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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
540/543

第540話 要塞の奪還

亡命したルイ新王を捕らえるため、ピレーネの北から侵入する正規軍と呼応して山越えルートを確保すべく北上を続けた、ナポレオン率いるフランス革命警備隊は、ついにピレーネの麓に辿り着いた。

彼らの行く手を阻むバンプ要塞は、ピレーネの麓を守るスパニアの山越えルートの要衝である。

だがナポレオンは、背後に迫るエンリ王子の軍勢が辿り着く前の短時間で、要塞を制圧。

白旗を掲げ、降伏を装って要塞に侵入するという、有り得ない策を以て・・・。

これを可能にした「神の平和を示す神聖な白旗」という常識が、ナポレオンがbaka-noteを使って作り出したものだという事を、エンリたちは知らない。



要塞の指令室では・・・。


司令官のデスクの上で高笑いするナポレオンと、ノートの精霊デュークが居た。

「いいのかなぁ」

そうナポレオンが言うと、デュークは「これが俺様の力だ」

「けど、"神の平和のシンボル"なんて項目、トンデモ過ぎだろ」と、あきれ顔になるナポレオン。


デュークはドヤ声で「どんな変な理屈だって、常識として刷り込んでしまえば人間なんて赤子も同然さ」

「けど普通、さすがに人として疑問とか感じるだろ」

そうナポレオンが突っ込むと、デュークは「それはお前がbaka-noteにこれを書いた張本人だからさ。トンデモな市場のイドラなんてどこにでもあって、人は多くの愚行を成して他人を害するのさ」

「害されたら普通、反撃するよね?」とナポレオン。


デュークは「普通はな。けど、おかしな市場のイドラってのは、その加害に反撃せず受け入れて貰える・・・という了解があるっていう、思い込みなのさ」

「ヤマグチヂロー教授がハンギョレとかいう新聞に寄稿して"与野党問わず戦後のジパングに存在してたんだ"って言ってた、あの"謝罪要求という対日ヘイトスピーチ受け入れのお約束"みたいな?」とナポレオン。

「そういう事さ。だからこそ統一教会とかいう、自国をヘイトする邪教を、当時の与党幹部が受け入れた」


「で、そこからの脱却を目指したアベの功績にヤマグチは地団太踏んで、ネトサ〇が動員されたアベシネの殺人教唆による自作銃テロリストの標的変更で彼が始末されたのを機に、そのレジームの復活を求めた・・・っていう・・・」

そう言ってナポレオンが溜息をつくと、デュークは「そういうのを信じて無抵抗な他者を踏み躙るのは、どこぞの半島国みたいな奴らには病みつきな快楽って訳さ」

ナポレオンは「けど被害者たちは抵抗したんだよね?」


デュークは語った。

「そういう抵抗者を"ネトウ〇"とか"歴史修正主義"とかって意味不明なレッテルで無視を決め込んで。まあ、大勢居る集団の中の大半の人は、普通に抵抗するさ。けど、彼らの中には、他の被害者を抑圧する代行者としての利権とか、相手集団の中にズブズブな個人的お友達関係を持って、そのよしみで・・・とかで加害者集団の味方をする奴らが居る。彼らは無知で愚か故に、その不当を認識しない。そして"良心的ジパング人"とか"世界と仲良しなグローバリスト"などと煽てられて、被害者集団内の特権階級気分に酔っぱらってる訳さ」


「"清算済みの過去の戦争について捏造歴史を認めて謝罪しろ"・・・みたいなヘイトスピーチ?」

そうナポレオンが言うと、デュークは「それだけじゃ無い。かの押売貿易への屈服だって、消費者の利益とか称するバンドワゴンに騙されて、自国の工場を潰して失業苦を招いた"悪夢のミンシュトー"の大悪行を、十年経てば皆が忘れてくれていると思って"円の価値を高めた大功績"だと言い張り、それを是正して失業苦から救う政策を"円安売の阿呆ノミクス"とか罵声浴びせて通ると思ってる」


ナポレオンは「けど批判はされてるよね?」と突っ込む。

「ネットで批判されても、それを自分たちが牛耳るマスコミが認めなければ"事実"でも"世論"でも無いと言い張って通ると思ってるのさ」

そうデュークが言うと、ナポレオンは「そのせいでオールドメディアの信用は失墜して、困った大新聞は橘令とかいう扇動屋に"朝日ぎらい"なんて本を書かせて、自分たちこそ党派主義の偏見の被害者とか、見当違いな居直り決め込んでる訳なんだが」

「まあ、あの世界にbaka-noteは存在しないからなぁ」とデューク。

「俺たち、何の話をしてるんだっけ?」とナポレオンは突っ込んだ。



フランス軍が来た時、要塞を守っていたスパニア軍守備隊は、白旗を掲げて投降を装ったフランス軍を招き入れ、司令官自ら降伏受け入れに出向いた所を銃を突き付けられ、兵ともども全員拘束された。


自分たちの要塞の捕虜監禁施設に、兵たちとともに収容された司令官は・・・。

「こういうのを無血開城って言うんだ。血を流さず戦争が終わるのは、実に良い事だ」

そう、自分に酔った口調で語る司令官に、さすがに兵たちは疑問顔。

「けど、それで侵略してきた奴を受け入れろとか・・・」


司令官は目をキラキラさせながら「デニー尊師の有難い教えだぞ」

「いや、司令官は最後の一兵となっても侵略には抗うって、言ってましたよね?」

そう兵たちが言うと、司令官は目を血走らせて「どんな支配を受けても戦争よりマシってのは常識だ。防衛も侵略も変わらない、戦争は人殺しだ」


兵たちは一様に呟いた。

「何だろう、この変わりようは・・・・・・」



ナポレオンは、追跡して来るポルタ軍を食い止めるため、一部の部隊を要塞に残すと、他の兵たちの前で演説。

「これよりピレーネの山越えルートを制圧する。この先にも敵は居るが、彼等は国境から攻め込む友軍が引き付けてくれる。既に、山脈の北側ではフランス正規軍が侵攻を開始し、国境を守備していたスパニア軍との戦闘状態に突入した。このまま我々は峠を越えて、北側に居るスパニア軍を挟撃する。 追撃してきたポルタ軍は要塞に残る兵が食い止め、このルートを押えて勝利の報をパリにもたらせば、戦意は高まり、多くの市民が戦いに参加するだろう。我々はスパニアを占領して、逃亡した新王を捕える」


フランス軍はビレーネの峠に向けて進軍を開始。要塞にはこれを守備する一部のフランス兵が立て籠もった。



やがてポルタ軍が辿り着いた。


少し離れた所から、カルロが望遠鏡で要塞を観察。

門の櫓にはフランス国旗。そして櫓や城壁の上には銃を持つフランス兵。

「要塞、占領されちゃってますけど」

そうカルロが言うと、エンリの仲間たちは一様に呟く。

「どーすんだ? これ」


エンリは違和感の中、自らが呟いた言葉を思い出した。

(この戦い、変な常識に振り回されたら勝てない)

「そういえば、今までも不自然におかしな常識に散々振り回されてきたよね?」

そう彼が言うと、ニケが「ターボババアとか?」

「夜襲が愚策ってのも、それ?」とジロキチも・・・・・。


「もしかして、魔術的な何かが絡んでるとか?」

そのアーサーの一言で、場は暫しの沈黙に包まれた。そして彼らは互いに顔を見合わせる。

得体の知れない何かを、自分たちは敵に回したのだろうか・・・・・。

そんな重苦しい空気の中、リラがそれを言い出した。

「あの、白旗で降参したフリして通じるなら、同じ手口で攻め落とせるのでは・・・」


仲間たちは唖然顔。

そして「いやいやいや、自分たちがやった手口だぞ。それに騙されるとか・・・」と、口を揃えて突っ込む。

だが、そんな彼らにエンリは「けど、常識なんだよね?」

「かなり変な常識だけどね」とタルタ。


エンリは言った。

「もし奴らが何か魔術的な細工をしたとしたら、それをやった奴は司令部に居る筈だ。けれどもその司令部は、もう要塞には居ない」

「そうでしょうか?」

そう突っ込む若狭に、エンリは語る。

「彼等の目的はピレーネ越えルートの占領だ。そのために、山脈の向うでフランス軍と戦ってるスパニア軍を挟撃するって作戦だろう。だが、フランス正規軍は貴族将校が抜けて弱体化している。本気で戦ったら長くは保もたない。つまり奴らが早急に山を越えて参戦する必要がある。これはスピード勝負なんだよ」



エンリは自ら白旗を持ち、仲間たちとともに、軍の先頭に立って城門へと向かった。


「撃ってきたらどうしますか?」

そうアーサーが言うと、エンリは「逃げりゃいい。弾に当たる可能性なんて、そうそうあるものじゃ無い」

そんな彼にアーサーは「そう言いながら王子、土の魔剣と一体化して防御無敵になってますよね?」

残念な空気が漂う。


門の手前まで来た所でエンリは部下に敵の様子を探らせた。

「どうだ? アーサー」

アーサーは看破の魔法で要塞内部を探り、そして言った。

「門の上の櫓の見張りが司令官らしい人物に報告しています。指揮官、頷いてますね。どうやらうまく行きそうです」



門の前に立つエンリに、門上の櫓からフランス軍の指揮官が大声で言った。

「その白旗の意味を問いたい」


「これは神の平和による降伏である。私はポルタ王太子エンリ」

そうエンリが答えると、敵司令官は「では、武器を渡して貰おう」

「入城の上で、全員の武器を引き渡したい」とエンリ。

すると司令官は「先ず、あなたの魔剣を渡して貰います」


エンリの表情が硬くなり、彼の周囲を暫しの沈黙が支配する。

アーサーが彼の耳元で「警戒されてますよ」


「いいだろう」

そう言うとエンリは、魔剣を抜いて城門上の櫓へ投げた。

「これで信じて貰えますよね?」



門が開き、エンリは全軍を率いて要塞内へ。

城門を入った所の広場に立つポルタの軍勢を、フランス兵たちが武器を構えて取り囲む。


エンリの前に、魔剣を持ったフランス部隊の指揮官が進み出、そして問うた。

「あなたがエンリ王子ですね?」

「そうだ。降伏の受け入れ、感謝する」

そうエンリが答えると、敵司令官は「では、死んで頂きます」


「はぁ?・・・・・」

唖然顔のエンリに、敵司令官は「神のためなら死ねますよね?」

「・・・・・・・・・」

彼は更に言った。

「神は言った。右の頬を打たれたら左の頬を差し出せと。ナポレオン総司令官より指示を受けています」



銃口がエンリに集中する。

「王子・・・・・・」

部下たちが真っ青になってそう言うが、エンリは落ち着いた表情で「大丈夫だ」


彼は鞘を腰から抜いて左手に持ち、光の魔剣との一体化の呪句を唱える。

エンリの体は光となって消えた。


呆気にとられた敵指揮官が持つ魔剣の剣身を鞘が覆い、それを握るエンリが出現。

エンリは敵指揮官に当て身をくらわせて魔剣を奪い返すと、水の魔剣を抜き、その切っ先を敵司令官に向けた。

「あなたは神の平和を破った。その怒りに触れる前に降伏すべきだ」

司令官は「神は我等の革命とともにある」

そして彼はエンリを指して「こいつを撃て」


エンリは水の魔剣との一体化の呪句を唱え、司令部の十数人の兵が一斉に放った銃弾を受けた。

その傷は瞬時に回復。

エンリは指揮官に魔剣を突き付けた。

「神の平和を守った私は神に守られている。銃を捨てろ!」

司令官は肩を落とし、フランス兵たちに「彼の言うとおりにするんだ」


フランス軍の兵士は武器を捨てて手を上げ、ボルタ軍の兵たちによって拘束された。



仲間たちがエンリの元へ集まる。

そしてタルタが「王子って神様が守ってるの?」

エンリはあきれ顔で「んな訳無いだろ。あれは水の魔剣と一体化した治癒力だ」

「ですよねー。けど、さっきのって・・・」

そうタルタが言うと、エンリは説明した。

「アビニョンのアルビ派本部で魔剣を奪われた時、あの方法で取り返したのさ」


そしてエンリは全軍に号令を発した。

「直ちに峠に向かったフランス軍を追うぞ」



拘束されていたスパニア軍要塞守備兵を解放すると、守備隊の司令官に命じた。

「お前たちに要塞を任せて、俺たちは峠に向かった敵軍を追う」

「承知しました」と司令官。


「それと、お前等の中に猫を飼ってる奴は居るか?」

そう問うエンリに、彼は怪訝顔で「猫ですか?」

「なるべくたくさん欲しい。恐らく敵は反撃のため、伏兵を使って襲撃して来る。こっちにはケットシーが居る。猫を使って伏兵を探りたい」とエンリ。

司令官は「解りました。兵たちに呼び掛けて猫を確保しましょう」


そしてエンリは・・・・・・。

「それとな・・・、神の平和なんてのに騙されてんじゃねーよ!」

あきれ顔でそう言うエンリに、司令官は「スパニア人は信心深いんですよ」



フランス軍は山越えルートを峠へと進軍していた。


進軍中のナポレオンに報告が届いた。

唖然とするナポレオン。

「要塞を奪われただと?」


「白旗を立てて降伏を装った敵が、神の平和を騙って我々を騙したとか」

そう報告を続ける兵の言葉に、司令部の参謀や士官たちは口々に・・・。

「何と卑怯な」

「神罰が降るぞ」

「けどそれって、俺たちがやった事だよね?」

残念な空気が漂う。


ナポレオンは脳内で呟いた。

(やはりノートに書き込んだ"神の平和"の項目は消しておくべきだったか)


そして彼は部下たちに号令した。

「このままでは追い付かれる。迎撃するぞ」

「けど、あの炎の剣の軍団をどうしますか?」と参謀。

ナポレオンは「後ろをとれば対抗は可能だ。包囲殲滅で行く」

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