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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
403/513

第403話 南方の軍団

南方大陸でイギリス東インド会社から鉄砲を輸入して征服戦争を続けるガナルガ帝国と、彼等から奴隷を輸入するイギリス東インド会社。

エンリ王子とその部下たちは、これを妨害して奴隷取引を阻止すべく、イギリスのザンジ植民都市から出港した奴隷船を拿捕。

そしてイギリスから鉄砲を積んでこの地に向かうドレイク号を、奇策を以て撃沈し、輸送中の鉄砲を海に沈めた。



タルタ号がコンゴの港に帰還した。


「どうでした?」

そう言ってエンリたちを迎える、コンゴ市長と現地人難民たち。

「鉄砲は撃沈したドレイク号と一緒に海の底だ。奴らはもう鉄砲は手に入らない」

そうエンリが言うと、難民たちは喜び声で口々に言った。

「それじゃ、戦争が終わる」

「村に帰れる」

「そう簡単に行けばいいんですが」と一抹の不安を訴えるアーサー。


するとカルロが「明日には、ガナルガの将軍が軍を率いて、鉄砲を受け取りに来ますよ」

ニケが「ザンジの奴ら、どう言い繕うつもりかしら?」

「それじゃ、契約不履行で相手が怒って取引を切るって事に・・・」と言ってワクワク顔の現地人たち。

「そううまく行けばいいんですが」と一抹の不安を訴えるアーサー。

するとエンリが「行かぬなら、行かせてやろう、ホトトギスだ。俺たちで引っ掻き回して決裂させてやろうよ」



その夜、ザンジの港で・・・・・。


港の岸壁で海面を見守る、ドレイクとその部下たちが居た。

ドレイクの部下の魔導士が「来ました」

海中から巨大な触手が姿を現す。彼が操るクラーケンだ。

二本の触手が持つ大型の木製コンテナが、海面から姿を現し、そのまま岸壁の上に。


東インド会社の社員たちがコンテナを開けて中身を確認。

そして、彼等の上司の支部長に報告する。

「防水処置のおかげで、中の鉄砲は無事です」


ドレイクは、込み上げる笑いを堪えながら言った。

「明日この荷物を引き渡せば取引完了だな。エンリ王子の奴、俺たちの取引を妨害して奴隷貿易を潰すつもりだったんだろうが、生憎だったな。地団太踏む奴の顔が目に浮かぶ。ザマー見ろだ」



翌朝、ガナルガの軍団がザンジに到着した。

防壁に囲まれた植民市の城門前に陣を張り、将軍が護衛の一隊を率いて植民市に入る。

広場で彼等と向き合う、植民市側の一団。

イギリス東インド会社ショーバイムス南方大陸支部長とその部下たち。そしてドレイク提督とその部下たち。


取引を遠巻きにする野次馬たちに混じって、一般人を装って潜入したエンリ王子と部下たちが居た。

植民市側に見覚えのある顔があった。

その男を見て、タルタが「あれ、ポックリ男爵じゃん」

「イギリスの奴隷取引の手引きなんてやってたのかよ」とエンリ唖然。


そんなエンリたちを他所に、商談が始まる。

ガナルガの将軍が支部長と握手を交わし、そして言った。

「対価の奴隷は先日引き渡したもので最後だった筈ですね?」

「承知しております」と支部長。

「聞く所によると、輸送船を襲撃されて積荷を奪われたとか。これはそちらの落ち度だと思うのですが」

そう将軍が言うと、支部長は「問題ありません。損失はこちらで引き受けます、今後も取引を継続する中で、補っていきたい」

「それで、今回受け取る商品ですが・・・・・」


コンテナが運ばれて来るのを見て、エンリたち唖然。

「あれって海に沈んだ筈じゃ・・・・・」

そうニケが悔しそうに言うと、アーサーが「クラーケンで回収したんだ」

「そんな・・・・・・」

「詰めが甘かったですね」とカルロ。

「だったらプランBだ。俺たちで引っ掻き回して取引を潰してやろうぜ」

そう言って飛び出そうとするタルタを、エンリが制した。

「いや、ちょっと待て」



コンテナから出された鉄砲を前に、将軍は言った。

「それはイミテーションですね」


ショーバイムス支部長、唖然顔で「何ですと?」

「鉄砲の輸送船も襲撃され、積荷は海に沈んだと聞きます。それは急ごしらえの模造品ですね」

そう将軍が言うと、支部長は鉄砲を手に執り、「違います。沈んだものを回収したんです。この通り海水に浸かってもいない新品ですよ」

だが、将軍は「引き金を引くと銃口に火がついて煙草を吸う時に使うライターでしょう。詐欺行為により取引は不成立。この都市を略奪しての強制取り立てに移行させて頂く」


将軍の合図で護衛隊が一斉に槍を構える。


「ちょっと待ってくれ」

そう慌て声で将軍を説得しようとする支部長に、ドレイクは言った。

「無駄ですよ。こいつら、最初から取引を成立させるつもりなんて無かったんだ。最後の商品を手に入れたら、俺たちを追い出すつもりだったんですよ」

そしてドレイクはガナルガの将軍に言い放つ。

「大英帝国を甘く見たな。この大海賊ドレイクがこの場に居たのが運の尽きだ。生きてこの町から出られると思うな!」



広場では乱戦が始まり、正門前に居る本隊に向けて太鼓で合図。正門前のガナルガ軍が突入を開始する。

乱戦の中で、広場に居る護衛隊の呪術師が呪文を唱え、ドラゴンが舞い降りて炎を吐く。

ドレイクが大剣を一振りし、その衝撃波でドラゴンの炎を斬り散らすと、ドラゴンに向けて特攻し、その片足を断ち切った。

ドラゴンは尻尾で鉄砲のコンテナを絡め取ると、翼を広げて飛び去る。

ドレイクの部下たちは護衛隊の兵を次々に切り伏せ、ドレイクは将軍の首を刎ねた。



そんな様子を外野で見物するエンリたち。

「奴ら、返り討ちにされちゃいましたよ」

そう残念そうにカルロが言うと、エンリは「いや、ここの奴らは捨て駒だ。本隊は外から門を破って、ここの住民を皆殺しにする気だろうな」


その時、支部長の部下が知らせに来た。

「外のガナルガ本隊に正門を破られました。市民兵が抵抗していますが、保ちそうにありません」

「だから配下の海賊団を動員しようと・・・」

そうドレイクの部下が提督に言うと、ドレイク提督は「あのエンリ王子相手に毎度足手纏いだったろーが。現地兵なんぞ俺たちが蹴散らしてやる」

だが、知らせに来た支部長の部下は「数が多いです。あちこちに分散している住民を守りきれません」



そんな中、エンリが部下たちを率いて進み出る。

そしてドレイクに「お困りのようですね」

ドレイク唖然。

そしてブチ切れ状態な鬼の形相で「エンリ王子! ここで会ったが百年目・・・」

そんな彼の台詞を遮るように、エンリは「手を貸そうかと言ってるんですが」

「何だと?」


再び唖然顔のドレイクに、ニケが横から「報酬は金貨三百枚で」

「違うから」

そう迷惑顔でニケを一喝するエンリに、彼女は「何でよ、私のお金ーーーー」


そんなエンリにドレイクは、疑い顔で「まさか人命のためとか、って話じゃないよな?」

エンリは言った。

「じゃなくて、彼等はユーロ人をこの大陸から駆逐する気です。ここが落ちれば、我々のコンゴの街も危ない」

ドレイクは「いいだろう。だが、奴らは万単位の鉄砲を持った大軍だ。我々だけでは手が足りない。この街を放棄する。住民を退避させるのに協力してくれ」



エンリは号令。

「ファフ、とりあえず正門前で暴れてるドラゴンの相手をしてくれ」

「了解。けど主様、ドラゴンは三頭居るよ」

そうファフが言うと、リラが「私がウォータードラゴンで出ます。けど、もう一頭は?」

「私が・・・・・」とアーサー。


タルタが「クラーケンが居るよね?」

「あいつは水から離れられん」とドレイクは残念そうに・・・。

「どーすんだ、これ」

そうエンリたちが言うと、アーサーが「あの、私が・・・・・」


「フェリペ皇子の所のアラストールを呼びますか?」

そうカルロが言うと、エンリは「間に合う訳無いだろ」

アーサーが「あの・・・」


ファフが「カブ君はドラゴンに変身できるよ」

「もっと間に合う訳無い」とエンリが突っ込む。

アーサーが「あの・・・、私もウォータードラゴンを召喚出来ますけど」

「そーだった」と全員声を揃える、が・・・・・。

「けど弱いよね」

そうジロキチが指摘し、アーサーは落ち込む。


そんなアーサーにドレイクは「一頭を海に誘導してくれ。そこにクラーケンが待ち構えて、海に引きずり込む」

「それで行こう。とりあえず分散してる敵兵対策だ」とエンリ王子。



エンリ王子たちはファフのドラゴンの背に乗って街の上空へ。

分散してあちこちで侵入したガナルガ軍に、市民兵が押しまくられている。

ジロキチが、タルタが、カルロが、ムラマサの妖刀を持つ若狭が、あちこちで戦っている場に飛び降りて敵を斬りまくり、その勢いを断ち切る。


街中で暴れているドラゴンが三頭。

手筈通りに一頭はファフが、転送した剣と楯を持って立ち向かう。

一頭はリラのウォータードラゴンが立ち向かい、頭上でエンリが炎の巨人剣で敵に斬り付ける。

アーサーのウォータードラゴンは、敵ドラゴンの吐く炎に押されながら海辺へと誘導。

海岸に到達すると、海中から伸ばした何本もの巨大なクラーケンの触手が、ガナルガのドラゴンを捉えた。


ニケはドレイクの部下たちとともに、港を目指す敵本体の前に立つ。

「市民たちが船に乗って脱出するまで、ここを保もたせるぞ」と、ドレイクは部下たちに激を飛ばす。

ニケの射撃の援護の元で、押し寄せるガナルガ兵を相手に奮戦するドレイク海賊団。

その間にイギリス人たちを乗せて次々に港を離れるイギリス商船。


街に火の手が上がる中、岸壁が空になっていく港を見て、ニケが「あの船が最後ね」

ドレイクも押し寄せるガナルガ兵を大剣を振るって薙ぎ倒しながら、部下たちに号令。

「脱出が完了したら、俺たちも脱出するぞ」

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