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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
446/513

第446話 はじめてのでーと

試験的に開設された小学校の12人の生徒の一人、ロイ。

担任となった人魚姫リラに恋をした彼は、エンリ王子に決闘を申し込み、野球拳の勝負を挑んだ。

そしてロイはエンリを破った。



決闘で勝ったロイは、なし崩し的にリラとデートする事になり、クラスでは、その話題でもちきり状態。

「明日はリラ先生とデートだね」と言って盛り上がる女子たち。

「それでデートコースは?」

そうルイゼが言うと、ロイは「カルロさんがプランを立ててくれたんだ」


アルセラが「コーディネートはきちんとしなきゃだよね」

「勝負服ってやつだろ?」

そうロイが言うと、レンが「兄貴から借りて来た特攻服があるぞ」と言って丈の長い黒い上着を出す。

背中に白字で大きく「夜露死苦」と・・・。

ロイはドン引き顔で「そういう怖いのは要らない」


「年下は可愛さをアピールすべきよ」とスーザは言い、衣服の包みを出す。

ロイはそれを手に執ると、ズボンの代わりにスカート。

「これって女装だよね? 俺、ノーマルなんだが・・・」

そうロイが困り顔で言うと、スーザは「女子の価値観に寄り添う女装男子は最強よ」

ロイはドン引き顔で「勘弁してくれ」


「参考にすべきは、女を口説くプロだと思うよ。という訳で、従兄から借りて来たホストクラブの制服だ」とケインが言い、衣服の包みを出す。

ロイがそれを手に執ると、かなり気合の入ったスーツだ。

彼はその上着に袖を通してみる、・・・・が。

上着は大人サイズでロイが着るとぶかぶか。

彼は残念顔で「サイズが合わないんだが」



マナが言った。

「それより会話よ。デートって、つまりおしゃべりだよ」

「俺のコミュ力舐めんな」

そうロイが言うと、ジュドーが「けど、ロイの話題ってゲームとかアニメとかだよね? オタクの趣味ネタは一番引かれるぞ」

「大事なのはユーモアのセンスさ。って訳で参考書だ」とギースが言い、一冊の本を出す。

表題は「世界のジョーク100選」

ロイはページをめくる。

「どれどれ?・・・・・。"隣の家に垣根が出来たってね。へー"」

残念な空気が流れる中、ロイはその本を放り出して「役に立つか! こんなもん」


ミントが「それで待ち合わせは?」

「明日の十時だ」

そうロイが答えると、ギースが「女を待たせるのは最悪だぞ」

ロイはお気楽顔で「大丈夫。五分前行動って、先生も言ってたじゃん」

「けどそれだと、相手が十分前に来たら、五分待たせる事になるよ」

そうギースに言われ、ロイは「そりゃそーか」


すると「これを貸してやる」とゼロが言って、大きな何かが入った袋を出す。

ロイは中身を確認。そして「テントだよね?」

ゼロは言った。

「叔父さんがアニメイベントで泊りがけでオープン待ちする時に使うんだ」

ロイは頭を抱えて「勘弁してくれ」



そしてデート当日・・・。


九時50分、待ち合わせ場所に姿を見せたリラを見つけて手を振るロイ。

「リラ先生」

「ロイ君、もう来てたのね」

そうリラが言い、ロイは「待ちきれなくて。今日はよろしくね」

「じゃ、行こうか」

そう言ってロイの手を握るリラ。その感触にロイは思った。

(母さんとお出かけする時みたい)


公園に行き、喫茶店に行き、大道芸を見てレストランで食事。

会話は自然とエンリ王子の話題になる。

海賊団でともに戦い、仲間と出会い、魔剣を手に入れ、世界中に出かけて、人々を助けながら、新しい時代を切り開いてきた、エンリ王子とリラ。


「凄い人なんですね」

目を輝かせながらそう言うロイに、リラは「そうよ。魔剣を振るう海賊王だもの」

ロイは「だから好きになったんですか?」

「それは違うわ。あの人は海が大好きで、いつも海を見ていて、私は人魚だから、そんな彼が好きになったのね」とリラは答える。


「でも王子なんですね?」

そうロイに言われ、リラは言った。

「最初は彼が王子だなんて知らなかったの。ただ、とても可愛い子供だな・・・って」

「子供ですか?」

リラは「人魚は長命だから、私を追い越して大人になったのね。そんな彼を見ながら、これが恋だって・・・」

「そこに連れて行ってくれますか?」とロイ。

「いいわよ」



食事を終えてレストランを出て、海岸に向かうリラとロイ。

砂浜に立つ二人。

水面には、いくつもの大きな岩が顔を出している。


「ここで王子は海を見ていたんですね?」

ロイがそう言うと、リラは水面にある岩の一つを指して「私はあの岩陰から、彼を見ていたの」

ロイは「子供だったんですよね?」

「そうよ」

ロイは「けど、それが恋になったのは、大人になってから、なんですよね?」

「そうね」

「僕はまだ子供だから・・・」

そうロイが少し寂しそうに言うと、リラは「けど、私はロイ君たちが大好きよ」

ロイの頭を撫でるリラ。



その後、演劇を見てレストランで夕食を食べ、ホテルで・・・。

リラと一緒のベットで横になるロイは、両親の間で川の字で寝た時の事を思い出した。

ロイは隣に居るリラに「何だか母さんみたい。恋愛ってこんななの?」

「そうね。恋愛って、家族になるためにするんだって、誰かが言ってたわ」とリラ・・・・・。


いかにもオバサンな母親を思い出し、ロイは少しだけ萎えた。



翌日・・・・・。

学校に戻ったロイを囲んで、盛り上がるクラスメートたち。


「で、リラ先生とデートって、どんなだったの?」

そうルイゼが言うと、ロイは曖昧な記憶を辿って「大道芸を見て演劇を見て喫茶店に行ってレストランに行って・・・」

「美味しいものを食べたりするんだ。いいなぁ」とマナ。

ロイが「手を繋いで・・・」

「いいなぁ」とアルセラ。

ロイは「頭を撫で貰って・・・」

「・・・・・・」


「夜は一緒のベットで寝て・・・」

そうロイが言うと、ミントがはしゃぎ声で「大人の階段だぁ」

「けど、母さんみたいだった」とロイ。

「そりゃ、子供は親と一緒に寝たりするけど」

そうケインが言うと、ギースが「けど、一緒に寝ただけ?」

「他に何するんだ?」とロイ。

全員、首を傾げて「何をするんだろう・・・・・・」


「何だか、家族でお出かけするのと変わらん気がするんだが」

そうベンが疑問顔で言うと、ロイは「実際、母さんみたいだった」

レンが「いいのか? それで」

ロイは「けど先生、言ってた。恋愛は家族になるためにするんだって」

「・・・・・・」


「どんな話をしたの?」

そうスーザが言うと、ロイは「エンリ王子の話」

ジュドーが「いいのか? それで」

「けど、楽しい所にいっぱい行ったんだよね? 今度連れて行ってよ。デートで廻った所」

そうルイゼが言うと、女の子たちは口を揃えて「私も行きたい」

「だったらみんなで行こうよ」とジュドー。


「けど、レストランはお金がかかるよね?」

そうミントが言うと、レンが「公園や海で遊ぶのはただだぞ」

ケインが「だったら、魚とりをしようよ」

ゼロが「木の実がなってる所を知ってる」

アルセラが「夜にキャンプとかお泊り会とか」



ロイとリラは生徒と教師の関係に戻った。

12人の生徒たちは仲良くなり、いつも12人でわいわいやる。


エンリとリラが連れ立って街を歩いていると、ロイとルイゼが手を繋いで歩いている所に出くわした。

リラたちに気付いてお辞儀をする、ロイとルイゼ。

リラは手を振って応える。


去って行く二人を見て、エンリは言った。

「あいつ、お前を好きだった奴だよな?」

リラは「今は子供たちどうしで、すっかり仲良しですよ」

「ま、年相応の相手と・・・って訳か」と言ってエンリは顔を綻ばせる。


「けど、私があの海岸で王子様を始めて見たのは、王子様が子供の頃ですよ」

そうリラが言うと、エンリは怪訝顔で「子供って?・・・」

「人魚は長命ですから」とリラ。

エンリは少しだけ焦り顔で「じゃ、お前って、もしかしてショタ属性とか?」

「どうでしょうか」

そう楽しそうにリラが言うと、エンリは「どうでしょうか、じゃ無いだろ」


「けど私は今の王子様が大好きですよ」

そう言ってリラはエンリの左腕を抱きしめた。

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