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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
477/513

第477話 動力の発明家

ポルタ大学では蒸気機関の開発が進み、ジパング刀の作り方を応用した爆発しない釜の製法、釜と燃焼室を入れ子式に作る事で熱効率を上げる・・・等の改良で、完成まであと一歩の所までたどり着いていた。



その頃イギリスでは・・・・・・・。


発明家のワットが実験工房で、何人もの助手や協力技術者たちと祝杯を上げていた。

「復水器の完成、おめでとうございます」

そう助手の一人が言うと、協力者の一人が「これで、今まで蒸気と一緒に漏れていた熱を逃がさずに使えて、熱効率が格段に上がる」

「冶金技術で蒸気圧力に耐える釜を作ってくれたダービーさんのお陰です」と、ワットは感謝の言葉を述べる。



そんな彼等に長髪のイケメンが「後はこの技術を、他国の産業スパイから守る事だな」

マンネリ王国に常駐していたバンカラン少佐だ。

そしてその横に、一人の子供が湧いて出る。

肥満体形で顔は縦より横幅が大きく、目は細く緩んだ口が顔の右端から左端へと繋がる、潰れ餡饅と呼ばれる容貌。

マンネリ王国のバッタモン王子だ。


「やはり効率というのは大事だ。人体で言えばエネルギー効率が良いのは、僕のように無駄な筋肉が少ない、ふくよかな体形」

そうバッタモンがドヤ顔で言うと、バンカランは「お前のは余分な脂肪って言うんだ。・・・ってか、何でお前がここに居る?」

「お前は僕のボディーガードで従者だろ」とバッタモン。

バンカランは憤懣声で「誰が従者だ誰が! 俺はお前の所に外交官として派遣されたイギリス人だ」


「その外交官が何で本国の発明家の工房に居る?」

そうバッタモンがからかい声で言うと、バンカランは「俺の本業はこっちだからな。元々俺は諜報局所属のスパイで、各国の産業スパイが暗躍する中、実力トップな俺が狩り出された」



「実力トップ・・・ねぇ」

そう言いながらバッタモンは、脇の棚に置いてあった鳥の置物を手に執る。

そして「おや、こんな所に盗聴の魔道具が」

「何だと!」

鳥の置物を調べたバンカラン、真っ青になってそれを床に叩き付ける。


「こんな所にネズミの使い魔が」

そう言ってバッタモンは、捕まえたネズミの尻尾の先を摘んでぶら下げて、バンカランの目の前に。

更に真っ青になるバンカラン。


「こんな所に敵国のエージェントが」

そう言ってバッタモンはワットの助手の一人を指す。

その場に居る全員の厳しい視線が彼に集中。

そしてワットは「ダン、お前・・・・・・」

そのダンと呼ばれた助手は真っ青になって「ちちち違います、信じて下さいワットさん。俺はけしてポルタのスパイなんて」


「なるほど、お前を買収したのはポルタか」とバンカラン。

「それは・・・」

そしてバンカランはバッタモンに「どうして解った?」

バッタモンはドヤ顔で「簡単な推理だよワトソン君」

「誰だよワトソンって・・・・・」と突っ込むバンカラン。


「彼は絶対にモテるタイプじゃ無い。なのに右のほっぺにキスマークが。つまりこれはハニートラップ」

バッタモンはそうバンカランに言うと、ダンを指して「お前、カルロとかいうイタリア人に女の子を紹介してやると言われたな?」

ダンは後悔の涙を浮かべて「仕方なかったんです。家には年老いた病気の母と男に騙されて借金を負わされた妹が・・・・・」

「それは金で買収された奴の台詞で、女で買収された奴の台詞じゃ無いと思うが」と疑問顔で突っ込むワット。



警察署に連絡し、派遣された警官たちに指示を出すバンカラン。

「連れて行け」と、彼は警官たちに号令し、ダンは警察に連行された。



彼等を見送ると、バッタモンはドヤ顔で「で、バンカラン。僕に何か言う事があるよね?」

「・・・・・・・・」

バッタモンは得意満面で「イギリス諜報局のトップが、こんなスパイも見抜けないボンクラとは。そうだ。今日からお前をボンクランと呼ぼう。ほーらどーしたボンクラン」

バンカラン、バッタモンを思い切り殴る。


そんな彼等をワットは溜息顔で見る。

そして「ところでボンクランさん」

「バンカランだ!」

「さっきカルロって言ってましたよね?」

そうワットに問われ、バンカランは「ポルタの王太子直属のスパイでな。油断のならん男だ」と答える。


するとバッタモンはドヤ顔で「僕も王太子だがな」

「けど、エリザベス王女は即位したばかりで、確か、継嗣は未定な筈」

そう疑問顔で言うワットに、バンカランは「こんな奴がイギリス王子であってたまるか! こいつはマンネリという国の王子だ」

「気候も温暖な天国のような常春の国だ」とお国自慢顔のバッタモン。

バンカランは「全くふざけた国だ。常夏の国ってんならまだしも、常春だぞ。ギャグ漫画家がネタで作った設定じゃあるまいし」


するとバッタモンは「そんな気候ある訳無いと? ところがどっこいなのだよワトソン君」

「だからワトソンって誰だよ」

そんなバンカランの突っ込みをスルーして。バッタモンは言った。

「気候は低緯度ほど暑く。赤道直下では常夏となる。だが標高が高ければ気温は下がる。とすれば、常夏気候のある赤道直下に標高の高い山岳地帯があれば、どうなる?」

「・・・・・・」


バッタモンはからかい口調で「ほーらどーした、ボンクラン。何とか言ってみろ」

バンカラン、バッタモンを思い切り殴る。

するとワットが指摘した。

「あの、確かマンネリ島って西の大洋の小さな孤島ですよね? そんな島に標高の高い所なんて、あるんですか?」

「・・・・・]



「とにかく仕事の邪魔だ。さっさとマンネリに帰れ」

そうバンカランがイライラMAX声で言うと、バッタモンは「そんな事言っていいのか? 僕は国際ダイヤモンド輸出機構に命を狙われている身だ。誘拐とか暗殺でもされてマンネリ王国が奴等の手に落ちたら、イギリス外交にとって大失態だぞ」

「・・・・・・」

そして「僕は八歳の子供だ。下手に目を離すと、飴をやるからと言われてホイホイ誘拐犯について行っちゃうかもだぞ」とバッタモンはドヤ顔で言う。

バンカランは溜息をついて「それ自分で言う事か? それに愉快犯ならお前自身だろ」

「・・・・・」


残念な空気の中、バッタモンは「解説」と書かれた看板を手にする。

「解説しよう。今のは誘拐犯と愉快犯をかけたオヤジギャグ・・・・・」

バンカランは顔を真っ赤にして「解説せんでいい}



「それより腹減った」とバッタモン王子が言い出す。

「飴なら無いぞ」と突っ込むバンカラン。

バッタモンは「いや、昼食の時間だ」

「お前の分の昼飯は無い」と突っ込むバンカラン。


「大丈夫。僕は王太子だ。ちゃんと用意してある」

そう言ってバッタモンは小さな鐘を鳴らすと、本国から彼が連れて来た料理人が、大きなテーブルに大量の料理を並べる。

ワットはあきれ声で「さっき人体のエネルギー効率がどうとか言ってませんでしたっけ?」

「食事制限ならやってるぞ」

そうバッタモンはドヤ顔で言い、料理人はストップウォッチを取り出した。

「では、八歳にして成人病の塊な殿下のお体のため、食事時間を三分に制限させて頂きます。では食事開始」



料理人がストップウォッチで時間を計る中、物凄い勢いでテーブル上の料理を平らげていくバッタモン王子。

そんな様子をあきれ顔で見るワットたちに、バンカランは言った。

「ああいう奴なんです。いちいち気にしてたら胃がもたない」

そしてバンカランは水筒を出し、胃薬の包みを開ける。


そんなバンカランにワットは言った。

「それはいいんですけど、さっき言ってたカルロって、ポルタの王太子のスパイですよね? 別の国の王太子の、しかも本人がこんな所に居るって・・・」

「大丈夫。マンネリという国はダイヤモンドの輸出で潤っていて、工業に興味は無い。それに奴はあれでも天才だ。その気になれば蒸気機関なんて、あっという間に完成させてしまうだろうさ」とバンカランは解説。



その頃ポルタでは・・・・・。


エンリ王子は獣人村を訪れていた。

放課後の学校の一室で、人化魔剣師匠と向き合い、エンリは訊ねた。

「お前が居た世界の蒸気機関について聞きたいんだが」


「まあ、仕組みくらいは知ってますけど、専門家じゃ無いんで・・・」

そう答える魔剣師匠に、エンリは「蒸気機関って、薪とか石炭を燃やした熱で動くんだよね?」

「原子力ってのもありますよ。滅茶苦茶大きな装置で膨大なエネルギーを産み出すんです」と魔剣師匠。

「膨大って?」

「爆弾に使えば、都市一つ丸ごと破壊するくらいの」

そう魔剣師匠が言うと、エンリは「破滅の魔道具みたいなものか」

「それを魔法を使わず科学でやる訳ですよ」と魔剣師匠。


「けど自動車とかは、もっと進んだ動力を使うんだよね?」とエンリは問いを続ける。

魔剣師匠は「内燃機関はコンパクトに出来て便利ですからね。蒸気機関は大きなものに向いていて、もっとコンパクトに出来る電気を作ったりするんです」

「何だ?そりゃ」

そう疑問顔で言うエンリに魔剣師匠は「雷の力ですよ」


「あれで物が動かせるのか?」と意外そうに言うエンリ。

「原理は磁石です」と魔剣師匠。

「磁石って雷か?」

そうエンリに言われ、魔剣師匠は解説した。

「そういう電気を原子力を使った蒸気機関で作るんですけど、厄介な問題があって、放射能っていう有毒物を出すんですよ。防ぐ手段はあるんですけど、漏れてるに違いないとか風評被害を意図する奴が居て、そういうのを敵国が操って妨害したりする。下手をするとダリッドの人たちを差別する"穢れ"みたいなイメージになったりとか・・・」


エンリは更に問う。

「蒸気機関って、使い終わった熱が蒸気と一緒に外に出るよね? その時、放射能も一緒に出たりしないの?」

「蒸気は冷やして熱湯にして蒸気釜に戻します」と答える魔剣師匠。

「それなら・・・・・・」


エンリは思考した。

放射能を含んだ蒸気を熱湯にして蒸気釜に戻す事で外に漏らす事を防げるなら、同じやり方で蒸気の熱を捨てずに戻せるのではないか。



エンリはそのアイディアを持ってポルタ大学へ。


職工学部の実験室に入って来たエンリに、オカマンは自慢顔で報告した。

「蒸気による熱損失を解決しました。復水器という装置を使って、ピストンを動かした後の蒸気を冷やして熱湯にして蒸気釜に戻すんですよ」

エンリ唖然。

そして「もしかしてイギリスのやり方を真似た?」

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