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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第456話 鳳凰の炎拳

難民たちを保護するアテナ修道会に協力するエンリたちは、行く手を遮るオッタマ帝国の軍を破り、ついにサンクチュアリに辿り着いた。

そこで五人の聖闘士は、青銅のクロスをゴールドクロスに変えるため、各階層に十二の星座の力を宿すというダンジョンに挑む。

エンリ・リラ・ニケの三人は、聖闘士たちを助ける付き添いとして、ともにダンジョンに入った。



最初の牡羊座の階層で八人は、敵意を見せない羊魔獣の脇を通り、向こう側にある洞窟のような出口を見つけて階層を出た。


「何だか拍子抜けだな」

そうイッキが言うと、エンリは「次は牡牛座だ。牛は気が荒いぞ」

ヒョゥガが「どんな奴だろう」

リラが「やっぱりミノタウロスでしょうか」

「東洋には牛魔王とかいうマッチョが居るそうだ。孫悟空っていう主人公キャラのラスボスなんだが」

そうシリューが言うと、ニケが「いや、最初に出て来てあっさり倒されて、主人公はそいつの娘婿になるんじゃないの?」



洞窟の通路を抜けて開けた場所に出る。

大きな岩がゴロゴロしている荒れ地。そこに四つ足の大きな獣が居た。


「あれが階層主だな」

そうエンリが言うと、シュンが「普通の牛魔獣ですよね」

角を振り、前足で地面を蹴って、こちらを威嚇する牛魔獣。

「すんなり通してくれそうに無いな」とイッキ。

「奴を倒すぞ」とセイヤが気勢を上げる。


五人は散開し、突進して来る牛を正面から必殺技で迎え撃つセイヤ。

「ペガサス流星拳!」

角と拳がぶつかり、そして押し合い。踏ん張るセイヤをじりじりと押す牛魔獣。

「力で対抗するのは不利だ」

そうエンリに言われ、セイヤは飛びのいて距離をとる。


シュンの鎖が牛を捉えるが、牛の動きを止めようとしても、ずるずると引きずられる。

「俺に任せろ。鳳凰幻魔拳!」

イッキ必殺の精神攻撃。だが、知能の無い牛魔獣には効かなかった。



その時、エンリが赤い布を投げた。

「これを使え」

反射的にそれを受け取るセイヤ。

「これって・・・そうか、闘牛だ!」

セイヤは両手で布を持って自分の右側に掲げる。

「さぁ来い。オーレ!」


牛は赤い布目掛けて突進。それをセイヤはひらりとかわす。

セイヤは再び距離をとって布をかざし、突進して来る牛をかわす。

これを二度、三度と・・・・・・。

巨大な岩を背に赤布かざすセイヤ。突進して来た牛をかわす。

牛は背後の岩に激突して目を回した。


「手強い敵だった」

そうセイヤが言うと、他の四人は「そうかなぁ」

「とにかく、先に進もう」とエンリ。

出口を見つけて洞窟の通路へ抜けた。



「次は双子座だよね」

そう言いながらエンリたちは洞窟を進むと、広い建物内部のような場所に出た。


石造りの太い柱が何本も立ち並び、高い天井を支えている。

その中央にオブジェがある。抱き合う二人の人物を模ったものだ。


「これが階層主?」

そうシュンが言って首を傾げると、セイヤは「オブジェだよね?」

だが、ニケはテンションMAXで「けど見てよ。金よ金」

黄金で出来たそのオブジェを見て盛り上がるニケに、些かドン引き気味の聖闘士たち。


「クロスのオブジェ形態か?」

そうエンリが言うと、セイヤが「もしかしてこれがゴールドクロス?」

ヒョゥガが「って事は持ち主が居て、それが階層主?」

「居ないみたいですけど」とリラ。

エンリが「どこか別の場所に居るんじゃないのか?」


「どこかって、どこ?」

そうニケが言うと、シリューが「そんなの持ってるって凄い人だよね?」

「もしかして最上階に居る教皇?」とシュン。

セイヤが「俺たちが最上階に行くと戦いになって、ここにあるこれが転移されて彼の体を覆うとか」

「って事は、彼は今何を着てるんだ?」

そうイッキが言うと、シュンが「普通に服を着ているんじゃ・・・・・」

ヒョゥガが「それとも風呂にでも入ってる?」

エンリが困り顔で「何だかネタバレ大会みたいになってるんだが」



残念な空気が漂う中、エンリは移動を促した。

「先に行こう。向うに出口がある」

するとニケがオブジェを指して「これ、持って行ってもいいわよね?」

「いや、何が起こるか解らんぞ」とエンリが止める。

「止めておいた方がいいと思いますよ」とリラも止める。


みんなが出口に向かう中、ニケは黄金の双子像を持って、みんなの後ろを歩いた。

その時、ニケの耳に謎の声が聞こえた。

「置いてけ」

「え?」

振り返っても誰も居ない。

ニケはみんなが歩いて行く方へ歩みを進めようと一歩歩くと、また謎の声が・・・。

「置いてけ」


そして、ニケが抱える双子像の二つの首が上に向ってニューっと伸び、ニケの頭上でニタリと笑う。

絹を裂くようなニケの悲鳴とともに、二つの首はニケに襲いかかる。

「ペガサス流星拳!」

「廬山昇龍覇!」

セイヤとシリューの拳が二つの首を撃ち抜いた。


オブジェを放り出して尻もちをついた状態で、ニケが「あー、びっくりした」

二つの首が破壊され、床に転がる黄金のオブジェ。

それを見てセイヤが「人間の欲望を刺激してこれに付け込むトラップという訳か」

「何て恐ろしい」とシュンも・・・・。

エンリはあきれ声で「いや、そんなのに引っかかるのは、ニケさんくらいなものだと思うぞ」


「私を何だと思ってるのよ」

そう言って口を尖らせると、ニケは床に転がる黄金のオブジェを見る。

そして「倒した残骸は貰って行っていいのよね?」

全員、声を揃えて「少しは懲りろ!」



反対側にある階層出口から洞窟に入る。

セイヤが「次は蟹座だよね」


洞窟の通路を歩くと、やがて開けた場所に出た。

石がゴロゴロしている河原のような光景。広いが浅そうな川が流れている。


川の水面に大きな蟹魔獣が居た。

「俺は蟹座のキャンサー。カルキノスだ」

そう名乗る蟹魔獣に、エンリは「それって、ヘラクレスと戦うヒドラに加勢しようとしたのに、全く気付かれずシカトされたまま踏みつぶされた雑魚モンスター」

蟹魔獣はムキになる。

「うるさいうるさいうるさい。俺はただのカルキノスじゃ無い。不死身の無敵モンスターだ。どこからでもかかって来い」



「ペガサス流星拳!」

セイヤの拳でキャンサーは真っ二つに・・・。

「強がっていた割には他愛も無い」

そうシリューが言うと、ヒョウガも「所詮はカルキノスだね」


その時、二つに分断されたキャンサーの体が二つとも再生し、キャンサーは二体になった。

セイヤたち唖然。


「廬山昇龍覇!」

シリュウの必殺技が炸裂し、二体のキャンサーは破壊されて、それぞれ三つの欠片に・・・。

そして欠片は双方、三つとも再生。


「ダイヤモンドダスト!」

ヒョウガの凍気を乗せた拳を受けて一瞬で凍結し粉砕されるキャンサーたち。

そして、粉々になった欠片の全てが再生した。



攻撃される度にキャンサーはどんどん増え続け、階層はキャンサーの大群で溢れた。

キャンサーたちはドヤ声で「どうする? 俺は倒せば倒すほど増えていくぞ」

「どうなってる」

そう焦り声で言う聖闘士たちに、ニケは言った。

「解ったわ。これは癌よ。細胞さんの世界では、無限に増殖してその世界を乗っ取り、死に至らしめる。白血球さんにも倒せない、赤血球さんや血小板ちゃんたちにとっての天敵よ」

「何のアニメの話だよ」とエンリは困り声。

そして「けど、どーすんだ、これ」


その時、リラが言った。

「あの・・・。破壊しても駄目なら焼き払ったらどうかと」

「その手があったかー」


イッキは両手を広げて技名を叫ぶ。

「鳳翼天翔!」

炎の闘気がフェニックスの姿となってイッキの体を包み、キャンサーの群れに打ち出す。

階層は炎に包まれ、キャンサーたちは焼かれて消滅した。


川の水が蒸発し、蒸気が立ち込める中、エンリは「次に行くぞ」

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