第498話 掛け持ちでデート
フェリペ皇子を追って、ポルタ大学人文学部にそれぞれの従者とともに入学した、三人の幼い令嬢たち。
三人の令嬢にデートを迫られるフェリペ皇子だが、集団デートにも限界が来る。
三人とも、二人っきりのデートをフェリペに要求し、互いに牽制するようになる。
そんな彼女たちにフェリペが頭を悩ます一方で、彼女等の従者たちの間で話題となったものがあった。
「ポルタ遊園地というのが開園するそうなんだけど」
いつものように大学の教室でフェリペにお相手をねだる令嬢たちを横目に、従者六人であれこれ雑談する中、アネモネがそんな話題を出す。
「何だよそれ」
そうベルナーが言うと、アネモネは「いろんなアトラクションがあって、スリル満点な乗り物があって・・・」
「それって、ニケさんが獣人族の所の魔剣から聞き出した前世の記憶を元に作った遊び場だよ」とマゼランが解説。
そんな話が三人の令嬢の耳に入ると、早速彼女たちは行動開始。
「フェリペ様」
トイレから出て来たフェリペに、令嬢の一人がそう呼びかける。
「どうしたの? リリア嬢」
「遊園地というものが出来たそうですよ。最高のデートスポットとして・・・」
そんなリリアの説明に、フェリペは首を傾げて「どう最高なの?」
「とにかく最高だとか」とリリア。
フェリペは困り顔で「そう言われても・・・・・」
するとリリアは拗ね顔で「私がお嫌いですか?」
「解ったよ」
フェリペとのデートの約束をゲットしたリリアは「それでは開園の日の十時に」
「フェリペ様」
剣術の授業で教官との打ち合いを終えたフェリペに令嬢の一人がそう呼びかける。
「どうしたの? ロゼッタ嬢」
「遊園地というものが出来たそうですよ。子供にとって最高の遊び場だとか」
そんなリリアの説明に、フェリペは背伸び顔で「僕はもう子供じゃない」
「私は子供です」とロゼッタ。
「・・・・」
ロゼッタは更に「ヒーローは子供を守るものだと聞きます」
「解ったよ」
フェリペとのデートの約束をゲットしたロゼッタは「それでは開園の日の十時に」
「フェリペ様」
水飲み場で喉を潤して戻って来たフェリペに令嬢の一人がそう呼びかける。
「どうしたの? ローズ嬢」
「遊園地というものが出来たそうですよ。スリルいっぱいの乗り物があって、冒険気分が味わえるとか」
そんなローズの説明に、フェリペは気が乗らなそうな顔で「冒険なら海賊団の仲間とやってるけど」
「私も冒険がしてみたいです」とローズ。
「解ったよ」
フェリペとのデートの約束をゲットしたローズは「それでは開園の日の十時に」
何も考えずに三人目とデートの約束をしたフェリペの前に、ロキが現れる。
「主よ。同じ日の同じ時間に三人と約束とか、大丈夫なのか?」
「あ・・・・・」
「主の体は一つしか無いのではないか?」と、追い打ちをかけるロキ。
「どうしよう」
そう、困り顔で言うフェリペに、ロキは「こういう事は彼に聞くのが一番だろうな」
フェリペは、お城の諜報局でカルロを見つけ、訊ねた。
「ねぇカルロ、三人の女の子と同じ日の同じ時間にデートの約束をしちゃった時って、どうしたらいいの?」
「そういう時はすっぽかすんですよ」
そう、事も無げに答えるカルロに、フェリペは「えーーーーーっ!」
「それで、後でうまく言い訳するんです」
そうカルロに言われ、フェリペは困り顔で「言い訳って?」
「親が急病というのが定番ですよ」とカルロ。
「親って父上だよね。元気なんだけど」
そうフェリペが困り顔で言うと、カルロは「嘘も方便ですよ」
「けど、本当に父上が病気なら、みんなに伝わると思うんだけど」
そんなフェリペを他所に、カルロはノリノリで能書きを垂れる。
「それで、後で埋め合わせデートをするんです。相手は優位に立ったつもりで、して欲しい事は何でも要求します。それで、埋め合わせデートが終わる頃には大満足で簡単に落とせます」
「いや、落としたくてやってる訳じゃ無いんだけど」と言ってフェリペは溜息。
ロキは「主よ、こいつに聞くのは間違いだと思うぞ」
フェリペは、お城の厨房でライナを見つけ、訊ねた。
「ねぇライナ、同じ日に三人の女の子と約束してしまう事ってあるよね?」
「掛け持ちデートですね。よく恋愛ものに出てきますよ」
そう答えるライナに、フェリペは「そうなの? そういう時ってどうなるの?」
「トイレに行くと言って待たせている間に、他の子の所に行って、しばらくその子と遊んだら、またトイレに行くと言って待たせて、次の子の所に・・・」
そうライナが言いかけると、フェリペは「解ったよ ありがとうライナ」
話を最後まで聞かずに行ってしまったフェリペを、ライナは茫然と見送りつつ、言い残した台詞を呟いた。
「・・・・・大抵無理が来て破綻するんだけど・・・・。これって恋愛小説の事なのよね?」
その夜、フェリペは自室でロキと作戦会議。
「とりあえず、あの三人が鉢合わせするとまずい。何分前に来るかが問題だな」
そうロキが言うと、フェリペは「僕が早く来てたら、彼女たち、気を使うよね?」
ロキは「ここは彼女たちの動きを把握するのが重要だな」
当日の朝・・・・・。
ロキは、仮面分身の仮面を三人の令嬢たちの各家の門の前に配置。
そして、仮面が得た情報をロキがフェリペに伝える。
「主よ、ロゼッタ嬢が家を出たぞ」
借家から馬車で、ベルナーをお供にロゼッタが遊園地に到着。
馬車を降りてフェリペを待つロゼッタに、ベルナーが「さすがに早すぎたのではないですか?」
「私の愛の深さですわ。それに、疲れたらベルナーがだっこしてくれるのよね?」と言って彼に甘えるロゼッタ。
そんな二人の前にフェリペが出て来る。
「こんにちは、ロゼッタ嬢、それにベルナー」
「御機嫌よう、フェリペ様。従者の方は?」
そうロゼッタが言うと、フェリペは「ヒーローに付き添いなんて要らないさ」
ロゼッタはフェリペの右手を掴むと、彼女の従者を振り返って「それじゃベルナー、帰りもよろしくね」
「それじゃ、行こうか」とフェリペは言って、二人で遊園地の門をくぐる。
開場から一時間も経っていない中、大勢の来場者があちこちを歩くのを見て、満足顔のニケが居た。
「さすがは未来のイベントね。珍しさで人を集めてお金ガッポガッポ」
彼女の横には、投資に付き合わされたポルタ東インド会社のモウカリマッカ社長。
「すぐ飽きられるような気がするんですけど」
自分が見知った者がこの遊園地でそんな皮算用を弾いているとは夢にも思わないフェリペは、甘い物を買ってロゼッタと一緒に食べながら、敷地内を歩く。
やがて、姿を消したロキがフェリペの耳元で「主よ、そろそろリリア嬢が来るぞ」
フェリペは「ちょっとトイレに行きたいんだけど」
「ここで待っていますわ」とロゼッタ。
リリアがロンドをお供に馬車で遊園地に到着。
馬車を降りてフェリペを待つリリアは「デートというのはお忍びですわよね。親戚とはいえ、馬車の手配のためにバレてしまうなんて」
そんな小言を彼女がロンドに向けている中、フェリペが姿を見せた。
「こんにちは、リリア嬢、それにロンド」
「御機嫌よう、フェリペ様。従者の方は?」
そうリリアが言うと、フェリペは「ヒーローに付き添いなんて要らないさ」
リリアはフェリペの右手を掴むと、彼女の従者を振り返って「それじゃロンド、帰りもよろしくね」
「それじゃ、行こうか」とフェリペは言って、二人で遊園地の門をくぐる。
フェリペはロゼッタが居るのと別方向に向かい、甘い物を買ってリリアと一緒に食べながら、敷地内を歩く。
やがて、姿を消したロキがフェリペの耳元で「主よ、そろそろローズ嬢が来るぞ」
フェリペは「ちょっとトイレに行きたいんだけど」
「ここで待っていますわ」とリリア。
その頃ロゼッタは・・・・・。
フェリペがトイレに行くと言って別れた場所で待ちぼうけを喰いつつ「フェリペ様、遅いですわね」と呟く。
ローズがアネモネをお供に馬車で遊園地に到着。
馬車を降りてフェリペを待つローズは、アネモネに「デートというのは殿方との一対一でするものと聞いたのだけれど、付き添いは必用なのかしら?」
「フェリペ殿下にはマゼラン様が付き添いでいらっしゃる筈ですよ」と下心全開顔のアネモネ。
そんな二人の前にフェリペが出て来る。
「こんにちは、ローズ嬢、それにアネモネ」
「御機嫌よう、フェリペ様」
「従者の方は?」と残念そうに問うアネモネ。
フェリペは「ヒーローに付き添いなんて要らないさ」
ローズはフェリペの右手を掴むと、彼女の従者を振り返って「それじゃアネモネ、帰りもよろしくね」
アネモネは未練顔でフェリペに「帰りにはマゼラン様、いらっしゃるのですわよね?」
「これ、私たちのデートなんですけど」と突っ込むローズ。
「それじゃ、行こうか」とフェリペは言って、二人で遊園地の門をくぐる。
フェリペはロゼッタやリリアが居るのと別方向に向かい、甘い物を買ってローズと一緒に食べながら、敷地内を歩く。
やがて、姿を消したロキがフェリペの耳元で「主よ、そろそろロゼッタ嬢が待ちくたびれている頃だぞ」
フェリペは「ちょっとトイレに行きたいんだけど」
「ここで待っていますわ」とローズ。
フェリペはトイレに行くと言ってロゼッタと別れた場所へ・・・・・。
そして、待ちぼうけ状態の彼女に「ロゼッタ嬢、待たせて済まない」
「大丈夫ですわ」と強気を取り繕うロゼッタ。