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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第469話 フレイムヘイズの闘い

近い将来に起こるであろう、ユーロ全土を巻き込む動乱。

これに対応するための、魔剣の炎を分与する兵団に必用な、炎の熱に耐える千本の刀を求めて、エンリ王子と仲間たちはシャナの案内でジパングを訪れた。

零時迷子の固有結界で再会したシャナと裕二。

そしてエンリは裕二がその中で鍛えた千本の刀を受け取り、裕二は彼等とともにポルタへ旅立つ決意を固めた。



だが、エンリたちが裕二を伴って固有結界から出てきた時、そこに現れた一人の女。

眼鏡をかけスーツを着た、年は二十歳を過ぎた頃か。ベルトで縛った分厚い本を肩にかけている。

「あなたがここのトモガラね? 随分と可愛い男の子だこと。ちょっとお姉さんと一緒に来て貰えるかしら」

「裕二は私のものだ」

そう言ってシャナは敵意を込めた表情を向けた。


「いや、私のって・・・・・」

そう言ってまごつく裕二に、シャナは「こいつ、フレイムヘイズだ。裕二を狩る気だぞ」

裕二と、そしてエンリたちに緊張が走る。


その時、女が肩にかけた本が声を発した。

「我が愛しの色呆け姫マージョリーよ。どうやらこいつもフレイムヘイズだぞ。っても刀振り回すだけの単細胞らしいがな。お嬢ちゃん ここは引いた方が身のためだぞ。何せ我が酔いどれ姫は男にかけちゃ百戦練磨・・・」

「お黙り、馬鹿マルコ」と女は本をどやし付ける。


シャナはマージョリーと呼ばれた女に向って身構えると、エンリたちに「みんな、手を出すな。これはフレイムヘイズどうしの闘いだ」

「そういうスポーツ感覚は要らないから」と困り顔のエンリ。

アーサーも「ってか、こんな所で灼熱の刀なんて抜いたら、山火事になるぞ」

「大丈夫だ。封絶!」

シャナがその短い呪句を唱えると、周囲の木々の形はそのまま、一瞬で暗くなる。

「やるか? やっちまうか? 我が"丁辞の読み手"の餌食がまた一人ってか? ヒャッハー」と囃し立てる、マルコと呼ばれたマージョリーの本の宝具。



マージョリーはベルトを解いて本を開き、そして呪文を唱えた。

「この世のしがらみまとわりついて、うっとおしいったらありゃしない」

無数の光の鎖が出現し、シャナを拘束しようと襲いかかる。

シャナは灼熱の刀を抜き、一瞬で襲い掛かる光の鎖を切り払った。

「なかなかやるわね」

そうマージョリーが言うと、マルコも「さすが腐ってもフレイムヘイズってか」


「だったら・・・」

マージョリーは獰猛な熊に変身した。

そして二本足で立って、両前足の長く鋭い爪でシャナの刀と切り結ぶ。

マージョリーの熊は一旦後ろに飛んで距離をとると、呪文を唱える。

「あちらと思えばまたまたこちら。姿同じな六つ子じゃ無いぞ。みんなで囲んで蛸殴り。さぁお立合い本物はだーれ?」


熊の分身が六体出現し、シャナを取り囲んで一斉に襲いかかる。

シャナが一体を切り伏せ、光となって散る。

「ハーズレー」

シャナはもう一体を切り伏せ、これも光となって散る。

「またまたハーズレー」

一体が消滅すると別の一体が出現する。



そんな闘いを固唾を飲んで見守るエンリたち。

「あれ、放っておいていいのかよ」とタルタは隣に居るエンリに・・・。

「それは俺たちの仕事じゃ無い」

そう言いながらエンリは、真剣な眼差しで戦いを見守る裕二を見た。



六体の熊は一斉に飛びのいて距離をとり、呪文を唱えた。

「これなる灯は標じゃ無いぞ。無能を黙らす光の拳骨」

六体の熊の右手に光の玉が現れ、それをシャナに向けて一斉に撃ち出そうとした瞬間、シャナは二体同時に切り伏せ、その間を縫って囲みから逃れて距離をとった。

そして残る四体が放つ光の玉を瞬時に切り伏せる。


二体の熊が新たに現れると、六体の熊それぞれの周囲に無数の光の玉が出現。

それを一斉に打ち出した瞬間、裕二が叫んだ。

「ドラゴニックオーラ!」

裕二の全身が光に包まれ、宙を舞ってシャナの前に立ち塞がって楯となり、全ての光の玉を弾き返した。


「裕二、それは」

そう、驚き顔で言うシャナに、裕二は「父さんから受け継いだ力だ。存在の力の満ちたあの世界に居て、使えるようになったんだ。シャナは僕を守ってくれているんだよね?」

「それは・・・」

「だったら僕もシャナを守る。これは二人の闘いだ」と言って、裕二はシャナに振り向いて笑顔を見せた。

「裕二・・・・・・」


「マージョリー、これはヤバいぞ」

そう焦り声を発する本のマルコに、マージョリーは「黙ってな!」



六体の熊は再び二人を取り囲むと、二人は互いに背中を向け合い、同時に包囲の両側に向けて駈けた。

シャナは三体の熊を一瞬で切り伏せ、裕二は三体を殴り飛ばした。

最後に彼が殴った熊が吹っ飛ばされながらマージョリーの姿に戻る。


「やってくれたわね。女の顔に痣をつけた罪は重いわよ」

そう言っていきり立つ彼女に、本のマルコが「マージョリー、ちょっと待て。そいつ、トモガラじゃ無いぞ」

「何ですって?」とマージョリー唖然。

シャナも唖然顔で「裕二、お前・・・・」

裕二も唖然顔で「だってこの力は父さんから受け継いだ・・・・・・」


そんな彼等にエンリは言った。

「それはドラゴンの力であってトモガラの力じゃ無い。たまたま君の父親がドラゴンであると同時にトモガラだったってだけだ。ドラゴンとトモガラは同じじゃ無い」

「確かに・・・・・・」とシャナは呟く。

「けど母さんの存在を無意識に食べたから」

そう裕二が言うと、エンリは「あれはただの風邪」と突っ込む。

「・・・・・」

「つまり全部勘違いかよ」と気の抜けた声を発するエンリの部下たち。



「けど、我々はこの地のトモガラを探知して、ここに来たんだけど」

そうマージョリーが言うと、リラが指摘した。

「それってつまり、別のトモガラが居るって事じゃ・・・・・・」

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