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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第470話 ドラゴンのトモガラ

近い将来に起こるであろう、ユーロ全土を巻き込む動乱に対応するための、魔剣の炎を分与する兵団に使う刀を求めて、シャナとともにジパングを訪れたエンリ王子と仲間たち。

シャナと再会した裕二は、自らが鍛えた千本の刀をエンリに譲り、シャナとともにポルタ行きに同意するが、この地のトモガラの存在を知って派遣されたフレイムヘイズのマージョリーが現れ、シャナは裕二を守るべく彼女と戦う。そしてドラゴンのトモガラだった父親から受け継いだドラゴニックオーラを駆使してシャナと共に戦う裕二。

だが、実は裕二がトモガラだというのは勘違いだった事が発覚した。



本物のトモガラを探そうと、山中を歩くエンリたちを先導する、マージョリーがベルトで縛った精霊付きの本の宝具マルコ。

「こっちだ」


彼等はやがて、森の中の湖に出た。

「ここって、母さんが父さんと出会った湖」

そう裕二が呟くと、エンリは「なるほどな。裕二の父親はドラゴンのトモガラだったんだよな」

「けど、死んだ筈だ。眉間にドラゴンにとって猛毒な鉄針が刺さって・・・」と裕二。

「そうだったな」とシャナも・・・。


そんな彼等にエンリは言った。

「いや、ちょっと待て。針が刺さったくらいで死ぬほどドラゴンはやわじゃ無いぞ」

「だって・・・・・・」

そう、まごつき声で言う裕二に、アーサーも「ってか、鉄が毒なんて話は聞いた事が無いですよ」



残念な空気の中、マージョリーは溜息をつくと、湖に向って声を上げた。

「居るんでしょ? 出て来なさいよ、ドラゴンのトモガラ」

「・・・・・・」

静まり返ったままの湖に向って、マージョリーは両手を合わせ眼をうるうるさせて「竜神様、お願いがあります」

すると、湖の水面が山のように盛り上がり、巨大なドラゴンが現れた。

「私に何か用かい?」



残念な空気が漂う中、ドラゴンは焦り声で弁解する。

「いや、これは別に自分が大蛇とか妖怪の類だから妖怪と"用かい?"をかけた駄洒落じゃ無いんだが・・・・・・」

裕二は溜息をつくと「そういう話じゃ無くて・・・ですね」


ドラゴンは湖の岸に居る人たちを見る。

そしてその中に居る、先ほどの声を発した少年に特別なオーラを感じ取った。

「お前、裕二か?」

「やっぱり父さんなんですね」と裕二。

ドラゴンは感慨深げに「里美が産んだ、あの子かぁ。大きくなったな」

「そりゃいいんだけど、眉間に針が刺さって死んだんじゃ無かったでしたっけ?」

そう裕二が追及すると、ドラゴンは困り声で「それは・・・だな」



その時、岸に若い女性が現れた。

「竜神様、村に雨を降らせて頂いたお陰で、田圃は生き返りました。何とお礼を言ったら・・・」

ドラゴンは一瞬で若者に変身し、女性の手を執った。

「君のためならお安い御用さ」


別の女性が現れた。

「祝い事のために貸して頂いた高級品食器セットを返しに来ました。本当に助かりました」

ドラゴンが変身した若者は、今度はその女性の手を執ると「それは良かった。今度一緒にお茶でも・・・」

「喜んで」


更に別の女性が現れた。

「私と付き合って頂けるんですよね?」

ドラゴンが変身した若者は、そちらの女性の手を執って「もちろんさ」


すると最初の女性が「ちよっと待ってよ。竜神様とは私が先約よ」

二番目の女性が「彼は私のものよ」



何やら勝手に修羅場を始める三人の女性を見て、裕二は若者に変身したドラゴンに苛立ち声で言った。

「何だよこの人たちは」


若者に変身したドラゴン、即ち裕二の父親は、冷汗顔で息子に弁解する。

「いや、この湖の主として長年住んでると、村の女性から雨乞いやら何やら色々と頼み事があってだな。お願いを聞いてるうちに仲良くなって・・・」

「母さんもその一人って訳かよ」と突っ込む裕二。

父親は「いや、別に付き合ってる女が大勢居て面倒だから間引いたって訳じゃ無いぞ。俺と居ると存在の力を無意識に吸収してしまうから、彼女を守るために仕方なく・・・」

「鉄針はドラゴンにとって毒だからとか大嘘ついて死んだフリを?」と裕二。

そんな彼等に本のマルコは指摘した。

「ちょっと待て。トモガラは意識的に存在を食うのであって、無意識に吸収する奴なんて居ないぞ」


とんでもなく残念な空気の中、裕二は父親に言った。

「つまり、付き合ってる女が大勢居て面倒だから大嘘ついて母さんを捨てたって訳かよ」

若狭が「しかも妊娠中の」

ニケが「それって托卵って奴だよね?」

カルロが「男のロマンですね」

ニケはカルロの後頭部をハリセンで叩いた。


若者の姿の裕二の父は、息子の両肩に手を置き、そして言った。

「裕二よ、男には成さねばならない野望があるのだよ」

「まさか世界の女を自分のものに・・・なんて言わないよね?」と裕二が釘を刺す。

「・・・・・・」



マージョリーは溜息をつくと、裕二の父親に視線を向け、そして言った。

「まあいいわ。とにかく彼は本物のトモガラなのよね? だったら一緒に来て貰うわ」

そんな彼女に裕二は「いや、ちょっと待て。確かに父さんはとんでもないクズで外道なエロオヤジ・・・」

「そこまで言うか?」と困り顔の裕二の父。


「けど実の父親だ。黙って狩らせるつもりは無い」

そう言って身構える裕二に、マージョリーは「いや、狩らないから」

「はぁ?」

「一緒に来て、トモガラビジネスに協力して欲しいのよ」とマージョリー。

「何だ? トモガラビジネスって」

そう問う裕二とシャナに、マージョリーは「昔のフレイムヘイズはトモガラを狩るだけだったけど、今は違うのよ。とりあえずこれ・・・」


マージョリーは新聞の切り抜きを出す。

そこに書かれた記事に曰く。

「プロバスケリーグ今年のМVPは黒子哲也選手。彼は特殊な技を武器にチームを優勝に導いた陰の主役である。その存在感の薄さを利用して敵選手に気付かれる事なく接近してボールを奪い・・・」


「この人ってもしかして・・・・・・」

そう裕二が言うと、マージョリーは解説した。

「そうよ。トモガラに襲われて存在の力の一部を食われたのよ。存在を食われると、先ず、存在感が薄れて周囲に認識されなくなる。彼はそれを利用して活躍しているって訳。他にも、目立ちすぎてイジメを受けた子の存在の一部を食べて、いじめられなくなったり、スパイとして潜入したり・・・」

「下着ドロとか覗きとかもな」

そう本のマルコが付け足すと、エンリは残念声で「それ、犯罪だから」



「とにかく、そんな形で社会に役立つビジネスに、今のフレイムヘイズ族は方向転換したって訳。一緒に来てそれに協力して欲しいの」

そう力説するマージョリーの前に立ちはだかるニケ。

そして彼女は裕二の父に言った。

「駄目よ。あなたは自分の子と一緒にポルタに来るべきよ。家族の絆は絶対なのよ」

「ニケさんってそんなキャラだっけ?」

そう疑問声で言うタルタに、ニケは「失礼ね。私だって親子の情くらい、弁えているわよ」


見直した・・・という仲間たちの視線を浴びながら、彼女は裕二の父に説得を続けた。

「そしてビジネスなら私が・・・」

エンリは即座に「却下。ニケさん、それを窃盗や詐欺に使うつもりだろ」

「私を何だと思ってるのよ」

そう言って口を尖らせるニケに、エンリは「詐欺や窃盗が出来ない呪いはまだ有効なんだが・・・」

ニケは地団太を踏みながら「解除してよ。私のお金ーーーーー」

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