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人魚姫とお魚王子  作者: 只野透四郎
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第391話 学園の皇子

フェリペ皇子が父親を真似て立ち上げた彼自身の海賊団で魔導士として活躍する三人の元女官見習いに、ポルタ大学魔法学部への留学話をもたらしたエンリ王子。

この話を本人たちに持ち込むと、スパニアの貴族学校に入学する予定だった皇子の三人の従者と、そして家庭教師から「もう教える事は無い」と言われたフェリペ皇子自身も、なし崩し的に同じ大学で学ぶ事になった。

関係者と話をつけ、大学の手続きを終え、彼等のポルタ大学への入学が決まる。



ポルタへ向かうフェリペたちの出発の日。

宮殿では、イザベラ女帝が母親として、馬車で出立するフェリペを見送る。

「寂しくなるわね」

そう言うイザベラに、フェリペは「ポルタに行ったら、父上にいっぱい遊んでもらうんです」

「いや、お前は勉強しに行くんだが」と困り顔で言うエンリ王子。


フェリペの将来の妃候補の幼い令嬢たちも、彼を見送る。

フェリペと同年代の三人の女の子が、別れを惜しんであれこれ言う。

「フェリペ様、行っちゃうんですか?」

「お手紙書きますね」

「私のこと、忘れないで下さいね」


見送りに来た貴族令嬢たちの相手を終え、馬車に乗り込むフェリペ皇子。

父親としてのエンリとリラと何故かついて来たニケ、そしてフェリペお付きの女官であるルナと従者としてのマゼランが、ともに馬車に乗り込む。

「では母上、行ってきます」

そう言って手を振るフェリペに、イザベラは「ハンカチ持った? チリ紙持った?」

そんな彼女にエンリは「子供を遠足に送り出す母親みたいになってるぞ」



宮殿を出てマゼラン海賊団の面々と合流。

残りの従者と元女官見習いを乗せて、馬車は港に向かう。

「それでヤンとマーモは?」

そうエンリが問うと、フェリペは「連れて行きます。向うでも海賊団として活動したいので」

「学業に支障の無い範囲にしとけよ」と釘を刺すエンリ。

ニケが、下心丸出し顔で「ヤマトさんも連れて行くのよね?」

「僕たちの船ですから」とフェリペ。

「機械技師や医師の仕事は、私が世話してあげるわ。山ほど資格を持ってるヤマトさんは、派遣業務でお金ガッポガッポ」

そうニケが言うと、エンリは困り顔で「ニケさん、ピンハネする気だろ」


港でヤン・マーモ・ヤマトと合流し、全員でヤマト号に乗ってポルタの港へ向かう。



ポルタの城下で、エンリの他の部下たちも合流。


フェリペの部下たちが寝泊まりする宿舎を手配し、官舎の一つが宛がわれた。

ポルタ城の担当事務局で手続きを終え、鍵を渡され、支給された官舎へ。

荷物を運び込み、居間でお茶を飲んで一息つく。


「それで結局、ここに住むのは誰と誰になるんだ?」

そうエンリが言うと、ヤマトは「私は船に寝泊まりします。メンテナンスがありますから」

「フェリペ様は宮殿に?」

そうルナが言うと、エンリは「当然だ。俺の息子だからな」

「今日からリラ姉様と川の字だぁ」とはしゃぐフェリペ。


するとシャナが「六歳なら庶民でも子供部屋くらいあるけどな」

「子供部屋というのは、婿に行きそびれたオッサンが住むという、あの子供部屋でござるか?」

そうムラマサが言うと、彼以外の男性陣が声を揃えて「そういう差別用語は要らないから」

残念な空気の中、タルタが「俺たち、何の話してるんだっけ?」

「フェリペ皇子の川の字だろ?」とジロキチ。

「スパニアの宮殿で自分一人の寝所は寂しかったですか?」

そうリラに言われて、フェリペが「そそそそそんな事無いもん」


「ところで、ルナはどうするの?」

そうライナが言うと、ルナは「私、今でもフェリペ様付の女官ですから、宮殿でのお世話を続けたいです」

マゼランが人数を数える。

そして「すると官舎は七人?」

ヤンとマーモが「俺たちは嫁が居るので、自分でアパートを探して、落ち着いたらあいつ等を呼びますよ」



住居の問題が片付くと、ポルタ大学で入学手続き。

そして彼等は新入生として担任に紹介され、クラスメートたちに迎えられた。

人文学部にフェリペ・マゼラン・チャンダ・シャナが・・・。

魔法学部にライナ・リンナ・ルナ。



人文学部では、幼い皇太子のフェリペに女子生徒の注目が集まった。

マゼランとチャンダも、お零れで女子達に大人気。


フェリペを囲んで、クラスの女の子たちがあれこれ言う。

「フェリペ君ってまだ六歳なのよね?」

「えー、ウッソー」

「信じらんなーい」

そんな彼女達の発言を聞いて、フェリペは隣に居るマゼランに「ねぇ、マゼラン。僕たち、嘘つきだと思われてるのかな?」

マゼランは苦笑しつつ「あれはただの慣用表現ですから、気にしなくてもいいと思います」



その時、いかにもな金髪縦ロールのお嬢様スタイルな女子が、三人の取り巻きを従えて・・・・。

「クラスメートの皆さん、御機嫌よう」

女子達が振り向き、畏敬の念を込めて「ロゼ様・・・」


周囲に居る男子たちは「ロゼさん、今日も遅刻?」

ロゼと呼ばれた金髪縦ロール女子は、少々むっとした声で「失礼ですわね。家庭の事情ですわ」

「ハイハイ、公爵家はいろいろあるんだよね?」

そう男子の一人が言うと、彼女の取り巻きの一人が「そうですわよ。主役は遅れて登場するんだから」

取り巻きのもう一人も「十分な睡眠は美容に必須だと、セレブ姉妹のカノウさんも言ってたじゃないですか」

「要するに寝坊かよ」と、あきれ顔の男子たち。


ロゼはフェリペの周囲で盛り上がっていた女子達に「それであなた達、何の騒ぎかしら?」

「この人って?・・・」

そうフェリペが周囲の女子たちに訊ねると、女子の一人が「グロッキー公爵家の令嬢ですよ」

取り巻きの一人が「成績トップでスポーツ万能。剣と魔法の才能もぴか一のクラス委員長」

取り巻きのもう一人が「みんなの憧れの的」

「それほどでもありますけど。ほーっほっほっほ」と高笑いするロゼ本人。


一方で男子たちは、遠巻き状態で好き勝手言う。

「これで性格が良ければ・・・」

「プライドの化物」

「いろいろ残念」

ロゼ、そんな男子たちを凄い目で睨むと「何か言ったかしら?」


そんなロゼに、女子学生の一人がフェリペを示して「見て下さい、この子、留学生のフェリペ様ですよ」

「こんにちは、ロゼ嬢」

そう挨拶するフェリペに、ロゼは思わず口元を緩めて「何て可愛らしい。あなた年、幾つ?」

「六歳です」

「この歳で大学なんて」

そうロゼが言うと、外野の男子学生の一人が「まあ、小学校とか無い時代設定だからなぁ」

もう一人の男子が「それは言わない約束だろ」と突っ込む。


「家庭教師から、もう教える事は何も無いと言われて、ここに来たんです」

フェリペがそう言うと、周囲の女子たちが口々に言う。

「つまり天才?」

「ウッソー」

「マジ信じらんなーい」

そんな彼女達の発言を聞いて、フェリペは隣に居るマゼランに「ねぇ、マゼラン、僕たち嘘つきだと思われてるのかな?」

マゼランは困り顔で「だから、あれはただの慣用表現ですから」



「けどマゼラン。このおばさん、何だかすごく偉そう」

そうフェリペが言うと、周囲の女子の一人が「そりゃ、このクラスのクィーンですから」

「つまり女王?・・・って、どこの国の?」

そうフェリペが言うと、先ほどの女子が「だからこのクラスの・・・」

「このクラスって独立国だっけ?」と怪訝顔のフェリペ。

マゼランが「ポルタ王国の王立大学なんだけど」

傍に居たチャンダが「ああいう事じゃないかと。ジパングの小さな農村が独立宣言したという話があって、確か国名がキリキリ国とか」


「父上が言ってた。どんなに小さな国でも、大国と立場は対等だって」

フェリペはそう言うと、ロゼに握手の手を差し出して「よろしくね。同じ国を率いる者として、仲良くしようね」

ロゼは反射的にその手を握ると、怪訝顔で「国を率いるって?」

一人の女子学生がロゼに「彼はスパニア皇太子、フェリペ殿下ですよ」

「な・・・」


ロゼ唖然。

彼女の取り巻きの一人が「だからこの歳で飛び級大学生になっちゃう天才児」

そしてロゼも「やっぱり大国スパニアの皇帝。血筋が違うんですのね。しかも母親があのイザベラ女帝。陰謀の女神の二つ名を持つ・・・」

「それ、怖過ぎなんだが」と、外野の男子生徒の一人。

そしてロゼは言った。

「それに引き換え我がポルタは、王太子があのエンリ殿下」

彼女の取り巻きたちも、口々に「変態お魚王子ですものね」

「部下がチャラ男に銭ゲバ女」

「まるで月とスッポン」


そんな彼女達の発言を聞いて、フェリペは憮然とした顔で「マゼラン、僕このオバサン嫌いだ」

ロゼは慌てて「あの・・・、わたくし、何か殿下のお気に障る事を・・・」

うろたえ気味のロゼに、女子生徒の一人が耳打ち。

「あの、ロゼさん。イザベラ女帝の夫君が、そのエンリ殿下でフェリペ殿下の父君」

「・・・・・・」

唖然顔のロゼに、先ほどの女子生徒が「もしかして知らなかった?」



ロゼ、まさかの権力者御子息の出現で、一転して御機嫌伺い顔でお世辞を並べる。

「まままままぁ、エンリ殿下は王子自ら海賊団を率いて世界の航路を開いた英雄ですし」

彼女の取り巻きの一人も「スパニア内戦を指揮して世界を相手に勝ち抜いた天才軍師ですものね」

もう一人の取り巻きも「それに大海賊バスコの世界地図を発見した海賊王」

「そそそそうですわね」


フェリペは機嫌を直し、そして「そして極めつけ、初代闇のヒーロー、ロキ仮面!」

変身ポーズをとってロキの仮面をつけるフェリペ。

クラスメートたち唖然。

そんな彼らを他所に、ノリノリなフェリペは、唖然顔のロゼに「ロゼおばさんもやろうよ」

ロゼ、困り顔で「仮面がありませんが」

フェリペは仮面分身でもう一つの仮面を出して、ロゼに・・・。



ノリノリでヒーローごっこを始めるフェリペと、それに必至で調子を合わせるロゼ。

「闇のヒーローロキレッド」

「ロキピンク」

「二人合わせて邪神戦隊ロキレンジャー」

六歳の子供とヒーローポーズをとるクラスのクィーンに、クラスの男子も女子もドン引き。

そんな残念な空気の中で、ロゼは思った。

(私、みんなの前で何やってんだろ)


そんな彼等を眺め、シャナは呟く。

「ここも馬鹿ばっかだな」

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