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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
429/513

第429話 令嬢とモブ

孤島に漂流した105名のポルタ大学学生たちのサバイバル生活の中、生徒会長の一人のロゼは、ドニファンにナンパされて本気になった挙句、ヤリ捨てられて引き籠ってしまう。

ロゼを心配するセルソに、ロキは仮面変形の術を施し、彼をドニファンに変装させた。

そして「あいつに成り済まして、とりあえず一発やって来い」



その夜、仮面変形でドニファンに化けたセルソは、ロゼの寝ている小屋を訪れた。

三人の取り巻きも遠ざけて、自分用の小屋に一人でベットに横たわる彼女に、セルソはドニファンと同じ口調で囁く。

「ロゼ、済まない。やはり俺は・・・」

「何も言わなくていいの。来て」

そう言って、ドニファンに化けたセルソを、ベットに迎え入れるロゼ。



嵐のような時間が過ぎ、ベットに全裸で横たわる二人。

ロゼはドニファンに化けたセルソの胸の中で、彼に言った。

「あなた、セルソよね?」


セルソ唖然。

「知ってたんですか?」

「ロキの術よね? 仮面変形っていうんでしょ?」

そうロゼに言われ、セルソは戸惑い声で「あの・・・」


ロゼは言った。

「謝らなくていい。あいつがああいう奴だって、こうなるって解っていた。自業自得だってみんな思ってる」

意外過ぎるロゼの言葉に、セルソは思わず「俺はそんなふうには・・・」

「どうして?」

そうロゼに訊ねられて、答えが出ないセルソ。

「それは・・・」


その時、仮面変形の効果が生んだドニファンの声が、心の中でセルソに囁く。

(そういう時はこう言うんだ、俺はお前の味方だから・・・って)

「俺、ロゼさんの味方だから」

ロゼは「ずっと味方でいてくれる?」


仮面を外そうとするセルソを、ロゼは制した。

「それは外さないで」

「けど・・・。そうですよね。俺なんかじゃ役不足・・・でしょ?」とセルソ。

「・・・・・」

「否定はしないんですね。けど、これはロゼさんを裏切った奴の顔だ」

そうセルソが言うと、ロゼは意味ありげな笑みを浮かべて「だから・・・・・・」



翌日・・・・。


「ロゼさんが復帰んだって?」

引き籠り状態を脱して小屋から出て来たロゼの噂でもちきり状態な学生たち。

三人の取り巻きを中心に、野次馬の男子たちも混じってわいわいやる。

そんな中で女子の一人が、広場の隅を指して「そうなんだけど、あれ見てよ」

そこに居るロゼと、そして一人の男性を見て、学生たち唖然。


「一緒に居る人ってボエモン様? どうしてここに・・・」

「あれはロキの仮面変形だよ」とマゼランが解説。

イケメンに変装したセルソといちゃいちゃするロゼに、女子達の羨望の眼差しが集中する。


その日一日、ロゼはセルソが変身したイケメンを連れ回し、行く先々で女子たちの羨望の的となる。

そして彼女がそれまで引き籠っていた小屋は、二人の愛の巣に・・・。

夜になってセルソと小屋に戻ったロゼは、二人で夕食を食べながら、満面の得意顔で言った。

「あー楽しかった。明日は誰になって貰おうかしら。マキシミリアン様がいいかな? その後は三銃士のアトス様かアラミス様? それともいっそ、亡くなられたカサノバ様?」



翌日、ロゼの基を離れて他の男子たちと漁に出かけたセルソは、漁が終わるとマゼランたちの所で相談に乗って貰う。

状況を説明するセルソ。


「いいのかなぁ」

そう困り顔で言うセルソに、ロキは楽しそうに言う。

「まあ、本人が喜んでいる訳だろ」

「けどさ、そもそもひたすらご奉仕の恋愛って、どーなの?」

そうロイデが言うと、ルチアが「男の恋愛ってそういうものじゃ無いの?」

「それより、神経がもたないよ」と、お疲れ顔のセルソ。

チャンダが「けど、童貞貰ってくれた訳だよな?」


「俺の父親って婿養子でさ、女の機嫌をとるのが普通だと思ってたんだ」と、自分の生い立ちに触れるセルソ。

ジョルドが「それで、惚れさせて立場逆転するのを目指すとか?」

ジルが「それで風俗に落として貢がせるってんだろ?」

「ゲスよね」と言って溜息をつくライナたち。

マゼランも「そうなる前に嫌気がさすだろ」と言って溜息をつく。



だが・・・・・・・・。

次第にロゼは、セルソの付け焼刃な恋愛スキルに不満を口にするようになる。


セルソはロゼの基を抜け出して、マゼランたちの所へ相談に・・・・・。

状況を説明するセルソ。

「デートコースがありきたりとか、会話が面白くないとか・・・・・」

「そういう所がロゼさんよね」

そうライナが言うと、セルソは「いや、俺って、ちゃんとした恋愛経験が無いから。そもそもデートって何なのか解って無い」

「楽しむ事じゃないの?」

そうチノが言うと、セルソは困り顔で「だから、どうやったら楽しんで貰えるのか」


チノは言った。

「じゃ無くて、セルソさん自身が楽しむのよ。デートって二人が二人の時間を楽しむものよね。それって、自分が楽しくなければ始まらないと思うの」

セルソは驚き顔で「それでいいの?」

「目の前に居る人が楽しいから楽しくなれるのよ。それで、その人と居ると楽しいっていう経験を積み重ねるの」

そうリンナに言われ、セルソは思った。

(俺は何が楽しいんだろう。俺が本当にしたい事って何なんだろう)  


そんなセルソにロキは言った。

「とれあえず、こいつは肉付の面だ。顔だけじゃなくて全身が、そして記憶や意識も"そいつ"のコピーになる。暴走すれば"そいつ"そのものになる。更にドニファン化のレベルを上げれば、奴の性格に近付いて彼女を誘うスキルも上がるだろうよ」

「それって、かなりその場凌ぎっぽくないか?」

そうセルソが困り顔で言うと、ロキは「恋愛なんて、何時だってその場凌ぎさ」



ロキは仮面変形のレベルを上げて、セルソの性格は更にドニファンのそれに近付いた。

デート中の歯の浮くような台詞や、ぐいぐい来る仕草は、とりあえずロゼを満足させた。


だが、次第にセルソは、他の女子が気になりだす。

女子学生たちにちょっかいを出している現場を見つかったセルソ。

激怒するロゼ。

「何やってるのよ! 私という者がありながら」


セルソは仮面変形が付与したドニファンのスキルで必死にロゼを宥めるが、ロゼの怒りは収まらなかった。

セルソの中のドニファンの声は「こういう時は一人にして頭が冷えるのを待つのさ」



セルソはロゼの基を抜け出して、マゼランたちの所へ相談に・・・・・。

状況を説明するセルソ。


話を聞いてロキが笑う。それを見てあきれ顔のマゼランたち。

セルソは困り顔で「いいのかよ、ロキ」

「修羅場って奴だろ? 最高の見世物じゃん」

その場に居た全員、脳内で(こいつは・・・)と呟く。

するとロキが言った。

「それにさ、嫉妬ってのは最強な恋の加速装置だぜ」



ロゼを怒らせてしまったと落ち込むセルソ。

彼が海岸で砂浜に座って、たそがれていると、後ろから肩をポン、と叩く者が居た。

振り向くと、見知った男子。ドニファンである。


「セルソって、ずっとロゼが好きで、それで生徒会に入ったんだよな?」

セルソ唖然。

そして「最初から知ってたのかよ」

「俺を誰だと思ってる」とドヤ顔のドニファン。

セルソは憤懣顔で「それで先に手を出して見せびらかしたつもりかよ。あいつはなぁ・・・」


ドニファンは言った。

「ああいう女は、誰かが恋の楽しさを教えてやる必要があるんだよ。それってモテる奴の役目だよな?」

「で、そのうち自分は他の女の所に行くんで、後腐れの無いよう後釜を引き受けてくれる男の居る女を・・・ってか?」

そう皮肉っぽい声でセルソが言うと、ドニファンは「それもあるけどね」

「否定しないのかよ」と、あきれ顔のセルソ。

そんなセルソを見ると、ドニファンは暫し沈黙し、そして遠くを見る目で呟いた。

「けどあいつも、そろそろ限界なのかな?」

そしてセルソは覚悟を決めた。



セルソはロゼの所へ・・・・・。

「あのさ、ロゼさん」

そういってセルソはロゼの前で仮面を外す。


「こんなものに頼って、さんざん君を振り回した。もう止めようと思う。俺は元々君に釣り合わないモブだから」

ロゼは寂しそうな声で「別れたいのね。いいよ。けど最後に試したいプレイがあるの」

「・・・・・・」

「来て」



ロゼはセルソの手を引いて小屋を出て、森の中を進んだ。

不安顔のセルソに「こっちよ」


そして、海岸を見下ろす崖の上の平坦面へ着く。

彼女は服を脱ぎながら、潤んだ目で戸惑うセルソを見つめ、言った。

「首を絞めながらセックスするって、あるよね」


セルソはドン引き声で「さすがにそんな危ない事は・・・」

「あなたのために死んであげる。だから、あなたも私のために死んでよ」

そう言うと、ロゼはセルソの手を掴んで、崖際へ・・・。


「ちょっと・・・」

そう叫んで慌てるセルソを抱きしめ。ロゼは崖下の海へと飛んだ。



セルソは左手で崖際に生えていた草に掴り、右手でロゼの手を掴む。

断崖のはるか足元に、波に洗われている岩のゴロゴロした磯が見える。


セルソの右手に掴って宙釣り状態のロゼは、怯えた声で「やっぱり怖い」

「だったら何で・・・」

そう叫ぶセルソに、ロゼは訴えた。

「別れたくない。男ってモブでも童貞捨てて自信をつけると、ヤリチンになって他の女の所に行っちゃうのよね。そんなの嫌だ」

「俺だって君と別れたくない」

そう叫ぶセルソに、ロゼも叫ぶ。

「嘘だ! だって最初から諦めていたもの」


「俺に価値なんて無いから」

そう辛そうに言うセルソに、ロゼは「価値なんて無くても性欲で頑張るのが男なんじゃ無いの? それで相手に嫌われて、周り中から非難されて、世界中敵に回しても力づくで手に入れる。ヤクザになってでも世界の女は俺のモノだって」

「そーいうマッチョは要らないから。そんなの、変な小説の読み過ぎだよ」とセルソ・・・・。


ロゼは言った。

「だったら・・・手を放していいよ」

「・・・・・・」

「マッチョで頑張るなんて止めて、自分を大事にしてよ」

そうロゼが言うと、セルソは「それも嫌だ」

ロゼは涙声で「何でよ! 私、自業自得だよ。本当は公爵家に生まれたってだけの、ただの女で・・・。だけど、特別じゃ無きゃ駄目だって、普通の男を馬鹿にして・・・。けど、特別な男は振り向いてくれなくて」

「・・・・・・」


「あなたの気持ちは何となく知ってた。けど、特別な私が欲しいなら死ぬほど努力してみせろ・・・って」

そう涙目で言うロゼに、セルソは「必用な努力なら、いくらだってするよ」

ロゼは「私は努力のための努力が欲しかった。穴を掘って埋めるみたいな根性を」

「・・・・・・」

「私、調子に乗ってた。ごめんね」



ロゼはセルソの右手を振りほどき、下に向って真っ逆さま。

「ロゼーーーーーー!」

そう叫んで、セルソは左手の草を離し、ロゼを追って下に向って真っ逆さま。



気が付くと、セルソは先ほどの場所のすぐ下の、崖上より一段低い所の平坦面に、彼女とともに居た。

「ここって崖下が断崖絶壁じゃ無かったのかよ」

そう溜息混じりにセルソが言うと、ロゼも溜息混じりに「そうみたい」


その時、崖上から誰かの声が・・・・・。

「大丈夫か? とりあえず、風魔法でも使って・・・」

別の誰かの声が「だから、ここは魔法が使えないんだってば」

「そーだった」


間もなく、上からロープが降りて来る。

そして誰かの声が「それに掴って、上がって来い」



セルソはロゼを背負ってロープに掴り、大勢がロープを引き上げて、二人は崖上へ。

ロープを握っていたのは何時もの仲間たち。ロイデにドニファンにマゼランたち、そしてロキも・・・。


「何でここが?」

そう唖然顔で問うセルソに、ロキが言った。

「一緒に死んでよ・・・ってのは定番だからな」

「だからって・・・」

ロキは笑いながら「仮面を外した気配で異常を察知したのさ。修羅場の行きつく先なんて見世物を見逃す手は無いからな」

頷く周囲の仲間たち。

セルソは「お前等なぁ」と言って溜息。


そんな中でマゼランが、目のやり場に困る・・・といった表情で「それよりロゼさん、いい加減服着たら?」

「あ・・・」

自分が全裸なのに気付いて真っ赤になるロゼ。

セルソが慌てて上着を脱いでロゼに羽織らせ、ライナたちが散らばっていたロゼの服を拾って彼女に渡す。


そんな様子を見て、フェリペは不思議そうに言った。

「ねぇ、マゼラン。ロゼさんは何で裸なの?」

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