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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
421/552

第421話 孤島の日常

ポルタ大学の三つの学部の学生を集めたサバイバル合宿の船が難破し、魔法の使えない島に漂着した学生たちが、森を切り開いて村を造ってから、それなりの日数が経った。

島での生活の中で学生たちは、経験を積み重ね、必用な道具を制作し、彼等の生活は改善させていった。


蔓草の繊維を撚って紐を作り、これを編んで漁網を作る。

不漁が続いて食料がピンチになると、シャナからメロンパンの備蓄を分けて貰った。

分配されたメロンパンを食べながら、ライナたち三人は小声であれこれ噂する。

「このメロンパン、いったいどれだけ貯め込んでるのかな?」

そうルナが言い出すと、ライナとリンナは暫し脳内で思考する。

そしてリンナが「止そうよ。詮索しちゃいけない気がする」



ある日、フェリペが熱を出した。


チノが薬草を煎じて薬を作る。

フェリペに薬を飲ませながら、チノに感謝を述べるルナ。

「助かります」


「本当はもっと効く薬があるんだけど」と済まなそうに言うチノ。

「そんな・・・。対処できる人が居てくれて、本当に有難いです」

そうリンナが言うと、マゼランも感謝顔MAXで「フェリペ様に、もしもの事があったらと思うと・・・」

フェリペも「帰還した暁にはスパニア栄誉勲章を授与しよう」

チノ、困り顔で「そういうのは要らないから」



残念な空気の中、ライナが話題を変える。

「チノって、ジョルドとドミンゴのお友達なのよね?」

「あの二人とは幼馴染なの。子供の時に引き籠った時、二人で慰めてくれたの」

そうチノが言うと、マゼランは表情を曇らせて「引き籠ったって、もしかして・・・・・」


「ロック歌手みたいでかっこいいって言ってくれて」

そうチノが言うと、チャンダが「どこかで聞いたような慰め方なんだが・・・」

「もしかして、人頭税の?」

そうライナが確認すると、チノは憤懣顔で「あのスパニアから来たポルタ総督、一生恨んでやる」

それを聞いたマゼラン、何故か焦り顔で「ま・・・・・まあ、過去は水に流して未来志向で行こうよ」



「フェリペ殿下、具合は?」

フェリペたちが居る小屋にそう声をかけて入ってきたのは、ジョルドとドミンゴである。

二人は薬を作っているチノに「君が居てくれて助かったよ」

「薬草は魔女の嗜みだから」と、はにかんだように嬉しそうに俯くチノ。


そんな彼女にフェリペは「魔女って、リラ姉様みたいな人魚に人間の足をあげたりするんだよね?」

「あれはかなり高度な技術ですよ」と答えるチノ。

ライナが「箒に乗って空を飛んだりとか?」

「箒の飛行魔道具なら普通に使えますけど」とチノ。

リンナが「魔女狩りとかで狙われたりするの?」

「国教会になって、そういうのが無くなって安心だって、母が喜んでました」とチノ。


ルナが「その魔女の薬って、マーリンさんみたいに大釜で煮てかき回してとか?」

「あれは様式美みたいなもので、ビーカーにアルコールランプの理科の実験器具でも作れますよ」とチノ。

チャンダが「錬金釜の中に異世界があって、謎の植物の間を飛び回ってとか?」

「それはゲームやアニメの中だけ」と困り顔のチノ。



「それよりルナ、この川の上流に滝を見つけたんだ。一緒に見に行こうよ」

そう言ってジョルドとドミンゴがルナを誘うのを見て、チノは少しだけ寂しそうな表情を見せた。


そんなチノを見て、ライナは「チノも一緒に行く?」

「いや、ルナを誘ったつもりだったんだが」

そうジョルドが言うと、シャナが「ジョルドは解ってないな。この三人はセットなんだぞ」

「セットって・・・」

「いいじゃん。ハーレムって奴?」とライナは冗談めかす。

するとドミンゴが「だったらマゼランとチャンダも来いよ」


「僕も行く」

そう言い出したフェリペに、マゼランは「フェリペ皇子は安静にしてた方がいいですよ」

「滝はヒーローの騎乗ゴーレムの秘密基地だぞ。水が落ちてる裏に洞窟があって、そこから発進するんだ」と駄々をこねるフェリペ。



マゼランがまだ本調子ではないフェリペを背負い、その場に居た全員で滝を目指した。

川を遡って川岸をしばらく歩くと、水音が聞こえる。


更に歩くと、やがて滝が見えた。そう高くは無いが水量は多い。

「綺麗ですね」とチノ。

フェリペはマゼランの背中から降りると「マゼラン、秘密基地に行くぞ」

「水に濡れるとまた熱が出ますよ」と困り顔のマゼラン。



滝壺の岸で周囲を眺めていたチノは、いきなり滝の岩場によじ登り始めた。

それを見て「そこに秘密基地があるの?」と嬉しそうに言うフェリペ。

マゼランは困り顔で「多分違うと思います」


「花が咲いてるんです」

そう言ってチノが指した方向を見ると、崖の上に大きな青い花。

「あれが欲しいの?」

そうジョルドが言うと、ドミンゴも「綺麗な花だね」


「俺たちが採って来てやるよ」

そう二人は言うと、ジョルドがドミンゴの肩の上に乗り、崖の上の青い花を摘んだ。

その花をルナの髪に・・・。

そして「よく似合うよ」


ライナがハリセンで二人の後頭部を思い切り叩いた。

「違うでしょ。花を欲しがったのはチノだったでしょーが」

「あ・・・」


チノは慌てて「違うの。そうじゃなくて」

「もう一つ咲いてるけど」とシャナが指摘。

「だったら・・・」



ジョルドがドミンゴの肩の上に乗り、崖の上のもう一つの青い花を摘んだ。

その花をチノの髪に・・・。

そして「よく似合うよ」

チノは困り顔で「ありがとう。けど、花が欲しかったんじゃなくて、この草はネツサマ草といって、根が子供の熱を出した時に効く薬草なの」

少しだけ残念な空気が漂う。


「そういう事なら」

そう言うとチャンダは、崖を駈け上って草の根を抜く。

更に彼は周囲を見回して「あそこにも咲いてる」「ここにも」

チャンダは一抱えのネツサマ草を収穫した。


「じゃ、帰ろうか」

そう言ってマゼランが帰還を促すと、シャナが「ところでフェリペ殿下は?」

フェリペは滝の中に手を突っ込んで、水が流れ落ちる裏側を探っていた。

そして「秘密基地の洞窟はどこだろう」


マゼランはフェリペを背後から抱えて滝壺から出る。

「ずぶ濡れじゃないですか。また熱が出ますよ」



その夜、またフェリペは熱を出したが、チノがネツサマ草を煎じて飲ませ、まもなくフェリペは全快した。



翌日の朝・・・・・。


「フェリペ皇子はもう大丈夫?」

フェリペたちが居る小屋にそう声をかけて、チノが入ってきた。

病み上がりのフェリペの世話をしているルナと、眠っているフェリペが居る。

「チノのおかげで、すっかり良くなったわ」

感謝顔でそう言うルナに、チノは「それよりルナに聞きたい事があるんだけど、あの二人をどう思ってる?」


ルナは脳内で呟いた。

(あの二人って、マゼラン様とチャンダ様の事だよね)

そして「いい人よね」

「いい人と好きな人は違うよね?」

そうチノが言うと、ルナは「強くて、いかにも騎士様って感じかな」


チノは言った。

「そんな身分じゃないんだけど。それで、どっちか好きだったりするの?」

「いや、二人とも相手が居るから」

そうルナに言われ、チノ唖然。

「相手って?」


「ライナとリンナよ」

ルナにそう言われて、チノは思った。

(私が知らない間にそんな事になってたなんて)



そして、その日の午後・・・・・・・。


「ジョルドとドミンゴがライナとリンナとくっついた?」

そうチノに聞かされて、ルチア唖然。

ルチアはチノの友人で、ジョルドとドミンゴの事も、ある程度知っている。

時折チノの相談相手になっていたのだが、さすがに今回は開いた口が塞がらないといった体。


「男って何考えてるのかな。あいつ等。ルナが好きなんじゃ・・・」

そうルチアが言うと、チノも「それに、ライナとリンナってマゼランとチャンダの彼女よね? あの二人から乗り換えるなんて」

ルチアは「スペックは断然あっちが上なのに」

「けど倦怠期ってあるからなぁ。もう何が何だか・・・」

そうしょんぼり顔で言うチノに、ルチアは言った。

「そもそもあんたが今日までほったらかしにしてたから、こういう事になるんでしょーが。幼馴染が二人も居て、どっちか回して欲しいくらいだわよ。それで、どっちが本命?」


チノは困り顔で「どっちと言われても・・・。三人で居ると楽しくて」

「それって単なるお友達って事よね?」

そう突っ込むルチアに、チノは「けど、あんなに優しかったのに、私の事ほったらかしてルナばっかり。そういうの見て、もやもやするの」

そんなチノの悩み顔を見て。ルチアは呟く。

「まあ、男の事は男に聞くしか無いかぁ・・・・」



ルチアはチノと別れると、同級生のジルとロイデを見つけて話しかけた。

「聞きたい事があるんだけど、あんた達、よくジョルドとドミンゴと四人で遊んでたわよね?」


「あいつ等、最近はフェリペ皇子のグループと一緒だけどね」

そうロイデが言うと、ルチアは「それって、あの三人の女官の事よね?」と確認。

「ルナ狙いなんだろ?」

そうジルが言うと。ルチアは「他の二人とはどうなのかな?」

ジルは「あの二人にはマゼランとチャンダが居るんじゃ無いの?」

そして二人の男子は脳内で呟く。

(もしかしてルチアって、あの二人が気になる?)


そんな彼等にルチアは「あの二人、チノと仲良かったのよね?」

「それは知ってるけど・・・・・」



ルチアが去った後、二人の男子は彼女の意図について、あれこれ話す。

会話の中で迷走する二人の想像力。

「友達の彼氏を好きになるって、あるよね」

そうジルが言うと、ロイデも「あいつらって、そもそも二対一だから、ルチアが加われば二対二だよね」


二人は暫し、思考を巡らせる。

そしてジルが言い出した。

「あいつ等、くっつけてみようか」

「それで俺たちに何の得がある?」

そうロイデが言うと、ジルは「他人の恋愛に首を突っ込む事って、面白いよね」

「まあ、そうだよな」とロイデも頷く。


ジルは言った。

「それにルナってショタ属性でフェリペ皇子命って感じで、そんなのにアプローチって空しいだろ」

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