第465話 征服の大王
南方大陸の予言者ベルベドがポルタを訪れ、まもなくユーロ全域を巻き込むであろう動乱への備えを勧められたエンリ王子。
彼は過去の偉大な王の事績から、動乱から自らの国を守る強い軍をつくるヒントを得ようと、かつてイスカンダル王の兵だったタルタの父のゴーストを召喚した。
彼は他の十万の兵とともに、英霊となったイスカンダル王の宝具として、今も王とともに居るという。
タルタの父は主に呼びかけ、それは姿を現した。
「俺に会いたいというのはお主か?」
その英霊は、豪快に笑う巨漢のマッチョ。
「ポルタ王国のエンリです。あなたがイスカンダル王ですね?」
そうエンリが言うと、イスカンダル王は「言っておくが、後世の歴史家が俺を矮躯だと書いているようだが、歴史家など空想で適当な事を書いている輩に過ぎん」
「そうでしょうね。あなたは常に兵たちの先頭に立って兵たちを鼓舞した。そのためには、大男でなくては格好がつかない」とエンリ王子。
「それに歴史というのは曲者でな。歴史を捏造して隣国を貶めようと画策するどこぞの半島国の輩は、それが嘘である事を引け目に感じると、歴史と言わず記憶と言い、自らの詐欺集団を"記憶の正義連"などと名乗っているそうだな。嘘つきが正義を騙るとは片腹痛いにも程があるが、歴史は嘘ならアウトだが、記憶は嘘を記憶しても記憶だものな」とイスカンダル王。
イスカンダル王はエンリの魔剣を見る。
「それはエクスカリバーだな? お主はイギリス王の末裔か?」
「アーサー王が湖の精霊に返したものを、私の祖先が貰ったのですよ」とエンリは答える。
「俺は英霊として、何度か他の英霊と戦った事がある。その剣の持ち主とも戦ったが、あれはいい女だった」とイスカンダル王。
「アーサー王って女性だったのですか?」
そうエンリが問うと、イスカンダル王は「アーサーというのはあの王統が代々受け継いだ名だよ。その最後の王が女だったって事さ。彼女はキャスターが召喚した巨大な触手魔獣を巨大な光の剣身で一撃で倒した」
「それは光の巨人剣ですね」とエンリは思わず呟いた。
「それでお主、王を王たらしめるものは何だと思う?」
そうイスカンダル王に問われて、エンリは「王としての実力ですか?」
「その実力って何だ?」
と更に問われてエンリは「知略や勇気や剣技や指導力?・・・」
イスカンダル王は言った。
「そんなものは他の奴でも頑張れば出来る。要はその率いる軍をいかに育て、意のままに動くものとするか・・・って事さ。他の英霊たちは宝剣や宝槍の類を後生大事に持っていたが、俺の宝具は俺とともに戦った十万の軍勢そのもの。即ち、アイオニックヘタイロイだ」
「我がポルタは小国です。十万の大軍など、とても・・・・・」
そうエンリが言うと、イスカンダル王は「俺のマケドニアも小国だったぞ。それに兵は多ければいいというものでも無い。鍛え抜かれた鉄で作られた小さな弾丸は、巨大な熊を一撃で葬る」
「つまり、強い軍とは兵個人の力量ですか?」とエンリ。
イスカンダル王は「それもある。だが、もっと大事なのは統率だよ。王の号令の元で手足のように動き、心を一つにして、全ての兵がまるで一人の人間のように戦う。即ち、ひとつながりの兵団」
「そのために号令一つで条件反射的に一斉に動くよう訓練するのですよね?」
そうエンリが言うとイスカンダル王は「俺の時代にはそんな集団訓練など無かったが、俺と兵たちを繋ぐものがあった」
「それは?」
イスカンダル王は言った。
「夢だよ。世界の果てに辿り着く偉大な国家となる。俺は志半ばで病で倒れたけどな」
「けど、三つの大陸に跨る大帝国を建てた」とエンリ。
イスカンダル王は「まあ、その領土の大部分はペルシアを滅ぼして得たものなんだが・・・」
「けど、あなたの家族は殺され、国は分断され、どれもローマ人の侵略で滅ぼされた」
そう言うエンリにイスカンダル王は語った。
「それでいいのさ。王の世継ぎなど母親の腹から出て来る以外の苦労を知らぬ、ただの甘ったれだ。実力のある者が王となり、実力のある国を作って新たな覇者となり、その頂点に立つ王として個としての卓越を示す。卓越こそ人の生きる目的。その輝きが人を集め、彼等が王に夢を託してその元に集う」
「そうした偉大な国を夢見る個をなじる人達が居るのですよね?」とエンリ。
イスカンダル王は更に語る。
「卓越とは己の個のみに拠るものであり、所属する国家の発展を求めるなど、自らに自信を持てない弱者の嘲笑されるべき逃げ道だ・・・とか言うのだよな。それで自国を強くする努力を放棄し、覇権を目指す他国に媚びろと、自国の足を引っ張る。金でも貰ったのか何かは知らんが、国民のやる気を失わせるための卑怯な騙し口上だよ」
「・・・・・・・・」
そして彼は更に語る。
「覇権を得ようと争いを仕掛けるのも結構。だが、互いが自分達の実力を磨いた真っ向勝負に拠るからこそ、覇権を得た大国として尊敬もされよう。それを姑息な宣伝を弄し、捏造した歴史や"我が国に愛は無いのか?"などという、自分たちが相手を散々害してきた悪意を脇に置いての、図々しくも見え透いた擦り寄り。偽友好や偽人権や偽平和といった筋も通らぬ感情論で、美辞麗句を騙って、勝ちを譲ってもらおうなど、どこぞの半島国の輩の常套手段らしいが全く虫唾が走る」
エンリは思った。
卓越性とは結局のところ猿山のボス争いと同じマウンティングだ。その頂点を万人が奪い合い、他の者を引きずり降ろそうと・・・。
そのため、下劣な個人は自分を高く見せるために他人を貶め、下劣な国家はかの半島国のように"国家ブランド戦略"と称して国際的評判で隣国に対して優位に立とうと欲望し、隣国を捏造宣伝で貶めるディスカウントジパング政策なる愚行に邁進する。
本来の卓越とは、生産的な行為により全員を利する事で賞賛を得て全員の上に立つ・・・というものでは無いのか。あの半島国の醜行はその生産的行為をスルーした「結果として」の賞賛ばかり求めた最悪なマウンティング強欲の産物なのだ。
その優劣対比の標的として、本来マウンティングなど求めずただ幸せになりたいだけで生産的な努力を行ってきた隣国を、悪意を以て貶め、当たり前に生じた反発に対して、自らの濁った眼鏡による基準で無理やり同じ土俵で扱おうと、歪曲した解釈による「け*か*」のような不当なレッテル用語を連呼する。
エンリは言った。
「今の国家は王の所有物では無く、国民が豊かに幸福に暮らすためのシステムです。それを目指して国を造り、新たな時代へと国を変えるんです」
「お主、いつぞやの古代イギリス王と同じ事を言うのだな。お主も王は正しさの奴隷だと思うのか?」
そう問うイスカンダル王にエンリは語る。
「私はそんなに道徳的ではありませんよ。正義とは即ち実利であり、国家とはそれを実現するための社会の運営システム。社会の目的は王自身も含めた、そこに住む権利を持つ人々の総体的な繁栄と幸福と自由と尊厳のためのもの。そして正義とは社会での個々の関係性を規定するものです。人々の幸福を無理なく実現する仕組みこそ正義。権力者がお花見にお友達を呼んだのが不道徳だとか、社会的にどんな利害があるか不明な政治批判に意味は無い」
「それは目的論的世界観だな。俺の師だったアリストテレスとは、少々考え方が異なるようだ」とイスカンダル王。
エンリは「むしろプラトンの言うイデア論に近いでしょうね。彼の論理は人工物を説明するのに適する。道具の本質とはその目的とする用途ですから。国家も、そして社会もまた目的を以て作られた人工物です」
「お主は強い軍を作る方法を知りたくて、俺を呼び出したのだよな? 我が大帝国のような・・・」
そうイスカンダル王が言うと、エンリは「逆ですよ。もうすぐユーロ全体を巻き込む動乱が起こり、それを起こす征服者が現れる。そういう存在からポルタの繁栄を守りたい」
「なるほど。国を守り得る軍を・・・という訳か。軍靴の足音の幻聴を喧伝し、他国に攻め込む野心の復活などと強弁して足を引っ張る輩が、国を守るためのジパングの努力を強弁によって妨害する。国防のための法律を作ったと言う理由で、その政治家に対して"人間じゃ無い叩き切ってやる"などと暴言を吐くような殺人教唆犯に大学教授の肩書きを与える。そんなものはジパング侵略を夢見る真正軍国主義に協力する偽平和主義だものな」とイスカンダル王。
エンリは「真に求めるべき卓越とは経済的繁栄ですよ。それは奪うのではなく、技術によって全員が豊かになることです」
イスカンダル王は頷いて「そうだな。経済的繁栄は強い国を作る大前提だ。何しろ武器には金がかかる」
「けど、強力な武器を持っていても、使う者が愚かでは話になりませんよね?」
そうエンリが言うと、イスカンダル王は語った。
「トランプ帝国のクリントンという王が持つ武器は確かに強力だった。姿を消して飛来し爆弾を落とす巨大な鉄の鳥。遥かな地に放って城塞を正確に撃ち抜く巨大な火矢。だが奴は、江沢民という邪心に満ちた大陸軍国主義国の王によって"男同士の真珠湾デート"に誘い込まれ、半世紀も前の解決済みの戦争をネタとするイジメ遊びに誘われたクリントンは、経済的繁栄のみを求める信頼すべき友好国を生贄に差し出して、その産業力を奪い、大陸軍国主義国は多大な利益を啜って肥え太り、世界の平和を破壊する力を得てその欲望を暴走させた。30年後のトランプ帝国はとんでもなく後悔して、必死な対応策を迫られる」
「ジパングの勝海舟は言ったそうです。"自国と違ってかの国では上に行くほど賢い"と。けれども現実には、そうでも無いようですね」とエンリ。
「どこの国でも王が愚かでは国が立ち行かない。だから国家と国民に対して悪意あるマスコミは、愚かな候補を必死に擁立する」とイスカンダル王。
エンリは「ジミンという政党の有意な指導者を潰し、イシバとかキシダとかいうのを擁立して、彼の愚行を彼自身ではなく政党の問題にすり替える、邪悪なマスコミやネ〇サ✕の手口が、それですよね。それでイスカンダル王は・・・・・・」
「そうだったな。かつて他の英霊との戦いの中で、敵の一人に古代メソポタミア王が居た。奴は全ての宝剣宝槍の所有者を称し、強力な武器を湯水のように使った。だから俺は奴に共闘を申し込んだ。"お前の武器で俺の軍が武装すれば最強になれる"とな」
イスカンダル王がそう語るのを聞いて、エンリは「最強の兵団を最強の武器で武装・・・ですか」
エンリは思った。
(俺の魔剣は俺にしか使えない。けど・・・・・)
ギリシャでシリューの手刀に魔剣の力を分与した事を、エンリは思い出した。
(あれと同じ処置を千人の兵の武器に施したとしたら・・・・。たとえば、燃え盛る炎に炎の魔剣を一体化させ、その炎に千人の兵が剣を突き刺す。剣が帯びた灼熱が魔剣と一体化し、魔剣の灼熱を付与する。つまり、魔剣の分身とも言うべき炎の剣を持つ千人の兵団・・・・・・・・・・)