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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
438/513

第438話 人化の魔剣

ポルタ大学の学生たちが孤島で発見した、人格を持つ魔剣師匠は、エンリ王子たちの助けで、剣としての自らを振るう理想の主として、獣人族の族長の娘のフラン姫を得た。

彼はフランの「大切なもの」を封じた魔石を取り返す試練を成功に導くが、その大切なものとは、彼女の幼い婚約者だった。

エンリたちは、魔剣師匠が念願のケモミミ幼女の剣となった事を見届けてポルタ城に帰還。

そして彼等の元に再び舞い戻った魔剣師匠を見て、エンリとその仲間たちは唖然。



「お前、何やってるんだよ」

エンリが唖然顔でそう言うと、魔剣師匠は「皆さんに相談したい事がありまして」

王太子の執務室でリラが出してくれたお茶を飲みながら、エンリとその仲間たちは、魔剣師匠が延々と語る愚痴を小一時間聞く破目になった。


愚痴が一段落すると、エンリは溜息をついて「要するに、フラン姫が自分の物になってくれないのが嫌だ、って事だよね?」

魔剣師匠は俯き声で言葉を濁らせつつ「・・・けど、俺は剣で彼女は主で」

するとカルロが言った。

「でも、お邪魔虫な婚約者が姫とイチャイチャするのは嫌なんだよね?」

「・・・」

更にカルロは「あなた、童貞ですよね?」

「いや、剣に童貞も何も無いと思うが」

そうエンリが突っ込むと、カルロは「転生する前の話ですよ」


「と言っても、転生する前の名前とか、自分自身の事ははっきり覚えてないんですけど」

そう魔剣師匠が困り声で言うと、タルタが「けど、オタクで引き籠りで人生詰んでる奴が無双するための異世界だものな」

「また身も蓋も無い事を・・・」と若狭があきれ声で・・・。

カルロは言った。

「まあ、これもよくあるパターンですよ。つまり恋愛に夢を見過ぎ」

魔剣師匠は臆した声で「けど、俺は剣で人間との恋愛なんて・・・」


「だから彼女も清い存在で居て欲しいって訳だよね?」

そう言って追及の手を緩めないカルロに、魔剣師匠は「けど、たった一人の運命の相手と・・・って、女性にとっても理想ですよね?」

するとカルロは「そんなの建前ですよ。一生の間に複数の相手と、なんて普通」

魔剣師匠は「男はそうだろうけど・・・」

カルロは「女性だってアンケートの統計で、一生涯の間に何人とセックスするのが理想か?って聞くと、平均5人だそうですよ」

「そりゃ男の話だよね?」

そう魔剣師匠が質すと、カルロは「男性は19人だそうです」

そんなカルロにジロキチが「そりゃ、お前みたいに"千人切り"だの"世界の女は俺のもの"だの言ってる奴が居るからだろ」と突っ込む。

「男のロマンじゃないですか」

そうカルロが言うと、エンリが「そういう極端な例は除外しないと統計って歪むぞ」


今度はニケが言った。

「まあ、そういうのはいいとして、要は自分が非モテだとか思い込んで、女性に近付く事もしない訳よね? だから女も・・・って、女にとっては迷惑よ」

「けど、恋愛とか諦めるのって、性嫌悪という女の立場に寄り添った思考なんじゃないかな?」とアーサーが指摘。

タルタが「女性は男なんて欲しくない。触られるのも嫌・・・ってか?」

するとリラが「けど私は好きな人と肌で触れたいです。王子様の元に行って最初の頃、抱いて貰えなくてすごく寂しかったです」


エンリは感動顔でリラの手を執って「姫」

リラはエンリを見つめて「王子様」

「姫」

「王子様」

二人の世界に引き籠るエンリとリラに、アーサーは困り顔で「そういうのは後にして」



そして魔剣師匠は本題へと切り出した。

「それで、ムラマサさんも魔剣なんですよね?」

「拙者は魔剣ではなく妖刀でござるが」

そんなムラマサにエンリは「ジパングではそう呼ぶってだけだろ?」


「人の姿になれるんですよね? どうすれば・・・」

そう魔剣師匠が言うと、アーサーが「人化の魔法というのを使うんだよ。お前もそれで人の姿になるか?」

「それは・・・」

魔剣師匠がもじもじしていると、エンリは「いや、なればいいじゃん。それでケモミミ幼女とあんな事やこんな事・・・」

「それって犯罪なんじゃ・・・」

そう言って躊躇う魔剣師匠に「他の男の子とイチャラブするのを嫉妬して嫌がらせする方が、遥かに悪役だと思うぞ」と追い打ちをかけるエンリ。


魔剣師匠は慌てて「いや、嫌がらせなんてしないけど・・・ってか、あんな事やこんな事って?」

エンリは「頭撫でてあげたり」

「・・・・・・」

カルロが「自分を頼る幼い存在の保護者として、抱きしめたり添い寝したりお風呂に入れて髪を洗ってあげたり」

「さすがにそれは・・・」

そう臆し声で言う魔剣師匠に、タルタが「年上のお姉さんが普通にやってる事だが」

「ってか、それは同性の特権で・・・。年上の男性がやるとアウトなのでは?」と魔剣師匠。


「女体化ってそのためにあるんだよね?」

そうタマが身も蓋も無い事を言うと、エンリが「そういうルール自体が歪んでいると思うんだが」

そんな彼等に煽動されて、魔剣師匠は開き直りモードに突入。

「そうですよね。異性だから何だってんだ!」

タルタが「慕われてるお兄さんとして」

ジロキチが「保護対象に対する純粋な愛」

アーサーが「やましい気持ちさえ無ければ」

何やら梯子を外されそうな方向性に、「あんたら、面白がってますよね?」と、魔剣師匠は困り声。



そんな中、ファフが執務室に入って来て、エンリの膝の上に乗って甘える。

「主様、頭撫でて」


そんなエンリを羨ましそうに見る魔剣師匠に、カルロは「ああいうの、どう思う?」

「ロリコンだよね」

そう魔剣師匠に言われ、エンリは反論。

「こいつが好きなのは俺じゃなくてアルフォンス初代王だ。それをずっとドラゴンの姿で我慢して、俺に甘えるのはその代償行為だ」

するとファフは「けどファフ、主様の事も大好きだよ。それに三日間だけだけど、過去に行ってアルフォンス様に会えて、いっぱい甘えたもん」

「それ見て嫉妬とかしなかったの?」

そう魔剣師匠に問われると、エンリは心外顔で「だから俺はロリコンじゃ無い!」


「それで、俺に人化の魔法をかければ、人間の体になれるんですよね?」

そう言って、ようやく決心を見せかけた魔剣師匠に、エンリは「で、誰を主に?」

「主って?・・・・・」

「人化は人間を主として契約する事で、その形質を受けるんだよ」とアーサーが説明。

「フラン姫の所から出て来たんだよね?」とエンリが質す。

魔剣師匠は「姫とは正式契約しましたから」

「それは残念。獣人は人外で人間じゃ無いでござる」

そうムラマサが言うと、アーサーはそれを否定して「いや、獣人は人の性質も持ってるから可能ですよ」


「だったら問題は無いじゃん」とエンリたち。

「けど、その姫が居なきゃ人化は出来ないわよね?」とニケが指摘。

タルタが「戻ればいいじゃん」

「婚約者とのイチャイチャは見たくない・・・・」と魔剣師匠。

「だったら戻って主従を解消するとか?」

そうタマに言われると、魔剣師匠は弱気声で「どう言えば・・・・・・」

エンリたちは溜息をついて「駄目だこりゃ」



その時、家来が報告に来た。

「あの、獣人族の姫という方が王子に会いたいと、見えられていますが」

案内されて入ってきたのはフラン姫と婚約者のリト。


フランは執務室でエンリたちと居る魔剣師匠を見て、哀しそうな声で「魔剣さん」

「フラン姫・・・・・」

そう呟く魔剣に「私が嫌いになったのでしょうか」と問いかけるフラン。

「そんな訳じゃ・・・・・」

そう口ごもる魔剣師匠に、リトは「僕が居るからですよね?」


そんなリトを見て、エンリたちは互いに顔を見合せる。

ジロキチは小声で「こいつ、こんな子供なのに三角関係とか嫉妬とか、解ってるのかよ」

若狭が小声で「まさか身を引くとか言わないですよね?」


そんな彼等を他所に、リトは言った。

「魔剣さん、僕の事も鍛えてくれるって・・・。けど僕、弱くて見込みが無くて。けど僕、頑張るから・・・・・」

「やっぱり解って無い」

そう言ってエンリたちは溜息をつくが、リラは「けど、けなげで可愛い」


そんな彼等を他所に、リトは「僕、フラン姉様に釣り合うように、強くなりたいです」

フランは感動顔でリトの手を執って「リト君」

リトはフランを見つめて「姉様」

「リト君」

「姉様」

魔剣師匠は溜息をついて「そういうのが嫌なんだけどなぁ」と呟く。



そんな中、ムラマサは小さな小瓶の形の魔道具を持ち出して「人化の魔道具はこれでござるか?」


「人化って何ですか?」

そうフランが怪訝声で問うと、ムラマサは「拙者みたいな魔剣が人間の姿になれるようにするでござる」

魔剣師匠は慌てて「いや、まだそれをフラン姫でやるって・・・」

だが、フラン姫は嬉しそうに「魔剣師匠、人間になれるんですか?」

リトも嬉しそうに「是非見たいです」


「それは・・・」

そう言って口ごもる魔剣師匠にフランは言った。

「人になったら私の頭、撫でてくれるんですよね?」

「なります。人化の魔剣に、俺はなります」と、魔剣師匠は一瞬で人化を受ける決断をした。


「僕の頭も・・・」

そうリトに言われて「いや、それは」と口ごもる魔剣師匠。

ムラマサは「大丈夫でござる。気合の入ったロリコンは男の子でもオッケーだそうで」

「いや、俺、そこまで気合入って・・・、ってか俺ロリコンじゃ・・・」

そう言って否定する魔剣師匠に、エンリたちは「今更何言ってる」

そんな彼等にフラン姫は「あの、ロリコンって何ですか?」

「それは・・・」



魔剣師匠がフラン姫を主とした人化の儀式を行う事になった。


「どうやるんですか?」とわくわく声の魔剣師匠。

「先ずこの魔道具の小瓶に・・・」

そうアーサーが言いかけると、ムラマサが「主の精液を入れるでござる」

若狭がムラマサの後頭部をハリセンで叩いて「違うでしょ」


するとムラマサは「けど、エンリ王子はそうしたと聞いたでござるよ」

疑惑の視線がエンリ王子に集中すると、彼は慌てて「マーリンさんに騙されたんだよ」

只ならぬ空気を感じたフラン姫、おそるおそる「あの、精液って?」

「一人エッチで出る液体だよ」と解説したカルロの後頭部をニケがハリセンで思い切り叩く。


真赤になったフランに、魔剣師匠は寄り添い、エンリ王子に「彼女のために個室を用意してくれませんか?」

「あの、魔剣さん、どうすれば・・・」

魔剣師匠は「俺が教えてあげる」

ニケと若狭が魔剣師匠をハリセンで思い切り叩く。


そしてニケは「ってか女の子は精液なんて出ないわよ。血でいいのよ、血で」

「その場合は心臓を刺して出た血を使うと聞いたでござる」

そうムラマサが言うと、魔剣師匠は「彼女が死んじゃうだろーが!」

「いや、それも嘘だから。指とか少し切って・・・」

そうアーサーが言いかけるのを、魔剣師匠は遮るように「彼女を傷つけるなんて」


そんな魔剣師匠にエンリ、あきれ顔で「お前は過保護過ぎだ」

そしてニケが「採血器があるから大丈夫よ」

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