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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
455/553

第455話 星座のダンジョン

難民たちを保護するアテナ修道会に協力し、エンリたちは行く手を遮るオッタマ帝国の軍を破って、結界に守られたサンクチュアリを目指した。

オリンポス山の麓でオッタマ軍の差し向けたモンスター軍団を破ったエンリ王子たちとアテナ修道会。



「ここがサンクチュアリの結界です」

そう言ってアテナが指すオリンポスの麓。

背の低い木々に覆われつつ、あちこちに岩崖が剥き出す山岳が聳え、麓に森が広がる中、二つのオベリスクがある。


アテナがその間に立って呪文を唱えると、オベリスクの向うに石造りの神殿が現れた。

「サンクチュアリの結界の入口が開かれました。ここに居れば庇護民たちは安全です」

避難民たちとともに神殿に入ると、結界は再び閉ざされ、神殿の姿はその場から消えて、森の景色に戻った。



神殿の内部は広大な地下空間へと続いている。

そこに避難民たちは修道士たちの指揮の元で寝場所を確保し、避難生活の準備を始めた。


アテナは五人の聖闘士とエンリたちを神殿の奥へと導き、地下へと続く大きな部屋で、これからの事を話した。

「これから聖闘士たちは、この山岳の地下のダンジョンで試練を受ける事になります。12の階層のダンジョンがあり、各階層を守るボスモンスターを突破して進む、その途中で銀のクロスが、そして教皇の居る最上階に行く事で黄金のクロスが得られるのです」

「その教皇がラスボスって訳かぁ」

そうセイヤが言うと、マゼランが「けど教皇ってローマに居るんじゃ・・・・・」

タルタが「あんなの、権威を笠に着てるだけの、ただの俗物だけどね」


「それはローマの教皇派の話だろ。いろんな宗教集団が奉ってる権威の一つに過ぎない」

そうエンリが言うと、アテナは「神のような方と聞きます」

「つまり人格者?」とシュン。

イッキが「そんなのがラスボスって、まるでこっちが悪役みたいじゃないか」

若狭が「じゃなくて、神様並みの無双スキル持ちって事なんじゃ・・・」

「そんなのを倒せるんですか?」とアーサー。


するとシリューが「アテナ様のため、この命に代えて努力と根性で・・・」

「駄目な精神論の典型だな」とエンリは困り顔で・・・。

ヒョーガが「それと友情パワー」

「もっと駄目な根性ものだろ」とエンリは更なる困り顔で・・・。

シュンが「大丈夫です。敵の必殺技で瀕死の重傷を受けて倒れても、実時間三秒くらいの間に、脳内で10分くらい回想シーンがあって、その間にダメージは全回復」

セイヤが「コスモを燃やせば全て解決」

エンリは溜息をついて「そういうのは要らないから」



アテナはエンリたちに言った。

「それで、ダンジョン攻略の経験のある方に助力をお願いしたいのです」

タルタが「だったら俺が」

「いや、俺だろ」とジロキチが。

「冒険だよね? やっぱりヒーローの出番だよ」

そう言って目をキラキラさせるフェリペに、エンリはセイヤたちを指して「ヒーローはあの五人。その場にはその場の主役ってのが居るんだよ」

「そんなぁ」と、フェリペは残念顔。


「それで、どんな魔物が出るの?」とマゼランがわくわく顔で・・・。

マーモも「滅茶苦茶強いんだよね?」

チャンダも「腕が鳴るなぁ」

そんな彼等にアテナは「いえ、魔物を倒すのは彼等でなくてはいけません」

エンリは残念声で「まぁ、試練だもんな」

「そんなぁ」と、エンリとフェリペの部下たちは残念顔。


するとセイヤたちは言った。

「アテナ。助力なんて要りません。俺たちだけで大丈夫です」

そんな彼等にタルタが「お前等、回復とか出来るのか?」

ニケが「宿営のやり方って知ってる?」

カルロが「マッピングとかレベルアップとかキャラ選択とか・・・・・」

シャナが「セーブポイントが無いと死んだらそれっきりだぞ」

エンリは困り顔で「いや、ゲームじゃ無いから」



「それで、付き添いって?」

エンリが改めてアテナにそう問うと、アテナは「最大三人まで可能です」

すると、いきなりニケが「なら私が行くわ」

「ニケさんが?」

そう怪訝顔で言うエンリに、ニケは目をうるうるさせながらセイヤとシリューの肩に手を置き、そして訴えた。

「こんな若くて美形な男の子が、初めてのダンジョンでモンスターに殺されでもしたら、世界中の女性にとって大損失よ」

「ニケさんってそんなキャラだっけ?」と、エンリの部下たち唖然。

「世界中のオタク女子は彼等でショタ属性を卒業したのよ」

そうドアップで訴えるニケに、タルタは「何の話だよ」


エンリは言った。

「ってか、ニケさんの目当てって、ブロンズクロスがゴールドクロスになる時に使う賢者の石だよね?」

「なななななな何の話かなぁ?」と、ニケ慌て顔。

エンリは「クロスのレベルアップが青銅から銀、そして黄金へ・・・って、錬金術だと思ったんだよね? で、それに賢者の石を使うって。本当はそんなもの無いのに・・・」

「そうなの?」

そうがっかり顔で言うと、ニケはセイヤとシリューの肩に手を置いて「頑張ってね。出口で君達が帰るのを、ケーキを焼いて待ってるわ」


するとアテナが「使いますよ。賢者の石」

ニケはセイヤとシリューの肩に手を置いて「一緒に頑張ろうね」

その場に居る全員、あきれ顔でニケを見て「この女は・・・・・・・」と呟いた。



こうして三人の付き添いが決まった。

回復その他を担当する魔導士役としてリラ。

アドバイス役としてエンリ王子。

そして賢者の石目当てで無理やり割り込んだニケ。


アテナは改めて解説する。

「階層は全部で十二。それぞれ、黄道十二星座の力を宿すコスモに満ちています。階層を守るモンスターを突破して、その力を自らのものとするのです。それには聖闘士自身が彼等を倒さないと、星座の力を得る事は出来ません。ですから戦いには手を出さないで下さい」



五人の聖闘士とエンリ・リラ・ニケはアテナに導かれ、聖域の神殿から続く通路を更に奥へと進んだ。石壁の廊下はやがて洞窟へと変わり、岩壁に金属製の扉が嵌め込まれた所に出た。


「ここがダンジョンの入口です。この扉は神の言葉でしか開けられません。そしてこの先では神が自ら手助けをする事は出来ないのです。ここであなた達の帰りを待っています」

そう解説するアテナに、ニケは「賢者の石は持ち帰ってもいいのよね?」

「それは困ります。必要分しか無いので」とアテナ。

「使用済みなら?」

そうニケが問うと、アテナは「それは構いませんが・・・」


そしてアテナは言った。「クロスをレベルアップする儀式はオベリスクが教えてくれます。エンリさん、リラさん、後を頼みます」


入口の扉に向ってアテナは神の呪文を唱えた。

「開けゴマ」

その場に居た全員、前のめりでコケる。

「随分と簡単というか・・・」

そうリラが言うと、エンリは「現実なんてそんなものさ」



扉から入ると、更に奥へ続く洞窟がある。

しばらく歩くと、開けた場所に行きついた。


崖に空いた洞窟の入口みたいな所から出ると、まるで戸外に居るが如き青空の下、見渡す限りの草原が広がる。

「ここが牡羊座の階層か?」

セイヤが周囲を見回して、そう言うと、「ここを守る階層主って・・・・・」

「何か居ます」とリラが警告。


大きな羊魔獣が草を食べている。

そんな魔獣に向って、セイヤが「お前がここのボスか?」

「メェー」

更にセイヤは「通して貰うぞ。防ぐつもりなら、かかって来い」

「メェー」


呑気に草を食べる羊魔獣。敵意を全く感じない。

「羊っておとなしいからね」

そうニケが言うと、リラは「友好的なフリをするのを"羊の皮をかぶる"って言いますものね」

エンリが「素通りしていーんじゃね?」

「平和が一番よ」とニケも・・・・・。

五人の聖闘士は疑問顔で「いいのか? それで」

「メェー」


八人は羊魔獣の脇を通って、向こう側にある洞窟のような出口を見つけ、階層を抜けた。

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