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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
425/553

第425話 生徒会のお仕事

フェリペ皇子たちポルタ大学学生105名が流れ着いた孤島で、大騒ぎの末に始まった選挙運動。

三つの学部のそれぞれトップを自認するロゼ・マージョ・アメリアが立候補し、生徒会長の座を争う。

だが、動くのは立候補者本人と取り巻き他、少数の学生だけで、大多数は全く感心を示さない。



立候補者とその取り巻きたちは、小屋の一つを選挙事務所と称して確保する。

そして、魔剣が語る異世界での生徒会長選挙のやり方を参考にした試行錯誤が始まった。


「先ずポスターだよね」

そうアメリアが言うと、ロゼが「ポスターってどうやって作るの?」


魔剣の所に聞きに行く。

「紙に候補者の顔と名前を書くんだ」

そう魔剣が言うと、三人の候補の取り巻きたちは「紙に・・・って、紙なんてあったっけ?」



ロゼたちは拠点村に居る学生たちに、紙を持っている者が居ないかを訊ねる。

「紙なら煮炊きの焚き付けに使ったけど」と女子学生たち。

男子学生たちも「あの騒ぎの中で、だもんなぁ」

するとフェリペが「リラ姉様なら筆談用を持ってるよ」

「あの人、まだそんなの持ち歩いてるのかよ」


そんな騒ぎを聞きつけたドニファンが「手帳から破いた紙でいいなら・・・」

「お前、手帳なんて持ち歩いているのかよ」

そう海賊学部の同級生たちに言われて、ドニファンは「記録って大事だろ」

その場に居た人たちは、一様に感心顔で「ただのナンパ野郎かと思ってたが、ちゃんと考えているのな」


ドニファンはポケットから手帳を出す。

そして「破くのは白紙のページだけにしてくれ。ナンパした女の子の連絡先を書いた大事なものだから」

残念な空気が漂う。



三人の候補者はそれぞれドニファンから貰った手帳の紙に向き合う。

とりあえず自分の顔と名前を書いたものを眺め、そして三人は一様に呟く。

「これ、ポスターっていうには小さすぎなんだけど」

「それで、これをどうするの?」

そうアメリアが言うと、他の候補者や取り巻きたちは「どうするんだっけ?」


魔剣の所に聞きに行く。

「ちゃんと指定された場所に三人のポスターを並べて貼るんだ。枚数には規定があって、全員同数が原則だ」と魔剣は説明。

ロゼが「並べて貼れる所って、どこだろう」・・・・・。


三人の候補と取り巻きは広場に出て、ポスターを貼れる所を探す。

周囲には、みんなが住んでいる小屋が並ぶ。

「どこに貼るんだい?」

そうマージョが言うと、アメリアが「小屋しか無いんだけど」 

すると、アメリアの取り巻きの一人が「小屋の壁で良くない?」

「確かに・・・・」


適当な小屋を決めて、その壁にポスターを書いた手帳の紙を当てる。

ロゼが「やっぱり小さいよね」

すると、ロゼの取り巻きの一人が「これ、壁板に直接書いたら駄目なのかな?」

「その手があったかー」



小屋の壁に向って三人並んで、自分の似顔絵と名前を書く。

マージョが書いている似顔絵を見て、「あんた、絵が下手くそ過ぎでしょ。全然似てないし」とロゼが物言い。

マージョは「いや、そっくりだろ。目があって鼻があって口があって」と反論。

「どこかで聞いたような居直り方なんだけど」とロゼの取り巻きの一人が・・・。


「上手い下手以前に、これじゃ誰の顔か解らないよ」とアメリアが指摘。

マージョは「いや、解るだろ。名前が書いてあるし」

「それ、似顔絵の意味無いんじゃないの?」と、あきれ顔のロゼ。

するとアメリアの取り巻きの一人が「あの、こういうのはちゃんと絵心のあるプロに書いて貰った方がいいのでは・・・」


「そんなの、どこに居るのよ」

そうマージョが言うと、彼女の従者のワルサーが言った。

「マージョ様、俺に心当たりがあるまんねん」



ワルサーの案内で魔法学部に行き、男子たちに聞き込み開始。


間もなく彼女等は有力な情報を得た。

「それってロイデの事だと思うよ」

そうジョルドが言うと、周囲の魔法学部男子たちが「あいつにそんな特技が?」


ロイデが呼ばれて本人が出て来る。

「ポスターに本人の似顔絵を書かなきゃなんだけど、ロイデはちゃんとした人物画を描けるんだよね?」

そうアメリアが言うと、一緒に居たジルが「大丈夫だよ。こいつ、いつも講義ノートに落書きで萌え絵を描いてるから」

「萌え絵って・・・」

ゴミを見るような視線を向ける女子達に、ロイデは「要らないんなら、いいけど」

三人の立候補者は慌てて「要る。要りますから」



ロイデは、三人の候補者の名前を書いた所に、消し炭でそれぞれの似顔絵と称する絵を描いた。

三人それぞれ、自分の所の絵を見て大喜び。

「かっわいーーーー」とロゼとアメリア。

マージョも「私の、そっくりじゃん」


だが三人とも、他の二人の絵を見て「あんたらの、全然似てないでしょ」

他の二人から指摘された三人とも「あんたのこそ」

「ってか、三つとも同じ顔なんだけど」

そうアメリアの取り巻きの一人が言うと、描いた本人のロイデは言った。

「萌え絵ってそういうものだろ。目が大きくて鼻と口が小さくて全体の輪郭が丸くて」


各学部の男子たちが集まって来る。

そして「三人とも全然似てないぞ」

ロイデは「仕方ないだろ。俺、こういう絵しか描けないんだから」

「意味あるのかよ」と男子たち。



街頭活動が始まる。

あちこちに立って"お願いしまーす"を連呼する三人の候補と取り巻きたち。


拠点村の入口に立つ魔法学部のアメリアが、通りかかった男子たちに"お願いしまーす"コール。

「何をお願いするって?」

そう男子の一人が言うと、別の男子の一人が「投票だろ」

そんな彼等を見て、アメリアの取り巻きの一人が言った。

「ってか、何でうちらがお願いしなきゃなんないのよ。うちらクラスのトップだよね?」

別の取り巻きの一人も「うちらに嫌われたらイジメの対象だよね?」

「怖ぇー」と肩を竦める男子たち。


水場の脇に立つ人文学部のロゼが、通りかかった男子たちに「あんたら人文学部だよね? 私に投票するわよね?」

次に通りかかった男子たちにもロゼは「あんた達、私に投票するわよね?」

「俺たち魔法学部なんだが」

そう男子たちが言うと、ロゼはドヤ顔で「この島の代表を選ぶんだから学部関係無いわよね?」

男子たち、あきれ顔で「さっきと言ってた事と違くない?」



そして投票日。


学生たち全員が広場に集まり、三人の候補者が施政方針演説。

三人とも他の二人の悪口を並べ、言われた側も黙っておらず、壮絶な口喧嘩となる。

そんな三人をあきれ顔で見て溜息をつく学生たち。


そして投票。

投票用紙代わりの木札が配られる中、あちこちで学生たちが顔を見合せて井戸端会議。

「どうする?」

「三人とも、あれじゃ・・・なぁ」

そう言って溜息をつく学生たち。

そんな中で一人の学生が「けど、他の学部の奴が島を牛耳るってのもなぁ」

「確かに」

そんな会話があちこちで・・・。



アメリアの取り巻きたちが、魔法学部の女子たちに「どうかしら」と投票圧力をかける。

女子たちは口を揃えて「うちの学部の学生は全員アメリア様に投票しますよ」


ロゼの取り巻きたちも人文学部の女子たちに「どうかしら」

魔法学部ではワルサーが男子たちに「みんなもマージョ様に投票するまんねん」



開票は本人たちにやらせると絶対不正をやるというので、第三者のマゼランたちが受け持つ。

立会人として、海賊学部からビスコ。

魔法学部からは金田。


投票が進む中で候補者たちは、互いにそれぞれの勝利の確信を誇示して、ドヤ顔を突き付け合う。

「うちの結束は固いよ」

そうマージョが言うと、ロゼは「三分の一は固い」

「うちだって」とアメリアも・・・。


そんな会話を脇で聞いている学生たち。

「このままだと三人とも35票づつって事になるぞ」

そう彼等の一人が言うと、もう一人の学生が「あと一票あればなぁ」



その時、海賊学部の男子の一人が「ビスコのキノコ魔獣は投票してないよね?」

「あいつ、まだ居たのかよ」と魔法学部の学生の一人が・・・。

すると人文学部の学生の一人が「ってか、あれは学生じゃないぞ」

「けど、島の漂流者仲間だぞ」と、先ほどの海賊学部の学生。


「いや、漂流した時にはまだ居なかったんだが」

そう魔法学部の学生たちが言うと、海賊学部の学生たちは言った。

「魔獣だからって差別するのは良くない。外国人だって投票権を与えるのが人権だって、リベラル教の尊師様が言ってたよ」

人文学部の学生たちは「いや、ああいう国からの移民は、下手すると侵略目的で戦略移民を送り込むハイブリット戦争の手口だから、真に受けちゃ駄目絶対!」

魔法学部の学生たちも「そもそも主権は国籍保有者を主権者とする排他的支配権と概念規定されてるから。外国人投票権は国民の参政権に対する人権侵害だよ」


すると、海賊学部の学生の一人が「けどキノコ魔獣はみんなのために頑張ったよね?」

「それは・・・」

もう一人の海賊学部生も「トイレの穴掘ってくれたよね?」

「それは・・・」

更にもう一人の海賊学部生が「いっぱいになった排泄物を食べてくれたのも、あいつだよね?」

「そういうスカトロネタは逆効果だよ」とジルが突っ込む。

周囲で話を聞いていた女子たちもドン引き状態。



すると魔法学部の学生の一人が、ドミンゴが持っていた魔剣を指して「だったらこの魔剣にも投票権あるよね?」

海賊学部の学生たちは困り顔で「生徒じゃないよね?」

「けど、彼が異世界の知識を教えてくれたから、生徒会が出来るんだよね?」と、もう一人の魔法学部生。


海賊学部と魔法学部がプラス一票を確保すると、マージョはドヤ顔で勝ち誇った。

「これでロゼさんの負けは確定だね。ほーっほっほ」


悔しそうなロゼ。

すると人文学部の学生の一人が「アラストールにも投票権はあるよね?」

もう一人の人文学部生が「ロキにもあるよね?」

「生徒じゃないよね?」

そう海賊学部と魔法学部の学生たちが言うと、ロゼは「先に生徒じゃないキノコ魔獣だの魔剣だのに投票権を主張したのは、あなた達ですわよね。見苦しいですわよ。ほーっほっほっほ」とドヤ顔で勝ち誇った。



投票が締め切られ、開票が始まる。

結果は・・・。

マージョ36票。

アメリア36票。

ロゼ36票。


ロゼが目を吊り上げて物言い。

「ちょっと待ってよ。それ、おかしくない? あと一票ある筈よね?」

「それと白票一票」

そう開票係のマゼランが言うと、全員、学生たちが集まっている広場を見回して「誰だよ」


するとシャナが「私は三人とも嫌いだ」

残念な空気が漂う中、学生たちは口々に「結局、三人とも同数じゃ、会長が決まらないじゃん」

「どーすんだこれ」



その時、魔剣が言った。

「集団指導体制ってのはどうかな?」

「何だそりゃ」

魔剣は解説した。

「某国の与党の最大派閥は代表が暗殺された後、後継者が決まらず五人が相談して派閥を運営する事になったんだ」

頷く学生たち。

「なるほど。そもそも生徒会長一人では何も出来ないよね」


「そうだよ。生徒会ってのは、数人で運営するんだ。それで会長と書記と会計が全員女の子の百合日常系集団に・・・」

そう魔法学部の学生の一人が言うと、人文学部の学生の一人が「いや、この三人がそれやると喧嘩ばっかりになるぞ」

先ほどの魔法学部生が「けど、お約束だと何かのきっかけで仲直りしてお友達になって、百合ん百合んな萌え豚向けの世界」

マージョとアメリアとロゼ、声を揃えて「それはぜーーーーーーーったいに無い!」

「ってか、生徒会って男子は入っちゃ駄目なの?」

そう海賊学部生の一人が言うと、先ほどの魔法学部生は「それは駄目だろ。萌え豚がヒロインたちを汚すなとか意味不明な事を言って発狂するぞ」


すると魔剣が言った。

「いや、そうでもないぞ。副会長が男子で主人公のハーレム系なんてのもある」

「そんなの誰がやるんだよ」と、男子学生たちは口々に・・・・・・。


「俺がやる」とドニファンが名乗り出る。

「ハーレムだったらこの色事師ドニファンを置いて他に居ない」

そしてドニファン、三人の立候補者の手を執って「マドモアゼルたち、君たちは俺が責任をもって落としてあげるよ」

ロゼ・アメリア・マージョはドン引き顔で「そういうの要らないから」

すると、人文学部と魔法学部の学生が口々に「けどさ、まとめ役が海賊学部って事でいいのかよ」



結局、各学部から男子を一人づつ出す事に・・・・。

二つの学部の学生たちがそれぞれ集まって、人選会議。


「魔法学部から誰を出すんだ?」

35人の魔法学部生が周囲を見回し、互いに牽制し合う中、一人の学生が「ロイデがやれよ」

ロイデは不意を喰らったような困惑顔で「何で俺が?」

先ほどの学生は言った。

「ポスター作りで協力したよね? 毒喰わば皿までだ」

「そんなぁ」


「人文学部からは誰が?」

35人の人文学部生が周囲を見回し、互いに牽制し合う中、一人の学生が「マゼラン」

全員が賛同の声を上げ、マゼランに圧力の視線が集中。

マゼランは「絶対嫌だ」と抵抗する。


そんな中で「俺がやるよ」と言って名乗り出たのは、セルソという男子学生だった。

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