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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第529話 国民の分断

フランス革命のきっかけとなった国民議会の設立宣言。所謂「テニスコートの誓い」で最大の目標とされたのが、憲法の制定である。

だが、これは革命が成立し、本格的な議論が始まって早々に行き詰った。

その最大の争点が、王政をどうするのか・・・である。

立憲君主制を主張するジロンド党と、王政の廃止を主張する山岳党。



ジロンド党員として革命政権の重鎮を担っているラファイエットは、様子を見に来たエンリ王子を小一時間、愚痴に付き合わせた。


「一旦棚上げにして、代わりの法律を創ったらどうですか?」

そう勧めるエンリに、ラファイエットは「議会では棚上げ自体に山岳党が反発すると思いますよ。王制をなし崩し的に存続させるつもりか・・・って」

「だから、代わりに貴族と対等たる国民の権利を庶民に保障するのですよ。人権宣言とでも題して」

そうエンリが言うと、ラファイエットは「それで憲法は何時? やっぱりなし崩し的に先送りとか・・・」


「下手なものを作ると、不都合が出て改正する時、滅茶苦茶苦労しますよ」とエンリ。

「改正の手続きを決めて条文に盛り込めばいいかと」

そうラファイエットが言うと、エンリは「その手続きを踏んで改正しようとしても、"改憲は憲法を破る事だ"とか意味不明な事を言って護憲派を自称する奴らが沸いて出ますからねぇ」


「そりゃおかしいだろ」と唖然顔で言うラファイエットに、エンリは語った。

「そのおかしな事を言い張るのが、あっち側の人たちですよ。国防に支障が出るような条文を改正するのは、侵略を意図する敵国にとっての利を損ないますから、そうした敵国の利益を代弁する勢力が、憲法の欠陥を利用して国を害するべく改憲を妨害する」

ラファイエットは深刻な表情で考え込む。

そして「革命に介入しようと隙を伺う諸外国の内通者を警戒する我々にとって、他人事では無い」



その後・・・・・・。

革命政府は貴族の特権を否定し、全ての国民に対等の権利を認めた「人権宣言」の草案を国民議会に提出した。



ドイツ皇帝家では、メッテルニヒ宰相が各国に働きかけて、介入戦争の参加を求めた。

これを裏工作で妨害するイザベラ女帝。

これに通話の魔道具で抗議するテレジア女帝。


「下手な妨害は止めて貰えるかしら。パリの反乱分子の動きは全ユーロに飛び火する事になるわよ」

そうドスの効いた声で主張するテレジアに、イザベラは半ばからかい口調で「民の心を掴めない無能な君主なら、さぞかし怖いでしょうね」

テレジアは感情的な声で「フランスには我が娘が居るのよ。各国も多くが対仏同盟に乗り気ですわ。それとも世界の孤児がお望みかしら?」

「乗り気って、例えば?」


「イギリスは何時でも参加すると言ってますわよ」

そう言うテレジアにイザベラは「あの国は海外のフランス植民市を奪うだけで、ユーロには一兵たりとも出さないと思いますわ」


「ロシアとか・・・」

イザベラは「ドイツを通って兵を送るあの軍は、行く先々で略奪を働くでしょうね。それを恨んだ民の矛先は誰に向かうのかしら?」


「あのプロイセンだって・・・」

イザベラは「参加すると称してパリへ向かった筈のあのフリードリヒの軍が、途中で行き先を変えて"敵はウィーンにあり"・・・なーんて事にならなきゃいいけど」

「・・・・・」



そんな会話にベルリンで聞き耳を立てる者たちが居た。

「これが盗聴というものだ」

そう、10歳ほどの男児に上機嫌で語るフリードリヒ王。


男児の横には若い諜報局員。彼はこの男児のお気に入りでもある。

「裏からユーロを操り、この地の覇者たるを目指す国の必須スキルだ」

そう語るフリードリヒに、男児は「面白いな。スパイって、他にもいろんな事をするんだよね?」


「ハニートラップというものもあるぞ」とフリードリヒ。

「知ってますよ。ハチミツのお皿の上に檻を吊るすんだよね」

そんな男児にフリードリヒは「じゃ無くて、綺麗な女の人を使うのだよ」

「女スパイって奴だよね? それで彼女達は、ターゲットに何をするの?」

そう男児に問われ、フリードリヒ、困り顔。

「それは・・・・・・・。ウィルヘルムよ それはお前が大人になったら解る事だよ」


「それで父上は、フランスを弱体化させるために、裏から革命を煽っているのですよね?」

そう男児が言うと、隣に居る諜報局員が王に言った。

「ですが、このプロイセンに波及する事は無いのでしょうか?」

「そのために俺は啓蒙君主として、あれこれポーズをとって名を売っているのだよ」とフリードリヒ王。


「啓蒙ってどういう意味なの?」

「蒙昧なる民を革新的思想を以て啓発する哲人君主だ」

「随分と上から目線な気がするのですが」と口を挟む諜報局員。

「当たり前だ。俺は国家第一の僕だぞ。つまり、国民は全員それ以下の下僕だ。ジミン党のような金権集団の長期政権を許すような愚民どもを操って支配するなど、俺のような騙しに特化した専制君主にとっては造作もない」とドヤ顔で言うフリードリヒ。


「あの長期政権は、野党が自国をヘイトする外国に迎合するような犯罪集団であるが故の、必然なのでは?」

そう諜報局員が問うと、フリードリヒは言った。

「そんな理屈は"ネ〇ウ✕"のようなレッテル用語で誤魔化して無視すれば良い話だ。我が息子よ。民が愚かである事を前提として政治を考えよ。彼等は煽動次第でどうにでも操れる」

「けど、そう言いながらマスゴミを味方にモリカケサクラを標語とした大宣伝を十年間続けて、結局選挙には勝てなくて、最後は戦後レジームからの脱却を唱える敵を殺害する挙に出ましたよね?」と諜報局員。


「あれは犯罪カルトからの支援を受けた事を恨んだ・・・という口実があるではないか。反共を掲げて権力者を支援した、あのカルトの罪」

そうフリードリヒが言うと、諜報局員は「彼等の罪は信者を騙して財産を奪って奴隷化した事で、それはヘイトな民族偏見による憎悪で塗り固めた反日教義で信者を害する目的によるものであり、反共など見せかけのダミー教義に過ぎないのでは? あの敵対野党とマスコミはあのカルトの反共主義を口先で批判しながら、反日教義を隠蔽する事で、彼らが反社として本来受けるべき筈の反発から守り、それで彼らは生き延びた訳ですよ」

「それはお前の感想だな?」とフリードリヒ。

「ヘイト教義は事実ですが。そして隠蔽も事実です。何しろあのエイトマンは二代目教祖の暴言映像が世に出た後ですら、あの犯罪国呼ばわりを送金減少で焦った故の方便で反日教義など存在しないと庇ったのですから」と諜報局員。

「・・・・・・・・」


「フランス王家は確かに弱体化しました。けど、それはフランス自体が弱体化したことになるのでしょうか?」

そうフリードリヒ王に疑問を呈した若い諜報局員を、フリードリヒ王は見る。

忠義の裏に狡猾を垣間見せる、その視線が見据える、巨大な何か・・・・・。

そんなものを彼に感じ、王は命じた。

「お前は今日からウィルヘルムの従者として、我が王太子を助けよ。それでお前、名前は?」

「ビスマルクと申します」



人権宣言の審議は大きな反対も無く進み、承認を得て施行手続きに入った。

そして国民議会は再び、ジロンド派と山岳党の対立が激化する。その最大の争点は物価の高騰をどうするか・・・・・。


「金利を下げて通貨の下落を招いた政府の罪である」

そう山岳党議員が主張すると、ジロンド派議員が「流出した製造を国内回帰させて実体経済を改善するしか道は無い」と反論。

「通貨安はアベノミクスという犯罪だ」と山岳党議員。

ジロンド派議員はこれに反論して「通貨の吊り上げで製造業が流出し、国民が失業に喘いだ、あの悪夢を忘れたか。その失業を救済したのが気に入らないとは、あなた達はこの国の敵だ!」

「あの通貨高は民主党以前からのもので、原因はプラザ合意だ」

そう主張する山岳党議員に、ジロンド派議員が反論する。

「それは通貨の吊り上げの弊害を認めたという事だが? 通貨安を犯罪呼ばわりする先ほどの発言と矛盾するぞ」


そんなやり取りに、一人のジロンド派議員が突っ込む。

「俺たち、何時の時代の話をしてるんだっけ? そもそも今の小麦の高騰は、天候不順による品不足が原因なんだが・・・」

残念な空気が漂う。


「金持ちが富を独占する事が、貧しい民が飢える原因だ。民を救うために資産の供出を命じるべきだ」と山岳党議員が主張。

「私有財産の保護は人権宣言が認めた神聖なる鉄則だぞ。我々商人の資産は、あなたの言うような産まれにより得たものでは無い。自らの努力によって得たものだ」とジロンド派議員が反論。

すると山岳党のロベスピエール議員が発言した。

「ですが、革新派貴族の皆さんは、未だに領地を保持していますよね?」


ジロンド派に属する革新派貴族議員の顔色が変わる。

「立場を顧みず革命に協力した我々の善意を仇で返すというのか」

そう発言した貴族議員に、ロベスピエールは「それを覚悟で革命に参加した筈です。領地の没収を恐れて革命を終わらせるなら、ドイツ皇帝と裏で繋がっているに違いないと言われて当然」

「それはあなたの感想ですね?」と貴族議員。

ロベスピエールは「いえ、感想ではなく推測です。そして根拠のある推測です」



ドイツ皇帝を中心とした介入戦争の動きが停滞する中、各国に亡命した大貴族による、水面下での革命政権に対する反対運動は激化していた。

これに対する反発は、貧民の生活苦を背景とした山岳党を中心に、ジロンド党を中心とする革命政権への突き上げと重なり、政府は板挟みの状態に陥っていた。

その圧力は当然、王室へと向かう事に・・・・・。


パリの王宮で先王とリシュリュー宰相の愚痴の相手をさせられるエンリ王子。

「このままではフランスの分断は修復不能に陥りますよ」

そう深刻顔で先王が言うと、リシュリューも「とにかく食料不足だけでもどうにかしないと」

そんな彼らにエンリ王子は言った。

「どうせなら、それを王家が救った・・・という形には出来ませんかね?」

「・・・・・・・・・」


「貧民たちは、金持ちだけがたらふく食ってると、思ってますよね?」

そうエンリに言われ、先王は「私は"汝臣民飢えて死ね"なんて言いませんよ」

「そういう質の悪い煽り宣伝は要らない」とエンリは溜息。

先王は「朝食なんてメザシですよ」

「そういう大企業創業者の質素自慢も要らない」とエンリは更に溜息。

残念な空気が漂う。


そしてエンリは言った。

「備蓄米を放出したら"古古米だから鶏の餌を食わせる気か"・・・などとクレームをつける某列島国の野党勢力みたいなのが居る訳じゃ無いですし、民を救うには安い穀物でも量が必要なんですよ」

「それをポルタが援助してくれると?」

そう言って身を乗り出すルイ先王に、エンリは「それは駄目。ですが・・・・・・・・・」

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