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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第543話 介入の戦争

フランスの革命政府で強硬派のロベスピエールが実権を握り、ルイ新王夫妻を見せしめとして処刑せよとの声が高まる中、オスカルとアンドレは幼い二人をスパニアに逃がし、フェリペ皇子率いるマゼラン海賊団が保護した。

亡命した新王夫妻を捕らえるため、革命政府はナポレオン率いるフランス軍部隊を送り込むが、エンリ王子が指揮するポルタ・スパニアの連合軍に敗れた。

イザベラ女帝はナポレオンと取引し、あくまで新王の引き渡しを要求するナポレオンの兄ジョセフを、スパニア王権に介入する地位を与えた。だが、ジョセフが得た「阿衡」という役職は、実は何の実権も無い、単なる名誉職だった。



時間は遡る。

フランスは、スパニアとポルタにナポレオンが指揮する革命警備隊を送り込むとともに、両国に宣戦布告。



ウィーンの宮殿では・・・・・・。

幼いフランス新王夫妻の亡命を知り、悲憤慷慨するテレジア女帝。

「アントワネットは何故、我がドイツに亡命しないの? よりによって、あの名誉男性の所に・・・」

「亡命を阻止しようとフランス軍が、ドイツに通じる街道を封鎖したため、行き先を変更して彼らの裏をかいたのです」

そう言って、汗を拭きながら激高する女帝を宥めるメッテルニヒ宰相。


「こうなったら単独でも我が帝国軍を派遣し、反徒どもを一掃するのです」

そう言って開戦を主張する女帝に、メッテルニヒは「問題は、プロイセンがどう動くが・・・なのですが」と慎重を求めるが・・・。

女帝は「革命は王を頂くユーロ全ての国にとっての危機ですのよ。阻止のための出兵はユーロ全体の正義。妨害するような動きをすれば孤立するだけです」



テレジア女帝は、軍に出動命令を下し、ドイツ帝国はフランスに宣戦布告。

ついに本格的な介入戦争に踏み切った。


フランス領に侵入したドイツ軍は、至る所でフランス正規軍の抵抗を受けた。

だが、多くの貴族将校が亡命または逮捕されて軍を離れており、残った将校も戦意に乏しく、また、亡命したフランス貴族と通じて情報を流す者も居たため、フランス軍は至る所で敗走した。


 

ロベスピエールは通信魔道具で、プロイセンのフリードリヒ王に連絡。


「あなたの勧めでルイ新王を確保すべく出兵したら、こんな事に・・・。ドイツ皇帝軍の侵略に、一緒に対抗して貰えるのですよね?」

そう言って必死に援軍を求める彼に、フリードリヒは「すぐには無理ですな」と一蹴。

「そんなぁ」


そしてフリードリヒは言った。

「ユーロ各国は全て王家が統治しており、革命が波及すれば自分の身が危ない。我々が今動けば、ユーロの孤児になってしまう」

「見捨てる気ですか?」

そう涙目声で縋るロベスピエールに、フリードリヒは「準備が整うまで、持ちこたえて貰うという事ですよ」



フランス領内に侵入した皇帝軍は、各地の拠点を次々に制圧した。


だが、これと戦い、唯一踏み止まっていたフランス軍部隊があった。

交通と補給の要衝だったマジナ要塞である。

オスカルが指揮する千人ほどの兵力。それは元々ここに配備されていた守備隊と、派遣されたオスカル旗下の元近衛によって構成されていた。



森に囲まれた中の小高い丘の地形を利用し、石造りの高い城壁で囲んだ要塞へ向かう、万単位のドイツ帝国軍。

その先陣となるのはモンスター軍団だ。

大鎚を持った多数の巨人が先鋒となって森の木々の間を進む姿を、アンドレの梟の使い魔が捉えた。


その視覚情報を映す水晶玉を見て対策を協議する要塞司令部。

「あれで城壁を破壊する気でしょうね」

そうアンドレが言うと、オスカルは「要塞に辿り着く前に、森で仕留めるぞ」

「あんなのをどうやって・・・」と心配顔で発言するのは、オスカルの指揮下に入った要塞守備隊司令だ。


オスカルは言った。

「新兵器がある。アインツベルンという魔導一族の研究所が提供してくれた、立体機動魔道具だ。魔法を使えない兵でも使えるよう改良してある」

背嚢のようなそれを出して、使い方を説明するオスカル。

「森の木々に水銀魔法によるワイヤーを打ち込み、それを手繰って空中を高速で移動し、巨人の急所を攻撃する」


「急所って股間ですか?」

そう守備隊司令が言うと、オスカルは困り顔で「・・・それは違うと思う」

「うなじですよね?」と守備隊参謀。

アンドレが困り顔で「それはどこぞの漫画やアニメだけ」

そして彼は「ってか普通に喉や心臓でも効くから」と・・・・・・・・。



既に立体機動魔道具の訓練を受けていた旧近衛隊員たちが、これを装着して森へと出撃。

城壁の上から水銀魔法のワイヤーを射出し、森の木の高い所の幹に打ち込む。

ワイヤーを一気に縮め、引き戻す力で宙を舞いながら、別の木の幹に次の水銀のワイヤーを打ち込み、これを縮めて引かれる力で方向を変える。


こうして次々にワイヤーを打ち出し、打ち込む高木を変え、森の中を空中移動する、オスカルが率いる隊員たち。

やがて、大槌を持つ巨人の群れが視界に入る。


オスカルが「殲滅せよ」と号令を発し、戦闘開始。


アンドレが空中からファイヤーランスを放ち、先頭を歩く巨人にダメージを与える。

巨人は目の前に迫るオスカルを掴もうと手を伸ばす。

その手をかわす彼女は、その背後に回り込んで、巨人の後頭部にワイヤーを打ち込み、うなじに取り付いて剣を突き立て、電撃魔法を流し込む。

巨人は轟音を響かせ、倒れた。


オスカル旗下の立体機動部隊は次々に巨人を仕留め、巨人軍団を壊滅させた。



後方を進むドイツ軍では・・・・・・。


魔導士官から巨人軍団壊滅の報告を受けた総司令官。

「やはり、巨人だけで先行させたのは不味かったのでは無いのか? 歩兵や騎兵との連携が必要だろ」

魔導士官は困り顔で「奴ら、頭が良くないから、味方を踏みつぶしかねないんですよ」



ドイツ軍が要塞に取り付き、本格的な戦闘を開始。


正面門付近に布陣した銃兵が、城壁の上の兵たちと銃撃戦を展開。

門上の石造りの頑丈な櫓の上から指揮するオスカル。

城門に、そして城壁に砲弾が飛来し炸裂してフランス兵を牽制。

ドイツ兵たちは城壁下に取り付き、城門へ向けて突撃を繰り返す。

城壁の上から、これを追い返そうと必死に銃撃するフランス兵。


フランス軍の司令部で、オスカルは苦渋の表情を浮かべていた。

各部隊からは、数で押しまくるドイツ軍の攻勢に、悲鳴が響くような報告が次々に届く。


彼女は決断した。

「兵力が違い過ぎる。一方的に攻められるだけではらちがあかない。打って出るぞ」

「城門を開けば押し込まれてしまいます」

そう意見する守備隊司令に、オスカルは「城壁の上から向うの森の木々に取り付き、前後からの銃撃で牽制しつつ、上から切り込みをかける。立体機動は巨人やゴーレム以外とだって有効な筈だ」



城壁の上からの激しい銃撃でドイツ兵を牽制すると、立体機動の水銀のワイヤーがドイツ兵たちの頭上を飛び越えた。

森の木々に取り付いたジェローデル副官が指揮する一隊が、地上の敵兵に煙玉を撒いて視界を塞ぎ、木々の間を移動して敵の射撃をかわしながら、城壁下の攻城部隊へ牽制射撃をかける。

アンドレを先頭とする一隊が、木々の上から舞い降りて斬りまくる。

混乱したドイツ軍に、城門を開いてオスカルが指揮する騎馬隊が突入。


ドイツ軍は大きな被害を出して退却した。

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