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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第428話 仮面の恋人

フェリペたちポルタ大学学生105名が流れ着いた孤島でのサバイバル生活の中、生徒会役員でありながら女子たちにお気楽なナンパを繰り返す、海賊学部のドニファン。

父親が名うての色事師であり、彼自身もかなりなイケメンだ。

父親から教わったモテ術で、入学時から女子学生を誘いまくっていた彼は、他の学生たちとともにこの島に漂着してから、いっそうナンパに励む日々が続いた。



そんなドニファンが生徒会に参加して以降、その標的となったのが人文学部のロゼだ。

公爵令嬢としてのプライドの高い彼女は、三人の取り巻きを従えてクラスのトップとして君臨し、逆らうとイジメの対象となる・・・と恐れられ、男子たちからは敬遠されていた。

そんな彼女も、フェリペたちが入学してからはクラスでの威光も落ち目となり、その分、他クラスとのいざこざにエネルギーを費やすようになった。

その最大の対立相手が、かつて彼女の先祖がその部下だったという海賊科のトップ、マージョだ。

そんなロゼにドニファンが言い寄る。


当初はドニファンの誘いを跳ね付けるロゼだったが、めげずにしつこく言い寄るドニファンへの手厳しい対応は、それまでマージョに向けていた攻撃性を引き受ける、格好のサンドバッグとなった。


ロゼの自分に対する喧嘩腰が陰をひそめた事に気付き、気を良くするマージョ。

海賊学部のたまり場で、同級生たちを相手にドヤ顔でマージョは言う。

「あのロゼもようやくこの私の偉大さを理解出来た・・・って所かしらね」

「俺、よく解らないけど、マージョ様がそう言うなら、その通りまんねん」

先祖代々マージョの従者という、頭の悪そうなマッチョのワルサーがそう言うと、ドニファンは「ちょっと違うとは思うけどね」

「まさかあなたのお陰で丸くなったとか言わないわよね。あなた、振られっぱなしじゃないのよ」

そうマージョが言うと、ドニファンは「女には照れというものがあるのさ」

「ってか、あんなののどこがいいのよ」とあきれ声のマージョ。

「ああいう鉄のプライドで身を固めた鎧女ほど、中身は脆いものさ。それに、難攻不落な標的ほど落とし甲斐がある」

そうドヤ顔で言うドニファンに、マージョはあきれ顔で「悪い男ね」



めげずにアプローチを繰り返すドニファンを相手に、次第にロゼはその気になる。

男子から敬遠され、女子が彼女に合わせているのも、表面だけに過ぎない。

そんなロゼに、ドニファンが付け入る隙が生じるのに、時間はかからなかった。

口説き落とされて一夜を供にしたロゼは、たちまちドニファンに夢中になった。



フェリペたちの所にロイデとセルソが来て、ロゼの無茶な注文に愚痴をこぼす。

「それで、あの二人を主人公にした漫画を描けと?」

自分とドニファンとのイチャラブを漫画で美化しろとのロゼの要求に、全員あきれ声。


そして困り顔なロイデに、各自アドバイスのつもりであれこれ・・・。

「恋愛ものはライナの分野だよね?」

そうリンナが言うと、ライナは「けどドニファンって、騎士様とは真逆なタイプですからね」

ルナも「そうだよね。ドニファンって落とした女の子をすぐヤリ捨てるし」

「けど、創作物なんだから本物と同じにする必要は無いと思うぞ」とお気楽な事を言うシャナ。

ライナが「それで美化されたドニファンのイメージを本気にしちゃう女の子が出たら問題よね」

「どこぞの半島国は、それ目当てに国家戦略で宣伝費垂れ流して、ドラマとか安売り輸出しまくってるものな」とマゼラン。

チャンダが「いっそ、とことんゲスな主人公でギャグ路線狙うってのは?」と言い出す。

「ロゼさん、怒るだろーなぁ」とロイデが困り顔。


そんな中・・・・。

「あの人、どうなっちやうのかなぁ」

そうセルソが言うと、マゼランが「あのカースト女が心配かよ」

「みんなそう言うんだよね」

そう言って俯くセルソを見て、その場に居る人たちは一様に思った。

(セルソって、もしかして・・・・・)


そんな中でフェリペが「ところでマゼラン、ヤリ捨てるって、何をやるの?」

「・・・・・・・・・・」



人文学部女子の小屋では、ロゼの取り巻きたちが心配顔でロゼに忠告。

「大丈夫なんですか? ロゼ様」

「あいつって、平気で女をヤリ捨てる屑だって聞きますけど」

そんな彼女たちにロゼは「彼は理想の女性を求めた遍歴者なのよ。私ほどのレベルで初めて彼を満足させる事が出来るの」

「そうだといいんですが」と取り巻きの一人が・・・。


ロゼはドヤ顔で言った。

「あれだけ手厳しくはね付けた私を、超人的な根性で食い下がって、やっと私をモノにしたのよ。つまり私が特別な女性という証なの。大勢の元カノが未練を残す色事師が、この私のものになったのよ。私こそ恋愛ヒエラルキーのトップ。ほーっほっほっほ」

「そういうしつこさって、嫌われる要素だと思うんですけど」と、もう一人の取り巻きが・・・。

ロゼは更なるドヤ顔で「あらゆる創作物世界が男性異性恋愛の典型として否定するものね。そんな世界を敵に回してでも、好きな女を手に入れる。そんな情熱に女は惚れるのよ。そんな男が現れれば、あなた達もきっと解ると思うわよ」


取り巻きたちは思った。

(そう思わせて気持ちよくさせるゲームなんじゃ・・・・・・)



彼女達の危惧は間もなく的中し、ドニファンの関心はロゼから離れた。

彼の誘いは遠のき、ロゼの苛立ちが募る。

そんなある日、三人の取り巻きと海岸に出たロゼは、大きな岩がゴロゴロしているあたりで、ワルサーがうろうろしているのを見かけた。

三人の取り巻きはワルサーを見て「何、あの挙動不審男は」


ロゼが近づいて彼に詰問する。

「あんた、何やってるのよ」

ワルサー、慌て顔で「べべべ別にマージョ様の命令で見張りをしてる訳じゃないまんねん」

「何の見張りよ」とロゼは追及。


制止しようとするワルサーを振り切って、三人が岩の影を覗くと、キスしているドニファンとマージョが居た。

ロゼ唖然。

そして「ドニファン、何やってるのよ」

マージョ、ドヤ顔で「あーら、過去の女が何の用かしら。私の方が彼とは付き合い長いんだからね」

「付き合いが長いって、むしろ過去の女が言う台詞なんじゃ・・・」とロゼは言い返しかけるが、自分を気にもとめないドニファンの態度に、もはや続く言葉が出ない。



セルソとロイデがマゼランの所に相談に来て、事の顛末を訴えた。

唖然とするマゼランたち。

「それでロゼさん、引き籠っちゃったと?」

そうチャンダが言うと、ライナたちは声を揃えて「ドニファンって最低」

「ああいう奴だって、みんな知ってる事だけどね」とあきれ顔のリンナ。

シャナも「ま、別の恋を探せって話だろ」


するとセルソは「ドニファンはマージョにたぶらかされているんだ」

その場に居た全員、溜息をつく。

そしてチャンダは彼に「お前、誰か庇ってるつもりか?」

すると、たまたまその場に居た金田が「ま、マージョってああいう女だからね。以前からドニファンとそんな関係だったらしいよ。双方ただの遊びで・・・」

「セフレって奴?」

そうマゼランがあきれ声で言うと、セルソは「つまり恋人って訳じゃ無いんだ。だったら・・・」


そんなセルソにルナが「まさか、拠りを戻す可能性とか期待してる?」

ロイデが「お前、もしかしてロゼさんの事・・・」

セルソは困り顔で「いや、そういう訳じゃ・・・。けど、高峯の花ってあるよね?」

「いやいやいや、あんなの好きになる奴の方がおかしいって」

そうロイデが言うと、セルソは「けど、御嬢様キャラって恋愛ヒエラルキーのトップで、告って振られて絶望に沈む奴が行列作るとか」

「そんなの残念な学園ラブコメの中だけ」とチャンダが突っ込む。

マゼランが「まあ、蓼食う虫も好き好きってのも、あるからなぁ」


するとフェリペが言った。

「ところでマゼラン、セフレって何?」

「・・・・・・・・」



セルソがフェリペたちの小屋を出ると、彼は、入口の脇の壁にもたれて意味ありげな笑みを浮かべるドニファンの姿を見た。

セルソは脳内で(聞いていたのかよ)と呟く。そして(だったら手っ取り早い)と・・・。


「なあ、ドニファン。ロゼさんの事で話があるんだが」

「まさか、拠りを戻せとか説得するつもりか?」

そう言って彼は顔の縁に手を掛け、それを外す。

それはドニファンの顔から鉄の仮面に戻り、その裏から現れた顔を見てセルソは溜息をついた。

「ロキかよ」


「ロゼが好きなら自分で口説けばいいだろうが」

そうロキが言うと、セルソは「彼女が好きなのは俺じゃない」

ロキは「みんな、そういう段階からアプローチを始めて、頑張ってモノにするんだよ」

セルソは溜息をつき、そして言った。

「それでモノにしたらヤリ捨てて別の女に、ってか? そういうゲームを楽しみたい奴とそうじゃない奴が居るんだよ。俺はあいつみたいにはなれない」


「そうでも無いぞ」

そう言ってロキは、手に持っていた仮面をセルソに被せた。

「何を・・・・」

「仮面変形」

そうロキは呪句を唱え、セルソに手鏡を見せる。


鏡に写った自分の顔を見て、セルソ唖然。

「これ、ドニファンの顔・・・」

そんなセルソにロキは「あいつに成り済まして、とりあえず一発やって来い」

「それ犯罪だろ。それに、顔が同じでも、どうやって口説けばいいかわからないよ」と、セルソはおろおろ声で言う。


するとロキは笑って言った。

「大丈夫だ。これは化けた本人の性格や記憶もコピーするからな。もちろん、女を口説くスキルも。お前は奴と同じになれる」

セルソは俯き、そして呟く。

「あいつと同じ・・・・・」

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