表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
398/562

第398話 六つ墓のダンジョン

ポルタ大学に留学したフェリペ皇子ら七人が入団した探偵団に舞い込んだ依頼。

落ち騎士の祟りの伝説を伝える六つ墓村に住むカチュアと、その兄トニオが巻き込まれた遺産相続問題を巡り、遂に三人目の犠牲者。

トニオを犯人と疑うエイセルに、金田は実はそのエイセルこそ本当のトニオの父親であった事を指摘し、二人を和解させた。

だが、村人たちはトニオを犯人と疑い、フェンリル館は彼等の襲撃を受けた。

アラストールのドラゴンで館を脱出した探偵団は、トニオたちと共に、カチュアの提案で、怨霊の化身が棲むという六つ墓の洞窟に向かった。



洞窟の前に降り立ったアラストールの背中から降りる、探偵団のメンバーたち。そしてトニオ、カチュア、エイセル。

魔物を警戒しながら洞窟に入る。


「普通に洞窟だね」

洞窟の中を歩きながら、チャンダがそう言うと、カチュアは「この奥に落ち騎士たちの墓がある筈です。そして彼等の財宝も・・・」

金田は「村人たちは一旦、彼等を受け入れたんだよね? けど、騎士たちが持つ財宝に目がくらみ、彼等を殺したと・・・」

「十七代まで祟って子孫を根絶やしにする、って言ったそうです。そしてトニオでその十七代目なんです」とカチュア。


「けどさ、財宝に目がくらんだ・・・って事は、財宝はみんな持ち出されたんじゃ・・・」

そうマゼランが言うと、カチュアは立ち止まって暫し沈黙。

そして「・・・どうなんでしょうか?」

「いや、俺たちに聞かれても」と困り顔で言うマゼラン。


残念な空気が漂うなか、カチュアが未練っぽい声で「財宝に呪いがかかってる事を恐れて、それを持ち出すのを躊躇ったという可能性も・・・」

チャンダが「呪いが怖くて宝探しが出来るか!」

「そうだよね。僕たちは海賊で、宝探しは海賊のロマンだ」とマゼランも・・・。

シャナが「ジパングに徳川の埋蔵金という話があるぞ。何人もの人が全財産をかけて財宝を探したそうだ」

「それはただの馬鹿ってだけなんじゃ?・・・」とライナが残念声で突っ込む。



その時、金田が警戒の声を上げた。

「何か来る」

正面から多数のゴブリンと、背後から数匹のワーム。

フェリペの仮面分身で出現した、宙を舞う幾つもの仮面が、ゴブリンの群れを攪乱。

そこにマゼランとチャンダが剣を振るって切り込む間に、ライナ達が呪文を詠唱し、炎の波濤で焼く。

シャナが灼熱の衝撃波でワームを薙ぎ払う。

「ざっとこんなもんさ」

そうマゼランが言うと、金田が「奥にはもっと強い魔物が居ると思う」



広い所に出ると、コボルトの群れが襲ってきた。

ラミアとミノタウロスも居る。


ラミアが放つ魔法攻撃にリンナが妨害魔法をかけ、チャンダが切り伏せる。

ミノタウロスにはシャナが灼熱の刀で立ち向かう。

ライナとルナがコボルトたちに氷の散弾を浴びせ、フェリペが操る幾つもの鉄の仮面が抑え込む中、マゼランが駆けまわって切り伏せる。

その脇をすり抜けて襲ってきたコボルトは金田が剣を抜いて切り伏せた。


「金田先輩も、やりますね」

そうチャンダが言うと、金田は「一応、忍者なんでね」

「けど、変だと思いませんか? 怨霊の化身とか言ってるけど、普通のダンジョンに居るモンスターですよね?」

そうルナが言うと、チャンダが「魔物ってそういうものだろ」

「けど、怨霊って本来ゴースト系だから、それ自体は闇系ですよ。ここ、闇系のモンスターが居ない」と、ルナが指摘する。



更に広い通路に出る。

しばらく歩くと、横道がある。

シャナが立ち止まり、「正面からデカいのが来る」

金田が「横道からも来ます」


正面からコカトリスとオークの群れ。その背後に一体の地龍。

横道からはケルベロスとキメラ、そしてリザードマンが多数。


マゼランが言った。

「各個撃破で行こう。しばらく横道を塞いでくれ。アラストール、正面のデカ物を抑えてくれ。コカトリスの石化光線は厄介だ。優先的に叩こう」

シャナのペンダントがドラゴンに変身し、地龍と格闘。

ライナとリンナが魔法防壁で横道を塞いでケルベロスたちを抑えている間、宙を舞う多数の仮面がコカトリスの注意を引き、シャナの灼熱の衝撃波が叩き落とす。

その間にマゼランとチャンダ、そして金田が剣を振るってオークの群れを押さえる。ルナが攻撃魔法で、エイセルが治癒魔法で彼等を支援。


オークを殲滅すると、ライナたちが魔法防壁を解いた横道に突入。

三人の女の子が放つ攻撃魔法を背にマゼランがケルベロスを、チャンダがキメラを、リザードマンたちをシャナの灼熱の衝撃波が切り伏せる。

残っている敵を全員で殲滅した頃には、アラストールも既に地龍に止めを刺していた。



地龍の遺体の向うに、六つの墓石のようなものがある。

トニオとエイセルが「あれが六つ墓かぁ」

「財宝もここにあるんですよね?」とカチュア。


墓石のようなものが並ぶ前に、鎧を着て石に座った何者かの姿があった。

剣に手をかけて身構えながら、恐る恐る近づくマゼランたち。

「死んでますね」

そうマゼランが言うと、チャンダが「落ち騎士の鎧かな?」

ライナが「もしかして、十年前に32人を殺して行方不明になったゴンザさん?」


「落ち騎士に憑りつかれて、こんな姿で息絶えるなんて」

そう言って十字を切るエイセルに、マゼランは「けどこれ、蝋人形みたいですよ」

「屍蝋ですよ。人間の体に含まれる脂肪分が変質して、蝋の成分になるんです」とエイセルが解説。

そして「重罪人とはいえ、死ねば仏。運び出して弔ってあげましょう」


遠巻きにするマゼランたち。

「お前行けよ」とマゼランがチャンダに・・・。

チャンダが「いや、お前が・・・・・」

マゼランが「だって死体だぞ」

「本当にそうかな?」

そう言って、金田はつかつかとその前まで来ると、剣を抜いて腿の部分を切断。

エイセル、慌て声で「何をするんですか!」



金田は切断した足の切り口を示し、そして言った。

「見て下さい。骨がありません。脂肪分が蝋化したとしても、骨は残る。それが無いという事は、これは死体ではなく、ただの蝋人形ですよ」

全員唖然。


「つまり、この鎧を着せるマネキン役?」

そうチャンダが言うと、明智が「じゃ、この鎧って・・・・・」

金田は「奉納物ですよ。ここに並んでいるのは、墓石ではなく小型のオベリスクです。これは魔物封じの結界施設ですよ。魔物がこのダンジョンから出ないようにする結界を作るためのね」


「じゃ、六つ墓の落ち騎士の祟りって・・・」

そうエイセルが言うと、金田は解説した。

「ただの伝説です。近くの町の図書館で調べたら、数百年前にはここにダンジョンがあって、多くの冒険者の魔物狩りで賑わっていたそうです。それがレコンキスタが激しくなり、冒険者は戦争に駆り出されて魔物狩りに来なくなった。それで魔物が溢れ出したため、魔物封じの結界を張ったんです。そして、その意味を知らない村人たちが、守り神として祀って奉納品を供えた。そして、それが何なのかを空想する中からあの伝説が産まれたんですね」


「それじゃ、祟りって嘘?」とトニオ唖然。

「母さんは何のためにあんな大金を・・・・」とカチュア唖然。

「大金って?」

そうフェリペが言うと、金田は「お布施ですね。祟りだと脅されて」

「脅されたって誰に?」とトニオ。

「ババアムーンですよ。彼女はあちこちでカルト詐欺を働く犯罪者です」と金田。

「あのインチキ呪い師!」と憤懣顔のエイセル。


「それじゃ、僕が来ると祟られると言ったのって・・・」

そうトニオが言うと、金田は「我々が詐欺を暴く事を恐れたんでしょうね」

カチュアは「金田さんは知っていたのですか?」

「あなたの母親の部屋に壺がありましたよね? その中にこんなものが・・・」

そう言って金田は二枚の書類を出した。

そして一枚目を示して「こっちは贖宥状の一種です。先祖が落ち騎士を殺した罪が、これで赦されるって趣旨の・・・」

二枚目を示して「こっちは領収書です。金貨300枚って・・・・」



カチュアは溜息をつき、そして言った。

「家にはもうお金は残っていません。母は全ての財産をお布施として差し出しました」

「それで俺たちを呼んで財宝探しで家を立て直そうと?」とマゼランが溜息。

「そんな事のために僕の所に?」

そうトニオが言うと、カチュアは顔を真っ赤に語気強く「違います!」


全員が沈黙する中、暫しカチュアは目を伏せる。

そして再び視線を上げると、トニオを見つめ、そして言った。

「私、トニオが好きなんです。けど、兄弟だから結婚出来ないと思ってた。だけど、あの離れで額縁の絵の裏から出て来た絵を見て、エイセルさんがトニオの本当の父親で、私はトニオとは血は繋がっていないと知って。私たち、結婚出来るんです。私、あなたが好き」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ