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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
407/513

第407話 叛逆の王子

複数のドラゴンを従え、イギリスとの奴隷貿易で手に入れた鉄砲による軍隊で、周辺部族を征服し、更にイギリスのザンジ植民都市を焼いたガナルガ帝国。

その支配から逃れた現地人難民や、ザンジから撤退したイギリス人たちと共に、ガナルガと戦うエンリ王子。

そして彼の元に帰還したタマがもたらした、ガナルガ帝国の内情。

それは帝国の戦力となっている複数のドラゴンが、王の一族の娘を「ドラゴンの花嫁」とする事によって得たものであるという事。支配下の部族民の精神を支配して編成された洗脳兵団。そして、その支配に抗うサンシャ族とその指導者の存在。



「それで、戦況はどうなってるの?」

報告を終えたタマがそう言うと、エンリは「ガナルガ軍は進軍を始めたよ。それを幻覚魔法で阻止している所だ」

「幻覚魔法って、巨大魔獣とか天変地異の幻?」

そうタマが言うと、アーサーが「・・・には魔力が足りないので、迷路の結界をね」

タマはワクワク顔で「つまり敵は、結界の魔力に惑わされて、道に迷って同じ所をぐるぐると。それで精神的に疲労して、ストレスの挙句に仲間割れって所ね?」

「それが全然疲れた様子を見せず、洗脳されて戦意が常にMAX」と残念顔のアーサー。


「けど、俺たちも以前、ジャカルタでそんな目に遭ったよね?」

そうタルタが言うと、ニケが「あれ、どーしたんだっけ?」

カルロが「ファフのドラゴンで空から戻ったんだよ」

「そーだった。ドラゴンが居れば一発だ」とエンリ、困り顔になる。

「奴ら、ドラゴンが何頭も居るけど」とタマが指摘。

全員、困り顔で声を揃えて「そーだった。どーしよう・・・・・・・」


「けど、ガナルガ軍はまだ、それに気付いてないみたいですよね?」と若狭が指摘。

「何だかんだ言っても、間抜けな奴等だなぁ」とタルタが一転して何時もの能天気顔で・・・。

「いや、洗脳戦意で疲れを感じないなら、その必要も感じないんだろ」とジロキチが指摘。

すっかり緊張感が緩んだエンリたちだが・・・。

「けど、その手は何時までも通用しないと思いますよ」とリラが指摘。

再び場の空気が重くなる。


アーサーが「やっぱり祖霊の像で、ちゃんとした防御結界が必要だな」

「それと、反乱勢力のサンシャ族との合流もね」とエンリ王子。

そしてエンリは号令した。

「とにかく、手分けして現地に向おう。祖霊の像はカルロとタマが行ってくれ」

「サンシャ族は?」

そうアーサーが言うと、タルタが「王子が行くしか無いよね?」

「だったら私も」と、リラとアーサー。


カルロが「じゃ、ファフのドラゴンでガナルガまで乗せてくれ」

アーサーが「いや、サンシャまでだろ」

「・・・」

カルロとアーサーの間で緊張が走る中、リラが言った。

「あの、ハシゴで行ったらどうかと・・・」

そしてエンリは言った。

「それと、アーサーは敵本隊との魔法戦に備えて、ここに残ってくれ」



ファフのドラゴンが翼を広げてコンゴの街を飛び立つ。

その背には、カルロ・タマ・エンリ・リラと、双方に親戚の居る現地人の案内役。

回収した祖霊像を転送するための転送魔道具も載せて、空路をガナルガ帝国に向かった。



ガナルガの首都の近くの密林に舞い降り、リラとタマの隠身魔法で姿を消して門を通り、街外れの動物たちのたまり場へ。

そこには動物たちとともに、オウムのココも居た。


六人の人間と一緒のタマを見て、ココは「タマさんじゃないですか。何か忘れものですか?」

「ここに征服された部族の祖霊像がある筈よ。配下の部族から持って来た祖霊・・・ってつまり、人間の形をしたのをあちこちから集めたものが」

そうタマが言うと、動物たちは互いに額を寄せて「つまり、貢物として運ばれた人間?」


一匹の兎が名乗り出た。

「解りました。案内します」

それを見てエンリは「大丈夫かな。カルロがダウジングで探したほうが早いと思うが」



兎がタマを案内したのは、奴隷が集められた建物。

一緒に入って確認する。

建物の中でタマは周囲を見回し、そして「祖霊像はどこ?」

「大勢居るのがそれですよね? 人間の形してますし」と兎は胸を張る。

タマはがっかり声で「いや、人間の形をするってのは、人間じゃないものを、そういう形に作ったって事だから」



タマと兎が再び動物のたまり場に戻る。

エンリたちはタマの話を聞き、アーサーが「やっぱり違ってましたか」

エンリも残念顔で「祖霊像は人間とは違うから」


すると一匹の山犬がハアハアしながら「だったら、やっぱりあそこがそうだよ。案内します」

「今度は間違いないよね?」

そうタマが言うと、山犬は「間違いありません。だって美味しそうな匂いがしてて気になってた所ですから」

タマ、怪訝顔で「美味しそうな匂い・・・って?」


山犬が案内したのは、税として取り立てた食料の貯蔵場だった。


タマと山犬が戻って、再度の空振りを報告。

「やっぱりカルロのダウジングで探そうよ」

そうエンリが言うと、ココが「いえ、探し物を依頼された我々にも面子があります」

「そういう使命感は要らないんだけどなぁ」と言ってエンリ、溜息。


その時、リラが言った。

「あの、気になっていたんですが、向うの建物から凄い魔力を感じるんです」

「ここの祭祀場所じゃないのか?」

そうエンリが言うと、リラは「いろんな性質の魔力を感じます」



トカゲの案内でタマが問題の建物の内部を偵察。

中には、虎や象や魚や猿やカモシカ、その他、様々な動物の像。


一緒に戻ってエンリたちに報告するトカゲとタマ。

「人間の形の像は無かったわよ」

そうタマが言うと、エンリは「そういえば西方大陸北部の現地人は、トーテムとか言って、いろんな動物を祖霊として崇めてるって聞いたぞ」

「だったらガナルガの祖霊なのでは?」とカルロ。

エンリは「いや、ここの祖霊ってドラゴン王だよね。だったらここの祭祀場所ではドラゴンの像がある筈だ。多分それは別の所にある」

「じゃやっぱり、この建物にあるのが各部族の祖霊像?」とリラ。


念のためにカルロがダウジング棒を使う。

ダウジング棒は真っ直ぐ建物を指した。

そしてカルロが「やっぱりここです」



「けど、警備が厳重ですね」

そう言ってリラは、武器を持った何人もの兵が立つのを見る。

するとファフが「ドラゴンの力で蹴散らして来るね」

エンリが慌てて「ちょっと待て。騒ぎが大きくなるのは・・・」と制止するのも聞かず、ファフはドラゴンに変身して建物前に出て警備兵を威嚇。


だが・・・・・・・・。

「こんにちは。どちらのドラゴンさんで?」

威嚇された自覚の無い警備兵の能天気な挨拶に、ファフも能天気な声で応える。

「ファフは主様の従者なの」

警備兵は「王女が花嫁に行ってるドラゴンの子分ですか?」

「よく解らないけどそうなの」


「それでどんな御用向きで?」

そう警備兵に問われて、ファフは「祖霊像が欲しいの」

「あれは持ち出し禁止なんですけど」

そう言って渋る警備兵に、ファフは「主様が戦いに必用だって言うの」

「どんな事に使うんですか?」と一人の警備兵。

ファフが何か言う前に、もう一人の警備兵が「もしかして、配下の部族の統率とか・・・・・」

「よく解らないけどそうなの」

「解りました。この奥です。けど、その体では入れないですよ」

そう警備兵が言うと、ファフは「大丈夫なの」と言い、変身して人間の姿に。


ドラゴンから女の子の姿になったファフを見て、一人の警備兵は「もしかして、メスのドラゴンですか?」

すると別の警備兵が、彼に「けど、花嫁の相手って事はオスなんじゃ・・・」と疑問を呈する。

更に別の警備兵が「配下なんだろ?」


彼等はファフに訊ねた。

「あなたの主って、誰ですか?」

「王子様なの」と答えるファフ。

それを聞いた警備兵の一人が「ちょっと待て。王の命令で姫しか産まない筈だ」

別の警備兵が「いや、命令に反して生まれて殺害を命じられたが、殺せなくてサンシャ族の反乱軍を率いた王子が居たぞ」

「って事は敵のドラゴン」

そう言って武器を構え、ファフの前に立ち塞がった警備兵たちを、リラがウォーターワイヤーで捕縛。



水のロープで拘束されてじたばたする警備兵たちを横目に、エンリは「今の内に運び出そう」

カルロが警備兵たちを指して「こいつ等はどうしますか?」

「眠らせますか?」とリラ。

エンリは暫し思考を巡らせ、そして「その前に聞きたい事がある」


先ほど"命令に反して生まれた王子"の存在を口にした警備兵に、カルロは自白剤を飲ませ、自白の魔法を使う。

そしてエンリが彼に問う。

「反乱軍を率いる王子って誰だ?」

警備兵は「王の妹のイヤングラ姫が産んだ子供です。決まりを破って生まれた子だからと、王は殺そうとしたのですが、どうしても殺せず、川に捨てたのが成長して、反乱勢力のリーダーに」

「名前は?」

「サンシャ族の戦士長、ムインド王子」と警備兵。

「彼に味方する者は居るか?」

エンリがそう問うと、警備兵は「ミキティというイヤングラ姫が嫁いだドラゴンが味方です」



拘束した警備兵たちを眠らせると、エンリたちは建物の中へ。

様々な動物を表現した像が並ぶ様を見て、一瞬、息を呑むエンリたち。


「随分あるね」

そうエンリが言うと、リラが「どうやってコンゴまで運びますか?」

「転送の魔道具を持って来たから、それで・・・」


そうエンリが言いかけた時、オウムのココが言った。

「大丈夫です。パンジャ王が輸送用に象を派遣してくれています」

エンリは迷惑そうに「いや、魔道具があれば一瞬で送れるんだが」

「象たちはそのために来たんです。彼等にも面子ってのがありますから」と、ココは譲らない。


結局、輸送用の象を使う事になる。

隠身の魔法で姿を消した彼等が像を担いで門の内外を往復。

そして砦から運び出した荷物を三頭の象が背中に乗せて、コンゴの砦へと発つ。

その後ろ姿を見送りながら、エンリは「象が像を乗せて行くね」


残念な空気が漂う中、エンリ王子は「忘れてくれ」



「ところで、そのムインド王子・・・・」

そうエンリが言いかけると、カルロが「王子・・・って、王の子というより、甥ですけどね」

「殺せないって言ってたよね?」とエンリ。

タマが「不死身って事?」

リラが「トルコに居たワグネルさんみたいな?」

エンリが「つまりアンデッドって事か?」


エンリは少し考えると「違うと思う。赤ん坊の頃からって言ってたから」

「特別な加護でもあるのかな?」とファフ。

「実は異世界転生者でチートなスキルを持ってて」とカルロ。

「考えるだけで目の前の敵を殺せるとか、元居た世界と通信販売で繋がって何でも買えるとか」とリラ。

「スマホという便利な異世界の魔道具を持ってるとか」とタマ。

エンリは残念顔で「それ、不死身と関係無いから」

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