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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第56話 女帝の即位

スパニア皇帝位を巡る争いにユーロ各国が介入した内乱において、エンリ王子率いるポルタとイギリス・フランスは協力して教皇庁から独立した国教会を立ち上げるべく同盟を組み、他勢力を従えて勢力を伸ばした。

彼等が擁する皇帝候補は自然にイザベラを推す事となったが、その即位式を内乱中に強行することになった。

それは、国内をまとめるため一時帰国したイギリスのヘンリー王が戦場に戻る時に伴ったドレイク提督の、会議における言葉がきっかけだった。



「ところで陛下。ここにドラゴンが居ると聞いたのですが」

そう問うドレイクにヘンリー王は「ふむ。戦力としてどう活用するかと」

それに対してドレイクは「いや、下手すると向こうがドラゴン疑惑持ち出して、異端宣言し兼ねないですよね?」

「だが、皇帝教皇の連合軍には正面から使わざるを得まい」とヘンリー王。


ドレイクは言った。

「早急に三国の国教会を立ち上げて独立宣言をして、ドラゴンを公認すべきです」


「国内をまとめ切るのに、もう少し時間が欲しいんだが」とヘンリー王。

「ここで宣言して勝ち進めば、そっちも有利になるのでは?」とドレイク。

「そううまくいくかな?」とヘンリー王。

ドレイクは「商工業の自由と信教の自由の保証で、商人たちはすぐにでも味方につきます」

「だが、もう少し時間を」


そう言って躊躇するヘンリー王に、背後に控えていたエリザベスが言った。

「父上、それは敵方も同じです。英仏とも教皇派の大物を追放しました。教皇側に伝われば、必ず対抗策を出してきます。その前に先手を打つべきです。仲間割れなら先手必勝。これは女子会戦略の鉄則です」


脇で聞いていたエンリは「国内の教会のトップは味方で押さえてますよね?」

「もちろん」とヘンリー王。

「なら、早急に国教会組織を立ち上げましょう」とフランスのルイ王も言った。



ヘンリー王は「スパニア国教会はどうする?」とエンリに問う。

「占領地だけでやるしか無いでしょうね」とエンリ王子。

リシュリューが「その分、トップは大勢が納得する人を見繕う必要があります」


「イギリスフランスの教会のトップって、そんなに凄い人なの?」とイザベラ。

「いや、国教会の首長は王様なんだよ。この2人は人柄はともかくリーダーシップは信頼されてるから」とエンリは二人の国王を指して答えた。

「人柄はともかく・・・ってどういう意味だよ」とヘンリー王とルイ王が口を尖らせる。


イザベラが「それじゃ、スパニア国教会の首長は女帝になる私って事よね」

「それが最大の不安材料だよな」とエンリ。

イザベラが口を尖らせて「どういう意味よ」


「だって、日頃の行いが、なぁ」とアーサー。

「裏表あり過ぎ」とジロキチ。

「陰謀三昧で恨み買いまくり」とニケ。

「スパニアに併合されて、みんな酷い目に遭ったからなぁ」とエンリ。


イザベラは思いっきりの不満顔で言った。

「私だってアンヌ姉さまに負けないくらいの、絶世の美女なんだからね。女は顔が命なのよ。性格なんて二の次なんだから」

アーサーがあきれ顔で「ほら、そーいう所」


「ってか、お前の姉たちって、みんな美女って言われてるのな」とエンリがイザベラに・・・。

「そーいや、言われて無い人って、居ないよね」とルイ王。

イザベラは「血筋よ。そういう家系なのよ」

するとヘンリー王が「けど、考えてみると、言われてるほど・・・いや、止そう。考えたくない」



「ともかく、イザベラ皇女の女帝としての戴冠式も必要ですよね?」とエンリが言う。

「その教会立ち上げの儀式はどこで?」とアーサー。


「互いに承認を与え合うんだから、三教会同時にやりますよね?」とリシュリュー。

ヘンリー王が「そりゃイギリスだろ」

ルイ王が「いや、フランスで」

「けど反発も抑えるなら、どの国も納得できるような聖地でやらなきゃですよね?」とエンリ王子。

「宗教的な権威を考えたら当然だね」とリシュリュー。


アーサーが言った。

「だったらガルシアのティアゴ大聖堂はどうですか? 最高位の使徒の一人が眠る柩のある、あの聖地なら」

「けど、あそこの大司教はちょっと役不足だが」とルイ王。

「教会指導者は別に考えればいいとして、外国で宣言するとなると、なぁ」とヘンリー王。

「本来の支持者は国としてのまとまりを期待する人達ですからね」とエリザベス。

エンリが「それはどこでやっても同じだよ。どっちみち、戦争放り出して・・・って訳にもいかんだろ」

 


ガルシアには、千年前の聖者の柩が聖遺物として巡礼者を集めるユーロ有数の聖地がある。

そこで三教会の設立を行う事が決まった。

そして、スパニア皇帝としてのイザベラ姫の戴冠式も行われる。

国教会の首長は国王であり、その設立には国王の存在は不可欠だからだ。


「けど、ガルシアを攻め取るのはこれからなんだが」とヘンリー王。

「あそこに居るのは、ガルシア侯爵と、彼を頼る第18王子だよね」とルイ王。

「弱小勢力じゃん」とエンリ。


「ってか、あそこはポルタの北で孤立してて、いつでも攻め落とせたんじゃないの?」とイザベラ。

「厄介な魔導士が居るんですよ」とアーサー。


マーリンが「魔導士のパラケルサスね? 時計塔きっての天才と言われて、次期ロードの就任確実と言われていたわ」

「スパニアの宮廷魔導士になった時は、みんな驚いてたよな」とアーサー。

「アーサーがポルタの魔導庁の試験受けたのだって、彼との競争避けるためだものね」とマーリン。

アーサーは「何で知ってるんだよ」と言って口を尖らせる。


「彼とは私が話をつけるわ」とマーリン。

「マーリンは奴とそんなに仲良かったっけ?」とアーサー。

マーリンはドヤ顔で「時計塔の同期で私が弱み握ってない男子なんて居ないわよ」



マーリンはパラケルサスを脅して味方につけた。

パラケルサスの説得でガルシア侯爵は城を明け渡し、エンリ王子たちの同盟に加わった。


エンリ王子とガルシア侯爵の盟約を確認した後、アーサーはパラケルサスと再会する。

「久しぶりだな、アーサー」とパラケルサス。

「まぁ、これからは味方どうしだ」とアーサーはパラケルサスに・・・。

パラケルサスは「お前は実質、総大将の参謀だものな」


「本来ならマルコ皇子が皇帝でもおかしくないんだがな。何せ彼は人望がある」とアーサー。

「いや、あんなお人好しに皇帝候補は無理だ」とパラケルサス。

アーサーは「じゃ、何で彼について来たんだよ」

「そんなの決まってるじゃん。扱いやすくて好き勝手できそうだったからさ」とパラケルサスは言った。



国教会設立の準備が進む。

僧侶として準備を進めるリシュリューにエンリ王子は不安を漏らす。

「教皇無視した教会なんて本当に出来るの?」

「その件で人を呼んでいるんです」とリシュリュー。


その時、来客の知らせが・・・。

連絡員が「アルバニアからお客様です」

「来たか」とリシュリュー。



会議の場にその来客を通し、話を聞く。

教会設立の関係者が集まる中で来客は名乗った。

「アルバニア正教会のセルゲイ司教です」


「正教会って東方教会だよね?」とエンリ。

リシュリューは説明して「東方教会は本拠地がコンスタンティにあって、異教徒のオッタマに占領されてるけどね。その前にコンスタンティからアルバニアが独立した時に、国内で自前の教会として独立したんですよ」

「教会独立って前例があったんだ」とエンリ。

「今じゃセルビアだってロシアだって自前の正教会持ってるぞ」とヘンリー王。


エンリはセルゲイ司教に「それで教会独立って誰の許可貰ったんですか?」

「勝手に宣言してました」と、事も無げに答えるセルゲイ。

エンリ唖然。そして「それでいいんだ」



「東方教会だって教皇庁と喧嘩別れして互いに破門状突き付けて勝手に自立宣言したんだし」とリシュリュー。

セルゲイは言った。

「そもそも教会って、元々ただの信者の集まりですよ。聖職者だって、そのリーダーが勝手に名乗って信者がついてきてるだけだったんですよ。そういう教会が都市ごとにあって、教皇庁だってその一つに過ぎなかったんです」


エンリは「他の教会が"承認しました"っていうのは?」

「まあ、あるに越した事は無いですよね」とセルゲイ。

「けど、その勝手に名乗るのにも儀式とか手続き的なものがあるんだよね?」とエンリ。


「アルバニア正教会が独立した時の記録を参考にして下さい」とセルゲイは言って、分厚い資料の束を出した。

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