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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第487話 血染めの大地

鉄と石炭の資源を求めて西方大陸を訪れ、ブラジル高原を領するカブラル候を家来としたエンリ王子は、抵抗派現地人のリーダー、アマル皇子を捕縛し、対話によって共存関係を築く事に成功した。



その時、建物のドアを荒々しく開けて、アマル皇子を救出しようと乗り込んで来た、一人の魔法少女。

「アマル皇子、助けに・・・・・」

そう言いかけ、エンリたちに気付いて唖然顔となった女の子に、エンリも唖然顔で言った。

「ポカホンタスさん、何やってるの?」


「エンリさんにリラさんに・・・・・・」

そう言いながら、その場に居る見覚えのある面々に、戸惑う魔法少女姿のポカホンタス。


そんな彼女にアマルは言った。

「ポカホンタスさん。あなたの言った通りでした。彼はあなたが愛するに相応しい」

「ちょっと待て。どういう事だよ」と問い詰め顔のエンリ。

「いや・・・、誤解なんだけど。それより聞いて下さい。私、皇子様からプロポーズされてるんです。好きな人が居るからってお断りしたんですけど、なかなか諦めてくれなくて。やっぱり私って満更でもない、最高の美少女ヒロインな魔法少女なんですね」

そう言って有頂天顔MAXではしゃぐポカホンタス。


エンリの仲間たちの間に残念な空気が流れる。

そしてリラは言った。

「それはいいんだけど、ポカホンタスさんの恋人ってサンフラワー村のジョンスミスさんですよね?」

「エンリ王子じゃないの?」とアマル唖然。

「だって二人の王子様が私を取り合うって、最高の設定じゃないですか」と鼻ヒク状態のポカホンタス。

エンリは溜息をつき、そして「つまり誤解を放置したと・・・・・・」



ようやく状況を察し、アマルは言った。

「エンリ王子、どうやらあなたを誤解していた」

エンリは残念顔で「もしかしてアマルさんが俺を敵視してるのって、好きな女の恋人だっていう勘違い?」

「だって正妻が女帝で恋人が居て懐いてくれるロリっ子が居て、その上に・・・ですよ。どんだけヤリチンだよリア充爆発しろって普通思いますよね?」とアマルは口を尖らせる。

「いや、そんなのあんただけだ」と突っ込むエンリ王子。


「ってか、アニメの悪役って大抵そうだよ。主人公がやたらモテて、それに嫉妬して目の仇にして・・・」とアーサーも突っ込む。

「それじゃ私って悪役?」

そうアマルが言うと、カルロが「いや、恋は諦めない事が最大の武器です。アニメの主人公がピンチになると、みんなそう言いますよね?」

ジロキチが溜息をついて「世界の女は俺の物とか言ってヤリ捨てしまくってる奴の言う事かよ」


「それで、そのジョンスミスさんって、どんな人?」

そうアマルが言うと、エンリの仲間たちは互いに顔を見合わせて「普通の開拓者だよね?」

アマルは「じゃ、スペックは私が上・・・・・」



アマル皇子は希望で目をキラキラさせ、ポカホンタスに向き合い彼女の手を執り、そして言った。

「改めて求愛します。私の妃になってくれませんか?」

ポカホンタスは勿体つけ顔で「どーしよーかなぁ」

「おいおい」

「だって王子様ですよ。しかも、自称じゃない本物の王子様」と言ってテンションを上げるポカホンタス。

「俺だって本物の王子だけどね」と突っ込むエンリ。


「是非私の妻として、世界唯一の魔法で戦うヒロインとして、この大陸の独立のために・・・」

そうアマルが求愛の言葉を重ねると、ポカホンタスは「どーしよーかなぁ。そりゃ私は超絶美少女で性格もスタイルも萌えで女子力も知性も教養も生まれも育ちも・・・」

タルタがあきれ顔で「何だか自己過大評価祭りになってないか?」

「そういうのはいいんで、是非その世界で唯一魔法で戦う女の子として、私の隣で独立のために」と、アマルが更に求愛の言葉を重ね・・・・・・。


「どーしよーかなぁ・・・って、ちよっと待ってよ。もしかして私が好きなのって魔法だけ?」

アマルの求愛の言葉の中の一言に気付き、疑問の声を上げるポカホンタス。

そんな彼女にアマルは、信念に燃えた求愛を続けた。

「私はこの大陸のため、侵略者との戦いに身を捧げる者。外の事に関心は無いっ( ー`дー´)キリッ」

ポカホンタス、おろおろ顔で「私の女の子としての魅力とか・・・」

「そんなのあったっけ?」と怪訝顔のアマル。



「アマル皇子のばかぁ!」


そう叫んでポカホンタスは涙目で小屋を飛び出した。

そんな彼女を唖然顔で見送るアマル。そして「私、何か彼女を怒らせるような事、しました?」

とんでもない残念な空気の中、エンリの仲間たちは声を揃えてアマルに言った。

「いや、あれはあんたが悪い!」


そしてエンリは指摘する。

「ってか、今時魔法で戦える女の子なんて、ユーロにはゴロゴロ居るぞ」

「そうなの?」と、アマル皇子ポカーン。

「イギリスにもポルタにも、魔法を学べる学校があるからな」とエンリは指摘を続けた。

「そうなのか」



やがて空気が正常に戻ると、エンリは言った。

「ところで、アマル皇子がここに来た目的って・・・・・」


アマルは「ヤサイ人という戦闘部族が居るんです。そこに、これから戦士の募集を。何でもドラゴンを倒す力があるとか」

エンリの仲間たちは、互いに顔を見合わせる。

そして一様に呟く。

「特殊な魔法でも使うのかな?」


エンリは思った。

(下手に敵に回すとファフが危ない)

そして「同行したいのですが」と、彼はアマルに・・・・・。



翌日・・・・・。


アマル皇子と彼の部下の案内役と一緒に、山奥の村へと向かうエンリ王子たち。

村に着くと、マッチョでスキンヘッドな男性があちこちに居た。


彼等を出迎えたのは、わりと小柄だがマッチョで目つきの鋭い部族の長。

「ようこそアマル皇子。族長のベジータブルです」

「とりあえず皆さんの力を見たいのですが」

そうアマルが言うと、族長は「ご案内します」


アマルとエンリたちを案内して村を歩きながら、族長は解説した。

「我々の戦士は無敵です」

「刀とか弓矢とか攻撃魔法とか?」

そうエンリが言うと、族長は「ワンパンチであらゆる敵を倒すため、特別な修行と人体改造を・・・」

「おいおい」とドン引き気味のエンリたち。



「あちらです」

そう言って、広場で修行に励む戦士たちを指し、族長は語った。

「毎日腕立て伏せとスクワットを五百回。それからランニングを五キロ。食事にプロテインをメインに・・・・・・」


タルタが「ただのトレーニングだよね?」

「けど人体改造って?」

そうアーサーが言うと、族長は「筋肉に限界を越える負荷をかけ、壊して再生させるのです」

「やっぱりただのトレーニング」と言ってエンリたち、溜息をつく。

族長は「みんな激しいストレスで脱毛症になります」

「どこかで聞いたような話なんだが」とエンリが突っ込む。


すると族長は「戦士としての試練に"かわら割り"を」

「あのジパングの空手マスターがやるという・・・」と、エンリたちの間で期待値が上昇。



かわら割りをやっている所へ、アマルやエンリたちを案内する族長。


台の上にそれを乗せ、一人の戦士が気合とともに手刀を振り下ろす。重い衝撃音とともに、それは真っ二つに・・・。

「何を割ってるんですか?」

そう不審声でエンリが問うと、族長は「河原に落ちている流木の枝ですが何か?」

エンリ、がっかり声で「そういうかわらですか」



一通り見て回ると、エンリたちは互いに顔を見合わせて、あれこれ・・・・・。


ニケが「この人たち、戦士として使えるの?」

ジロキチが「戦闘部族なんだよね? 剣術とかはやらないの?」

族長はマッチョポーズで「戦闘部族ヤサイ人の武器は、この鍛え上げられた肉体」

「それじゃ、鉄砲で武装したスパニア軍には勝てないと思うんだが」

そうエンリが言うと、族長は「マンジ会という武装組織はこれで人口一千万の都市を制圧したと聞きます」

エンリ、溜息をついて「それ、ただのヤンキーの喧嘩だから」と突っ込む。


するとファフが言った。

「けど、ドラゴンを倒す力があるんだよね?」

「この地は先祖が邪龍を倒して奪還したものです」と族長は言う。

エンリたちは互いに顔を見合せて「つまり、ただの伝説?」



族長は部族に伝わる物語を語った。


その昔、邪龍がブラジル高原に降り立ち、人々を襲った。

その時、三人の勇者が龍に立ち向かったが、彼等は龍に敗れて倒れた。

そして女神の姉妹が彼等の勇気を讃え、助力を行った。

姉は三人をアンデッドとして蘇らせたが、妹はあくまで人間が邪龍を倒すべきと考え、一人の赤ん坊を三人に授けた。

三人は赤ん坊を育てながら戦う術を教え、彼は成長して"最果てのパラディン"を名乗り、この地を追われた人たちを率いて、ついに邪龍を倒した。

大地は邪龍の血で赤く染まり、彼等の子孫はヤサイ人の祖となった。



話を聞き終えて、エンリたちは溜息をつく。

「やっぱりただの伝説だよ」

すると族長は「いえ、龍の血で、今もここの大地は赤く染まったままです」

「それって赤土だよね?」

そうエンリが言うと、族長は「そんな、どこにでもあるものでは無く、本当に真っ赤なんです」

「つまり、赤みの強い赤土って事だよね?」とエンリ。


すると、ニケが言った。

「ちょっと待ってよ。土が赤いのって、鉄さびの色よ」

「いや、鉄資源の乏しいポルタにだって赤土はあるぞ」

そうエンリが言うと、ニケは「大抵の土に鉄分は含まれているわよ」


「確かに、砂鉄なんてどこでもあるからなぁ」

そうエンリは呟くと、族長に向き直り、そして言った。

「案内して下さい」



数日後・・・・・・。

エンリたちは再び村を訪れ、族長に案内されて近くの山に入り、崖になっている所に出た。


崖面に露呈した土を見て、エンリは呟く。

「本当に真っ赤な赤土だな」

ヴァーレと、そして同行してきた鉱石科の教授はその土を手に執り、そして言った。

「間違いない。ここには豊富な鉄鉱石が眠っています」


エンリは言った。

「開発しよう。そしてこの地をイギリスに対抗できる鉄の大産地にするんだ」

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