いかけてきました。小坊主はお札を後ろに投げて叫びました。"大きな大きな山になれ"と」



「なるほど、よく解った」とエンリは納得した。

「それと、もう一つこれを。口に含めば海の中でも呼吸が出来ます」

アーサーはそう言って、一つの魔道具に呪文をかけてエンリに渡した。


エンリ王子は人魚の背に乗ってドラゴンの目の前へ。


ドラゴンは言った。

「私はかつて、この海を支配する主でした。ポルタ王はそんな私に挑み、その勇気と知恵と魔力で私を倒し、屈服させました」

「いや、あんたの思い出話は要らないから」とエンリ。


ドラゴンはなお思い出話を続けて言った。

「彼は素晴らしい男だった。勇敢で凛々しくて、そして女性に優しかった」

「だから要らないって」とエンリ。


そしてドラゴンは「そんな彼の知恵と勇気を代々の王は受け継いでいる筈です」

「いや、ちょっと待て」とエンリは慌てる。

「なので、彼のようにこの私を打ち負かす事ができたら、あなたを主と認めます」

そう言ってドラゴンはエンリとリラに襲い掛かった。


エンリは「やっぱりこうなるかぁ!」



水中でエンリ王子を背にしてドラゴンから逃げる人魚姫リラ。それを追うドラゴン。

「王子様、大丈夫です。私、早いですよ。駆けっこなら負けません」と、リラは泳ぎながら筆談の紙に・・・。

エンリは「だが、このまま逃げ続ける訳にも・・・」


次第に焦り出す人魚姫リラ。

「王子様」とリラは筆談の紙に・・・。

「何だ」とエンリ。

「あのドラゴンも早いです」とリラは筆談の紙に・・・。


どんどん差を詰めてくるドラゴンに向けて、エンリは一枚のカードを投げて叫んだ。

「大きな大きな壁になれ」


水圧の壁がドラゴンを阻む。その隙に二人は船の近くに浮上した。

「おいアーサー、魔法で何とかしろ」とエンリは叫ぶ。

アーサーは「駄目ですよ。これは王子とドラゴンの決闘なんですから、他人の介入はルール違反です」

「お前、楽しんでるだろ?」とエンリ。

「そう見えます?」とアーサー。



間もなくドラゴンは水圧の壁を破ってエンリ王子に迫る。

再び追いつかれそうになり、エンリは二枚目のカードを投げて叫んだ。

「大きな大きな渦になれ」


ドラゴンは渦に巻き込まれて悪戦苦闘。二人は船の近くに浮上した。

「これ、巨大な槍とか爆弾とか岩とかも出るんだよな?」とエンリは叫ぶ。

アーサーは「それは無理です。水属性の魔法カードですから」

「やっぱりかよ。固いものでなきゃ話にならんぞ」とエンリ。



間もなくドラゴンは渦から抜け出してエンリに迫る。再び追いつかれそうになる。

エンリは焦った。そして思考を巡らす。

(固いもの。水系で固いものといえば、あれだ)


エンリは三枚目のカードを投げて叫んだ。

「大きな大きな氷になれ」



やがて船のそばに巨大な氷が浮上した。

氷の中に閉じ込められたドラゴン、そしてエンリ王子と人魚姫リラも・・・。

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