表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
397/562

第397話 殺人の連続

留学生としてポルタ大学に入学したフェリペ皇子たち七人が、サークル活動として探偵団に入部した。

そして依頼者として現れたトニオとカチュア。

彼等の地元の六つ墓村に伝わる伝説の六人の落ち騎士の祟りの噂と、その陰に蠢く遺産相続問題。

そして事件は起こり、依頼者の叔父トリスが毒殺された。



騒ぎがおさまると、探偵団の面々はフェンリル邸で寝泊まりする部屋を割り当てられた。

カチュアの案内で館の中を見分する探偵団の面々。


急死した正妻の部屋に入ると、幾つもの壺が並んでいる。

「多分、母の骨董趣味ですね。とても高価で大事なものだと聞いています」

そう説明するカチュアの話を聞き、金田は「高価・・・ねぇ」


かつて幼いトニオと彼の母が住んでいた離れに入る。

家具の少ない簡素な部屋。額縁に収めた風景画が飾られている。



その夜から、探偵団の面々はフェンリル家の館に寝泊まりする。

翌日、金田は調べ物があると言って村役場に行き、その後、さらに図書館で調べ物をした。

そして他のメンバーは、居間でだらたらしながら雑談。


「ここって、やっぱり妙な何かが憑りついているのかな?」

そうルナが言うと、マゼランは「例の怨霊って奴?」

「夜中に変な声が聞こえるんです。しわがれた男性の声で、一枚、二枚・・・って」

「お菊さんかよ」とチャンダが突っ込む。


だが、同様な事を他のメンバーも言い出した。

ライナが「私は一本、二本って・・・」

リンナが「私は一匹、二匹・・・」

「何だろう。やっぱり六つ墓の悪霊なのかな?」

そう怯え声で言うと、フェリペはマゼランの上着の裾を掴んだ。



翌日、買い物に出たカチュアが、人通りの無い通路に出ようとした時、怪しげな鳥打ち帽を被った小柄な人物が、周囲を警戒しながら小道に入って行くのを見た。

彼女は脳内で呟く。

(あの先はババアムーンさんの庵)


胸騒ぎを感じた彼女は、小道に入って小走りに先を急ぐ。

小さな庵に着くと、彼女は、その戸口が開いている事に気付く。

異様な気配を感じて中に入ると、仰向けに倒れて死んでいるババアムーンが居た。



警察に通報し、現場検証。

探偵団の面々が駆け付け、図書館から知らせを聞いて金田も駆け付けた。

「どうやら、無理やり毒を飲まされて殺されたようですね」

そんな刑事の見解を聞きつつ、金田は現場を観察。


その時、フェリペは部屋の隅で小さな紙切れを見つけた。

紙切れに何か書かれている。

曰く「弟、尼、医者、娘」


「何でしょうか?」

そう言って首を傾げるライナに、フェリペは「暗号だよ。悪の秘密結社が送り込んだスパイと連絡したんだ」

「けど、どういう意味?」とリンナが呟く。


弟と尼に赤線が引かれている。

「誰かの事を指しているのかな?」

そうマゼランが言うと、金田が「殺されたトリスさんって当主の弟だよね?」

リンナが「尼って誰?」

「ババアムーンさんの事じゃ無いの?」とチャンダ。


明智が「すると赤線は殺した人につけた・・・。つまり殺人計画?」

「すると残りは医者と娘か?」とシャナ。

「医者はクーノさんだよね?」とルナ。

金田は言った。

「次は彼が殺されるって事か? 彼の身の安全の確保が必要だ」



クーノの診療所へ行くと、本人は不在で看護婦が居た。

クーノについて尋ねると「先生は先ほどから外出中で、往診に行くと言ってました」

「行き先は?」

そう金田が訊ねると、看護婦は「聞いてませんけど」


村人たちに事情を話し、クーノを捜索する。

村外れに向かう道ばたで鳥打帽が発見された。

その帽子をカチュアに見せると、彼女は「通りで見かけた人がかぶっていた帽子です」


看護婦に見せると「これ、先生の帽子ですよ」

「じゃクーノ医師が犯人?」

そうトニオが戸惑い声で言うと、マゼランが「とにかく、その道の先に居るんだ」


だが、「行かなきゃ駄目ですか?」と言って尻込みする村人たち。

「何かあるんですか?」と金田が問う。

村人の一人が「あの先は六つ墓の洞窟があるんです。怨霊の化身が出る怖い所でして」

「それで人が近づかないから、犯人の隠れ家になっているという事なのかも」と明智部長。



洞窟へ向かう村人と探偵団。


洞窟に着くと、その入口でクーノは死んでいた。

マゼランは毒物診断の魔道具を使ってクーノを診断。

「同じ毒で殺されていますね」


金田は遺体の脇の紙切れを見つける。

ババアムーンの庵で見つけたものと同じ文字が書かれ、新しく医者と書いた上に赤線。



村人たちは噂した。

「クーノ先生は最初の殺人で毒殺を否定したよね? それって犯人から脅されてたんじゃ無いのか?」

「じゃ、口封じ?」

「トリスさんは相続の邪魔だから殺された」

「ババアムーンは?」

「あれは・・・どうでもいいや」

「とにかくトニオが怪しい。彼は当主の子じゃない。それを指摘しそうな人を次々に殺す気だ」



フェンリル家の館では・・・。

居間に集まった探偵団の面々が、事件についてあれこれ・・・。

「次は娘・・・って事だよね?」

そう明智が言うと、チャンダが「けど、娘って誰だ?」

「ってか、誰の娘?」とリンナが・・・。


「それはミーオさんですね」

そう言って入って来たのはエイセル司祭だ。

「トニオさん、あなたにこれ以上罪を重ねさせる訳にはいかない。あなたは既にトリスさんを殺している。次はその娘のミーオさんを・・・」

そう言ってトニオに厳しい視線を向けるエイセルに、金田は言った。

「いえ、娘というのはカチュアさんですよ」


「何を根拠に?・・・」

そう言って詰め寄るエイセルに、金田は「弟と書かれていたのは当主の弟だった。なら、同じ当主の娘であるカチュアさんと考えるのが順当です」

「では、ミーオさんが犯人だとでも? 彼女は優しい女性です。幼い頃は体が弱くて、傷ついた人を助けたいと治癒の魔法を習得した」

そう主張するエイセルに、トニオは「だからって何故僕を? そんなに僕が憎いですか?」



金田はエイセルに視線を向け、そして言った。

「ではなく、彼が自分の本当の息子だから・・・ですよね?」

「金田一さん」

そう驚き顔で声を上げるエイセルに、彼は「金田です。彼が昔、母親と住んでいた離れに、額縁入りの風景画があった。その裏に重ねてあったのが、これです」


金田が示したのは、男性と女性が寄り添う肖像画。

それを見て、トニオは「母さん・・・・・」と呟く。

「そう。この女性はトニオの母親のローレさん。そして男性はあなただ」

そう言って金田がエイセルを指すと、トニオは「あなたが僕の本当の父さん・・・」


エイセルは語った。

「私はとても悪い予感がしていたんです。デジャブ―っていう奴ですか。今回の事件の成り行きが、何か心の中に引っかかっていて、既に知っているような。多分、これを計画し実行した人物の意識が、特別な繋がりで私の意識に伝えているのだと・・・」

「けど、断じて僕じゃない!」

そうトニオが言うと、金田も「それは僕たちが保障しますよ」

エイセルは「解った。信じよう」



その時、カチュアが血相を変えて居間に駆け込んだ。

「大変です。外で村の人たちが・・・」


二階の窓から外を見ると、村人たちが、手に手に鍬や鎌を持って屋敷を取り囲み、塀の外で口々に叫んでいる。

「トニオが犯人だ」

「フェンリル家の財産を狙って人殺しを・・・」

「簀巻きにして川に沈めてやる」


カチュアは怯えきった声で「簀巻きって何ですか?」

「とても怖いリンチですよ」

そう金田が言うと、カチュアは「トイレで上から水が降って来たりとか、靴に画鋲とか・・・・」

金田は残念声で「いや、中学生のイジメじゃないんだから」


「とにかく突破しよう」とマゼランが言い、チャンダとシャナに目配せ。

剣を抜く三人の従者を、金田が制した。

「殺すのはマズいですよ」

「嶺打ちで気絶させるさ」

そうシャナが言うと、チャンダは困り顔になって「けど、シャナの刀は嶺打ちでも焼け死ぬからなぁ」



そんな事を言っている間に、村人たちは門を破って屋敷の庭になだれ込んできた。

マゼランは光魔法の目晦ましを放ち、その場にいた探偵団の面々は、トニオやカチュア、エイセルとともに、ドラゴンに変身したアラストールの背に乗って空へと脱出。



村の上空を飛ぶアラストールの背の上で、マゼランは言った。

「これからどうする?」

カチュアが「六つ墓の洞窟に行きましょう。怨霊の化身を恐れて中までは追ってきません」

「けど、僕たちが襲われるよね?」とトニオ。

チャンダが「どうせモンスターみたいなものだろ。いつもの事さ」

カチュアが言った。

「それに、あそこに手掛かりがあるような気がするんです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ