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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
436/513

第436話 怪鳥のお宝

ポルタ大学の学生たちが漂着した孤島で発見した、人格を持ち人語を話す魔剣師匠。

理想の主を探す魔剣を手伝う破目になったエンリ王子たちだが、魔剣の希望はケモミミ幼女。

獣人族の村で希望通りの主を得た魔剣だったが、彼女が魔剣修行の縁でゲットしたボーイフレンドといちゃいちゃする毎日に嫌気がさした魔剣師匠は、エンリ王子の元に戻ってしまう。

そんな魔剣師匠の助けを求めた、獣人族の長の娘のフラン姫。

魔剣は彼女と契約し、「大切なもの」を封じた魔石を求める冒険の旅に出た。



エンリたちは魔剣を背負ったフランの旅立ちを見送る。

そして城の執務室でお茶を飲みながら、いつものようにあれこれ・・・。


「あのフランって子、大丈夫かな?」

「姫様はこの旅で立派に成長なさいます。そして誰にも頼らず、試練を乗り越えるのです」と、フランに付き添っていた獣人族の戦士はドヤ顔。

「魔剣に頼ってるけどね」

そうタマが突っ込むと、若狭が「あれは道具ですから」

「けど、魔法の力であれこれ助けてくれる剣だよね?」とエンリも突っ込む。

「それって王子の魔剣も同じなんじゃ・・・」とアーサーが指摘。

「・・・・・・・・・・・」


「それより、その封印の魔石ってどこにあるの?」

そうニケが言うと、戦士は「それを知るため、世界中を歩き情報を集める。冒険とはそういうものです」

「滅茶苦茶時間がかかると思うが・・・」

そうタルタが突っ込むと、戦士は「姫の不屈の精神は何物をも打ち破るのです」と暑苦しい精神論をぶち上げた。



その時、家来の一人が報告。

「あの、王子、お客様が見えてますが」


案内されて来たのは、魔剣を背負ったフラン姫。

「あの、手掛かりが無くては探しようが無いので、何かヒントになるものは無いでしょうか」

全員、あきれ顔で「不屈の精神はどうした?」


戦士は困り顔で「こんな小さな女の子にそういうマッチョイズムを期待するのは無理かと」

「ってか、魔剣はこういうのに、助言とかしないのか?」

そうエンリが言うと、フランの背中の魔剣が説明した。

「情報集めなら酒場が定番だろ? それで彼女は俺を背負って酒場に入ったら、アルコールを扱う所だから保護者の居ない未成年はお引き取りを・・・、だとさ」

「・・・」

「俺が保護者だと言っても相手にされなかった」と、魔剣が説明を補足。

残念な空気の中、全員が溜息。


「そもそも魔石はこの街にある訳じゃ無いんだから、酒場で聞いても解る訳は無いだろ」とエンリが突っ込む。

「カルロならダウジングで探せるんじゃないのか?」

そうタルタが言うと、カルロは「魔素登録に使える何かがあれば」

「それでしたら・・・」

フラン姫は短剣を出してカルロに渡す。

そして「これは、その封印されたものとの関係の品です」


「そもそも、その大切なものって何なの?」

そうニケが質すと、フランは「それは・・・」と言葉を濁す。

カルロも「それと、探索範囲にも限りあるからなぁ」

するとリラが「パラケルサスさんなら、もっと効率的な探査魔法を使えるんじゃないでしょうか?」



エンリは仲間たちと、フラン・魔剣師匠・そして付き添いの戦士を連れて、ポルタ大学の魔法学部へ・・・。


学部長室で趣旨を説明すると、パラケルサスは「大まかな範囲だったら捜索の呪文いうのがありますよ」

「手掛かりの魔素とかなら」

そう言ってカルロが先ほどの短剣を出そうとすると、パラケルサスは言った。

「そういうのは必要無い。探している本人が探したい物をイメージするんですよ」


捜索の術式の準備を始めるパラケルサス。

地図の上に人形を置き、フラン姫が水晶玉に手を置いて、探し物の魔石を念じる。

パラケルサスは呪文を唱え、水晶玉から人形へとパスを繋ぎ、地図に魔法陣を転写。

人形が動いて探し物の所在する場所へと移動。


「ボルタの首都じゃん」

全員、唖然顔でそう言うと、アーサーが「そういえば封印の魔石ってのが魔導局にあるって話を聞いた事があります」



エンリたちにパラケルサスも加わり、ポルタ城に戻って魔道具管理室へ・・・・・・。

そして魔道具室長に封印の魔石について尋ねる。


「知ってますよ。確か世界に三つ存在が確認されています」と魔道具室長。

「どこにあるの?」

そうエンリが質すと、魔道具室長は「三つともこのイベリアにあります。一つはこの城の宝物庫に」


魔導局長の案内で宝物庫へ。

「これが封印の魔石ですよ」

そう言って室長が示したものは、金属製の飾りのついた大き目の宝石だ。

「他には?」

そうエンリが言うと、室長は「一つはルルドの聖堂に、聖遺物として。もう一つは獣人族の長が持っていた筈です」


全員がフランと付き添いの戦士に視線を向ける。

「実は村にモンスターが現れて、魔石を奪われてしまったのです」

困り顔でそう言うフラン姫を見て、エンリは思った。

(どうも何か隠しているっぽいな)


「捜索の呪文で獣人族が持っていた魔石を探せないの?」

そう若狭が言うと、パラケルサスは「同じ宝具ですから、近いものに反応してしまうんですよ」

タルタが「だったら、ここのを壊してしまえばいいじゃん」

室長は肩を竦めて「恐ろしい事を言わないで下さいよ。国宝級の宝具ですよ」

エンリは先ほどのフランの様子を思い出す。

そして「魔石そのものじゃなくて、それに封印された"大切な物"ってのを思い浮かべたらどうかな」



エンリたちはフランたちやパラケルサスとともにポルタ大学に戻り、パラケルサスは再び捜索の呪文を試みる。


フランは魔石に封じられた「大切な何か」を念じて水晶玉に手を当て、パラケルサスは呪文を唱える。

地図上を動く人形が示した場所は、獣人の村の近くの山岳地だった。

カルロは「大まかな場所が解ればダウジングで探すのは簡単です」



エンリたちは魔剣師匠を背負ったフランと付き添いの戦士を連れ、ファフのドラゴンに乗って目的地へ向かう。

人形が示した場所の上空で、カルロがダウジング棒を持って捜索開始。

ダウジング棒が示した方角へ向かうドラゴン。

ドラゴンの背の上で戦士はエンリたちに「それで、モンスターとの戦いには手を出さないで欲しいんです」

「解った。つまりこれって、何か試練的なクエストって訳だ」とエンリ。


剣士の横では、魔剣を大事そうに抱いて眠るフラン姫。

そんな彼女を見て、タルタが「疲れたんだね」

「随分懐いているようだけど」

そうアーサーが言うと、魔剣師匠は嬉しそうに「頼られているからなぁ」

「やたら嬉しそうだな、おい」

そうエンリが言うと、魔剣師匠は「これは保護者としてであって、俺はロリコンじゃない」

「そうかなぁ」と疑問顔なエンリの仲間たち。


その時、アーサーが警告を発した。

「かなり強力なモンスターの気配を感じます」

エンリは地上を見下ろすと「ここから先は気付かれないように、地上を移動した方がいいな」



ファフは地上に降りて、ドラゴンから人間の姿になる。

全員森を歩いて、カルロのダウジング棒が示す方向を目指す。

フラン姫は歩きながら楽しそうに魔剣とおしゃべり。

魔剣にすりすりする彼女を見て、リラはエンリに「本当に懐いているみたいですね」と微笑ましそうに・・・。



やがて、森の向うに岩山が見える。そして岩崖の上に巨大な鳥型モンスターの巣。

「あれですね」とダウジング棒を持ったカルロ。

望遠鏡で巣を覗いたアーサーは、巣の中に居る怪鳥を見て「クロウガルダですね。奴は光り物を集める習性があるんです」


ニケは目に$マークを浮かべて「だったら他にも金貨とか宝石とかあるわよね? で、あなた達の目当ては魔石だけなのよね?」とテンションMAX。

エンリはあきれ声で「駄目だよ。手を出さないという約束だ」

「そんなぁ。私のお金ーーー」

そうニケが不満顔で言うと、付き添いの獣人戦士は「手を出さないのはモンスターを倒して封印の魔石を回収するまでですので」

「なら、他の物の回収の成果は山分けという事でいいのでは?」

そうリラが提案し、エンリが「では契約を・・・」


付き添いの剣士とフラン姫はエンリと契約の文書を交わす。

「これでお宝の半分は私のもの。お金ガッポガッポ・・・。どんなお宝があるかなぁ」

そう言ってニケが盛り上がると、エンリが「それは無理。これはポルタ政府と獣人族の契約だから、山分けした分は国庫に入る事になる」

「権力の横暴よ! 私のお金ーーーー」とニケは目を吊り上げる。


そんな彼等に、フラン姫は言った。

「けど、出来れば気付かれずに目的物だけ回収したいですよね」

「そりゃまあ・・・」



魔剣師匠を持つフラン姫は隠身の魔法で姿を消し、飛行魔法で空を飛んでクロウガルダの巣へ。

巣の間際で宙に浮いて、巨大な怪鳥の居る巣を観察するフランと魔剣師匠。

「クロウガルダ、眠ってますね」とフラン。

更に近付くと、巣の中には金属製品やガラス器がゴロゴロ。

その中に、光沢のある石製品。宝物庫にあったものと同じ、飾りのついた宝石だ。

「魔石は・・・・・あそこだな」と魔剣師匠。


魔剣師匠を持つフラン姫は隠身を解いて巣の縁に降り立つ。

クロウガルダの背後から回り込んで手を伸ばし、その宝石を掴んだ時、フラン姫はくしゃみ。

慌てて怪鳥を見ると、上から鋭い眼光が睨んでいる。


フランは魔石を掴んで空へと退避。

怪鳥は翼を広げて空に飛び立ち、空中から雷撃魔法を吐く。

それをかわす中、魔剣師匠は「応戦するぞ」

「はい、師匠」



飛行魔法で怪鳥の周囲を飛び、敵の攻撃を躱しつつ風魔法で攻撃するが、風の攻撃は羽毛に阻まれて効かない。

雷攻撃を放つが、クロウガルダには耐性があるらしく、これも効かない。

炎の攻撃はかわされた。


「ウォーターランス」

鋭く収束した水の攻撃がクロウガルダを傷つけ、怪鳥は空中で暴れたが、墜落には至らない。

「もっと接近するんだ」

クロウガルダの背後に回り込んで水魔法で狙うが、高速で飛ぶ怪鳥に引き離されてしまう。

魔剣師匠は「正面から行くしか無いな。攻撃をかわした瞬間が勝負だ」


口から雷を吐こうとする瞬間、魔剣は「来るぞ、かわせ」

雷攻撃をかわしたフランはクロウガルダの背後の首筋に取り付き、剣を突き立てて炎を流し込んだ。

暴れる怪鳥から距離をとる。


墜落には至らないが、かなり弱っているのが解る。

「ダメージは与えた。もう一度行くぞ」と魔剣師匠。


正面から怪鳥に向って飛ぶ魔剣を持つフランに、口を開けて雷撃を吐こうとするクロウガルダ。

(これをかわせば)と思った瞬間、魔剣師匠は怪鳥が幾筋もの雷撃を吐こうとしているのを察知した。

「まずい。俺を離せ」

そう魔剣師匠は言うと、フランが持つ束に微弱な雷気を流す。

フランは魔剣から手を離し、魔剣は避雷針となって受けた雷を空中に放出。そのまま気を失った。


怪鳥は魔剣を咥えて巣へ・・・。

地上で戦いを観察していたエンリは「あいつをコレクションに加える気かよ」



空中で取り残されたフラン姫は、背中を見せて巣へと去るクロウガルダに、怒りを込めて叫んだ。

「私の師匠を返せ!」

そして彼女は怪鳥に向けて強力なファイヤーランスを放った。

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