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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第50話 至宝な航路

オケアノスの海を横断し、西方大陸へ近づくエンリ王子たち。

立ち寄った島で掴んだ手掛かりを元に、パナマの西岸を目指した。

船を操る航海士であるニケの手元には、未完成な航路図がある。

立ち寄った場所の位置を計測して描いたものだが、パナマの位置は東岸に立ち寄った時のものが記録されていた。


舵をとりながらニケは「パナマまで最短距離で行くわよ」

だがエンリは「その前に水の補給が必要だろ」

「アーサーのアンチソルトがあるじゃない」とニケ。

アーサーは「悪いが、魔力切れだ。真水分離の魔法は魔力消費が激しいんだよ」


「調子に乗って水をガハガバ使うからでしょ」とニケ。

「一番使ったのはニケさんなんだが」とエンリ。

ニケは「お風呂は女の命よ」



結局補給のため、西方大陸の北部を目指す。

そして西岸を確認し、上陸する。


森と草原。遠くに高く険しそうな山並みが見える。そして野牛の群れも。

久しぶりの広い陸地にタルタたちがはしゃぐ。

「川がある」とアーサー。

「牛も居る」とジロキチ。

タルタが「今夜はビフテキだぁ」


みんなで川に入って水の補給。その時、川の砂の中にニケが何かを見つけてはしゃぐ。

「これ、砂金じゃないの。拠点を作って当分居座るわよ」

エンリはあきれ顔で「お宝を目前に何言ってるんだ」



野牛を一頭仕留めて解体する。大部分は干し肉にして、夕食分を焚火で焼く。

牛肉の焼ける匂い。

海岸で宴を開いてわいわいやる。

久しぶりの新鮮な肉に舌鼓を打ちながら「とりあえず陸で一泊しよう」とエンリは上機嫌で言った。。

「久しぶりの焼肉で飲む酒は美味いっ」とタルタ。

「やっぱり地面の上は落ち着くなぁ」とジロキチ。

カルロが「ところでニケさんは何処に行った?」

「さぁ」と仲間たちは能天気な顔で・・・。



翌朝、目を覚ますと、全員が縛られていた。周囲に大勢の現地人。

エンリは現地人に抗議顔で「何だよお前等は」

現地人たちは「牛は部族の共有財産。よそ者が勝手に殺して良いものではない」

「あんなに居るのに」とタルタが口を尖らせる。

「それと、聖地を壊した」と現地人。

エンリが「何の事だ?」と問うと・・・


「この女はあんた達の仲間だろ」

そう現地人が言うとともに、ニケが縛られて引き立てられてきた。

「ニケさん、何やったんだよ」とエンリがニケに・・・。

ニケは「金鉱の試掘よ」


エンリは溜息をついてファフに「変身すれば、こんな縄、すぐ切れるだろ」

ファフが巨大化してドラゴンになり、縛っていたロープはあっさり切れた。

自由になったファフが仲間たちを縛る縄を切る



現地人たちは慌てて彼等から離れ、口々に言った。

「ウンセギラを使役する呪術師が居るとは」

「相当な魔物使いだ」

そんな彼等を見てジロキチはエンリに「あいつらどうする?」

エンリは「放っておこう」



すると現地人たちが頭を下げてエンリに言った。

「お願いがあるのですが、フライングヘッドを倒して下さい」

「調子のいい事を言いやがって」とタルタ。

するとニケが「やってあげましょうよ。義を見てせざるは勇無き也よ。困ってる人を見て放ってなんかおけないわ」

「目に$マーク浮かべて言う台詞じゃないと思うが」とアーサー。

「何企んでるか想像つくけどね」とジロキチ。


エンリは溜息をつくと「まあいいや。それで、どんな奴なんだ?」と現地人に問う。

「人の頭の形をした巨大な空飛ぶ怪物で、人を食べるんです。牛たちも食い荒らされて、どんな武器も歯が立たない」と現地人。

「炎とか雷撃でも駄目なのかな?」とアーサー。

「部族の呪術師がそれで挑んで返り討ちに遭いました」と現地人。

「ドラゴンでも駄目かな?」とエンリ。


「物理攻撃も魔法攻撃も全部跳ね返しちゃうくらい、滅茶苦茶面の皮が厚いです」と現地人。

ジロキチが「やたら歴史を捏造して"この戦犯民族どもめ"とか言い掛かりつけてくる、どこぞの半島の奴等より、面の皮が厚いのかな?」

すると現地人が言った。

「ただ、昔一度、我等の祖先が倒したという話があります。勇敢な女性で、真っ赤に焼けた石を美味しそうに食べるふりをして見せたら、奴は騙されて焼けた石を食べて、口の中を焼かれて逃げて、出て来なくなったそうです」


「そんな退治法があるんだ。だったら同じようにしたらいいんじゃないの?」とニケ。

「真似たんですけど駄目でした」と現地人。

「学習能力はあるんだ」とアーサー。


するとタルタは言った。

「なら、いい方法がある。槍を一本用意してくれ。普通に挑むフリが出来ればいいから」

タルタは爆雷をいくつも背負って、槍を構える。



フライングヘッドが現れた。


タルタの攻撃。

タルタはフライングヘッドを槍で突いた。

フライングヘッドは面の皮で槍を防いだ。

フライングヘッドはHPを0ポイント失った。


フライングヘッドの攻撃。

フライングヘッドは口を開けてタルタを呑み込んだ。



現地人唖然。そして・・・。

「あの人、食べられちゃいましたけど」

「大丈夫」とエンリたちが笑って言う。


爆雷が爆発してフライングヘッドは木っ端微塵となる。


そんな様子を感謝の目で見て現地人は口々に言った。

「自分の身を犠牲に我々を化物から救ってくれたんだ」

「有難や」

「人と動物を分かつものは自己犠牲だと言うからなぁ」

そんな彼等にエンリは「いや、大丈夫。あいつは体を鉄のように固くできるんだ」



爆発の煙が消えた中に、鉄化したタルタが立っていた。

鉄化を解くタルタ。


「お手柄だな」とエンリはタルタを労う。

だがファフはタルタに「けど変な匂い」

「フライングヘッドの唾液だろ」とアーサー。

「こっち来ないでよ」とニケ。


タルタは「化物を退治したヒーローに近付くなとか」と言って口を尖らす。

そんなタルタにエンリが「いいから体洗ってこい」



海で体を洗うタルタを見ながら、現地人たちはエンリ王子一行に頭を下げた。

「何とお礼を言えば良いのやら」

するとニケが「見返り、解ってるわよね」


手に手にシャベルを持つ現地人たち。

「何する気だよ」とエンリがニケに問う。

ニケは「決まってるじゃない。金鉱掘りの労働力を提供して貰う・・・って、ちよっと何するのよ」

ジロキチとアーサーがニケを両側から押えて、船に連行。



エンリはニケに「困ってる人を助けるのは当然って言ってたよね?」

「お宝が目前なのに、こんな所で道草くっていられるか」とタルタ。

陸地から遠ざかる船の手すりからニケは手を伸ばして「金の鉱脈があるのよ。私のお金ーーーーー・・・・・・」



西方大陸西岸を南下する。


甲板で膨れっ面のニケ。

そんなニケにエンリが「まだ怒ってるのかよ」

ニケが「金の鉱脈をフイにしたのよ。私のお金よ。命を賭して化物を退治した見返りなのよ」

「命を賭して化物を退治したのは俺なんだが」とタルタがあきれ顔で言う。

そしてエンリが「それより、ここらへんがパナマの反対側だよね?」



遠くに見える陸地を観察する。

そして天球儀で緯度と経度を観測してニケは言った。

「確かに、このあたりね」

その時、望遠鏡で陸地を見ていたタルタが言った。

「あれ、家じゃないのか?」


上陸して家に入る。

「まるっきりの廃墟だな」と、中の様子を見てアーサーが言った。

「これがバスコの根城か?」とタルタ。

手掛かりを探すが、何も見つからない。



付近を捜索するエンリたち。

カルロがそれを見つけて「あそこに洞窟があるぞ」



洞窟を探索する。光魔法で明かりをとり、奥に進む。

洞窟の奥に宝箱があった。

「あの島にあったバスコの宝箱と同じよね」とニケ。

「開けるぞ」とエンリ。


箱を開けると、紙が一枚。

それを見て「図形だな」とアーサー。


ニケの顔色が変わった。

「これ、世界地図よ。私が行った先を測量したのと同じだわ。見てよ。ここがポルタでこれが南方大陸、これがインドで、ジャカルタ、ジパング、そして西方大陸」

そう言って、図のあちこちを指すニケ。

「この場所がここか」とエンリ。

「それで、こことここに運河って訳かよ」とタルタ。

ファフが「裏に何か書いてあるよ」



紙を裏返して、エンリがそれを読み上げる。

「世界の全ては航路で結ばれる。それによって全ての人と人が出会い、語り、取引によって豊かさを分かち合い、苦難に抗うために手を繋ぎ、喜びを与え合う太き絆となる。それを手にする者は遥かな地との交易によって財力を得、遥かな地と友誼を結んで武力を得、それによって世界を支配する事が叶うであろう。そしてその航路を手にする者は、世界の海をまたにかけたる我等海賊。そしてその王たる海賊王なり。その力をもたらす、この航路図こそ、世界の海をひとつに結ぶ、ひとつながりの大秘宝なり。海賊バスコ・ダ・ガマ、これを記す」



しばらくの沈黙が場を支配した。

これまでの冒険の記憶がみんなの頭をよぎる。

そして「そういう事かよ」とエンリが呟いた。


「それで、金銀財宝は?」とニケ。

「そんなものは無い」とタルタ。

「そんなぁ」とニケが口を尖らせた。


タルタが「で、どーする?」

「どーするって?」とアーサー。

「これ、公開するのか?」とタルタ。

「そうだな」

そう言ってエンリ王子はしばらく考え、そして言った。

「公開しよう。そして国中のみんなで航海するんだ」


するとニケが「後悔するわよ。独占すれば大金持ちになれるのに」

そんなニケにエンリ王子は言った。

「それで俺たちだけで、ちまちま交易しろってか? それじゃ、運べる財貨なんてたかが知れてる。みんなで交易すれば莫大な財貨がいきわたって、世界全体を大きく変える」


「そうだな。なにせ世界の海だもんな」とタルタ。

「俺たちのポケットには大きすぎる」とジロキチ。

「そういう事だ」とエンリ。

「どこかで聞いたような台詞なんだが」とタルタ。

「いいだろ。それより、これからどうする?」とジロキチ。

エンリは「ポルタに帰ろう」と言って立ち上がった。



手に入れた世界地図を持って洞窟を出る。

そして船に乗り込み、ポルタに向けて出港した。


船の進路が安定すると、アーサーが言った。

「ところで王子」

「何だ?」とエンリ。

「さっき、公開してみんなで航海って・・・」とアーサー。

タルタが「こうかいして、こうかい・・・」


残念な空気が漂う。

エンリは赤くなって弁解する。

「いや、わざとじゃないから」

「隣の家の囲いより寒いわね」とニケが笑いながら追及。


するとエンリは「ニケさんだって、公開すると後悔とか言ってたじゃん」

タルタが「こうかいしてこうかいするとこうかい・・・」


残念な空気が漂い、ニケが赤くなって弁解する。

「わざとじゃないわよ」

「隣の家の囲いより寒いですね」とカルロが笑いながら追及。

ニケとエンリが口を揃えて「お前が言うな」

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