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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
462/513

第462話 人魚の戦い

オッタマ帝国の軍を破ってサンクチュアリに辿り着いたアテナ修道会の五人の聖闘士たちは、エンリ王子たち三人の協力を得て、星座の力を宿す十二の階層のダンジョンを次々にクリアした。

水瓶座の階層を出て洞窟を進む彼等は、最後の魚座の階層に向かう。



洞窟を抜けると、そこには見渡す限りの水面があった。

一部屋ほどの広さの石畳で固めた人工の島にドアが立っていて、それがここへの出口となっている。

「空間を越えて繋がる、どこでもドアって奴だな」

そうヒョウガが言うと、シュンが「けど、ここって・・・、どこかで見た景色に似てませんか?」


小さな島の周辺に広がる水面に、人が二人は余裕に立てる太さの無数の太い杭が頭を出している。

杭は余裕で飛び移れる間隔でランダムに立ち、飛び石伝いで向うまで行けるように一面に立ち並んでいる。

「何だかどこぞの温泉に居てない?」

そうニケが言うと、シリューが「そこで溺れた人達の呪いで、落ちると特異体質になるという・・・」

セイヤが「水に濡れると色々なものに変身してしまうとか」

イッキが「けどこれ、温泉じゃ無くてただの水だけどね」



「けどあの人・・・・・・」

そう言ってリラが指した先の水面に、一人の女性が居る。

よく見ると人魚である。

「あれがここの呪いの犠牲者?」

そうセイヤが言うと、シリューが「するとここでおぼれた人魚の怨念で、落ちると呪いがかかって、水に濡れると人魚になってしまう人魚溺泉」

「いや、人魚は溺れたりしないと思うが」とエンリが困り顔で・・・。

「けど、リラさんも人魚に変身しますよね? やはりここで?」

そうシュンが言うと、リラも困り顔で「いや、私は元々人魚で、人化の魔法を受けたんで、こことは無関係ですが」


「あの、さっきから何の話をしているのですか?」

そう言いながら、水面を泳いでエンリたちの居る小島の近くへ来た人魚に、セイヤは言った。

「大丈夫です。お湯をかければ人間に戻れます」

人魚は困り顔で「いや、違うから。私は元から人魚で、ここの階層主です」


そんな人魚にシュンが言った。

「あの、ここっていろんなものに変身できる修行地なんですよね?」

四人の聖闘士男子が声を揃えて「イケメンになれる温泉は?」

シュンが「もっと美少女になれる温泉とか」

ニケが「お金持ちに変身できる温泉とか」

「いや、お金持ちは変身してなるものじゃないから」とあきれ顔のエンリ。

そんな彼等に人魚は「だからそういう他所の漫画の話は要らないから」



「それで、私はあなた達を撃退する存在なんですが・・・・・」

そう言って人魚は、エンリたちの居る小島に上がって来た。

人魚はエンリを見、そして言った。

「あなた、私のものになりなさい」


「何言ってるんだ?」

そう言った瞬間、エンリは眩暈を感じ、目をこすって人魚を見る。


数秒、ぼーっとした表情になるエンリ王子。

そして彼は人魚に「何て美しいんだ。君、名前は?」

「セイリアよ。ここで二人で暮らさない?」と言って人魚のセイリアはエンリの手を執った。

エンリはセイリアの肩に手を置くと「そうだね。俺は王太子の地位なんて要らない。全てを捨てて君を選ぶよ」

その場に居る全員、唖然。


ニケが「王子、しっかりして」

セイヤが「どうしたんだ? この人」

シュンが「そういえばエリンさんって、魚に欲情する変態お魚フェチで、理想の女性は人魚だって・・・」


そんな彼等にエンリは言った。

「という訳だ。ここは二人の愛の巣なんで、邪魔な君たちには出て行って貰う」

エンリは魔剣を抜いた。

「かかって来い。この魔剣と愛の力があれば俺は無敵だ。聖闘士なんて叩き切ってやる」

必殺技の構えをとる五人。



その時、エンリの後頭部にリラのハリセンが炸裂した。

「しっかりして下さい、エンリ様!」

エンリは、数秒間固まると、はっとした表情で目をぱちぱちさせ、そして周囲を見回して「俺、何やってたんだ?」

「エンリ様はあの人魚の精神魔法に操られていたんです」

そうリラは言って、人魚のセイリアを指す。

残念な周囲の視線を感じたエンリは、とんでもなく不安な表情で「・・・・・・それで、俺、何をやらされた?」


「それは・・・・言っていいんですか?」

そうリラが言うと、エンリは毅然とした表情で「言ってくれ。覚悟は出来ている」

互いに顔を見合せる五人の若者。


シリューが「ロキ仮面の変身ポーズを・・・」

ヒョウガが「ズボンを脱いで"ぞうさん踊り"を・・・」

シュンが「それで"ともだちんこ"とか言って・・・」

エンリは真っ青になり、頭を抱えて「止めろ。止めてくれ」

真っ白に燃え尽きるエンリ王子


そんな彼にニケは「いいのよ王子。私には金貨を・・・」

すかさずリラが「それは嘘です」

「嘘じゃないわ。契約書だって書いてくれたんだから。後で無効とか言わないわよね?」

そう言い張るニケに、エンリは「詐欺行為が出来ない呪い、まだ有効なんだが・・・」

ニケは口を尖らせて「解除してよ。私のお金ーーーーー」



残念な空気の中、エンリは言った。

「で、さっきのぞうさん踊りとかいうのも嘘なんだよね?」

「まぁ・・・・・・・」と五人の聖闘士。


そして・・・・・・・・。

本当の事をリラから聞き、真っ白に燃え尽きるエンリ王子。

そんな彼にリラは言った。

「気にしないで下さい。人魚の精神魔法は強力です。水の魔力は精神に影響する月との関係が強く、セイレーンボイスも一種の精神系です」

「いや、少しは気にするべきだと思います」とシュンが釘を刺す。



エンリは頭を掻く。

そしてリラの肩に手を置き、「そうだな。済まなかった、リラ。みんな、もう大丈夫だ。あやうくリラを裏切るところだった。あの性悪人魚は俺の手で落とし前をつける」

するとリラは「いえ、私にやらせて下さい」


リラは人魚のセイリアに向き直り、そして言った。

「あなた、魔法の力なんか使って私の王子様を奪おうとしましたね。絶対に許しません」

「あのさ、私たち手を出しちゃ駄目なんじゃなかった?」とニケが指摘。

「あ・・・」


残念な空気の中、シュンが「私にやらせて下さい。もし兄さんが同じやり方で奪われるような事があったら、私だって許せない」

そんなシュンの手を執って、イッキは「シュン」

シュンはイッキを見つめ、そして「兄さん」

イッキはシュンを見つめ、そして「シュン」

二人の世界に浸るイッキとシュンに、他の三人は困り顔で「そういうのは後にして」


「という訳で人魚さん」

そう言って人魚に向き直るシュンに、人魚は「セイリアよ」

シュンは「あなたは私が倒します」

「かかって来なさい」

そう言って人魚は再び水に飛び込んで、離れた所の水面へ。



シュンは跳躍し、人魚と向き合う場所にある杭の上に立った。

「ネビラチェーン!」

分銅のついた鎖が真っ直ぐに伸びてセイレーンを襲う。

その時、水面から大きく分厚い鱗で覆われたカブトウオが飛び跳ね、楯となってシュンの鎖を阻む。


「ここの魚たちは私の僕であり、楯であり剣よ」

そうセイリアが言うと、彼女の前に十数匹の魚が顔を出す。

「気をつけろ。そいつ等はテッポウウオだ」とイッキが叫ぶ。

魚たちの口から高密度の水の銃弾が一斉に放たれた。

シュンの鎖が彼女の前で螺旋を描いて高速回転し、十数発の水の銃弾を弾き返す。


「これならどうかしら」

そうセイリアが言うと、シュンの周囲一面の水面にテッポウウオが顔を出し、全周囲から一斉に水の銃弾が彼女を襲う。

「スパイラルチェーン!」

そうシュンが技名を叫ぶとともに、二本の鎖が彼女の周囲を包むように螺旋を描いて高速回転し、全周囲から襲う水の銃弾を弾き返す。


「あれって・・・」

そうエンリが言うと、イッキが「攻防一体のあいつの得意技さ」

「攻防ったって・・・・・」とエンリ。

イッキは「まあ見てな」


螺旋を描いて回転する二本の鎖。先端に球体の分銅を持つサークルチェーンが回転を続ける中、四角錐形の分銅をつけたスクエアチェーンはそこから離脱し、宙を弧を描いてセイリアの背後に回り、そこから真っ直ぐに伸びて彼女の背後を襲った。

だが、セイリアの背後に数匹のカブトウオが飛び跳ね、楯となって彼女を守る。


スクエアチェーンは二度三度とセイリアに打ち出されたが、その度にカブトウオの盾に阻まれた。

「ならば、サンダースクエアチェーン!」

そうシュンが技名を叫ぶと、スクエアチェーンの鎖はジグザグの軌道を描いてセイリアを襲い、飛び跳ねたカブトウオたちを全てかわし、セイリアの胸を貫いた。



倒れて水面に浮かぶ人魚のセイリアは、力尽きる間際、離れた所で見守る人魚姫に言った。

「リラと言ったわね。あなたは私に、"魔法なんか使って男を奪った"と言った。けど、あたなたに人の事を言えるのかしら。だってあなたもその男を・・・」

「私がどうしたって言うのよ」

リラはそう言うと、人魚になって水に飛び込み、セイリアの所へ。


「私がエンリ様をどうしたって言うの? 答えなさい!」

そう言ってリラはセイリアの肩を揺すった時、彼女は既に息絶えていた。


「リラ・・・」

エンリは水面に入り、泳いで人魚姫の所へ。

そして彼女を後ろから抱きしめて「気にするな。どうせ性悪人魚のたわ言だ。それに、たとえ何があろうと、俺はお前のものだ」


水面で向き合うエンリとリラ。

リラはエンリの手を執って、「エンリ様」

エンリはリラを見つめ、そして「リラ」

リラはエンリを見つめ、そして「エンリ様」

二人の世界に浸るエンリとリラに、ニケは困り顔で「そういうのは後にして」

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