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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第505話 人形の遣い手

シャナと裕二がデートの途中で見つけた、人形のダミートーチ。

それは、ポルタの街に仕掛けられた「都喰らい」という術式のための結界座標だった。

これを仕掛けた強力なトモガラ、人形遣いのフリアグネ。

彼と遭遇したシャナは、無数の光球を操る敵に手痛い敗北を喫した。

それを救ったのは、トモガラの動きを察知して駆け付けたマージョリー。



フリアグネは去り、封絶の解けた街路に横たわるシャナ。駆け付けたリラとアーサーが治癒魔法を施す。

「シャナは?」

そう心配そうに彼女を見る裕二に、リラは「大丈夫ですよ」

そんな中でマージョリーが持つ本の精霊魔道具マルコシアスのヒャッハー口調な軽口。

「これで一つこの小娘に貸しという訳だが、それで我が愛しの色呆け姫はこれをどう使う? このお嬢ちゃんにメイド服でも着せてご奉仕させるかい?」

「お黙り、ゲスマルコ」とマージョリーが一喝。


ドラゴンのアラストールが降りて来る。

「私がもっと前に出て戦えれば良いのだが、存在の力を操れる者でないと、トモガラとは有効に戦えない。私は長い間彼女と一緒に居て、あるていど感知出来るが、下手な戦い方をすれば、存在を喰われかねない」

そんなアラストールにマルコは「まあ、ウドの大木って奴だな」

「お黙り」とマージョリーが一喝。


そんな彼等にエンリは言った。

「存在の力って、そもそも何なんだ?」

「魔素の一種と思われます。ラミー氏をサンプルに研究しているのですが、なかなか得体のしれない所がありまして」とパラケルサス。

「それで、あの光もそうなんですよね?」とリラ。


「こいつよね」

そう言ってマージョリーは、撃ち落とした物を一つ手に執った。

木で作られた兵隊人形。破壊されて手足がとれている。

「これって、あのダミートーチと同じ・・・・」

そうエンリが言うと、マージョリーは「奴が作った人形の使い魔ね。無数の人形に自分の力の一部を植え付けて、自在に操る強力な紅世の王」

「そんな奴が・・・」

そうエンリが真剣な表情で言うと、本の宝具のマルコが「フィギュアマニアのお人形フェチだな」

「つまり変態」と裕二。

カルロが「お魚フェチほどじゃないけど」

「ほっとけ」とエンリが口を尖らす。


「ところで紅世の王って何ですか?」

そうリラが訊ねると、マージョリーは「トモガラの中でも強力な奴で、下級のトモガラを操って統率する事も出来る存在よ」

「俺たちの世界ではボスキャラって事になるか」とタルタ。



そんな騒ぎの中、シャナが目を覚まし、目の前のスーツの女に気付く。

「お前、マージョリー・・・・・」

そう呟くシャナに、裕二が「気が付いたか」

「こいつが助けてくれたのか?」そうシャナがマージョリーに視線を向けて言う。

「貸し一つって所ね」とマージョリー。

本のマルコが「後でメイド服を着てのご奉仕で返してもらうそうだぞ」

「違うから」とマージョリーは慌てて否定。


「それで、奴が動き出した事を察知してフレイムヘイズの里から駆け付けたという訳だな?」

そうシャナが言うと、マージョリーは「じゃなくて、あんた、200年前に零時迷子を持ち出したわよね?」

「あ・・・・・・」


面倒な話になりそうな状況に、エンリはストップをかけた。

「とりあえずその話は後にしてくれ。部下を助けて貰った事だし、歓迎会を開く事にしたから。ポルタのワインは美味いぞ」

「ヒャッハー」とはしゃぐマルコに、マージョリーはあきれ顔で言った。

「あんた、口が無いのにどうやって飲むのよ」

マルコは「アポカリプスという本の魔道具には口があるけどな」



ポルタ城に戻ると、エンリはメイドたちにマージョリーの歓迎会の準備であれこれ指示を出す。

そんな中でシャナは、従者の控室で裕二と向き合っていた。


「どうやったら紅世の王に勝てるだろうか」

そう呟くシャナに、裕二は「とにかく修行あるのみだ」

シャナは「つまり筋トレか?」

「いや、筋肉より存在の力だ。零時迷子の中でドラゴニックオーラを強化するんだ」

そう言って、裕二はシャナの手を執った。

そして「お前を包み込みたい」


シャナは頬を染めて「こんな時に・・・」

「こんな時だから」と裕二。

「解った。その言葉を待っていた気がする」

そう言ってシャナは、裕二の胸に顔をうずめる。

シャナを抱きしめる裕二。


そんな中、裕二は何かに気付いたように「ちょっと待て。俺たち何をしているんだっけ?」

シャナは「包み込んでくれるんだよな?」

裕二は抱擁を解き、そして言った。

「そうだった。オーラを強化して、今までせいぜい5cmくらいだったのを、1mくらいの範囲に拡大すれば、おまえをすっぽり包み込んで、全周囲からの攻撃からお前を守れる」

「そうか。ありがとう裕二」

そうシャナが言うと、裕二は「一緒に奴を倒すぞ」


そして、シャナは一息つくと「それとな・・・・・・、紛らわしい言い方するんじゃ無い!」と、顔を真っ赤に、思いっきり残念な声で。

「そんなに紛らわしかったか?」

そう、頭に?マークを浮かべて裕二が言うと、シャナは言った。

「あの三人が聞いたら誤解が増幅して大変な事になるぞ」



その時、女官部屋でルナが、ライナとリンナに・・・。

「聞きました? 裕二さんが熱烈なラブコール。シャナさんを包み込みたいって」

三人の女の子の黄色い歓声が部屋に響いた。



その頃・・・・・。

時計塔の最上階にフリアグネと人形のマリアンヌが居た。


「御主人様・・・」

そうマリアンヌが不安そうに言うと、フリアグネは「大丈夫。都喰らいの魔法陣はもうすぐ完成する」

「ですが、邪魔する奴等が・・・」とマリアンヌ。

フリアグネは「あんな奴らに邪魔はさせない」

「私はこの姿でも十分です。フリアグネ様に抱きしめて貰えるなら」とマリアンヌ。

フリアグネは「君には自分の足で私の隣に立って欲しい」


「けど、そのためにこの国を敵に回すんですよね?」

そうマリアンヌが言うと、フリアグネは「俺は世界を敵に回したって、お前を守る。勝利は目前だ。既にここまで・・・」

彼の視線の先には、光によって作られたポルタの市街の模型。


「既にこんなに座標人形たちの配置が完了したんだ。この都喰らいの術式は、長い間成功不可能だった。それは魔法陣の座標となるトーチが勝手に歩き回って魔法陣の形を崩してしまうからだった」

そうフリアグネが言うと、マリアンヌは「術式を構築した人は、そういうのを考えなかったんでしょうか?」

「・・・・・・・・」

残念な空気が漂う。

フリアグネは続けて言った。

「だが、私はその欠点を、私の人形たちをダミートーチとして使う事によって克服した。人形は勝手に歩き回る事は無い。この画期的な改良で、遂に都喰らいは実現し、君に人間の姿をあげる事が叶う」



だが・・・・・・。


「あの・・・座標が随分変わってるような気がするんですけど」とマリアンヌが指摘。

フリアグネは、改めて光の市街模型を観察。

そして「・・・・・確かに、座標が正確な魔法陣を描いていない。何故だ?」

「あの公園のベンチに置いたのも、女の子が持って行ったままですよね?」とマリアンヌが指摘。

「あ・・・・」


「人形たちを誰かが持ち去ったのでは?」とマリアンヌが指摘。

フリアグネは唖然顔で「ネコババされたというのか」

「普通、ただの落とし物だと思うのでは?」とマリアンヌが指摘。

フリアグネは憤懣顔で「それだって拾得物横領罪に問われるぞ」

マリアンヌは「もしかして他の座標人形だちも・・・・・」

フリアグネは「持ち去られて移動したとしたら・・・」


「作り直しして、また配置しますか?」

そうマリアンヌが言うと、フリアグネは溜息をついて「一苦労だぞ」

「けど、彼等は一応御主人様の使い魔なのですから、命じれば自分で移動するのでは?」とマリアンヌが指摘。

「あ・・・。今までの苦労は何だったのだろうか」とフリアグネは残念顔で・・・・・・。


フリアグネは小さな鐘を右手に持ち、それを鳴らした。



その頃、ある民家では・・・・。


一人の女の子が姉に自慢気に「捨てられた可哀想な子を拾って来たの。見せてあげるね」

女の子は自分の部屋に行き、ベットの上にある筈の熊のぬいぐるみが消えている事に気付いた。

「テディちゃん、どこに行ったのかなぁ」と呟く女の子。


そして同じころ、街中を歩く熊のぬいぐるみが居た。



そして・・・・・・・。


時計塔の最上階では、フリアグネが光の市街模型を観察している。


「だいぶ復原が進んだようだな」

そうフリアグネが言うと、マリアンヌは「けど、随分減ってるような気がするんですが」

フリアグネは「・・・・・・補充が必用だな」と言って溜息をついた。

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