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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
437/552

第437話 族長の試練

ポルタ大学の学生たちが孤島で発見した、人格を持つ魔剣。

理想の主を探す彼、魔剣師匠はエンリ王子たちの助けで、獣人族の族長の娘のフラン姫を主とする契約を結んだ。

フランの「大切なもの」を封じた封印の魔石を取り返す試練に協力するエンリたち。

フラン姫と魔剣師匠は魔石を奪った怪鳥クロウガルダに挑み、魔剣師匠は怪鳥が放つ幾筋もの雷魔法を避雷針となって受け止める。


気を失った魔剣師匠をクロウガルダが持ち去ろうとした時、フラン姫の怒りの叫び。

「私の師匠を返せ!」

フランは強力なファイヤーランスを放ち、飛び去ろうとしていたクロウガルダを撃ち落とした。



戦いの様子を地上で観察していたエンリは、墜落する怪鳥を見た。

「やったか」

「けどフラン姫も」と、一緒に戦いを見ていたアーサー。

魔力を使い果たした姫は気を失い、怪鳥とともに地面へ真っ逆さま。


エンリは風の巨人剣を抜いて、大気との一体化の呪句を唱え、その操る風で落ちて来る姫を受け止めた。

地響きを上げて地面に激突するクロウガルダの巨体。

エンリは怪鳥が咥えていた魔剣を回収する。



「気が付いたか」

一足先に意識を回復した魔剣師匠が、目を開けたフラン姫に話しかける。

「師匠、私、やったんですよね」とフラン姫は魔剣を見て・・・・。

「よくやった」

そう魔剣が姫をねぎらい、姫は「ありがとうございます」と言って魔剣を抱いてすりすり。

「当然だ。俺はお前の剣なのだから」

そう魔剣が嬉しそうに言うと、姫も嬉しそうに「これからもずっと一緒ですよね?」

「当然だ。俺たちはパートナーだ」と魔剣師匠。



「それより姫、封印の解除を・・・」

付き添いの獣人戦士にそう促されると、フランは魔石を地面に置き、開封の呪文を唱えた。

魔石は光を放ち、光の塊となって魔石の上に何者かが形を成す。

そこから現れたのは、十代初め頃の男の子。

「リト」

そうフランが呼びかけると、男の子は「フラン姉様」


男の子を抱きしめるフランを見て、魔剣唖然。

「その子って、フランの弟・・・だよね?」

「婚約者です」と嬉しそうなフラン姫。

「はぁ?」


付き添いの獣人戦士も嬉しそうに「姫、やりましたね。これで晴れて次期族長ですよ」

「これって・・・・・・」

そう唖然声で言う魔剣師匠に、獣人戦士は説明した。

「獣人族に代々伝わる族長後継者の試練なんです。この辺には収集癖を持つモンスターが多いので、それを使って後継者の将来の配偶者を封じた魔石を奪わせ、奪還する事で勇気を示す」


「リト、これからずっと一緒よね」

「はい、姉様」

そう言ってイチャイチャする幼いカップルを見て、魔剣は呟く。

「俺のフランがぁ」

そんな魔剣にエンリは「世の中なんてそんなものさ」


魔剣師匠は夕日の沈む海岸の幻想の中、空に向かって叫んだ。

「現実なんて大嫌いだ! 太陽のバカヤロー」

そんな魔剣師匠にエンリは溜息をついて「それはもういいから」



フランはリトとのイチャラブに満足すると、魔剣師匠に目一杯の感謝の眼差しを向けた。

「ありがとう、魔剣さん」

魔剣師匠は必死に声色を繕いつつ「どどどどーいたしまして」


そんなフランにリトは「姉様、この剣は?」

「意思を持って何でも出来る私の師匠よ。この人のお陰で私は強くなれたの」

そうフランが言うと、リトは魔剣に向き合い、「初めまして。僕も強くして貰えますか?」

魔剣師匠はヤケクソ声で「任せろ。びしびし鍛えてやる」


「よろしくお願いします」

そう言って自分に尊敬の眼差しを向けつつ、なおフランと手を執り合うリトを見て、魔剣師匠は心の中で呟いた。

(どーでもいいけど俺のフランから離れろ)



その時、倒れた筈の怪鳥が頭をもたげ、咆哮した。

エンリの仲間たち唖然。

「こいつ、まだ生きてたのかよ」

そうエンリが言うと、タルタはわくわく顔で獣人戦士とフラン姫に「試練が終わったなら俺たちが手を出していいよね?」

「お願いします」


ファフはドラゴンに変身し、エンリは炎の巨人剣を振るった。

アーサーとリラは魔法攻撃で、タルタは鋼鉄砲弾で、ジロキチが炎と氷の剣で、若狭が妖刀化したムラマサで・・・。

エンリと部下たちが寄ってたかって怪鳥に止めを刺す。


そんな様子を唖然と眺めるフランとリト。

そして魔剣師匠の視線は、若狭が振るう妖刀の姿のムラマサに向いていた。

(あの人も魔剣だったのか。しかも人の姿になれるなんて・・・)



怪鳥を倒したエンリたちは、フラン姫に「じゃ、俺たちポルタに帰りますね」

だが、彼等はそこに、仲間の一人の姿が見えない事に気付いた。

「ところでニケさんは?」

そうエンリが言うと、カルロが崖上の怪鳥の巣を指して「あそこ・・・・」


主を失ったクロウガルダの巣で、怪鳥が集めた光物を目の色を変えて漁るニケが居た。

ジロキチがあきれ顔で「いつもの癖だ」

タルタもあきれ顔で「放っておこうよ」


だが、エンリ王子は「いや、あれはポルタの国庫に納めるべきお宝だ」

そう言って崖上の巣に向かうエンリ王子。

仲間たちはあきれ声で「王子、ニケさんと張り合う気かよ」



崖の上の巣で怪鳥が集めた光物を漁るニケとエンリ。

だが・・・・。


数分後の二人は、金属やガラスで出来た沢山の"何か"の上で悲嘆にくれていた。

「どれもこれもガラクタばかりじゃないのよ」とニケは憤懣やる方無い声で・・・。

エンリも「宝石とか金貨とか無いのかよ」

ニケは「これだけあって金貨一枚無いなんて」

「ポルタの財政が」と悔しそうなエンリ。

「私のお金が」と悔しそうなニケ。


エンリとニケは夕日の沈む海岸の幻想の中、空に向かって叫んだ。

「現実なんて大嫌いだ。太陽のバカヤロー!」



そんな中、フランが試練をクリアしたという知らせを聞いて、獣人族の人たちが駆け付けた。

そして彼等も怪鳥の巣へ行き、巣の中の光物を見る。

一人の獣人がその中の一つを取って「これは無くしていた親の形見」

もう一人の獣人も巣の中で何かを見つけて「これは孫が誕生日にプレゼントしてくれた工作の作品」

彼等はそれぞれ巣の中で、自分が無くしたものを見つけて、嬉しそうに言った。

「こんな所にあったなんて」


彼等と一緒に巣に向かったエンリの仲間たちは、嬉しそうな獣人たちを見て「品物の価値なんて人それぞれだからなぁ」

「良かったですね」とリラも嬉しそうに・・・。



「それじゃ、私はこれを貰おうかしら」

そう言ってニケは、クロウガルダの大きな卵を拾った。

「ずるいよニケさん。オムレツにして一人で食べる気だろ」

そう言って口を尖らせるタルタに、ニケは「食い意地の張ったあんたと一緒にしないでくれる? 私たちはこの子から親を奪ったのよ。可哀想なクロウガルダの子供。私が親代りになって育ててあげるわ」


「ニケさんにそんな一面があったなんて」と意外声なエンリの仲間たち。

タルタが「見直したよ。散々酷い事言って、ごめんね」

「いいのよ」

そう照れ顔で言うニケに、タルタはなお「銭ゲバとか金の亡者とか泥棒女とか」

ニケは困り顔で「だからいいって」


その時、エンリが言った。

「ちょっと待て。ニケさん、そいつの収集癖を利用して金貨泥棒とかやらせる気だろ」

「私を何だと思ってるのよ」

そう言って口を尖らせるニケに、エンリは「顔に書いてある」

「えーっ、どこに?」と言って慌てて手鏡を見るニケ。

「窃盗行為が出来なくなる呪い、まだ有効なんだが」

そうエンリが言うと、ニケは不満顔で「解除してよ」


エンリは卵を取り上げて「とりあえずこの卵はポルタ大学魔法学部の召喚魔法科に預けるから」



エンリたちがポルタ城に帰還した。

執務室でハンコ突きに追われるエンリ王子を他所に、魔剣師匠の噂で盛り上がるエンリの仲間たち。


リラが入れてくれたお茶を飲みながら、エンリは「魔剣の奴、どうしてるかな?」

「正式な主が望み通りのケモミミ幼女。しかも姫様だもんな」

そうタルタが言うと、猫の姿のタマが「けど婚約者が居るわよね?」

「だよなぁ。独占して自分のものに・・・とか、絶対思ってたよね?」とジロキチ。


若狭が「アラストールだってそうでしょ?」と、その場に居たシャナが首に下げたペンダントに視線を向ける。

ペンダントになっているアラストールは心外声で「そんな事は無い。私はこのシャナの保護者で、彼女が成長して誰かと結ばれたなら、ちゃんと祝福してあげるぞ」

「そんな事言って、いざとなったら"俺のシャナは誰にも渡さん"とか言って、ジパング刀で斬りかかるよね?」とカルロはからかい口調。

「そんな事は無い」

そうアラストールが言うと、エンリが「そうだぞ。刀じゃ無くてドラゴンの炎だ」

アラストールは更なる心外声で「やらないから。ちゃんとシャナに相応しい男かどうか確認して・・・だな」

「で、あれこれケチをつけるんだよね?」

そうカルロが言うと、アラストールはうんざり声で「やらないから」


カルロはシャナの手を執る。

そして「シャナさん、今度お茶でもどう?」

いきなり、アラストールのペンダントからカルロにサンダーアローが放たれ、カルロは間一髪でそれをかわす。

残念な空気の中、疑惑の視線がアラストールに集中。

シャナは溜息をついてアラストールに言った。

「ってか、私が成長したらと言うが、私は妖精の格を貰ってるから、ずっとこのままだぞ」


「所謂、本音と建て前という奴でござろう」とムラマサ。

「まあ、ロリコンなんて同性愛と同じ、ただの性的少数者だ」

そうエンリが言うと、タルタが「そーだよ。エンリ王子だって」

「あの・・・」


エンリは心外声で「俺はロリコンじゃ無い」

ジロキチが「いや、お魚フェチはもっと性的少数者だ」

「あの・・・」


リラが「王子様がたとえロリコンでも私の愛は変わりません」

「だから違うって」とエンリは抗議声で・・・。

ファフが「ファフの姿は主様の理想なんだよね?」

エンリは反論声で「その主様は俺じや無くて初代王・・・」


「あの・・・」

その声にようやく気付いて、エンリたちが視線を向けると、そこには、宙に浮いてエンリたちに呼び掛けていた魔剣師匠が居た。

「お前、何やってるんだ?」

そう唖然顔で言うエンリたちに「皆さんに相談したい事がありまして」

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